須永貴子, Author at TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報 https://tokion.jp/author/takako-sunaga/ Fri, 19 Jan 2024 04:51:16 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 須永貴子, Author at TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報 https://tokion.jp/author/takako-sunaga/ 32 32 ホラー映画初挑戦の古川琴音が『みなに幸あれ』で感じたこと 「現実をより理想に近づけるにはどうしたらいいかっていうのは常に考えておくべき」 https://tokion.jp/2024/01/20/interview-kotone-furukawa/ Sat, 20 Jan 2024 03:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=222231 映画『みなに幸あれ』に出演する俳優の古川琴音へのインタビュー。

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古川琴音

古川琴音
1996年10月25日生まれ、神奈川県出身。2018 年にデビュー。NHK 特集ドラマ『アイドル』(2022年 / NHK)、連続テレビ小説『エール』(2020年 / NHK)、『コントが始まる』(2021年 / 日本テレビ)や、映画『十二人の死にたい子どもたち』(2019年 / 堤幸彦監督)、『花束みたいな恋をした』(2021年/土井裕泰監督)、『偶然と想像』(2021年 / 濱口竜介監督)、『今夜、世界からこの恋が消えても』(2022年 / 三木孝浩監督)、『スクロール』(2023年 / 清水康彦監督)、Netflixシリーズ『幽☆遊☆白書』(2023年)、『雨降って、ジ・エン ド。』(2024年公開予定/髙橋泉監督)など、注目作品に続々登場している。
http://www.humanite.co.jp/actor.html?id=39
Instagram:@harp_tonehttps://www.instagram.com/harp_tone/

日本で唯一の、ホラージャンルに絞った一般公募フィルムコンペティション「日本ホラー映画大賞」(主催:KADOKAWA)。第1回大賞受賞作品である下津優太監督の『みなに幸あれ』が古川琴音主演で映画化され、1月19日から全国で順次公開されている。「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」という命題を、とある村を舞台にしたホラーとして描く本作。古川は村の特異な成り立ちにあらがい、行動を起こすが、どんどん追い込まれていく主人公を演じている。作品ごとに全く違う表情を見せてくれる古川琴音の魅力は、自身にとって初のホラーとなる本作でも健在だ。彼女の瑞々しい演技の秘密や、ホラー映画の醍醐味、作品のテーマについて聞いた。

※記事内には映画のストーリーに関する記述が含まれております。

『みなに幸あれ』を終えて

——今回の主演映画『みなに幸あれ』で改めて、古川さんのお芝居の魅力は表情の瑞々しさにあると実感しました。古川さんは「表情の演技」に関して意識していることはありますか?

古川:「表情を作ろうとしないこと」は大切にしています。

——『みなに幸あれ』で、田舎に暮らす祖父母の家に遊びに行く「孫」役を演じています。祖父母の奇妙な言動に覚えた違和感や、開かずの間にいる誰かの気配などが、恐怖に変わっていくわけですが、「孫」をどういう人物と捉え、どう演じましたか?

古川:「孫」は、本当にごく普通の感覚を持っていて、作品の中でお客さんが唯一共感できる人。普通であればあるほど周りの人が異様に見えてくると思いましたし、「孫」という役名に普遍性を感じたので、特に「こういう人」という役作りはせず、「これから何が起こるんだろう?」という気持ちで現場にいました。

——作品を拝見して、「これはどういうこと?」という謎や疑問がたくさん残っています。それをああだこうだ考えることが楽しいのですが、古川さんは現場で監督に、それらの答えを求めましたか?

古川:私も確か、「おばあちゃんはなぜ妊娠したんですか? それは生贄と関係ありますか?」と聞いたと思うんですけど、「自由に考えてください」みたいな反応でした(笑)。「孫」は何が起きているのかがわからない役なので、「わからないままやってください」と。

——わからないまま出したものが正解かどうか、不安や迷いはなかったですか?

古川:なかったです。私はとにかくリアクションだけをしていました。監督もその「わからない表現」を受け入れてくださる方だったので。わかって何かを作ろうとするよりも、わからないまま、その時感じた表情が出ればいいということなんだろうなと解釈しました。

——下津優太監督はどんな演出をされる方でしたか?

古川:監督は今回長編が初めてということで、いろいろ実験されてたのかなという印象がありました。そのシーンのシチュエーションを役者に知らせないで撮ろうとしたり。私が叔母の家に行って吊るしてあった布を取り外すシーンでは、布の後ろに何が置いてあるかはずっと内緒で、本番で初めて「あれ」を見たんです。そういうサプライズ的な演出で生まれるリアルなものを大切にされているなと感じました。

——役者として、そういう演出はどうでしたか?

古川:たくさんの発見がありました。自分が想像もしなかった反応が出たなと思う部分もありましたし……楽は楽でした(笑)。何も準備せず、周りに反応していればいいだけだったので。監督が、私が驚ける環境や怖がれる環境を作ってくださったおかげで、本当に楽でした。でも、体力的にはどんどん消耗していきました(笑)。泣いて叫んで逃げて怒ってびっくりしてという、感情表現にものすごく体力を使ったので。

——古川さんは89分間ほぼ出ずっぱりでしたよね。どうやって体力を回復させましたか?

古川:回復しなかったです(笑)。美味しいものはたくさん用意していただいていたんです。地元(ロケ地の福岡県田川郡)の方が用意してくださったイノシシ鍋とか、みんなでいただきました。今回スケジュールが順撮りだったので、体力が消耗していく様をそのままお芝居に生かせたんですね。だから「回復しなくてもいいや」って(笑)。

——ということは完成した作品を観て、「こんな表情をしていたんだ!」という驚きがありそうです。

古川:あります。叔母の家を飛び出して山の中で雨に打たれるシーンの表情は、自分でも結構好きです。体力が結構ギリギリの状態で、本当に寒くて寒くて、何も考えてなかったんですよね。自分に限界が来ていることが、ちゃんと顔に出てるなって(笑)。物語ともマッチしてるし、すごく真実味のある表情だったので、好きだなと思いました。

——つまりは「作為のない表情」ですね。

古川:毎回そうなればいいなと思いながらやってます。

——今作に限らず、古川さんが現場でお芝居をする時に大切にしてることを教えてください。

古川:カメラ前ではすべて忘れること、ですかね。自分の中に「こういう流れになったらいいな」みたいなイメージはあるんです。物語の軸としてそういうものをちゃんと持ちつつも、感情の面では相手の俳優と作っていく、相手に委ねる、相手の反応を見ながらその時に自分に湧き上がった感情に素直になる。それは忘れないようにしたいと思っています。

演技への思い

——本作のタイトルにちなみ、古川さんが幸せを感じる瞬間を、プライベート編と仕事編で教えてください。

古川:プライベートだと、家に帰ってきて猫がお出迎えしてくれた時! 毎回来てくれるんですよ。「ただいまー!」「疲れたよ〜」って言う私を癒してくれるので、すごく幸せです。仕事だと、出演作品を観た人から連絡をもらった時もそうだし、お芝居をしながら無になれた時。その時は無我夢中なんですけど、後から「あの時は楽しかったよね」って思います。さっきお話しした雨に打たれたシーンもそうだったんじゃないかなと思います。

——仕事において、目標や夢はありますか?

古川:実はあんまりないんです。

——そもそもこの世界に入った時は、「お芝居を仕事にしたい」ということだったんですよね?

古川:はい。就職活動の一環で自分の得意なことを探していった結果、「人からお芝居を褒められることが多いということは、得意なのかな」と思って、この仕事をやってみようかなって。でもまさか本当にできるとは思ってないから、「ドラマに出れたらいいな」「主演作とかできちゃったりして!」みたいな気持ちだったんですよね。今回の映画も含めてあの時の憧れみたいなものは叶えられてきているんですけど、その先のことっていうのはあまり考えられていないというか。自分がやりたい作品があったとしても必ずしもできるわけじゃなくて、ご縁だと思うので、あまり考えないようにしている部分もあります。

——古川さんはデビューしてまだ5年なんですね。もっと昔から見ている感覚でした。

古川;嬉しいです。ありがとうございます。

——この5年間を振り返ると、あっという間でしたか?

古川:6年目に入ったんですけど、小学1年生が小学6年生になると考えると、「え、もうそんなに経った?」みたいな感じです。デビューした時と気持ちはあんまり変わってないですし、まだまだ新人の気持ちです。でも確かに、最近若くて新しい子がたくさんいるなーとか思ったり(笑)。

——デビューした時の気持ちとは?

古川:ワクワク感、ですかね。ありがたいことに、今のところ同じような役も内容がかぶった作品もないと思ってるので、「次はどういうものが来るんだろう?」というワクワク感がずっとあります。

——「1本1本が勝負だ!」という緊張感みたいなものはありますか?

古川:勝負というよりも、1本1本実験をしている感覚が強いです。お芝居って正解もなければ間違いもないから、自分の中で毎回いろんなお芝居を試している感じです。「もうちょっとキャラクターに振ったらどうなるかな」とか、「ここの動きをいつもは自然体にやってたけどあえてポーズを決めたらどうなるかな」とか、細かいことなんですけど、そういう実験……というか「工夫」を繰り返しています。

『みなに幸あれ』が描くテーマ

——ホラー作品は普段ご覧になりますか?

古川:観ます。『パラノーマル・アクティビティ』とか『コンジアム』、最近だとNetflixの『呪詛』を観ました。日本映画に限らず、いろいろ観ます。

——古川さんが思うホラーの面白さとは?

古川:何なんでしょうね……。私は、意味がわからないものが怖いなと思うんです。「こういう原因があって、この恨みが発生したんだよね」っていう話よりも、「なんでこれがここにあるのかわからない」「なんでこの人がこんな動きをしてるのかわからない」のほうが怖いと感じるんです。好奇心というか、怖いもの見たさの気持ちが、自分にとってのホラーの醍醐味かなと思ってます。

——『みなに幸あれ』は「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」というテーマを、「生贄」というホラー的なアイテムを使って表現しています。古川さんはこのテーマについて、今現在どのような考えを持っていますか?

古川:最初にこれを言われた時、「すごい嫌なこと言うな」と思ったんです。見ないように生活できてるだけで、見ようと思えばいくらでも身の回りにあふれてることかなと思うんですよね。私は「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」と認めたくはないし、そういう世界になってほしくないという願いがあるからこそ、これを言葉にしてほしくなかったなとは思いました。でも、言葉にしたからこそ、向き合わざるを得ないという気持ちにもなりましたし、そこでいろいろ考えさせるところがこの映画の面白さだなと思いました。監督がいろいろな答えを散りばめてくれているなとも思います。

——目、耳、口を縫い合わされる描写がありました。それはつまり、「見ざる言わざる聞かざる」ということで、大人になったら自分を殺して社会の歯車になりなさい、という圧力も意味しているのかなと思いました。「孫」はちょうど、看護学校を卒業して社会に出る直前だったので。

古川:あ、なるほど。「孫」はそれに反発してもがくじゃないですか。そこに私はすごく共感できました。自分がもし同じ状況になったとしたら、同じようなことをするだろうなと思います。

——監督はおそらくこのテーマを「こうである」と押し付けているのではなく、問題提起していると感じました。孫の幼なじみの父親が、「みんながみんな自分の夢だけを追いかけたら世の中成り立たない」と言うと、幼なじみが「でもみんなが幸せになる方法もある」と言い返しますし。

古川:それはこの物語における理想の部分だなとは思いました。絶対に自分の中に持ってなきゃいけない部分でもあると思うんですよね。現実を見つつも、理想を掲げて、現実をより理想に近づけるにはどうしたらいいかなっていうのは常に考えておくべきことだと思っているので。みんながみんな一緒の意見じゃなくてもいいけれど、私はその気持ちは持っていたいと思ってます。

Photography Takuroh Toyama
Styling Makiko Fujii 
Hair & Makeup Yoko Fuseya(ESPER)

ドレス ¥99,000、ブーツ ¥165,000(ともにサカイ/sacai.jp)、アクセサリー(mamelon/@mamelon

■映画『みなに幸あれ』1 月19日からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

■映画『みなに幸あれ』
1 月19日からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

出演:古川琴音 松大航也ほか
原案・監督:下津優太 
総合プロデュース:清水崇 
脚本:角田ルミ 
音楽:香田悠真
主題歌:「Endless Etude (BEST WISHES TO ALL ver.)」 Base Ball Bear
製作:菊池剛 五十嵐淳之
企画:工藤大丈 
プロデューサー:小林剛 中林千賀子 下田桃子
製作:KADOKAWA ムービーウォーカー PEEK A BOO 
制作プロダクション:ブースタープロジェクト 
配給:KADOKAWA
©2023「みなに幸あれ」製作委員会
https://movies.kadokawa.co.jp/minasachi/

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「自分に才能があると思ってる人なんて、いない気がします」 俳優・岡山天音が『笑いのカイブツ』を演じて確信したこと https://tokion.jp/2024/01/04/interview-amane-okayama/ Thu, 04 Jan 2024 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=221345 映画『笑いのカイブツ』の主人公・ツチヤタカユキを演じた岡山天音へのインタビュー。

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岡山天音

岡山天音(おかやま・あまね)
1994年6月17日生まれ、東京都出身。2009年、NHK『中学生日記』で俳優デビュー。2017 年公開『ポエトリーエンジェル 』(飯塚俊光監督)で第 32 回高崎映画祭最優秀新進男優賞、2018年公開『愛の病』(吉田浩太監督)でASIAN FILM FESTIVAL最優秀男優賞を受賞。近年の主な出演作に、『キングダム2  遥かなる大地 へ 』(2022 / 佐藤信介監督) 、『さかなのこ』(2022 / 沖田修一監督)、『沈黙のパレード』(2022 / 西谷弘監督)、『あの娘は知らない』(2022 / 井樫彩監督)、『BLUE GIANT』(2023 / 立川譲監督)、『キングダム 運命の炎』(2023 /佐藤信介監督)など。待機作として、『ある閉ざされた雪の山荘で』(2024 / 飯塚健監督)がある。 
http://www.humanite.co.jp/actor.html?id=13

『だが、情熱はある』『ベしゃり暮らし』『火花』などの“芸人(志望の若者達)”を描く作品と違い、映画『笑いのカイブツ』の主人公・ツチヤタカユキは劇場のネタ作家や、ラジオの構成作家を目指す人物だ。

大喜利番組にネタを投稿し続けること6年。ツチヤタカユキはその実力が認められ、お笑い劇場の作家見習いになるが、周囲とのコミュニケーション不全により挫折。ラジオ番組のハガキ職人として頭角を現し、尊敬する芸人から声をかけられラジオの構成作家になるために、大阪から東京に拠点を移すが……。

原作は、ツチヤタカユキによる同名私小説。笑いに取り憑かれた男がもがき、あがき、地べたを(文字通り)這いずり回る姿を、高い熱量で描く人間ドラマ。ツチヤを演じるのは、どんなキャラクターを演じてもその作品世界にくっきりと存在させることができる、演技力と個性を併せ持つ岡山天音だ。現場を「なんとか生き延びた」と語る岡山が、ツチヤタカユキという人物を演じて確信したこととは。

ラジオ、お笑いについて

——ツチヤタカユキ(原作者で主人公のモデル)さんはラジオのハガキ職人から構成作家になった方ですが、岡山さんはいわゆるラジオリスナーですか?

岡山天音(以下、岡山):はい。もともとラジオは好きなので、ツチヤさんの存在も知ってました。映画に出てくるツチヤさんのエピソードを聴いたことがあって。原作をもらった時に、「あ、この人知ってます」という話をしたのは覚えてます。

——そうだったんですね。ツチヤさんに会う前と会ってからで、印象に変化はありますか?

岡山:あくまで裏方の人、作家的な感じの人だと思ってたんですけど、一緒に取材を受けたり、大阪で一緒に舞台挨拶をさせていただいたりして、めちゃめちゃやっぱり面白いです。喋りとか。まあそりゃそうだよなっていう。これだけお笑いだったりエンタメを貪るように吸収されている方なので、自分が発見しただけではない魅力がいっぱいある人なんだなと思いました。

——普段はラジオをどんな風に聴いていますか?

岡山:基本、耳が空いてる時に「ながら」で聴いています。聴く番組は時期によるんですけど、情報系よりは笑える番組が好きですね。芸人さんはもちろん、ミュージシャンの方、アイドル、YouTuberと多岐にわたって聞いて、ハマるとその人の番組をたくさん聴きます。

——最近ではどんな番組を聞いていますか?

