連載「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」 Archives - TOKION https://tokion.jp/series/連載「クリエイターが語る写真集とアートブック/ Thu, 14 Dec 2023 00:13:58 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 連載「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」 Archives - TOKION https://tokion.jp/series/連載「クリエイターが語る写真集とアートブック/ 32 32 連載「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」Vol.15漫画家・亜蘭トーチカが見る、リアリティの在り処 https://tokion.jp/2023/12/14/creators-talk-about-books-vol15/ Thu, 14 Dec 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=218033 漫画家・亜蘭トーチカが選んだ3冊のアートブック。

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亜蘭トーチカ

亜蘭トーチカ
1997年3月11日生まれ。2017年漫画雑誌『架空16号』でデビュー。2021年、単行本『順風満帆』がセミ書房から刊行。2023年12月3日、新装版『順風満帆』(¥1500)を刊行。

2017年に漫画雑誌『架空』16号でデビューし、4年後に単行本『順風満帆』をセミ書房から刊行した若き漫画家・亜蘭トーチカ。幼い頃から漫画を愛し、17歳で漫画を描き始めたという彼の作品は、時にリアルに現実を突きつける。そんな彼に影響を与えた3冊を紐解くと、これまで見えていなかったものが見えてきた。

『鴉』
深瀬昌久

“白黒”は不自然に美しく、現実を塗り替える

日本の写真家・深瀬昌久の写真集『鴉』。これは海外の出版社から最近出版された復刻版です。本当は箱付きなんですけど、箱がなくなっちゃっているので中古でちょっと安く買えました。背表紙の文字も黒色なので、本棚に並べると真っ黒の物体が並んでてかっこいいんですよ。

『鴉』は日本でも海外でもすごく人気があって、日本の写真集の名作といった時に必ず名前が挙がるような1冊です。載っているすべての写真がかっこいいです。タイトル通りカラスの写真中心なのですが、中には人物の写真もあったりして、それも気に入っています。

これはすべて白黒写真で構成されているのですが、僕は白黒写真がとても好きなんです。目に映るものにはすべて色がついているから、白黒ってその時点ですでに現実離れしている。 “現実を塗り替えている”感じがして、そこに惹かれます。自分が漫画を白黒で描いているので、どこか親近感を覚えるというのも理由の1つかもしれません。

僕は漫画家だと安部慎一とか、映画だとライナー・ヴェルナー・ファスビンダーとか、「作品を作ることが自分の人生とイコールになり過ぎてバランスを崩していってしまうような人」の作った作品に惹かれるんです。作品を作ることによって現実を塗り替えることへの切実さを強く感じられるからだと思います。深瀬昌久もそういう写真家ですよね。

漫画家のつげ忠男も大好きなのですが、「粗悪な夫婦」という短編の中にカラスがつるされている様子を描いているコマがあって、この写真を見た時「これが元ネタなのかな?」って興味深かったです。といっても当時はよくある風景だと思うので、たまたまかぶっただけかもしれません。僕も一度、自分の漫画でカラスがつるされている様子を描いていて、それはつげ忠男の漫画を参考にさせていただいたので、親近感を覚えました。

『SHADOW OF LIGHT』
ビル・ブラント

「作り込む」ことで新たに見えてくるもの

ビル・ブラント(Bill Brandt)は、作品を1枚観ただけですぐに好きになった写真家です。日本語版の『光の影』は結構高いんですけど、原語版だったのとボロボロだったのとで中古で安く買えました。

この写真集も白黒写真で構成されているのですが、「目で見たら絶対に黒くないはずのところが黒い」というところに強く惹かれました。建物を黒く塗りつぶしてシルエットで表現されています。不自然に黒いところは、現像かプリントする時に何か手を加えているのではないかと思います。このように「作り込まれている」感じは、絵画に近いものを感じますよね。

日本の写真家だと、植田正治が建物や人を黒く塗りつぶしてシルエットにする表現方法をよく使っています。植田正治もすごく好きなんです。

こんなふうに建物を真っ黒にしているのには、絶対に何らかの作為があると思います。普通に撮っただけではこうはならないはず。

後半にはヌード写真も載っているのですが、体の一部をクローズ・アップで撮影したものや、変わった角度から撮影したものなど、すごくかっこいいんです。そういう“実験精神”みたいなものを垣間見られるのも好きなところです。

『酔蝶花』
林静一

ジャンル問わず、世界で一番好きな1冊

これは、僕が世界で一番好きな本です。林静一(漫画家、アニメーター、イラストレーター)との出会いは高校2年生の時。最初に読んだ林静一作品は『赤色エレジー』です。それまでは「キャラクターが印象的な漫画」ばかり読んでいたので、「漫画でこんな表現があるのか」と衝撃を受けました。

まずは絵が衝撃的でしたけど、ストーリーの語り方、コマ割りの仕方、とにかく何もかもが自分にとって初めて見る表現だったんです。

例えば、身体の描き方ですが、それまで読んできた少年漫画とかでは見たことがない絵でした。このリアリティはなんなのだろうと、今でもよく考えます。漫画はいろいろ読んできましたけど、こんなふうに身体を描ける漫画家はほとんどいないと思います。

これは「桃園トルコ」という短編の一部ですが、この見開き2ページで「顔」が描かれているのは2コマだけ。これも衝撃的でしたね。それまでは全ページにキャラの顔がたくさん描かれている漫画しか読んだことがなかったので。

林静一はアニメーション作家でもあるので「漫画を客観視できるからこそ描ける構図」や、「アニメでは描かない絵」をわざと漫画で描いたりするんです。漫画って描かれたものが動いているように見えることが上手な表現だとされているような気がしますが、絵が動くという点ではアニメにはかなわないわけで、林静一はそれを身をもって知っているので漫画ならではの表現や演出を追求したんだと思います。

そういったところも、他の漫画家の作品とは何か違う印象を受ける要因なのかなと思っています。

あと、これはB5版というサイズで、ハードカバーで、さらに箱付きです。出版元の北冬書房の高野慎三さんが、印刷所の人に「漫画なのにハードカバーなの?」というようなことを言われて、「漫画をこの装丁で作って何が悪いんだ?」って言い返したという話が大好きです。作家への愛を感じますよね。

自然に見えるもの、それは果たして本当に自然なのか?