岡山:「Artistspoken(アーティストスポークン)」という有料のラジオアプリで欠かさず聴いているのは、芸人の9番街レトロさんとミュージシャンのさユりさんです。あと、ニューヨークさんがYouTubeでやってる「ニューヨークのニューラジオ」とか。

——お笑いそのものもお好きでしょうか。

岡山:好きです。

——世代的にハマった番組や、好きになったきっかけというと?

岡山:世代で言うと『エンタ(の神様)』かもしれないですけど、「これだ!」みたいな1つのきっかけはなくて。普通に生活していたら自然にお笑いになじむようなシステムができあがっている時代だったと思います(笑)。

——「M-1グランプリ」もありましたし。

岡山:そうです、そうです。気づいたらそばにあったものでしたね。学校行く、飯食う、『はねとび(=はねるのトびら)』観て、風呂入って寝る、みたいな。“エンタメ”ほど距離が遠くない、生活の一部という感じでした。

ツチヤタカユキを演じて

——ツチヤさんが大阪出身なので、今回のセリフがすべて関西弁でした。ツチヤは対人コミュニケーションが不得意ということもあり、言葉を相手に届けようとしていないから、劇中でツチヤがボロボロになっている時や具合が悪い時に、セリフの一部が聞き取れないところがありました。

岡山:ああ〜、すみません……。

——いえ、だからこそツチヤの感情がものすごく伝わってきましたし、それこそがリアルでした。岡山さんはそのあたり、コントロールしていたのでしょうか?

岡山:プロとしてはツチヤのそういう部分を残しつつ、セリフを聞き取れるように言うことが、あるべき正しさだと思います。だから、セリフが聞き取れなくても感情が伝わればいいなんてことは思ったことはないです。ただ、ツチヤを演じている時は、セリフが聞こえる聞こえないということよりも、大事にしたいものがあって、それをまっとうしたかったのかもしれないです。

——プレスリリースに「ツチヤタカユキという人物を生き延びて」というコメントがありました。それくらい必死だったということですよね。

岡山:ずっと心の具合が悪かったです。ツチヤタカユキというキャラクターに、僕は一番近くで向き合わせてもらいました。誰よりも、間違いなく。ものすごく強烈な人なので、もらうものはあるし、どこまでも引っ張り込まれてしまうというか。ツチヤに負けたくないし、ツチヤにも俺なんかに負けてほしくないし、という毎日でした。そういう日々を送っていると、やっぱり息が詰まってくるところはありましたね。

——かなり苦しそうですね……。

岡山:ですけど、同時に楽しさもありました。こういう役をあまりやったことがなかったので。他者とのコミュニケーションのとり方一つにせよオリジナリティがあるので、本当に新鮮な体験をお芝居の上でさせてもらえて、単純に興味深かったです。あと、共演者の方がいっぱいいらっしゃったので、相手によってやり取りが全然変わってくるのも楽しみでした。「この人とはどういうエネルギーのやり合いになるんだろうな」って。だから、「つらい」「苦しい」「楽しい」「早く終わってほしい」「終わらないでほしい」が同時にありました。

——「生き延びた」今、お芝居への向き合い方の変化や、改めて確信したことなどはありますか?

岡山:「ご縁」を本当に感じる現場だったんです。「今日このタイミングでこのシーンの撮影じゃなかったらこういう芝居はできなかったな」とか、結果的に良かったことがたくさん起こったんですよ。だからこれは「芝居」という枠だけの話じゃないかもしれないんですけど、縁がある時は結びつくし、そうじゃない時は接点を持たずに物事は進んでいくんですよね。キャストにおいても皆さんお忙しいのに素敵な方が大勢集結してくださってるので、このタイミングじゃなければご一緒できなかった方もいるでしょうし。

ツチヤという役にもすごく自分と近しいものをそもそも感じていたので、そういう役と出会えたのもご縁だし。ここまでタイミングと人と、ありとあらゆることが合致することがなかったので、数週間という短い現場でしたけど、「大丈夫なんだな」「人生面白いな」ということを感じましたね。

——そうなったのは、自分の頑張りが実を結んだからだと思いますか? それとも運がいいと捉えますか?

岡山:頑張りが実を結んだのだとしても、自分が頑張れたのはそれまでのご縁のおかげだと思うんです。「努力家だね」「ストイックだね」みたいなことを言われる人は、打ち込めば打ち込むほど結果が返ってきた経験が過去にあったからより頑張れる。ストイックになれない人は、その人云々というよりも、結果が出なかったからそうなってるだけで。その人がすごいとかその人が駄目だとかっていうことじゃないと思うんです。だから僕は、その時は「なんでこんなことになっちゃったんだろう?」と思うことでも、後から思い返すと「あれがベストだったな」と思うことが多い。それは日々感じてることではありますね。子どもの頃からどこかで感じてたかもしれないですけど、ここまで実感を持って「大丈夫なんだな」と確信を持ったのは初めてです。

——さっき「ツチヤに自分と近しいものを感じていた」とおっしゃっていましたが、どんなところでしょうか?

岡山:いやこれは、あんまり言葉にできないのと、その、(話が)暗くなるっていうのがあって(笑)。

——あ〜(笑)。

岡山:僕の皮をどんどんめくっていった中にある芯みたいなものと、ツチヤの中にある芯が近かったんだと思います。役を演じる上で「この人ってどんな人だろうな」と耳を澄ませながら脚本を読んでいったら、すぐにわかったんですよね。ツチヤの感覚が。周りの人は「カイブツ」とか、人間が理解し難いものみたいに言いますけど、僕にとっては一番近い存在に思えたというか、同じ核を持った人間と感じたというか。抽象的なことなので言葉にできないんですけど……。基本的に役は他人ではあるんですけど、こんなにも近い存在だと思ったのは初めてです。

——ツチヤは周りからすると暴力性があったり、傲慢さも持っていたりする人間ですが、ツチヤタカユキという人間を愛せましたか?

岡山:はい、もちろん。

——完成した作品を冷静に見ることは……。

岡山:できないですねえ(笑)。すぐスクリーンの向こう側に行っちゃうというか、画面に映ってるツチヤの気持ちになっちゃうので、映画を鑑賞しているという感覚にならなかったです。

——自分が出た作品ではいつもそうですか?

岡山:いやいや! 本当にこの映画はずっと出続けてますからね、画面にツチヤが。だから(出ずっぱりではない他の作品と)横並びで考えられないですけど、普段とは明らかに違いましたね。終わってからもこんなに役に肩入れしちゃってますし。この現場に関しては、普段通りのことはあまりなかったかもしれないです。

——この映画を特に届けたい人はどんな人ですか?

岡山:んー(と、しばらく悩んで)、趣味でも何でもいいんですけど、自分の中に好きなものがある人に観てもらいたいですかね。自分が好きなものと自分の外側の世界には、ギャップがあると思うので。でもまあ、好きなものはなくてもいっか(笑)! どうしても自分と社会は違うので、息苦しさを感じていたり、何となく生きれてるけどしっくりこないなとか、生きてる実感がないなとか、そういう人に見てもらいたいですかね。圧倒的な孤独を抱えて生きていた1人の人間を見てどう感じるのか。それぞれがそれぞれの孤独をどう見つめ直すのか。それはもう観た人に委ねたいです。

ツチヤは「カイブツ」とか極端な人に見えるんですけど、すごく普遍的な人だと思うんですよね。誰しもがこう、“リトルツチヤ”みたいなものを抱えて生きていると思うので。だから結局はみんなに観てほしいってことになっちゃうんですけど(笑)。きっかけは何でもいいです。このポスターでも、原作のツチヤさんでも、菅田(将暉)くんでも太賀くんでも、何か気になった人は気軽に観に来てほしいです。このツチヤタカユキという生き物を目撃して、自由に受け取ってもらえたらなと思います。

——ツチヤタカユキがお笑いに夢中になったように、岡山さんが夢中になったものはありますか?

岡山:ないです! 「ツチヤタカユキみたいに」となると、そんなのは無理ですって(笑)。誰もできないことをやってた人だからこうして映画化されているわけですしね。

——ツチヤを演じてみて、自分もあれくらいのエネルギーで俳優業と向き合えるだろうか、と考えたりはしましたか?

岡山:本当に仕事がなくて、どうやってカメラの前に立てばいいのかもわからなかった時期は、近しいものはありました。役作りとかもわかんないけど、じゃあどうしたらいいんだっていう中で、なんかもう必死にめちゃくちゃなことをしてました。だからツチヤは最初から「同類」じゃないですけど、「わかる」と思ったんですよね。

——苦しくても諦めずにがむしゃらに努力し続けることが、才能なのかもしれないですね。岡山さんは、「才能」という言葉をどう捉えていますか? 芸人や作家、俳優という職業にもよくつきまとう言葉だと思うんです。「天才俳優」とか。

岡山:僕はどうでもいいです(笑)。「あー、才能ないなー」とは普通に思いますけど、才能があるかないかで悩んだことはないです。才能があろうがなかろうが、その機体、マシンにしか自分は乗れないので、好きだったら乗り続けるし、きつかったら別のことをやった方がいいと思うし。じゃあその才能と呼ばれるものが何なのかはわからないですけど、人よりも努力しなきゃいけない量が多いのであればするべきだし、時間が足りないのであればどうやったら効率的にその努力を積めるかっていうことでもあるし。でもどの俳優もそうなんじゃないですかね。自分に才能があると思ってる人なんて、いない気がします。

Photography Mikako Kozai(L MANAGEMENT)
Styling Haruki Okamura
Hair & Makeup Amano

『笑いのカイブツ』 1月5日よりテアトル新宿ほか全国ロードショー

■『笑いのカイブツ』
1月5日よりテアトル新宿ほか全国ロードショー

出演:岡山天音
片岡礼子、松本穂香
前原滉、板橋駿谷、淡梨、前田旺志郎、管勇毅、松角洋平
菅田将暉、仲野太賀
監督:滝本憲吾
 原作:ツチヤタカユキ『笑いのカイブツ』(文春文庫) 
脚本:滝本憲吾、足立紳、山口智之、成宏基
企画・制作・プロデュース:アニモプロデュース
企画協力:文藝春秋 
製作:「笑いのカイブツ」製作委員会
配給:ショウゲート、アニモプロデュース
宣伝協力:SUNDAE
©︎2023「笑いのカイブツ」製作委員会 2023 年/日本/アメリカンビスタ/5.1ch/カラー/116 分/映倫区分 G
https://sundae-films.com/warai-kaibutsu/

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対談:唐田えりか × 芋生悠 親友同士だからこそ伝わるセリフを超えたリアルな想い 映画『朝がくるとむなしくなる』で初共演 https://tokion.jp/2023/11/29/erika-karata-x-haruka-imou/ Wed, 29 Nov 2023 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=217481 映画『朝がくるとむなしくなる』で初共演をする唐田えりかと芋生悠の対談。親友の2人だからこそ伝わるそれぞれの想い。

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芋生悠(左)と唐田えりか(右)

唐田えりか
1997年9月19日生まれ、千葉県出身。2015 年にドラマ『恋仲』(フジテレビ系) でデビューし、『こえ恋』(2016/テレビ東京系)、『トドメの接吻』(2018/日本テレビ系)、『凪のお暇』(2019/TBS系)などのテレビドラマに出演ほか、韓国 Netflixドラマ『アスダル年代記』(2019)にも出演。映画では、ヒロインを演じた『寝ても覚めても』(2018/濱口竜介監督)が第71 回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門の参加作品に選ばれた。2022 年には主演映画『の方へ、流れる』(竹馬靖具監督)、2023 年にはヒロインとして出演した映画『死体の人』(草苅勲監督)が 公開となった。2024年にはNetflixシリーズ『極悪女王』の配信が控えている。
https://www.flamme.co.jp/actress/profile.php?talentid=20

芋生悠(いもう・はるか)
1997 年 12 月 18 日生まれ、熊本県出身。2015 年デビュー。 主演映画『ソワレ』(2020/外山文治監督)で注目され、映画やドラマ、舞台、 CM と幅広く活躍。映画『37 セカンズ』(2020/HIKARI 監督)、『ひらいて』(2021/首藤凛監督)、『左様なら』(2019/石橋夕帆監督)などに出演。
https://harukaimou.com
Instagram@imouharukahttps://www.instagram.com/imouharuka/

もともと友人として仲の良い唐田えりかと芋生悠が、『左様なら』の石橋夕帆監督作『朝がくるとむなしくなる』で初共演を果たした。中学のクラスメイトだった希(唐田)と加奈子(芋生)が東京で再会し、お互いにかけがえのない存在になっていく様子を、リアルな会話と温かい眼差しで描き出す。「芋ちゃん」「唐ちゃん」と呼び合う2人へのインタビューから、お互いへの信頼が現場での親密なコラボレーションに繋がっていることが浮かび上がった。

出会って8年、初めての共演

——お2人が仲良くなったきっかけから教えていただけますか?

唐田えりか(以下、唐田):18歳の頃、高校の同級生でカメラマンを目指している子が、「東京でかわいい子を撮った」って芋ちゃんの写真を見せてくれたんです。それで「かわいい!」となって。

芋生悠(以下、芋生):(照れ笑い)。

唐田:当時、公式のInstagramをやっていたんですけど、直接の知り合いしかフォローしていなかったんです。でも、芋ちゃんのアカウントだけは自分からフォローしたら、芋ちゃんがメッセージをくれて。すぐに「会おう」となって、意気投合しました。芸能界に入って初めてできたお友達で、もう8年くらいの付き合いになります。

芋生:当時の唐ちゃんはフィルム写真を撮っていたので、遊びで一緒に写真を撮ったり、ご飯を食べたり、お風呂に入ったりしているうちに、すぐに“マブ”になりました(笑)。

唐田:本当にめっちゃ会ってました。現場で一緒になっていない(同業者の)人と、こんなにも短い期間で仲良くなれたことはないかもしれないです。

芋生:仕事の話とか全くしないよね。いい意味でただの友達だから、なんでもないことを、いっぱい喋る。

唐田:うん、地元の友達感がある。

——『朝がくるとむなしくなる』で初めて共演することになって、どう思いましたか?

唐田:脚本を先に読んでいたので、加奈子役が芋ちゃんになったと聞いて、ありがたいというか、シンプルに嬉しかったです。

芋生:今回、役として再会しますけど、実際に数年ぶりの再会だったんです。夢に出てくるぐらい唐ちゃんのことを「元気かな」「幸せに暮らしてるかな」ってずっと考えていたから、「やっと会える!」という気持ちでした。

唐田:私が休業している間、1年間ぐらい携帯(電話)を持たない生活をしていたので、連絡先を知っていた方との関係も全部リセット状態でした。誰とも連絡を取らず、事務所の寮から外に出ない生活をしていました。

——それは芋生さんも気になりますね。

芋生:気になりました。だからふとした時にハッとなって、「唐ちゃん、元気かな」って。

唐田:嬉しい……!

——現場でいうと、今作は唐田さんにとって休業が明けてから何本目の作品ですか?

唐田:4本目です。仕事を再開するとなった時に、ないと不便だということで、連絡用にまた携帯を持ち始めました。でも、事務所の人と家族しか繋がっていない期間が結構長かったんです。

——今、お2人は繋がっていますか?

芋生:(嬉しそうに)はい!

唐田:無事に繋がりました(笑)。

『朝がくるとむなしくなる』での役作りについて

——石橋夕帆監督はこの作品を、唐田さんの主演ありきで作り始めたそうですが、どのようにコラボレーションを進めていったのでしょうか?

唐田:まず事務所でお会いして、「何が好きですか?」「普段何してますか?」といったパーソナルな部分について、軽い感じで会話をしました。そして、希役にあて書きしていただいて、脚本をいただいたという流れです。

芋生:私は夕帆さんと『左様なら』でご一緒してから、ずっとお友達みたいな感じで、ご飯にも普通に行ったりしていて。私がいつも唐ちゃんの話をしていたので、夕帆さんも唐ちゃんが気になっていったのかなと思いました。

——芋生さんから見て、希役に唐田さんを「あて書きしているな」と感じる部分はありますか?

芋生:(唐田と顔を見合わせながら)どうだろうね? 今まで唐ちゃんが演じた役の中では、一番本人に近い気がするけど。

唐田:希が見せるバカっぽいところが、一番自分っぽい気がします(笑)。

芋生:酔っ払って、路上でマイケル・ジャクソンみたいな動き(ムーンウォーク)をするところとか(笑)。ああいう人間味が出る瞬間に、唐ちゃんを感じます。

唐田:希の淡々とした感じももちろん自分の一面ではあるんですけど、芋ちゃんのように気心知れた人の前では、素の陽キャな部分が出てきます。

——加奈子は芋生さんに重なりますか?

芋生:希と会話する時の感じは、すごく似ているかもしれないです。私も加奈子も、聞き役になることが多いので。

唐田:いつも私が延々と喋っています(笑)。

——役を演じるにあたり、意識したことをお聞きしたいです。

唐田:私と芋ちゃんをキャスティングしていただいた時点で、この関係性に委ねてもらっているなと感じました。だからこの空気感の中で、本当にリアルな会話ができたらいいなと。ただ、仲がいいからこそ、希と加奈子が再会してからしばらくは、この仲の良さや自分が出過ぎないようにということはちょっと意識しました。

芋生:夕帆さんの脚本は会話がすごくリアルなので、言葉がなじみやすいんです。なおかつ私達の仲の良さを知った上で書いてくださっているので、現場では何のストレスもなく、ラフに会話をするだけでした。

——あの即興感のある会話が台本通りなのですか?

芋生:(唐田に向けて)アドリブはそんなになかったよね? 一緒に飲んでいるシーンでバンドマンの話をするところや、枝豆が飛び出て笑うところは、アドリブから出てきたものが使われていたと思います。

唐田:そういうシーンは長回しをしてたかも。バンドマンのところは、当日に追加でセリフをもらった気がします。監督から「バンドマンについて、このセリフを言ってほしい。そこにたどり着くまでの会話は自由で」って言われました。

芝居を超えた2人の関係

——加奈子の部屋で会話するシーンが感動的でした。カットを割って、それぞれの寄りのショットで、涙を捉える。そこまで引きのツーショットが多かったので、お2人にとっても集中力が必要な場面だったのではないでしょうか。

芋生:あそこはだいぶテイクを重ねました。唐ちゃんはテイクのたびに涙を流していて、すごい集中力でした。そのお芝居を受けるとどうしても泣いてしまって。夕帆さんから「泣かないようにやってほしい」と言われて何テイクもやって、でも泣いちゃって……。

唐田:うん。

芋生:何度もやって、最終的にやっと泣かずにあのセリフが言えてOKになりました。「正しくなんて生きられないよ」って。

——あのセリフ、素晴らしかったです。唐田さんはどう受け止めましたか?

唐田:女優としてだけでなく、芋生悠という人間としてのすごさがあの言葉を通してバーン! と突き刺さり、感極まってしまいました。あそこは脚本では泣くようなシーンではなかったんです。

——そうだったんですか!

唐田:会話の一部として流れていくはずだったんですけど、私も感極まってしまって。現場判断で、あの流れでもラストに繋がるだろうということで、OKとなりました。あの時間は、今でもすごく覚えています。

——加奈子が「大丈夫だよ」言いながら、希を抱きしめます。あの時の加奈子は、希だけでなく自分も励ましているように感じました。加奈子の人生について、この映画は多くを説明しませんが、いろいろあったんだろうな……と。

芋生:人に与える言葉によって自分も抱きしめられるというか、加奈子にとっても一歩進んだ瞬間でした。あのシーン、本当に好きで。(唐田の方を向いて)なんか、ね。あの時間が良かったよね。

唐田:うん。撮り終わってからも泣けた。「ありがとう〜」って。

芋生:今回夕帆さんが脚本に起こしてくれたことによって、自分自身の気持ちもお芝居に込めることができました。あの日の撮影が終わった瞬間に、なんだかお風呂上がりみたいな気持ちになりました(笑)。

唐田:(笑)。日々、周りの方々に支えられて今があります。お仕事ができなかった時期は、みんなが声をかけづらい状況にいたと思うんです。自分がこの仕事をやっていいのか、続けてもいいのかと悩みましたし、やっぱり人が怖い時期でもありました。自分的には、言葉をかけていただかなくても、近くに存在してくれるだけでありがたいというのが前提にあります。いろいろな不安がある中で、今回この作品があって、セリフを書いていただいて、芋ちゃんがセリフを超えてきてくれました。「大丈夫だよ」という、すごく短くて熱い言葉を言ってもらって、自分自身もすごく救われました。

——監督が「唐田さん自身が救われるような映画が作れたら」と製作の動機についておっしゃっていました。直接言われていましたか?

唐田:撮影が終わってから言っていただきました。このお話に自分が重なる瞬間がありましたし、今でも自分の中に残っている感覚があります。石橋監督と芋ちゃんに、優しく背中を押していただけているなと、芝居をしながら感じていました。

——芋生さんは、監督からこの映画における役割みたいなものを伝えられましたか?

芋生:言葉はなかったですが、夕帆さんとはすでに信頼関係があったので、夕帆さんの思いやしたいことなど、自然に伝わってくるものがありました。現場では、希と加奈子がお互いを支え合うような時間になればいいなと思っていました。

——唐田さんは、石橋監督と初めてのお仕事でしたが、いかがでしたか?

唐田:初めてなのに、ホームみたいでした。すごく好きな人達ともの作りができている感覚があって、とても楽しい現場でした。キャスト同士の相性をすごく考えてくれて、常にお芝居がしやすい環境作りをしてくださる方なんだろうなって思いました。

芋生:夕帆さんは役者さんが大好きで、“役者オタク”みたい人なんです。物語の登場人物を生み出して、そのバックボーンが夕帆さんの中でどんどん広がっていくんです。「この人ってこういう癖あるよね」みたいに、その人物が本当に存在しているんじゃないか、というレベルで会話ができるんですよ。だから夕帆さんの映画で役を演じると、その映画が自分の記憶や思い出の一部になるんです。思い返してすごく切なくなったり、楽しくなったり。現場での夕帆さんは、昔はマスコットキャラクターみたいな人だったんですけど、今回は職人みたいでした(笑)。

唐田:そうなんだー(笑)。

芋生:私と夕帆さんはご一緒するのが久々だったので、成長している姿を見せたかったというのもあって。お互いにちょっと気合いを入れて挑んだ感があったと思います。

メンタルを保つために

——希のアルバイト仲間の、自己肯定感の高いギャルの、メンタルが最強で最高でした。お2人には、メンタルが弱った時に強化する方法や、悩み事を解決する方法はありますか?

芋生:目標を決めるとそれが縛りになってきつくなる瞬間があるんですけど、「自由」を目標にするとなんでもありになるんです。自由って無敵だなって思います(笑)。

——どういう経緯でそこにたどり着いたんですか?

芋生:体が自由じゃないな、乗りこなせていないな、という状態だったんです。こういう感情なのに、体がそういうふうに動かない自分がものすごくもどかしくて。もっと体を自由に動かしたくて、去年からバレエを習い始めたら、「自由って最強じゃない?」みたいな。

一同:(笑)。

芋生:それがうまくいかなくても、自由を求めてるんだからいいじゃん、みたいな。自由を目標にしてやることはどれも、自分を縛らないし苦しめないから最強です。

唐田:どんな悩みも本当はすごくシンプルだと思うんです。落ち込んだ時や悔しい時は、ノートに思いついたことをポンポンポンって書いていきます。それぞれについて、なんでだろうなんでだろうと考えて繋げていくと、「これだ!」というシンプルなものが浮かび上がるんです。それに対してどう対処すればいいかを考える作業というのをわりとしています。

——自分がつまずきがちな思考のクセ、みたいなものはありますか?

唐田:人対人の悩みだと、わりと自分で勝手に「あの人はこう思っているのかな」という想像がどんどん膨らんでいって、「絶対にそうだ」と思い込んでしまうところがあります。コミュニケーション不足が原因なので、まずその人と話して自分の余分な想像を消すようにしていますし、友人、家族、事務所に対して、ちゃんとコミュニケーションを取ることは意識しています。あと、私もトレーニングやキックボクシングで体を動かします。悩んでいると視野が狭まってしまうので、人に会ってバーっと話して違う視点を入れて、一歩引いて自分のことを考えたりもしています。

——『朝がくるとむなしくなる』は、自分にとってどんな作品になりましたか?

唐田:自分は映画作りが好きなんだなと、改めて思えた現場でした。これからも頑張り続けようと、背中を押してもらいました。

芋生:普通に好きな映画ランキングに入ってきました。自分が出ている映画をこんなふうに言うのはあれかもしれないですけど、めっちゃ好きです(笑)。

——この映画をどんな人に見てほしいですか?

唐田:いろんな方に見ていただきたいです。恐れ多いですけど、映画を通して誰かの力になれたらいいなと思うので。私もそうだったんですけど、日常の中で気付かなくなっていたこと、気付かないようにしていること、見ないようにしていること、見ているのに知らないふりをしていることなどが、見えてくる作品だと思います。すごく近いところにある大事なものや、忘れちゃ駄目なことに気づかされる映画でもあります。見終わって映画館から出た時に、優しい気持ちになれる作品だと思うので、ぜひ映画館で見てほしいなと思います。

芋生:大人になると、それぞれの人生や忙しい日常があるので、相手との距離感が大事がゆえに、自分の弱みをさらけ出せなくなっていくと思うんです。そんな中、お互いに自分の話ができて、お互いを支え合えるような友達が1人でもいるというのはすごくいいことだなと、この作品を見て思える気がしていて。だから自分の弱みを自分だけで抱え込まないで、近くにいる人にちょっと言ってみたら、もしかしたら変わるかもしれない。その人も何かいろいろあって、その人のことも聞けるかもしれない。何かが動き始めるきっかけになる作品なんじゃないかなと思います。

Photography Takahiro Ostuji
Styling  Mei Komiyama
Hair & Makeup Omagari Izumi

(唐田えりか)ブラウス/Eimee Low (chelsea)、ワンピース/AS KNOW AS PINKY
(芋生悠)ニット、ビスチェ/ともにEimee Low (chelsea)、パンツ/CHIGNON(chelsea)

『朝がくるとむなしくなる』

■『朝がくるとむなしくなる』
12月1日から渋谷シネクイントほか全国順次公開
出演:唐田えりか
芋生悠 石橋和磨
安倍乙 中山雄斗 石本径代
森田ガンツ 太志 佐々木伶 小野塚渉悟 宮崎太一 矢柴俊博
監督・脚本:石橋夕帆
製作:Ippo
配給:イーチタイム
2022 年/日本/カラー/76 分/アメリカンビスタ/5.1ch
https://www.asamuna.com

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俳優・磯村勇斗が語る映画への熱い想い——「やらなきゃいけない」という使命感みたいなものはある https://tokion.jp/2023/11/16/interview-hayato-isomura/ Thu, 16 Nov 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=216030 映画『正欲』に出演する俳優・磯村勇斗が語る映画への熱い想い。

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磯村勇斗

磯村勇斗(いそむら・はやと)
1992年9月11日生まれ、静岡県出身。テレビドラマ『仮面ライダーゴースト』(2015-16 / EX)で注目を集め、その後、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017)でヒロインの夫役を演じて脚光を浴びる。2022年に『ヤクザと家族 The Family』(2021 / 藤井道人監督)、劇場版『きのう何食べた?』(2021 / 中江和仁監督)で第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近年の主な出演映画は『東京リベンジャーズ』シリーズ(英勉監督)、岸善幸監督作『前科者』、『PLAN 75』(2022 / 早川千絵監督)、映画初主演を務めた『ビリーバーズ』(2022 / 城定秀夫監督)、『最後まで行く』(2023 / 藤井道人監督)、『波紋』(2023 / 萩上直子監督)、『渇水』(2023 / 高橋正弥監督)、『月』(2023 / 石井裕也監督)など。
https://hayato-isomura.com
Instagram:@hayato_isomura
X(旧Twitter):@hayato_isomura

2022年1月から2023年10月までに劇場で公開された磯村勇斗の出演作(そのほとんどが主要キャスト)は、14本を数える。数字だけでも驚きだが、『PLAN 75』『ビリーバーズ』『波紋』『渇水』『月』など、“社会派”と形容される作品が実に多く、その演技を見れば、彼が相当の熱量を注いでいることは明らかだ。その流れをくむ15本目の出演作となる映画『正欲』は、横浜に暮らす検事の寺井(稲垣吾郎)を軸に、異なる性的指向を持つ5人の孤独な男女の人生が、ある事件をきっかけに交錯する物語。精力的に映画に出演し続ける磯村の、映画への熱い想いを聞いた。

役者の面白さ

——磯村さんのフィルモグラフィーはここ1〜2年、特に社会派の作品や、社会の中で揉まれる難役が多く、人間修行をしているようにも見えるのですが。

磯村勇斗(以下、磯村):そうですか?(笑)。 どうなんでしょうねえ。ただ、平凡な役や背負うものが少ない役よりも、重たいものを担ぎながら生きている人の方が魅力的に見えますし、挑戦しがいがあるかもしれないです。

——磯村さんにとって、役を演じることの醍醐味や面白さをお聞きしたいです。

磯村:いろんな人生を経験できることだと思います。それが結果的に自分の心を豊かにしたり、人生経験に繋がってきたりする。そこが役者の面白いところじゃないかなと思います。

——自分が演じる意味や、その作品に出る意義を考えますか?

磯村:そこは、深くは考えないですね。自分と何かを結びつけていないので。でも、自分の目の前にその役が来ているということは、自分にとっても世の中にとってもその映画が必要なものなのだろうな、とは思います。

——「重たいものを担ぎながら生きている人」は、日常生活においても魅力的に見えますか?

磯村:目にはつきますよね。「重たい」という表現が適切かはわからないですが、「この人の人生には何があるんだろう? もっと見たいな」と思わされます。

佐々木佳道を演じて

——今回の『正欲』で演じた佐々木佳道も、誰にも打ち明けることのできない性的指向を抱えて苦しんでいました。

磯村:非常に孤独な人物ですよね。社会から孤立しているけれども、なんとか頑張って仮面を被ってなじもうとしている。でも、一度は死という方向を向いてしまう。行動には移さないけれど、そう思っている人は今の世の中に多いと思うんです。自分もそうですが、人に言えないことや隠している秘密って、誰もが絶対に1つは持っていると思うので、佳道の気持ちには寄り添えるんじゃないかなと思いました。なにより、夏月(新垣結衣)の存在による佳道の変化がこの映画にとって大事な部分になってくるので、そこは大切に演じたいなと思いました。

——佳道と夏月が出会う前、それぞれ孤独に生きていた時の、どんよりした瞳が暗い沼のようでした。どのようにアプローチしたのでしょうか。

磯村:特に目をどんよりさせようとは思ってはいませんでしたが(笑)、そう見えたということは、どこかで日常を諦める覚悟を持って演じたことが、結果的に正解だったのかなと思います。もともと僕自身が、佳道の持っているものに、すごく共感できたんです。人に理解されない部分について、「何でわかんないんだろうな」と思った気持ちは、自分の中にもずっと残っています。そういうものを佳道を演じる時に大事にしたことで出た、(目の)曇りなのかもしれないですね。

——先ほど「寄り添う」という表現がありましたが、佳道を含めて、役を演じる時に磯村さんが大事にしていることをお聞きしたいです。

磯村:人を「演じる」ことは「生きる」ことだと思っています。どの役に対しても、役の気持ちに寄り添うことで、その役の人生を体感して経験するというところは、役を作っていく上で大事にしています。あとはもう、現場第一主義なので、現場で生まれる感情や相手との間に生まれるものを大切にするということを心がけています。

——役を「生きる」のは、本番前のリハーサルや、カメラが回っている本番の瞬間ですか? それとも撮影をしている期間を通してですか?

磯村:その作品と関わっている間中、ずっとですね。クランクインする前の準備期間から、僕はそういう感覚でいます。

——ご自身に何らかの影響はありませんか?

磯村:あるみたいです。自分ではあまりわからないんですけど、「なんかちょっと今日、変」みたいなことを言われることがあります。「怖い」とか。今回(『正欲』)はわりと穏やかに進められていたとは思います。少なくとも日常生活に影響を及ぼすことはなかったです(笑)。

——『正欲』で佳道という役を演じて、「良かったな」と思うことを教えてください。

磯村:この作品に参加して、そしてできあがったものを見て、改めて自分自身を認めてあげることの重要性を感じました。自分の持っている感覚、感受性、言葉、考え方みたいなものを、人に理解されなかったとしても、まずは自分が大切にしてあげたい。佳道は夏月との出会いに救われて人生が回転していくので、人との出会いも大事ですけど、まずは自分が自分の味方になってあげることができて、ようやく他人に会えるのかなと思いました。

——そうすることで、何か変わったことはありますか?

磯村:すごく人に会いたくなりましたね。今まで能動的に人に会いたいと思うことは少なかったんですけど、最近は「今日は人に会ってみるか」「誰かに連絡してみたいな」と思うようになってきています。

——それがこの映画のテーマでもある「多様性」の根幹かもしれないですね。人からどう思われるかはさておき、まずは自分だけでも自分を肯定する。佳道と夏月はそれができなかったので、出会うことができて本当によかったなと思いました。2人の会話にもありましたが、もしも相手がいなくなってしまうと、幸せな日々を知ってからの孤独はかなりつらいと想像できます。となると、最初から1人のほうが楽だったのでは? という考え方もあると思うのですが。

磯村:確かにその考え方もありますよね。でも、出会う前と出会った後とでは、1人でいたとしても何かが全く違う気がします。確実に言えるのは、見てきた景色や経験してきたものが違うので、感覚であったり考えにおいて、1つ成長した自分ではいるはずで。だから、出会う前に進もうと思った道と、出会った後に1人で進もうとする道は、確実に後者のほうが生きる術や希望、強さがある気がします。だから1人になったとしても、それは決して悲しいことでも暗いことでもないと、僕は思います。あと、もしも大切な人や存在がいなくなったとしても、一緒に過ごした思い出が記憶としてちゃんと残っていると思うんです。心の中に思い出や記憶があるのと、それがないのとでは確実に違う。そう考えると、物理的には1人だとしても、精神的には1人じゃない感覚なのかなと思います。

「日本の映画で世界と勝負していかなきゃいけない」

——磯村さんの仕事選びはチャレンジングです。磯村さんの出演する映画の多くは、「楽しそう!」と気軽に観られるものではないけれど、「観なければ」「観たい」と思わされます。そして、観れば必ず何かを持ち帰ることができる。でも、もっとライトな作品を選択していくキャリアもありえますよね。

磯村:そうですよね。でも、貪欲にやっていかなきゃなっていうハングリー精神でやっているので、メッセージ性の強い作品や自分の中でチャレンジとなるような役に関わっていきたいと思っています。

——気骨を感じます。そういう作品に出演することがやりがいになっているのでしょうか?

磯村:やりがいというか、「やらなきゃいけない」という使命感みたいなものはあるのかもしれないです。今回の『正欲』がまさにそうでした。マイノリティに関しても性的指向に関しても、本当にさまざまなんだなと改めて思いましたし、佳道の指向に関して「こういう形もあるんだな、ということはそれだけ隠している人も多いんだろうな」と勉強になりました。僕がこの作品に惹かれたのも、このテーマ性があったからです。

——『正欲』は、観た人の視野が広がり、社会の見え方が変わる映画だと思います。磯村さんが観客として、そういう体験をした映画はありますか?

磯村:しょっちゅうあります! 知らない世界にいざなってくれるのが映画でもあるし、時には自分と同じ感覚を持っている映画に出会って、「そうだよね、そう思うよね」と共感できます。映画を観て学ぶこともそうですし、毎回得るものは多いと思います。どんなにマイナーな映画でも何かしらは自分の中に残る気がするんですよね。B級、C級の映画でも、「あのキャラクターが魅力的だったなー」とか、「こんな物語、どうやって思いついたんだろう?」とか、1つはある気がしていて。その出会いを楽しみに映画を観続けているところはあります。

——ドラマ作品へのモチベーションは、映画とは違うのでしょうか? 宮藤官九郎さん脚本のドラマ『不適切にもほどがある!』(2024年1月〜/TBS)も楽しみです。

磯村:ドラマの視聴者の方は、その時間を楽しみたくて観ていると思うんです。もちろん泣きたくて、もあるかもしれないですが。そういった楽しい時間を「提供する」……という言い方はおかしいかもしれないですが、僕ら役者はパフォーマーとして、演者として、作品の力になりたい。ドラマにもバランスよく出られたらなと思っています。

——本作のタイトルの「欲」という言葉にかけまして。磯村さんが今欲しているものを教えてください。

磯村:今はお腹が空くことが嫌なので、「お腹が空かないようにする欲」「食べ続けたいという欲」になるのかな。

——ということは、たくさん食べている? 役のためですか?

磯村:そういう目的もあります。なんならお腹が空く状態が怖いので、空く前に食べるようにしています。食事はちゃんととっているので、間食におにぎりやパンをどんどん入れています。空いちゃいけないからずっと食べていたいし、食べることができて幸せです(笑)。

——仕事においての欲はありますか?

磯村:映画に出続けたいという欲はあります。特に『正欲』のように、テーマ性がしっかり定められているものには、どんな時代でも出ていきたいなと思います。

——カンヌ国際映画祭への参加などで、出演したい映画や、自分がこうありたいと思い描く俳優像に変化はありますか?

磯村:もちろん俳優として、海外の現場も見なければいけないと思っています。けれどもその反面、日本の映画で世界と勝負していかなきゃいけないなとすごく感じます。アジアでは韓国映画が世界で評価されつつあり、どんどん差が広がってしまっている。でも、日本にも“黒澤(明)時代”という黄金時代があったわけですから、ということはまたそういう時代を作れると思いますし、その理想は持っていたいです。

Photography Kosuke Matsuki
Styling Tom Kasai
Hair & Makeup Tomokatsu Sato

(衣装クレジット)
ジャケット¥583,000、シャツ¥214,500、パンツ¥187,000、シューズ¥148,500(すべて予定価格)/以上すべてプラダ(プラダ クライアントサービス 0120-45-1913)

映画『正欲』

■映画『正欲』
出演:稲垣吾郎 新垣結衣 磯村勇斗 佐藤寛太 東野絢香
監督・編集:岸善幸 
原作:朝井リョウ『正欲』(新潮文庫刊) 
脚本:港岳彦 
音楽:岩代太郎
主題歌:Vaundy『呼吸のように』(SDR)
撮影:夏海光造 
照明:高坂俊秀  
製作:murmur 
制作プロダクション:テレビマンユニオン 
配給:ビターズ・エンド
© 2021朝井リョウ/新潮社  ©2023「正欲」製作委員会2023/日本/カラー/DCP/5.1ch/ヴィスタ/134分/映倫G
https://bitters.co.jp/seiyoku/#modal

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チュートリアル徳井義実が短編映画を制作 監督から出演まで“1人5役”をこなすクリエイティブ秘話 https://tokion.jp/2023/10/19/yoshimi-tokui-interview/ Thu, 19 Oct 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=211861 2024年の上映に向けて鋭意編集作業中の徳井にインタビュー。

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徳井義実

チュートリアルの徳井義実が、「別府短編映画制作プロジェクト」第5弾に、短編映画『喝采は聞こえない』で参加した。監督、脚本、撮影、編集、出演の1人5役のフル稼働。2024年の上映に向けて鋭意編集作業中の徳井に時間をもらい、作品や活動、仕事への向き合い方について聞いた。

――『喝采は聞こえない』を監督することになった経緯から教えてください。

徳井義実(以下、徳井):15〜16年前に「YOSHIMOTO DIRECTOR’S 100 〜100人が映画撮りました〜」で、『nijiko』という短編を監督したんです。「別府短編映画制作プロジェクト」の知り合いのスタッフが、それをすごく好きだったみたいで、声をかけてくれました。YOUTUBE「徳井Video」をやり始めてちょっとたった頃で、動画を作るのが好きやったから、映画というよりは動画を撮るテンションでよかったら、という感じでしたね。いつか動画か小説か何かにしたいなと思っていたお話が僕の頭にあったので、それを形にできるかなとも思って。

――「劇団で伸び悩んでいる女優が、人生のターニングポイントを迎える」ストーリーとのことですが、どのように思いついたんですか?

徳井:2年くらい前に家の近所を普通に歩いてて、ふとお葬式を見たか、お葬式のことを思ったか、したんですよ。その時に、「死んだ人ってお葬式の主役なんやな。圧倒的な」と思って。参列者が観客って考えると、なんとなくストーリーが思い浮かんだんです。

――監督、脚本、撮影、編集、出演をされたそうですが、どの作業が一番楽しかったですか?

徳井:楽しいのはやっぱり編集……でも撮影も楽しかったですね。大人の文化祭みたいで。チームで1つのものを作るというのはすごく楽しい。編集も、撮れたものを持って帰って、いい感じに並べるとか、色味をいじるとか、音を付けるとか、そういうのもおもしろいですね。

――徳井さんは1人でコツコツ作業をするのが好きなタイプだと思っていたので、チームで動く映画の現場が楽しいというのはちょっと意外でした。

徳井:映画はさすがに1人じゃできないんで、必要に駆られてやってるだけで。基本的には、大人数ででっかいものを作っていこうとはあんまり思ってないかもしれないです。30代とか40代前半ぐらいまでは、いろんな人に思いを伝えて動いてもらったり、いろんな人の力を借りたりしないといけないなって思ってましたね。そもそもがそんなに社交性がない人間なんで、20代の頃とかほんまに全部1人でやってたから、それではいかんなと。東京に出てきて、お仕事の規模とかも大きくなっていくにつれて、やっぱ人を巻き込んでやらなあかんなっていう意識を持つのが40代前半までで。番組にしても、スタッフさんとコミュニケーションを取るとか、共同作業をしているという意識をちゃんと持つというか。もうそれは散々やったから、こっから先の人生は閉ざしていこうという心境です(笑)。無理して広げず、1人でやったほうがいいと思ったら1人でやる。映画みたいに、みんなの力が必要なものをやることになったら、みんなと作る。

――メディアの違いはありますよね。YOUTUBEは1人でも作れるけれど、テレビ番組は1人では作れない。徳井さんの中で今、テレビはどういう位置づけにありますか?

徳井:うーん、テレビを作る人達に自分が必要とされているかどうかっていうところで、以前は必要とされなあかんし、テレビにも出ていかなあかんっていう気持ちでやってましたけど、今は「必要とされるのであれば、全力でやります」って感じですね。もうちょっと自分の仕事にわがままになっていいのかなというか。テレビって誰かのためにやってる要素がかなり多くて。僕なんかは特に、「番組を成立させよう」とか「スタッフさんの意図をくもう」とか、そういう意識がすごく強かったので。今は、もうちょっと自分のやりたいようにやらしてもらおうかなっていうところですね。

――「場の空気を意識する」というところで、映画監督として現場を動かす時に、どんなことを意識しましたか?

徳井:現場がせかせかしないように、嫌な感じにならないように。みんなが楽しくできるようにってことを、一番に考えてますね。あまりにも疲れてる人がいたら休憩取ったらいいし。とにかく、エンタメを作ってるんやから、みんなが楽しいほうが絶対にいい。終わってから、1人残らず「楽しかったね」って言えたほうがいいと思うんで。それは目指してやってます。

――チームに自分の考えを伝えるのって大変ですよね?

徳井:めちゃくちゃ難しいですよね。今回の映画でもそうですけど、それ以前に芸人としてのライヴとか番組内の企画、コント番組のコントとかで僕が考えた台本をやりましょうという時も、「こんな伝わらんか!?」っていうことがめちゃくちゃありました。人には100言っても10ぐらいしか伝わらへんっていうのを大前提にずっとやってますね。せやから伝えたあとも注意して見ているとか、それをもっと伝わるようにするためにはどうしたらいいのかっていうのも考えながらやってます。もうちょっと若い時は、「伝わらんでも俺がわかってるから、最後は俺が引き取っていつか完成すればいいや」みたいなところもあったんですけど、それはちょっと無責任やなって最近思ってきて。人に伝える作業から逃げてはいけないなって思うようになってます。

制作者としての新たな自分。「発信したいものを発信する」

――YOUTUBE「徳井Video」は監督、撮影、出演、編集と、すべて自分1人でやっているそうですが、その自分にしっくりくる肩書はありますか?

徳井:えー? 何やろう? 

――YOUTUBER?

徳井:YOUTUBERという言い方もよくわかんないんすけどね(笑)。なんなんやろなあ。制作者とか?

――しっくりきました。他の人に例えるのはあまり良くないかもしれないけれど、徳井さんのYOUTUBEを見ていて、ちょっと板尾創路さんを思い出しました。何もせずに黙ってカメラの前にいられる自信というか、肝の座り方に(笑)。

徳井:(笑)。別に笑いを取りに行こうとかしてないので。芸人がやってるYOUTUBEっていうことでもないような気がするし、僕も別に芸人としてではなく、1人のおっさんとしてやってるんで。ただ、構成やテンポ感はある程度考えてますね。映像に音を付ける作業がすごく好きなので、わりと手を掛けてます。

――自分が作った映像に対する、世間の反応を気にされますか?

徳井:YOUTUBEのコメントは全部見ます。もちろん批判的な反応もありますけど、全然気にならないですね(笑)。もしも再生回数を稼ごうとか、世間のニーズに合わせていく作業をしていたら、批判的な言葉が来たら「あ、これ違うんや」とショックを受けると思うんです。せやけど、僕は自分が発信したいものを発信しているだけなので、批判的な反応があったとしても「あ、そうですか。とはいえ別に僕変えません」なので(笑)。反応は気になりますけどね。「楽しんでくれてんねや」とか、「そんなふうに受けとるんや」とか。

――自分が発信したいものを発信して批判された場合、自分が否定されている気持ちになってしまう人もいると思います。「自分、愛されてない!」とショックを受けてしまうように。

徳井:そもそも愛されてると思ってないし、「愛されてないと嫌だ!」とか全くないんですよね。自分がその時に出したいものを出してるだけやから、「違う」「おもんない」と言われても、変えようとは全く思わないんで。すごくシンプルです。反応は反応。「こういう反応なんや」というだけ。

――逆に、再生回数が良くて、「これが受けるんだ!」と思っても、そっちに寄せない?

徳井:あんまりしないですかね。「これはわりと人気あるんやな」と思ったら、シリーズじゃないけどちょこちょこやってみるとかはありますけど、それで「味しめた感」が出るのも嫌やし(笑)。人気企画みたいなものに頼ってしまうと、瞬間風速は上がるけど持続しないチャンネルになってしまうかもしれないですし。僕は、粛々と出していくっていうスタイルです。

――YOUTUBEを始めてから、ファン層に変化はありますか?

徳井:男の人がすごく増えました。「YOUTUBE見てます」って言ってくれたり、ポップアップストアに来てくれたりする人も男の人がめちゃくちゃ多いですね。

――徳井さんはなんというか、フォームが崩れないですね(笑)。

徳井:そうですねえ。あんまり人に褒められても嬉しくもないし、否定されても悲しくもないんで。もう全然。なんでこんなやつになってしまったのか(笑)。

――どういう時にテンションが上がりますか?

徳井:「なんかめちゃくちゃいいのできた」とか、「今日よかった」とか、「あの時あんなんよう出たな」とか、自分で自分を褒める時しか嬉しくないですね。

「芸人」という立場における意識の変化

――今、徳井さんが「芸人」をどういうものと考えているのかが気になります。

徳井:そうですねえ……。そもそも芸人なんてものは、座敷に呼ばれて「とりあえず何かやれ」と言われてやって、なんとなく笑ってくれたらええかぐらいのやつらなので。芸人はこうじゃないといけないとか、芸人たるものみたいなとか、そういうふうに考えるのはなんか違うなと思うんで。なんとなく誰かを楽しませていればいいのかなっていう感じですね。

――徳井さん自身、「芸人」という意識はどれくらいあるんですか?

徳井:芸人として、というところでいうと、ネタをやってる時だけでいいのかなって思ってきてます。そもそもバラエティ番組に出ている時の自分が芸人なのかと言われたら、ちょっとわからない。僕は、芸人がテレビに出ている時は、テレビタレントなんじゃないかなと思うんです。それでも個人個人で違いはあって。自分がしゃべる番がきたらとりあえず笑いに向かっていくというか、笑いを目的としたことしか言わない人もいる。でも僕は、さっきも言ったようにわりと現場の空気を読んでしまうんで、どっちかっていうと、テレビに出てる自分はわりとテレビタレントやったのかなっていう気もするんです。今は、お笑い芸人としての欲求を満たすのは、ネタをやってる時だけでいいんやないかなっていう心境ですかね。

――2024年には監督作品『喝采は聞こえない』が公開されます。どんな方に見ていただきたい、どんなことを感じてほしいというのはありますか?

徳井:最初に話を作り出した頃の意図とは変わってしまったというか。人生って、切り替えたり諦めたりしないといけない時があると思うんです。でも、今までやってきたことを諦めるのも、切り替えて新しい方向に進むのも、今までのことが無駄だったのかなとか考えてしまうと結構つらいじゃないですか。そこで、切り替えを楽しむのも、不安はあるやろうけど希望を持って新しい生活に飛び込むのもいいんじゃないかなと、作っていくうちに、そういうところに着地したんですよね。誰しも1回ぐらいそういう分岐点みたいなのが人生で来ると思うんで、そんな時にふと思い出してくれるような映画になればいいですね。

――今の徳井さんだからそうなったのかなと感じました。では最後に、これからやりたいことや、計画していることを教えてください。

徳井:動画はこれからも撮りたいですね。今回の映画を撮る前から、短編動画みたいなものは撮りたいなとは思っていたので。YOUTUBEチャンネルも、今はキャンプの動画、ご飯を作る動画が軸になっているんですけど、もう1個ぐらい何か違うテイストの軸がほしいなと考え中です。それがドラマっぽいものなのか、何なのかはわからないですけど。あと、「徳井video」のキャンプイベントを6月にやって、10月(※10月14、15日に開催)に第2回をやるんですけど、それを移動遊園地みたいにしていきたいなと思ってるんですよね。高校の時の夢が、遊園地のオーナーだったんです。

――そうなんですか!

徳井:高1の時に、初めてまともに付き合った女の子とクリスマスに遊園地にデートに行って。最寄りのモノレール駅で、「帰ろっか」言うてたら、遊園地のイルミネーションがキラキラしてて、その子がうっとりとした表情で遊園地を見てたんですよ。そん時に高1の僕は「よし遊園地を作ろう」と思って、ずっとそういう思いがあったけど、もちろん遊園地なんて作れへんし。電鉄会社に入るのもオリエンタルランドに入るのも無理やなと。でも、キャンプのイベントやったら、移動サーカスみたいな空気感の遊園地ができるんやないか、あの頃に思い描いた夢がかなうかもしれないと思って、6月のイベントに大道芸人さんとか呼んでみたんです。静かなキャンプっていうよりは、夜も遅くまで騒げて、お酒飲んでワイワイやれるキャンプイベントです。それを大きくしていきたい。スポンサーさんもたくさん募って、そのお金を演出費に全部ぶち込んで、移動遊園地のメリーゴーランドとかをレンタルして置きたいなあと。花火も上げたいですね。

Photography Miyu Terasawa
Edit Nana Takeuchi

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あのちゃんが語る「仕事で大切にしていること」——歌、演技、バラエティ、表現者としての魅力に迫る https://tokion.jp/2023/10/11/interview-ano/ Wed, 11 Oct 2023 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=211491 さまざまなフィールドに活躍の場を広げているあのちゃんに映画『鯨の骨』に対する思いや歌と演技の共通点などを聞いた。

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あの

あの
9月4日生まれ。2020年9月より「ano」名義でのソロ音楽活動を開始。2022年4月 TOY’S FACTORYよりメジャーデビュー。2023年にリリースした「ちゅ、多様性。」や「スマイルあげない」が大ヒット。アーティスト活動に留まらずタレント、俳優、モデルとマルチに活躍中。主な映画出演作は『咲-Saki-』(2017)、『血まみれスケバンチェーンソーRED』(2019)、『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』(2019)、『サイレント・トーキョー』(2020)などがある。12月13日にはano1stアルバム『猫猫吐吐』をリリースする。
https://ano-official.com
Instagram:@a_n_o2mass
https://twitter.com/aNo2mass

“あのちゃん”をとりまく環境が激変している。軸にしている音楽活動に加えて、地上波番組への出演が増え、2023年4月からはラジオやテレビで冠番組が始まった。そんな中、彼女が落合モトキとW主演を務める映画『鯨の骨』が10月13日から公開される。主人公の男・間宮(落合モトキ)がバーチャルの世界で出会い、のめり込んでいく少女・明日香役を、持ち前のつかみどころのなさを存分に活かし、魅力的に体現する。さまざまなフィールドで表現の幅を広げるあのちゃんに、今作に対する思いや、書き下ろした主題歌「鯨の骨」について、そして歌と演技の共通点について聞いた。

※記事内には映画のストーリーに関する記述が含まれます。

「いろんなところで自分らしくいられた」

——いきなりですが、あのさん自身、ここ1年での知名度の高まりや活躍の幅の広がりを実感することはありますか?

あの:「時間がない」っていう意味で、すごく実感してしまっている感じです。この映画『鯨の骨』も、撮影が2022年の2月頃で、その前に稽古も1週間ほどあって。あのタイミングでこの映画を経験できてよかったです。

——現在の状況になったターニングポイントはなんだったと思いますか? お笑い&バラエティ好きには、『ラヴィット!』(2021年10月13日OA)と『水曜日のダウンタウン』(同年同月20日OA)がコラボした企画のインパクトが非常に大きかったのかなと。

あの:あれも、大きなきっかけではあったかなと思います。でも、あれだけだったら、多分今みたいにはなってなかったのかな。前にやっていた『あのちゃんねる』(テレビ朝日)や、4月から始まった『あののオールナイトニッポン0』が始まったこともきっかけだったかなと思ったり。あと、毎回バラエティ番組に出るたびに、ネットニュースにしてもらって。その前から山里(亮太/南海キャンディーズ)さんとずっとバラエティ番組(『新shock感』)をやっていたんですけど、そのことがまるでなかったかのような扱いになってしまって、「山ちゃんごめん」って感じです(笑)。 でもぼくがやっていることは何も変わらないから、ぼくも不思議で。何がなんだかって感じです。ただ、いろんなところで自分らしくいられたことが良かったのかなっていう感じはします。

——「いろんなところで自分らしくいられたこと」は確かに大きい気がします。他に、いろいろな仕事をしていく上で、大切にしていることはありますか?

あの:んー、なんだろうな……「嘘をつかない」とか。特に自分の感情に嘘はつかないようにしてます。なんか、嘘をついてやってる仕事って自分もしんどいし、ファンの人にもわかるものだと思うので。そこは絶対にぶれずにやれてるかなと思います。

——あのさんにとって、ついてはいけない嘘、とはどんなことでしょうか。

あの:例えばこの『鯨の骨』も、面白くないなと思うんだったら、やっちゃ駄目だと思うんですよね。どんなことでも、自分がやりたいなって思わないとやっちゃ駄目だなと思ってて。だから、これは自分がやるべきじゃないなって思ったものは、どれだけいい条件を出されたとしても断っています。自分のやる意義とか、自分の意思がないときついなって。そこだけはこの先、何があっても変えちゃいけないかなって思ってます。でも、経験も大事だと思ってるんで、どっちかわからないから1回やってみて、楽しめなかったらもう2度とやらない、という時もたまにあります。

『鯨の骨』の演技を通して感じたこと

——『鯨の骨』に出演することになった経緯を教えてください。監督と面識があったのでしょうか?

あの:特に面識はなくて、お話をいただいて、まずは大江さん(大江孝充監督)と会ってみようかということになって。脚本を読んでみたら、1回だけじゃちょっとわからなくて、何度も読みました。後半にいくにつれて、ミステリーのように考察したくなるっていうか、「何なんだろう?」っていう疑問が湧いてきた時点で、「あ、面白いな」って思って。大江さんが仕掛けるものにすごく魅力を感じましたし、それまでずっと不思議な空間だったのに、最後でいきなり「ほい!」と突き抜ける感じも面白かったです。

——明日香という役柄についてはどう思いましたか? あまりにもあのさんにぴったりだったので、当て書きかと思ったらそうではないと聞いて驚きました。

あの:明日香はそもそも「ミミ」(=主人公の間宮がはまっていく、拡張現実アプリ『王様の耳はロバの耳』の略称)の中の存在なので、間宮に会う時は、フィルターを1枚かける感覚がありました。そこが、“堀内”(あのが演じたもう1人の人物)との大きな違いで。でも、感情は偽物ではない、みたいな。結構ぼくもキャラクターチックに見られがちというか、ぼくは1人しかいないんだけど、人の数だけあのちゃん像があるなって思ってて。だから最初脚本を読んだ時、明日香の気持ちがあんまり遠く感じなくて、「なんかわかるな」って。そうやって「ミミ」の中に入っていって、自分の心の奥底をちょっと隠しちゃうところとかは、共感できるなと思いました。間宮への最初の手紙に「ざまあ」って書く部分だったり、周りを「翻弄する」じゃないけど、ぼくも結構しがちだったりするし。説明嫌いというか、誤解されてもいいから、余白をみんなに考えさせてしまう。それでよく揉めたりするんですけど(笑)。そういう性質も「明日香めっちゃ似てるかも」って思いました。

——あのさんから見ても、親和性を感じていたのですね。「翻弄する」というところでは、初対面で間宮の部屋に行った明日香が、オーバードーズであっさり死んで、そこから間宮が明日香に翻弄され続ける。あの死体姿が素晴らしかったです。カメラの映り方など、細かく調整したのでしょうか?

あの:ありがとうございます。あれはわりとさっと倒れただけだったと思います。死体役にけっこう慣れているというか、死に慣れているというか。あそこは自分が明日香になりきったら、自然と死体になれました。すごくうまくいったと思います。

——「役を演じること」によって、表現者として、得られたものはありますか?

あの:音楽も、テレビも全部そうですけど、「いつも通りで」「あのちゃんらしく」と言ってもらえて、自分らしくやれてるんですけど、演技では別人格になれるし、ならなきゃいけない。そこでまず「あのちゃん」を消さなきゃいけない部分もありました。今回の稽古でも、挙動、目線、喋り方、声の発声、すべてを変えるところから始まって。今回の映画で、自分ではない人になれる自分もいるんだなっていう部分で、成長できたのかなって思います。

「エンドロールで自分の曲が流れてきて、すごく感動した」

——今回、主題歌「鯨の骨」の作詞作曲も手掛けました。映画の主題歌は初とのことですが、どういう経緯だったのでしょうか?

あの:最初はやんわりと、「曲も作れたらいいよね」みたいなことを監督が言ってくださったんですけど、撮影に入ってちょっとしてから、正式にやることになって。監督からは、「撮影中に曲を作ってほしい」って言われたんですけど、脚本を見た時にはもう、サウンドや曲のイメージが浮かんでて。歌詞は、撮影しながら、明日香の気持ちや間宮の気持ち、明日香の信者の気持ち、自分の気持ち、いろんなものを考えながら作りました。あとエンドロールで流れるっていうことも意識しました。

——完成した作品のエンドロールで自分の曲が流れた時、どういう気持ちになりましたか?

あの:嬉しかったです。エンドロール前の喫茶店のシーンがすごく印象的だったんです。席に座っていた間宮達がいなくなって、女の子2人組が座ることで、また新しく進んでいくものを感じて。映画を通して間宮はずっと大変そうで、「間宮おつかれ(笑)」って感じだったけど、でもそれって世界を大きく見たら本当に一瞬のちっぽけなことなのかな、世界っていうのは時間が進んでいくんだよなって。すごくのめり込んで見てたから、その一瞬でハッとして。すごくいい終わり方だなと思いました。脚本を最初に読んだ時よりもはるかにいい映画になっていて、そこで自分の曲が流れてきたので、すごく感動しましたね。撮影期間中、すごくしんどかったって言ったらあれですけど、撮影時期にドンかぶりでいろんなことがあって。撮影も本当にいろんな感情でやらせてもらってたんで、思い入れがすごくあります。この作品に関われて、曲まで書かせていただいて、本当に光栄でした。

——今後、挑戦してみたいことはありますか?

あの:演技にはもともと興味があったんですけど、『鯨の骨』が楽しかったので、もっといろんな役をやってみたいなと、より思うようになりました。原作がある作品に出たことはあったけど、今回みたいに脚本しかない作品で、しかも2役を表現するのは初めてで。すごく難しかったけど、もっといろんな役に挑戦してみたいなって思いました。あと、声のお芝居もまだやってないんで、やってみたいなって思います。結構何でもやってみたい。嫌だったら、やめればいいし。

——(笑)。今回の明日香のしゃべり方を、パブリックイメージのあのさんしか知らない人が見たら本当に驚くでしょうし、「あのちゃん普通にしゃべれるじゃん」というリアクションも多いと思います。でも、あのさんにとっての“普通”はいつものしゃべり方なわけで。今回は、明日香という役を表現するために、あのしゃべり方になったわけですよね。

あの:明日香と堀内でもしゃべり方が違うので、それぞれ「こうしてほしい」という大江さんの要望があって、監督の目の前で発声の仕方をかなり練習しました。ぼくにとっては、今しゃべってる声が自然の発声で、明日香には明日香の声があって、堀内には堀内の声がある。そこに、“普通”はなくて。だから、「明日香の声って何だろう?」ってなっちゃって、自分が「こうかな?」と思う発声の仕方をしても、監督に「いや、違う。まだあのちゃん」みたいなことを言われたり。あと、「相手に声を打ち当てるようにしゃべってください」と言われて、そこの練習もかなり苦労しました。ぼくはもともと(対人)コミュニケーションがあんま得意じゃないし、声が口元で収まっちゃうので、そこが今回の役とぼくの大きな差でした。

——今回のように役を演じることによって、アーティストとしての表現にプラスの影響があると思いますか?

あの:表現者としては、演技も歌も、言葉への感情ののせ方は似てるなと思ってて。大江監督から「ここはこういう感じで言ってほしい。直後はもっとこうやってやほしい」っていう細かい指定があって。歌も同じで、「ここの部分はこう歌いたい」というものが自分の中であるんです。今回指摘されて培ったものが、音楽活動にも良い影響として出たらいいなと思ってます。

Photography Takahiro Otsuji
Styling Momomi Kanda
Hair & Makeup Yuki Deguchi

■『鯨の骨』
濱口竜介監督と共同執筆した『ドライブ・マイ・カー』が米アカデミー賞脚色賞にノミネートされ、話題沸騰の配信ドラマ『ガンニバル』の脚本も手がけた大江崇允。いま世界が注目する映画作家が、リアルとバーチャルが混濁する現代の寄る辺なさを、ミステリアスな迷宮ファンタジーに昇華させた最新監督作。
10月13日公開
出演:落合モトキ あの
横田真悠 大西礼芳
内村遥 松澤匠 猪股俊明 / 宇野祥平
監督:大江崇允 
脚本:菊池開人  大江崇允  
音楽:渡邊琢磨
主題歌:ano「鯨の骨」
制作プロダクション:C&I エンタテインメント 
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
https://www.culture-pub.jp/kujiranohone/

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乃木坂46の久保史緒里が語る「俳優としての自覚の芽生え」 https://tokion.jp/2023/09/06/interview-shiori-kubo/ Wed, 06 Sep 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=206787 映画、舞台と俳優として活動の幅を広げている乃木坂46の久保史緒里が語る俳優業への想い。

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久保史緒里

久保史緒里
2016年、「乃木坂46」3期生オーディションに合格しデビュー。32ndシングル「人は夢を二度見る」ではWセンターに抜擢。ファッション誌「Seventeen」専属モデル、『乃木坂46のオールナイトニッポン』のメインパーソナリティー、2023年度NHK大河ドラマ『どうする家康』に五徳役で出演。初めて現役の乃木坂46メンバーとして大河ドラマに単独出演するなど、グループ内外で活躍し注目を集めている。個人での主な出演作に、【舞台】『桜文』(2022)、『夜は短し歩けよ乙女』(2021)、【映画】『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』『リバー、流れないでよ』(2023)、『左様なら今晩は』(2022)、【ドラマ】『落日』(WOWOW・2023)、『どうする家康』(NHK・2023)、『サマータイムマシン・ハズ・ゴーン「乙女、凛と。」』(CX・2021)など。劇団☆新感線には本作が初参加となる。
Instagram:@kubo.shiori.official
https://www.nogizaka46.com/s/n46/artist/36753?

人気アイドルグループ「乃木坂46」。そのメンバーの久保史緒里が、俳優として活動の場を広げている。現役のメンバーとして初となるNHK大河ドラマの単独出演となった『どうする家康』や映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』、『リバー、流れないでよ』、9月放送予定のドラマ『落日』に続き、劇団☆新感線への初参加が決定。9月に開幕する『天號星(てんごうせい)』で彼女が演じる役は、古田新太が演じる「藤壺屋半兵衛」の娘で、母親譲りの占いの才能を持つ、歌って踊って神を降ろしてお告げを伝える、踊り巫女の「神降ろしのみさき」だ。現在、稽古に奮闘中の彼女の、俳優業への意識の変化を聞いた。

——『天號星』の製作発表で、「殻を破りたい」とおっしゃっていましたね。そこにどんな思いが込められていたのかを、お聞きしたいと思っていました。

久保史緒里(以下、久保):はい。ありがたいことに、今までいろいろな舞台で経験を積ませていただいたんですけど、お芝居に対して凝り固まった考え方が、自分の中のどこかにあって。そういうものを全部とっぱらって、本当にまっさらな気持ちでこの舞台に挑みたいなという思いで、「殻を破りたい」と言いました。

——何がどう凝り固まっているのでしょうか?

久保:例えば、私自身、すごく心配性で、稽古が始まる前からものすごく準備をして、自分の中で「こういうお芝居をしよう」と決めてしまうところがあるんです。そうなると、想定外のことが起きた時に何も対応ができなくなってしまうので、今回は新しい挑戦として、お芝居の考え方や演じる道筋みたいなものを、共演者のみなさんとお稽古をしながら、その空気感の中で作り上げていくことを大事にしたいなと思っています。

——『天號星』の稽古が始まって2週間(※取材時)とのことですが、手応えはいかがですか?

久保:今回のみさきという役は、すごく考えて行動する人間ではあるけれども、考えるよりも体が先に動くシーンが結構あります。そういう時に、思い切りのよさみたいなものが必要になってくるので、そこが頑張りどころだなと感じています。私の場合、そういった思い切りが必要な場面で、思い切る力が足りないなという自覚もあるので。

——みさきというキャラクターのどんなところに魅力を感じますか?

久保:すごく頭のいい人で、繊細さも持ち合わせているところです。『天號星』はいわゆる裏稼業の話で、見え方としては“大人のお話”が進んでいく中で、純度の高い人間がこの舞台にいるとしたら、それはこのみさきという人物だと思うんです。なので、すごく大人びた人間ではありつつ、純度や子供らしさというものも持ち合わせた人間でいたいなと思いますし、そこがとても魅力的です。

——みさきは劇中で歌って踊るそうですが、久保さんは『夜は短し歩けよ乙女』や乃木坂46版ミュージカル『美少女戦士セーラームーン2019』といった舞台作品でも歌唱経験がありますね。

久保:今回の舞台が決まった時点ではまだどんな歌を歌うのかはわからなかったんですけど、今まで新感線の作品をいちファンとして見てきて、ロック調の激しい歌が多いという印象だったので、そういう歌い方の準備だけはしておきました。ハードな曲調に合う歌い方のイメージを固めていく作業といいますか。振り付けはこれからなんですけど、今まで自分がやってきたジャンルとは全然違う音楽ですし、着物で踊るということもあって、全然違う見え方になるのだろうな、と思います。

——「劇団☆新感線」は殺陣が大きな魅力になっています。久保さんの殺陣のシーンも期待していいですか?

久保:私は……ずっと占っています(笑)。殺陣が見どころのこの舞台で、私が殺陣をせずに歌うことの意味はなんだろう? と考えるにつれて、プレッシャーが大きくなっていきます。

「求められる人間でありたい」

——久保さんは乃木坂46に憧れてメンバーとなり、その後、歌、芝居、ラジオパーソナリティーと個人仕事でもその才能を開花させています。お芝居に関しては、1つ1つ、大きな仕事に丁寧に向き合っているように見えますが、久保さんにとっての演じることの楽しさと難しさをお聞きしたいです。

久保:楽しさは、毎回毎回、自分が今まで体験したことのない役柄になれることです。台詞を言う時のニュアンスも役によって違うので新鮮ですし。難しさは楽しさと表裏一体で、やったことがない世界観の役だと、役としてその場に簡単にはなじめないところかなと思います。今もその真っ最中です。

——グループを離れて俳優の仕事をする上で、意識の変化はありますか?

久保:普段はグループとしてメンバーが一緒にいる環境でいろんな仕事をしてるので、新しい現場に1人で乗り込む仕事は、ものすごくエネルギーを使います。このお仕事を始めて7年目ですが、全然まだそれに慣れなくて、毎回新鮮に緊張します。それでも現場の方とお話ししていく中で、「1人の俳優として接する」と言っていただく機会も増えてきて、それがすごく自分の中で大切な言葉になっています。

自分としては、アイドルが俳優業界というか、舞台やドラマに出演することに対してちょっとした申し訳なさみたいなものをずっと抱えていたんですけど、そう言っていただいてから、私もその考えを持ってないとダメだな、作品に対して同じ気持ちで挑まないとダメだなという気持ちに年々なっていっています。

——とはいえ、アイドルは専業の俳優よりも忙しいと思うんです。作品の撮影が3ヵ月なかったとしても、グループの活動があるから休みが取りにくいし、体も酷使されますし。

久保:例えば今だったら、ライヴツアーというアイドルとしての活動をやっているんですけど、それは舞台の皆さんにとっては全く関係のないことなんですよね。別物なので、そこは絶対に混ぜちゃいけないなと思っています。逆もしかりで、私が今舞台の稽古をやっていることは、メンバーにとっては関係のないことなんです。だから、自分の中でちゃんと線を引いて分けて考えたいですし、そこに気をつかわせてしまわないように、とは思っています。自分のコンディション不良でどちらかに迷惑をかけることは絶対にしたくないですし。でも、近くにいるスタッフさんだったり、マネージャーさんだったりがすごく支えてくださるので、そこはちゃんと甘えながらやっています。なにより、どちらも楽しいことなので、全然きついとは思わないんですよね。

——2022年2月からは、『乃木坂46のオールナイトニッポン』のメインパーソナリティーも務めています。久保さんにとってのラジオはどういう場所ですか?

久保:1年半ぐらいやってるんですけど、私にとってすごく大事な場所です。それこそ稽古期間とかって、自分のできなさにすごく落ち込むんですよ。でもさっき言ったように、舞台の方にとって私の他の仕事が関係ないのと同じように、ラジオの前で聞いてくださっているリスナーさんにとって、私が落ち込んでいることっていうのも全然関係のないことなんですよね。1週間に1回は絶対に、どんなに落ち込んでても、ラジオでは元気でいなきゃいけないっていうのが逆にありがたくて(笑)。2時間喋ってると、リスナーの皆さんからのメールやスタッフさんと喋っている時間で、だんだん落ち込んでることも忘れちゃうんですよね。落ち込んだことがあったら、その気持ちは持ち込まずに、トークとしてラジオで喋っちゃえばいいし、という環境がすごくありがたくて。私は楽しいので、できるだけ長く続けていたいですね。

——ということは、この稽古の進捗状況もラジオで聞けるということですね。

久保:そうですね。古田新太さんのことを「おとっつぁんと呼べるようになりました」とか、そういうのはちょいちょい話していきたいなと思っています(笑)。

——では最後の質問です。今後どんな人になっていきたいのか、どんな仕事をしていたいのかといった、未来予想図は描いていますか?

久保:未来予想図……、んー、なんだろうな。あ、でも、自分がどなたかから求められる存在であれたら幸せだなと思います。それがもし仮に、お芝居の世界だったらすごく幸せだなって思いますけど、そこにとらわれずに、何かを求められる人間であれたら、それがすごく幸せな未来かもしれないです。

Photography Mikako Kozai(L MANAGEMENT)
Stylist Maiko Ito
Hair & Makeup Risa Uto

■2023年劇団☆新感線43周年興行・秋公演 いのうえ歌舞伎『天號星』
作:中島かずき 
演出:いのうえひでのり
出演:古田新太 早乙女太一 早乙女友貴 /
久保史緒里 高田聖子 粟根まこと 山本千尋 / 池田成志
右近健一 河野まさと 逆木圭一郎 村木よし子 インディ高橋 山本カナコ 礒野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ 保坂エマ 村木 仁 川原正嗣 武田浩二
藤家 剛 川島弘之 菊地雄人 あきつ来野良 藤田修平 紀國谷亮輔 寺田遥平 伊藤天馬 米花剛史 武市悠資 山崎朱菜 本田桜子 古見時夢
企画・製作:ヴィレッヂ 劇団☆新感線
http://www.vi-shinkansen.co.jp/tengohsei/

【東京公演】 THEATER MILANO-Za オープニングシリーズ
日程:2023年9月14日〜10月21日
会場:THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6 階) 
全40回公演

【大阪公演】
日程:2023年11月1〜20日 
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
全22回公演

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「映画には社会を変える力があると信じている」 新世代の香港映画『星くずの片隅で』のラム・サム監督インタビュー https://tokion.jp/2023/07/14/interview-lam-sum/ Fri, 14 Jul 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=197700 映画『星くずの片隅で』のラム・サム監督インタビュー。映画に込めた想いを聞く。

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『星くずの片隅で』メインビジュアル

活気あふれる国際都市・香港は、1997年の中国返還により徐々に変貌し、一国二制度が形骸化。かつての自由な空気はなくなり、2019年から大規模な民主化デモが発生した。その様子を描いた『少年たちの時代革命』(2020年)をレックス・レン(Rex REN)と共同で監督したラム・サム(LAM Sum)監督の、単独監督デビュー作『星くずの片隅で』が7月14日から順次公開される。

コロナ禍で静まり返った2020年の香港を舞台に、清掃会社「ピーターパンクリーニング」を経営する不器用な中年男のザク(ルイス・チョン)と、若きシングルマザーのキャンディ(アンジェラ・ユン)を主軸に、都会の片隅でひたむきに生きる人々の姿を温かく描く。

2022年より妻子とともにイギリス・ロンドンに暮らしているラム・サム監督に、オンラインでインタビューを試みた。

ラム・サム(林森 LAM Sum)
1985 年生まれ。香港演芸学院電影電視学院演出学科卒業。短編映画やドキュメンタリー映画の制作のほか、映画制作の講師としても活動。代表作に短編『oasis』(2012)、共同監督作『少年たちの時代革命』(2021年/日本公開2022年)など。本作が初の単独長編監督作。2022 年よりイギリス・ロンドンを 拠点に活動する。

北野武や是枝裕和からの影響

——映画監督を目指したきっかけから教えてください。

ラム・サム:小さい頃はサッカー選手になりたいと思っていて、映画監督になろうなんてことは1ミリも考えていませんでした。ただ、香港ではスポーツで生計を立てるのが難しいことを知り、早い段階で挫折しました。

中学生になると音楽に興味が芽生えてきて、友達と一緒にカルチャーを共有していく中で、自然と映画も観るようになり、感動を経験し、自分も何かストーリーを作って、人を感動させたいと思うようになったんです。

日本映画では北野武監督の『HANA-BI』(1997年)に感動しました。映画監督を目指したきっかけとなった作品は、是枝裕和監督の『誰も知らない』(2004年)です。19歳の頃に見て、2年後に映画学校に入学しました。

——ご自身の映画作りにおいて、北野監督や是枝監督から影響を受けている部分はありますか?

ラム・サム:北野監督の『HANA-BI』は、登場人物の感情の変化がきめ細かく描かれているところが本当に素晴らしかった。『星くずの片隅で』においては、そこが影響を受けた部分ではありますが、どちらかというと、是枝監督の『誰も知らない』からより大きな影響を受けています。

初めて『誰も知らない』を観た時に、そのリアルさにすごく惹かれましたし、驚きました。どういう演出をすれば、子役達にこんなに自然な演技をしてもらえるのだろうか? と。今回の映画でもキャンディの娘ジューを演じる子役(トン・オンナー)に対し、『誰も知らない』を参考に、なんとか自然な演技を引き出すようにしました。

——是枝監督は子役に台本を渡さずに、セリフを口伝えして演出するらしいですが、監督はどのように演出しましたか?

ラム・サム:オンナーちゃんは初めての映画だったので、なかなかセリフを覚えられませんでした。そこで我々が取った方法は、一緒に遊ぶことと、「こういう場合はどうするの?」と一緒に考えるというものでした。

キャンディとジューがザクの「ピーターパンクリーニング」に迷惑をかけてしまい、キャンディが落ち込んでいるシーンは特に印象的でした。ジューが母親に近寄っていき、「自分が悪い」といった意味のことを言いますが、あのセリフは脚本にはありませんでした。このシーンに関しては、ジューのセリフを空白にしておいたんです。オンナーちゃんに、「今、どういうことが起きているかわかる?」「今、お母さんがすごい落ち込んでいて、ザクさんにすごい怒られちゃったんだけど、どうやったらお母さんを慰められるかな?」と、誘導のようなことをしました。そしてカメラを回したら、彼女はキャンディに近づき、母親の背中を触りながら、「悪いのは自分で、お母さんは何も悪くない」と言いました。あれはオンナーちゃんから自然に出てきた言葉でした。

——だからセリフに感情が乗っているんですね。セリフといえば、映画の中でキャンディが時々日本語で話していたのはなぜでしょう?

ラム・サム:キャンディのキャラクター設定は香港の若者で、私が映画学校の先生をやっていた頃の教え子達をモチーフにしました。彼等・彼女等は日本が大好きで、日本語を習っていた子も珍しくなく、チャットグループで日本語でのやりとりをすることもありました。ですので、キャンディが日本語を話すことに、設定上の違和感はありません。ただ、私が書いた脚本に日本語のセリフはありませんでした。アンジェラさんが突然、アドリブで日本語を喋りだしたんです。キャラクター的にも合っているし、そのまま採用しました。

——アンジェラ・ユンはVaundyの「Tokimeki」MVにも出演しているので、日本語に馴染みがあるのでしょうね。そもそも、彼女をキャンディ役に起用した理由は?

ラム・サム:キャンディ役は当初違う役者を予定していたのですが、コロナ禍でスケジュールが延期して、その女優のスケジュールが合わなくなってしまったんです。そこで行ったオーディションに、アンジェラさんが参加しました。彼女は緊張していて、何となく本心を隠しているような雰囲気にキャンディと重なるものを感じ、彼女に決めました。

アンジェラさんはキャンディの役作りとして、派手なファッションでオーディションに来ました。キャンディのキャラクターに合っていたので、スタイリストとも相談して、それをベースにしてキャンディとジューの衣装を決めていきました。キャンディというキャラクターには、強い生命力を込めています。困難な状況でも個性的で生命力のある服装やインテリアを通して、キャンディという役を表現しました。

——インテリアといえば、キャンディとジューの部屋に飾られたカレンダーに、ひらがなの落書きも見えました。

ラム・サム:細かいところに気づいてくれてありがとうございます。アンジェラさんとオンナーちゃんはカメラが回っていない時も、親子みたいに仲良しで、ずーっと一緒に遊んでいました。その日本語の落書きも、彼女達が遊びながら書いたものです。それをそのまま撮影して、映画の中に採用したという流れです。

——監督から見た、日本という国に対するイメージはどんなものでしょうか?

ラム・サム:自分を含めて、一般の香港人は日本が大好きです。私は日本に何回か旅行をして、整備された公園や、食事のおいしさに感動しました。正直なところ、日本に対しては、幻想に近い、理想郷みたいなイメージがあります。もちろん、それが現実ではないとわかっています。外国の方が香港を見ると素晴らしい場所に見えるかもしれないけれど、実際にはいろんな問題があるのと同じように。それでもやはり日本の食事は大好きです(笑)。

映画を通じて自分の考えを発信する

——弱者に寄り添う目線にも、是枝作品に共通するものを感じました。それはラム・サム監督にとって、映画を作る上でのテーマでしょうか?

ラム・サム:ある意味そうかもしれません。学生時代の作品やその後の短編も、人と人との関係性や困難をテーマに映画づくりをしてきました。私自身、あまり裕福ではないエリアの出身なので、そういう人達が直面する困難や感情を、自分の経験として映画の中に入れています。今回は、私が成長する過程で手を差し伸べてくれた大人達の姿を、主人公のザクに投影しています。

あまり日の当たらない一般の人達が映画で取り上げられることは多くないので、一般人でもある自分が、価値のあるストーリーとして発信していきたいなという思いもあります。せっかく映画を通じて、自分の考えを外に向けて発信する力を得たので。

——『星くずの片隅で』では、ザクの友人がカナダへ移民します。中国からの締め付けが厳しくなる一方の香港市民にとって、国外への脱出が1つの選択として描かれています。2021年よりイギリスは香港市民にイギリス市民権を獲得できる特別ビザを発行し、香港からの移民が殺到しているというニュースを読みました。監督も今ロンドンにいらっしゃるということですが、それは移民したということですか?

ラム・サム:妻と子どもと一緒に移民して1年が経ちますが、香港にはこの1年で3回帰っているので、移民なのか移住なのかは言い切れない状態です。完全に移民したとしても、香港には家族がいるので、今後も帰ると思います。

移民した理由の1つはもちろん、政治的な大転換期だからです。ただ、移民しようと思った瞬間は、コロナ禍での生活にありました。2019年に下の子が生まれて、コロナ期間中に、歩けるようになったのですが、外で遊べなかったんですね。公園が完全に封鎖され、学校も休校で、上の子もずっと家にいるしかない。子ども達をこのような環境で育てたくないという気持ちが強くなった瞬間に、香港を離れようと決断しました。

——ロンドンでの映画制作の見通しはいかがですか?

ラム・サム:今のところは正直わかりません。まだ移住して1年なので、人間関係もイチから作り直さなければならないし、さまざまなところでわかっていないことが多いので。気持ち的には、引き続き映画の制作活動をしていきたいと思っています。必要に応じて香港に戻って制作することもできますし、ポジティブに考えています。

——香港の政治的な現状は、日本にいる自分にとっても他人事とは思えません。市民の自由がどんどん奪われていく現在の状況において、映画にどんな力があると考えていますか?

ラム・サム:私が映画を作る目的は、映画を使ってストーリーを伝えることによって、誰かを元気づけたり、力づけたりすることです。今の香港では、映画に対する締め付けが厳しくなっていて、『少年達の時代革命』のように、映倫を通せずに上映禁止になってしまう作品がたくさんあります。なぜなら、政府は映画に人や社会を変える力があることを知っているから、映画を恐れて規制するんです。私も、自分の作る映画には、誰かを元気づける力や、社会を変える力があると信じています。

■『星くずの片隅で』(原題:『窄路微塵』 英題:『The Narrow Road』)

■『星くずの片隅で』(原題:『窄路微塵』 英題:『The Narrow Road』)
7月14日からTOHOシネマズ シャンテ、ポレポレ東中野ほか全国ロードショー 
©︎mm2 Studios Hong Kong

出演:ルイス・チョン(張繼聰)、 アンジェラ・ユン(袁澧林)
パトラ・アウ(區嘉雯)、 トン・オンナー(董安娜)
監督:ラム・サム(林森)
プロデューサー:マニー・マン (文佩卿)
脚本:フィアン・チョン (鍾柱鋒) 
撮影:メテオ・チョン (流星)
2022|香港|カラー|DCP|5.1ch|115 分
https://hoshi-kata.com

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俳優・宮沢氷魚が考える「役を演じること」と「いい役者」 https://tokion.jp/2023/05/25/interview-hio-miyazawa/ Thu, 25 May 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=187272 俳優・宮沢氷魚インタビュー。「いい役者」とはどんな人か。真摯に語ってくれた。

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宮沢氷魚

宮沢氷魚(みやざわ・ひお)
1994年カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。2017年 TBS系ドラマ『コウノドリ』第2シリーズで俳優デビュー。以後、ドラマ 『偽装不倫』、NHK連続テレビ小説『エール』、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』、『THE LEGEND & BUTTERFLY』、舞台『パラサイト』他、話題作に出演し続ける。 初主演映画『his』では、4つの新人男優賞を受賞、映画『騙し絵の牙』では、第45回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞、映画『エゴイスト』では、第16回アジア・フィルム・アワード助演男優賞受賞など、数々の賞を受賞。
https://hio-miyazawa.com
Instagram:@miyazawahio
Twitter:@MiyazawaHio

2020年に実施した“映画をつくりたい人”を募集するプロジェクト「感動シネマアワード」(主催:レプロエンタテインメント)で大賞を受賞した映画『はざまに生きる、春』が5月26日から全国公開される。本作は現在出版社で漫画編集者として働く葛里華(かつ・りか)監督による初のオリジナル長編作品で、発達障がいの特性がある画家・屋内透と、出版社に勤務する女性・小向春の恋模様を描いている。

主演・屋内透を演じたのは第12回TAMA映画賞最優秀新進男優賞や第45回報知映画賞新人賞など数々の映画祭でその実力を認められ、今年も映画『THE LEGEND&BUTTERFLY』、映画『エゴイスト』など出演作が続く、今注目の俳優・宮沢氷魚だ。

「発達障がい」の特性がある屋内透を演じるにあたって、意識したこととは。そして、いい役者とはどんな人か。自身の考えを真摯に語ってくれた。

屋内透を演じる上で意識したこと

——『はざまに生きる、春』は、宮沢さんが所属する事務所、レプロエンタテインメント主催の映画コンペティション『感動シネマアワード』から誕生した作品だそうですね。

宮沢氷魚(以下、宮沢):2020年に始動したこのプロジェクトで、僕達所属俳優を当て書きした脚本を募集しました。集まった作品は、僕自身も読ませていただき、最終的には3〜4作品が候補に残りました。その中でも、僕は『はざまに生きる、春』をやりたいと思い、選ばせていただきました。

——この作品に決定したポイントは?

宮沢:どの脚本も自分をイメージして書いてくれているので、「確かに自分ってこういう要素があるな」「こういうふうに見えるんだ、確かにそうかもしれないな」と、入り込みやすい傾向がありました。『はざまに生きる、春』は、1つひとつの台詞やシチュエーションから、脚本を書いた葛里華監督の思いや熱量が感じられて、ぜひ映像化したいなという思いになりました。ただ、この状態でも面白いけれど、まだまだ面白くなりそうとは感じたので、これから監督と話したりすることでより面白い作品になるだろうなと、勝手にワクワクしている自分がいたことが、大きな理由の1つかなと思います。

——宮沢さんの中に、プロデューサー的なスタンスはありましたか?

宮沢:そこまで大げさではないですけど、この作品を選ばせてもらったのは自分ですし、こんなに早い段階から役者の自分が制作に関わることってほぼないので、責任を持って公開まで迎えたいという思いはありました。完成した作品を見た時も、やはり他の作品とは違う感動がありましたね。普段はすでに何回も修正が入った台本を製本した状態でいただきますが、今回は台本を一緒に修正していったので、長く関わった分、思い入れがちょっと違いました。

——宮沢さんが演じる屋内透という人物に対しては、どうアプローチしましたか?

宮沢:透君をどういうキャラクターにして、どう演じようかというところで、いろんなパターンを考えました。この作品はすごく温かい雰囲気になると思っていたので、透君を皆さんに愛されるキャラクターにしたいなと思いました。ただ、透君の台詞だけを読むと、時にキツいことを言っているし、春ちゃん(小西桜子)の気持ちが理解できなくてさらに困らせるような言葉を言ったりするので、そこでどうやったら透君の魅力を伝えられるのかを考えました。

例えば、春ちゃんにぶつける言葉は冷たいけれど、その言葉が出るまでに、手をたくさん動かしたり、目線をいろいろなところに持っていく。発達障がいの1つの特性でもあるんですけど、体の動きが多いんですよね。どういうふうに言葉を伝えようかなという迷いや、これは言っていいのかなという気遣いや思いやりがあるのに、結局わからないから、春ちゃんに対して「わかんない、もっとはっきり言ってよ」という言い方になってしまう。彼のその葛藤みたいなものを、所作や動きで表現したいなと思い、監督と話しながら工夫していきました。

——発達障がいを持つ青年や、『his』や『エゴイスト』で演じた同性愛者の役柄もそうですが、社会におけるマイノリティを演じることは、どう考えていますか? 演じ方や仕上がり方によっては、傷つく人が出てきてしまうから、繊細な向き合い方をしなければいけないものでしょうか?

宮沢:どんな役も役柄にかかわらず結局難しいと思っています。マイノリティを演じることが、特別難しいわけではなく、ただ準備が必要ということであって。『his』のシュンも、『エゴイスト』の龍太も、今回の透君もそうなんですけど、自分の演じ方を1つ間違えただけで、たくさんの人を傷つけたり、差別を助長したりしてしまう可能性があるんです。発達障がいのことを知らない方が、この映画で初めてアスペルガー症候群というものを知った時に、この映画に描かれていることがその人にとって「正解」になる。だからこの物語の中で我々が演じる発達障がいやアスペルガー症候群の特性というものは、ちゃんと真実のものでないと、間違ったものとして広まってしまう。それが一番怖いので、いろんな方に事前にお話を聞いて、慎重に表現できるように、しっかり準備をしたつもりです。

——そこから、透君の役作りをしていったんですね。

宮沢:はい。葛さんが、当事者の方達にインタビューをした動画を送ってくださいました。発達障がいと言っても、すごく幅が広くて、「これが発達障がいです」という典型的なものはないし、ジャンル分けも難しいんです。たくさんのインタビュー動画を見て、いろんな個性や特性があったので、逆に僕は自分が思う屋内透君を作っていいんだと、ある意味、すごく気が楽になりました。もちろん医療監修の方や監督と話しながらですけど、困ったら助けてくれる人達がいるという安心感がありました。

——過去の映画やドラマで参考にした作品はありますか?

宮沢:『レインマン』は昔から好きで、あの映画を見て僕は、人は1人では生きていけないと感じたんですよね。透君は1人暮らしをしていて、家の中にアトリエがあって、そこで作ったアートを発注されたところに持っていけばいい生活なので、1人で生きていけるようにも見えます。でも、春ちゃんという人物が自分の人生に関わってきた途端、そこで化学反応が起きて、より豊かな時間を過ごせて、そこに喜びを感じる透君がいて。そこは『レインマン』をはじめ、発達障がいをテーマにしている作品はどれもそうだと思うんですけど、人間はお互いを助け合って、高め合って、より素晴らしい毎日を過ごすという結末を迎えるんですよね。そこは僕の中で「そういうことだよね!」という1つの正解や確信みたいなものに変わった気がします。

「いい役者」は、器用すぎない人

——透君は青い絵ばかりを描くアーティストです。彼のものづくりに対する姿勢を、どう思いましたか?

宮沢:純粋にうらやましいなと思いました。透君はアスペルガー症候群の特性を持っている人達の中でも、すごく恵まれているほうだと思います。特技や才能があって、そこに情熱を注ぎ込める性格やエネルギーを持っている。何かを生み出すために、あんなにも没頭できる透君って、いいなと思います。僕も役者やモデルという、何かを世の中に出す側にはいるんですけど、透君ほど情熱を持っているかと聞かれるとちょっとわからない。役者は台本や作品などを与えられて、ヘアメイクさんやスタイリストさんにビジュアルを作ってもらって、監督の演出などを加えられて、やっと成立する仕事です。僕達はある程度できたものにちょっとスパイスを加えるだけであって、0→1のことはできません。だから透君みたいに、何もない真っ白なキャンバスに0から1を生み出せるところにすごく憧れや魅力を感じます。

——ここ数年は、監督として作品を作る俳優さんが増えてきていますが、宮沢さんはそのあたりの意欲はお持ちですか?

宮沢:考えたことはありますけど、とても僕にはできないと思いました。というのも、役者をやっていて、自分の役を理解するだけでもすごく時間がかかるし、体力も使うし、結局最後まで正解かどうかがわからない不安があるんです。脚本家や監督、もしくは両方をやった場合、全部の役やスタッフも見なきゃいけないじゃないですか。全てのキャラクターを自分の中で理解して、それを文字に起こしたり、役者さんから「この役はこのシーンでどういう感情ですか」「どういうふうに演じればいいですか?」と聞かれても、全然わからないなと。それは向いている人に任せて、僕はプレーヤーとしてやっていきたいなと思います。

(池田)エライザさんが監督をやってますけど、すごいなと思います。彼女とは仲がいいから、いろんな相談をするんですよ。その時のアドバイスが適切なんです。単に状況判断をした上での一般論的なアドバイスではなくて、僕の性格や過去の経験、そのときの状態を瞬時に理解して、「今こういうこと思ってるんだよ。こういう状態でしょ? だったらこうだよ」というアドバイスを言ってくる。「すげえ! なんでわかんの?」と驚きます。彼女のように、本人以上にその人のことをわかっている人が、監督をやるべきだと思います(笑)。

——「プレーヤーとしてやっていきたい」とおっしゃいましたが、宮沢さんが考える「いい役者」とはどんな俳優でしょうか? ご自分のステージが変わっても大事にしたいものとは?

宮沢:本当にいろんな役者さんがいて、第一線で活躍してる人は皆さん素晴らしいんですけど、自分がそうでありたいなと思う「いい役者」は、器用すぎない人です。誰とは言えないんですけど、自分の周り、特に若い役者さん達って、すごく器用なんですよ。泣きのお芝居でスーッと泣けるし、「こういう表情が欲しい」と言われるとすぐにその表情ができる。僕は器用な役者じゃないので、「すごいな」と思うけど、「で?」で終わっちゃうんです。テクニックで流す涙は、言ってしまえば嘘の涙です。僕は、不器用でも心の中で一生懸命役の感情や状況を想像して、感じて、感情を出す役者さんが好きです。ただ泣くんじゃなくて、対峙している時に、「今、内心いろんなことを考えてモヤモヤしてるんだろうな、なんだか超怖いな」と感じさせる人や、悲しみを表現する時に、過去の自分の悲しい経験を一生懸命思い出した上で出てくる表情とか、そういうお芝居に惹かれます。映画を見ても、そういう人のお芝居って嘘がないから、すごく届いてくるんですよね。僕は、泥臭くて不器用なお芝居を大事にしたいです。

——泥臭さや不器用さを大事にしつつ、上手になりたいと思いますか?

宮沢:それはもちろん! 上手くなるのは前提です。でもそれがただのテクニックになってしまうのではなくて、テクニックの中にちゃんと感情がのっていれば一番いいなと思います。その辺のバランスは大事ですよね。

——6月からは舞台『パラサイト』に出演されますが、年に1本ペースで舞台に出演するのはご自身の希望ですか? やはり舞台に出ると、地肩が強くなるという実感がありますか?

宮沢:去年はやってないんですけど、2021年まではほぼ毎年やってましたね。たまたまそのタイミングで舞台の話があるだけで、「そろそろ舞台をやるか」ということでもないんですけど、自分にとっての舞台はある意味、映像でやってきたことを壊す場所ではあります。ずっと映像が続いてると、その中でやりやすい芝居になりますし、求められるものもだいぶ限られてきます。舞台という場所はお客様の前で、生でお芝居をするのでごまかしがきかない。真実を伝えるお芝居を磨いていく場所だと思うので、定期的に舞台があると、自分がちょっとずつステップアップするというか、自分のことを見つめ直す時間になっている気がします。

——23時間のお芝居の台本を全部覚えるところから、映像作品とは全然違いますよね。稽古をするとはいえ。

宮沢:やばいです……。台詞を覚えながら、たまに「なぜ引き受けたんだろう?」と思っちゃいます(苦笑)。

「これ以上はもう自分は何も生み出せないな」と思えたら幸せ

——今年の2月6日、日本外国特派員協会で行われた映画『エゴイスト』の記者会見を拝見して、宮沢さんの話し方や態度に、日本語で話す時よりも力強い印象を受けました。笑い声も「HAHAHAHAHA!」という表記が似合うような。

宮沢:そうでしたか?

——個人的な印象ですが。日本語を話す時と英語を話す時とで、自分のキャラクターにちょっと違いが出るな、という意識はありますか?

宮沢:意識はしていなかったですけど、言語がその人のキャラクターを構築するとは思っています。英語と日本語は全然違うので。英語という言語自体が日本語よりもシンプルで、例えば喜びを伝える言葉も、日本語に比べるとすごく少ない。日本語は相手との距離感によってどの言葉を選ぶかも変わってくるし、感情も伝わるんですけど、英語はどれくらいハッピーなのかを表情や声の高低、ジェスチャーで伝えるから、自然と表情が豊かになる。というのは、言葉に伝えきる機能がないから生まれるものだと思います。おそらく他の言語だとまた違ってくると思いますし、それが国民性にも影響しますし。僕の場合は多分、中身は同じまま、伝え方が変わったということだと思います。

——あの会見で、「ハリウッドに限らず、日本以外の国の作品に参加したい」という発言をされていました。それは英語で演技をしたいということですか?

宮沢:せっかく英語が話せるので、英語でもお芝居をしたいという意欲はもちろんありますが、言語の縛りではなく、日本以外でお仕事がしたいんです。例えばアメリカで撮る日本のお話なら日本語の台詞になるし。ただ、撮影現場の環境を変えてみたいんです。僕は生まれがアメリカで、幼稚園から大学までインター系の学校に通って、いろいろな人種、文化、宗教の人達と育ってきました。いろんな国のちょっとしたニュアンスや世界観みたいなものがわかるから、それを現場を通してもっと深く知りたいんです。例えばイギリスの舞台だとしたら、イギリスの空気感みたいなものをなんとなく知っているから、演劇を通して実際どうなのか、どんな演目があるのかを知りたい。そういう意味で環境を変えてみたいんです。

——それを経て、なりたい俳優のイメージはありますか?

宮沢:これ、というものはないんですけど……。何も決まっていないからこそ、いろいろ経験したいという意欲があって。この先ずっと、自分が役者をやっているとも限らないし。

——そうですか?

宮沢:それはもう、多分みんなそうだと思います。いつ何があるかわからないですし、役者だけが人生じゃないですし。音楽家であれば、バンドでもう自分ができることは終わったから、バンドはやめて作詞・作曲のほうに回ることもあると思いますし。自分はまだまだそこには行き着いていないですが、この仕事を始めた以上は「もう役者としては全部やりきった」と自分で思えるところまで行ってみたいです。「これ以上はもう自分は何も生み出せないな」と思えたら幸せだと思うので。

Photography Takahiro Otsuji

■『はざまに生きる、春』
出演:宮沢氷魚、小⻄桜子、細田善彦 、平井亜門、 葉丸あすか、芦那すみれ / 戶田昌宏
監督・脚本:葛里華
エグゼクティブプロデューサー:本間憲、倉田奏補、古賀俊輔 
企画・プロデュース:菊地陽介、かなりかピクチャー
プロデューサー:吉澤貴洋、新野安行、松田佳奈
制作プロダクション:セカンドサイ、ザフール
配給:ラビットハウス
©2022「はざまに生きる、春」製作委員会
https://hazama.lespros.co.jp

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対談:山田孝之 × 南沙良 「MIRRORLIAR FILMS」の新作『恋と知った日』と新シーズンで挑戦したいこと https://tokion.jp/2023/05/12/takayuki-yamada-x-sara-minami/ Fri, 12 May 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=184983 新作短編映画『恋と知った日』について、主人公の渚を演じている南沙良と、「MIRRORLIAR FILMS」の発起人であり、出演者でもある山田孝之による対談。

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山田孝之(左)と南沙良(右)

2020年に始動した、短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)」。目指すところは、「誰でも映画を撮れる時代」における、自由で新しい映画づくりの実現だ。これまで1シーズンにつき、15分前後の短編を9本制作して劇場で上映。4シーズンを重ね、作品数は全部で36本となった。そして4月22日から5月14日の日程で、初の試みとなる「第1回ミラーライアーフィルムズ・フェスティバル」を開催。映画祭を彩る新作として、ABEMAと初めてタッグを組んだ新作短編映画『恋と知った日』(井樫彩監督)が、現在ABEMAにて無料で独占配信中だ。主人公の渚を演じている南沙良と、「MIRRORLIAR FILMS」の発起人であり、出演者でもある山田孝之に、作品の背景や、プロジェクトの現在地とこれからについて聞いた。

『恋を知った日』の制作背景

——まず、『恋を知った日』を制作することになった流れを教えていただけますか?

山田孝之(以下、山田):「映画祭をやるならオリジナルがあった方がいいよね」という話になり、今まで「MIRRORLIAR FILMS」で制作や募集をした作品が36本あるので、その中の誰かに監督してもらおうという中で、井樫彩さんが「やります」と言ってくださって。そこから「こういう話です」「主役は南さんでいきましょう」と言われ、僕は「おお、いいじゃないですか」というテンションでした。僕がSeason3で南さんにお声掛けした作品(山田孝之監督作『沙良ちゃんの休日』)が、理解が難しいと言われたので、今回はちゃんと理解できるものに出ていただけるかなと。

——南さんは「またMIRRORLIAR FILMSに関われることを嬉しいと思っています」というコメントを出されていますが、南さんにとって「MIRRORLIAR FILMS」は他の現場と違いますか?

南沙良(以下、南):違う感じ……。作品自体がわりと独特な気がします。

——山田監督の『沙良ちゃんの休日』がまさに。

山田:そんなことないですよ。どストレートですよ。

南:(笑)。でも、それ以外はそんなに違わないと思います。

——私の先入観なのですが、「MIRRORLIAR FILMS≒山田孝之」といいますか。山田さんの存在は俳優陣にとって大きいのではないかと。

南:それは心強いです。本当に。

——山田さんは『沙良ちゃんの休日』で南さんを主演に起用しました。山田さんから見た南さんの俳優としての魅力とは?

山田:この雰囲気です。なかなか多くを語らない方なので、どんなことを考えているのかが気になる。それってものすごい魅力じゃないですか?

——わかります。裏でもあまり多くを語らないんですか?

山田:めちゃくちゃしゃべるわけではない……というか、現場だとどんどん撮影していかなきゃいけないので。僕が監督だった時も、「こういう時にこういうことをちょっと考えてみてください」みたいなやりとりをするぐらいでした。セリフもあまりなかったですし。「いただきます」「ごちそうさま」「え?」ぐらいで。

——南さんにとって山田さんはどんな存在ですか?

山田:(南さんに向かって)俺、ここにいていいですか?

南:はい(笑)。以前取材で、山田さんが私のことを「何を考えているかあまりわからない」「ミステリアス」と言っていたんですけど、私も同じことを山田さんに思っていて。

山田:こんなにしゃべるわりにはなかなかつかめない?

南:つかめないですね。

山田:このままですよ、僕。

南:本当ですか?

山田:はい。基本的にはほぼ嘘もつかないですし、騙すことはしないですし。

南:私は、(山田さんを)つかみたいなーって思っています。

同世代の女の子達が共感する作品

——『恋と知った日』は、南さんが演じる大学2年生の渚がマッチングアプリで手当り次第に相手を探し、諦めかけた時に出会った啓太郎(板垣瑞生)との恋が描かれます。山田さんはマッチングアプリで出会う男性の1人を演じていますが、出演の経緯は?

山田:「ちょっとでいいから出てください」と言われたんです。マッチングアプリでいろいろな人に会った後に恋愛する話なので、絶対恋愛にならない人がいてもいいなと思って、キャラクターを作っていきました。

多分ああいう感じで、しょっちゅういろんな女性と会ってる人なんですよ。こなれている感じと、なんかちょっと嫌だなと思われるところを出せたらなと。ずっと携帯を触っていて、注文をする時に「1つは氷なしで、1つは氷何個で」ってややこしいことを言ったりすることで、「あ、ちょっとだるいなこの人」「そういうところがあるからあなた1人なんじゃないの?」と思われるキャラにしたいなと思いました。

——携帯を小さな三脚の上に置いていましたがあれは……?

山田:あれは、Zoomの時に僕がリアルに使っていたんです。今は壊れちゃって使ってないんですけど。あのガチ感に「何それ……」みたいな反応をされることが多かったので、今回の役に使ってみました。劇用の携帯を1つ用意してくれたので、僕の私物も使いましょうと。あの人物は携帯を2個持ちしているところが嫌じゃないですか。

南:携帯2台持ちというのはびっくりしますよね。

山田:(渚の)目も全然見ないですしね、口数は多いんですけど、絶対に本心を語らなさそうな人物にしたかった。台詞は一応書いてあったんですけど、自由にやれる現場でした。

南:確かににそうでした。山田さんとの撮影は本当に一瞬だったので、次はもう少ししっかりとお芝居をさせていただけたらいいですね。

——渚がものすごく可愛く映っていましたし、南さんは黙ってスクリーンの中に立っているだけで画(え)が持つなと、改めて感動しました。Season3の『可愛かった犬、あんこ』でも思いましたが、井樫監督は女性を撮るのが上手です。南さんは、撮られている時に安心感や信頼感のようなものはありましたか?

南:監督から、初日にお手紙をいただいたんです。「私は南さんを可愛く撮りたいと思ってます」と書いてくださっていて、「ああ、嬉しいな」って思いました。

——『恋と知った日』はとても見やすいラブストーリーでありつつ、監督の力量がしっかりと伝わるものになりましたね。

山田:これまでの36作品は個性が爆発しまくっていたので、こういった、いわゆる同世代の女の子達が共感できる作品が、「MIRRORLIAR FILMS」にラインアップされたことはすごくいいですよね。あと、出演者としてはそれなりにちゃんとした仕事ができたかな、と思っています。

——作品のターゲット世代である南さんは、この作品をどうご覧になりますか?

南:私は井樫さんの作品をいくつか拝見しているんですけど、自然を使う演出が多いなと感じていて。今回も水や火の使い方が素敵だなと思いました。マッチングアプリという出会い方もですが、私達の世代が共感できる作品になっているんじゃないかなと思います。

——渚に共感できる部分はありましたか?

南:多いわけではないですが、何かが始まった時に既に終わりを考えてしまうという部分は、私も感じます。

——恋愛以外でも?

南:そうですね。桜が咲き始めると嬉しいですけど、悲しくなります。撮影に入る時も、どこかにはあるかもしれないですね。終わるんだなって。

「巨大化したい」(南)

——「MIRRORLIAR FILMS」は誰が映画を撮ってもいいというスタンスのプロジェクトです。南さんは監督業に興味はありますか?

南:挑戦してみたいなという気持ちは、すごくあります。

——撮りたいもののイメージは?

南:……巨大になりたいです。

——ご自分が?

南:はい。巨大になって、何かしたいなって。

山田:多分「監督したい」というより、「巨大化したい」んでしょうね。

南:そうです。

——なぜ巨大化したいのでしょう?

南:昔から大きいものが好きだったので。自分が大きくならなくても、大きくて巨大な生物をたくさん作りたいなっていう願望があります。自分じゃなくても、人のことを大きくできればいいかなとも思います。

——ストーリーは?

山田:大きくなっちゃえばストーリーは勝手に進みますよ。大きい状態でいられる期限が決まってる方が面白いんじゃないですか? 何日間限定とか。そうするとおのずとやりたいことの優先順位が出てくる。

——確かに。

山田:(南さんに)巨大化したら、まず何に手をかけますか? いろいろあるじゃないですか。東京タワーやスカイツリーをブン回したいとか、土地を真っ二つに割ってみたいとか、フジテレビの球体を転がしたいとか。

南:(考えて)やっぱり凶暴なので……。

山田:あ、凶暴なんだ。

南:はい。絶対に凶暴がいいです。

山田:暴れるんだ。

——「進撃の巨人」みたいなイメージですか?

南:あ! そうですね。

山田:じゃあ俺が倒しに行こうかな。

南:倒される……。

——(笑)。企画というのはこんな風に動き出すんですね。

「MIRRORLIAR FILMS」の新シーズンについて

——2020年に始まった「MIRRORLIAR FILMS」のプロジェクトについてお聞きします。立ち上げた時に目指した場所に、近づいている手応えはありますか?

山田:めちゃくちゃありますね。非劇場上映という形で、カラオケのJOYSOUNDさんの「みるハコ」(※カラオケルームで音楽、スポーツのライブ・ビューイングや、選りすぐりの映画・アニメなどを視聴できるサービス。およそ1800店舗が対象)でSeason1〜4の36本を見てもらえるようになったことがすごく大きいです。劇場がない地域もあったり、劇場があってもMIRRORLIAR FILMSを上映していないところもある中で、今回の映画祭から全国に1800館になりました。1人でも多くの人に届けるという意味で、いいところに着地できたなという感じですね。

——今回の映画祭は、上映方法をいろいろ工夫しているそうですね。

山田:公園でも上映しました。渋谷区立北谷公園が改装されて、すごく素敵だからそこでイベント上映をやるのはどうですか、と提案されて視察に行ったんです。オープンな空間なので、そこにゲストを呼ぶとなった時に人の流れをどうするかを話したり。見やすくしたいので、ガッツリした上映はオープニングとクロージングでやって、公園では15分で1本見て、その後15分でトークやって、30分で終わるイベントを何本か作りましょうよ、みたいなことも言いました。

あとはここからどうやって広げていくか。日本でもっと隅々まで行くのももちろんですが、アジアにも広げて行きたいところもあります。短編映画はWOWOWさんも作っていますし、韓国でも俳優達が集まって作っています。お互いに連絡を取って「何かできたらいいよね」というところではありますが、やはり国を越えると権利の問題が出てきてしまう。同じ短編映画を作る仲間として、それぞれの映画祭でお互いの作品を上映し合うことができたらいいよね、と話してはいたんですけどね。今後、何かしら動きが出てくるんじゃないかなと思います。

——よりフットワーク軽く、誰でも撮ろうという目標もあります。

山田:はい。(機材に)こだわり出したらきりがないですけど、スマホでも撮れちゃいますから。GoProでもいいですし。とにかくやってみようよっていうことが一番重要ですよね。いいか悪いかじゃなくて、やることに意味があるので。

——「MIRRORLIAR FILMS」の今後の展望についてお聞かせください。

山田:Season5から8に向けて、大きいところでいうと年間最優秀賞の賞金が1000万円になるので、夢が倍になったかなと。次の作品が作りやすくなると思います。

※新シーズン『Season5~8』は2024年春から2025年にかけて、公募3作品+著名監督2作品の計5作品を、シーズンごとに公開予定。公募から選出された12作品には賞金30万円、年間で最優秀に選ばれた作品には、賞金1000万円が付与される。2023年9月30日まで作品を募集中。

Season1〜4で36作品を上映してみて、ちょっとスパルタしすぎたな、ということに気がつきました。15分の短編9本を、2時間以上ぶっ続けで見るのはきついと。だから次は本数を減らして、1シーズンにつき5本にしました。劇場での上映はマックス75分と、見やすくなります。

でも、ちょっとスパルタしたかったんですよね。起承転結があって勧善懲悪でみたいな映画も好きですけど、そうじゃないものもあった方がいいよね、いろんな種類があったほうがいいよねって。僕が映画を作る上でずっと根幹の部分にあるのが、ただ見て終わらないようにするために、答えをすべて出さないこと。そうすることで自分で考えますし、例えば同じ作品を見た人、一緒に見に行った人と、「あれってどう思った?」っていう会話が生まれる。僕が映画に携わるときは、そういうツールの側面を大事だと思って作っています。だから「もっとみんな考えるべきだー! わー!」みたいなスパルタでやっていたんですけど、前回はあまりにもちょっと刺激が強すぎたということで。これからはもうちょっと優しくします。

——「MIRRORLIAR FILMS」を通して、新たなクリエイターが出てくると思います。南さんはどういう監督と仕事をしたいですか?

南:やっぱりこう、情熱がある方と。井樫さんもそうですけど、作品やお芝居に対して情熱がある方って、姿勢や話し方でわかるじゃないですか。そういう方がすごい好きなので。はい。

——南さんは俳優をする上で、目指す人物像みたいなものはあったりしますか?

南:特にないですけど……(少し考えて)やっぱり特になかったです(笑)。

山田:「大きくなりたい」人ですからね。

南:そうですね。大きくなりたいです。

Photography Takahiro Otsuji

■「ABEMA×MIRRORLIAR FILMS」オリジナル短編映画『恋と知った日』
出演:南沙良、板垣瑞生、山田孝之、毎熊克哉
原案・監督:井樫彩
脚本:牧五百音
音楽:鷹尾まさき
プロデューサー:中村好佑、下京慶子
プロデュース:佐藤慎太朗 
https://abema.tv/video/episode/635-1_s1_p1
https://films.mirrorliar.com

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