僕は漫画家なので漫画も紹介したいと思って『酔蝶花』を持ってきましたが、初めに選んだ3冊はすべて写真集で、すべて白黒写真で本の装丁も全部黒色でした。黒が好きなのかもしれないです。

写真集にハマったのはここ1年間のことです。実は少し前まで就職していて会社員として働いていたのですが、働いていると毎日すごく疲れちゃいますよね。小さい頃から大好きだった漫画も、学生時代はたくさん読んでいた小説も、日々の疲労で全然読めなくなってしまったんです。そんな時に出合ったのが写真集でした。働いていたのが古本店だったので目に入る機会が多かったのもきっかけの1つかもしれません。なんとなく写真集を開いたらすごい勢いでハマりました。写真集なら文字を読まなくても本が読めますから。本を買ってページをめくる行為ができるということ自体がすごく嬉しかったんです。

好きな漫画家達の元ネタらしき写真を見つけることも多くて、“当時の漫画家の目を通して写真を再発見する”という感覚もあってどんどんハマっていきました。水木しげるやつげ義春がカメラ雑誌の写真を参考にしていたことは有名ですけど、当時の漫画家は写真に影響を受けている人が多いと思います。

これまで僕は、「写真は現実がそのまま写っている」と思っていたんですが、そもそも「目の水晶体」と「カメラのレンズ」が違うものであるように、写真は実際に目で見ているものとは全然違うものなんですよね。それに気付いてからは、“現実を作り替えているんだ”という認識を持った作家の作品が好きになっていきました。白黒の写真なんて特に現実離れしていて、不自然な写真も多いですよ。今後は、ここ数年で読んできた写真集の影響が、より色濃く僕の作品に表れていくと思います。

Photography Kentaro Oshio
Text Nagisa Nasu
Edit Kumpei Kuwamoto(Mo-Green)

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写真家アリス・ホーキンスがドリー・パートンへささげるオマージュ レンズを通して考察するセクシュアリティとフェミニニティ https://tokion.jp/2023/09/29/alice-hawkin-dear-dolly-baron/ Fri, 29 Sep 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=209658 自身のアイドルであるドリーの魅力、フェミニニティについて、日本人の女性像などについて話を聞いた。

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©️Alice Hawkins

1990年代、イギリスから発信されたクリエイティビティの衝撃は世界中を駆け巡った。それはパンクというサブカルチャーの終焉を迎え、1980年代後半に起きたバッファロー・レヴォリューションと呼ばれたファッションムーブメントをきっかけに爆発した新しいクリエイティブのパワー。『i-D』や『The Face』などのイギリスを代表するカルチャー誌から発信された“リアリティ”スタイルのファッションストーリーは、それまでのファッションフォトグラフィーの定義を破壊し、新たにファッションフォトアートの潮流が作り出された。それによってファッションフォトグラフィー界では、グレン・ルチフォードやユルゲン・テラー、マリオ・テスティーノ、ヴォルフガング・ティルマンス、エレイン・コンスタンティンなど多くの新スター達を輩出。そしてアリス・ホーキンスもまた、当時アートスクールを卒業後すぐにその才能を見いだされ、彼等の後を追うようにファッション・カルチャー誌や広告キャンペーンなど数多くの媒体で活躍したフォトグラファーの1人だ。

現在イギリスはもちろん、世界各国で個展などを行い、アーティストとして活躍するアリス。そんな彼女が5月に出版した最新写真集『Dear Dolly』は、アメリカのカントリー・ウェスタンミュージックの女王といわれたソングライター、ドリー・パートンに対するアリスのイメージが凝縮されたものだ。西洋の価値観ではブロンドの髪の女性は憧れであり、一般的な男性においてセクシャリティをイメージさせる美しい女性を表す。マリリン・モンローはもちろん、パメラ・アンダーソンやアナ・ニコル・スミスなど、彼女達が持つブロンドの髪と肉感的な体形。それは「フェミニニティ」と「セクシュアリティ」という女性らしさを表し、とくに男性から称賛される一方で、時には知性に乏しいという印象を抱かせるという屈折した偶像ともなった。しかし自身もブロンドの髪を持つアリスは、ドリーの「女性的なもの」を尊敬し、女性的でありながら、才能と強さを持つ彼女に憧憬の念を抱き、その想いを写真に収めるに至った。

自らドリーに扮してセルフポートレートや他のモデルとともに彼女のアイドルにオマージュをささげたこの写真集には、セクシュアリティよりも、母性や女性らしさに溢れている。制作メンバーには、アートディレクションに『The Face』『POP』『LOVE』などのアートディレクターとして知られる「Suburbia」のリー・スウィリンガムとスチュアート・スポルディングが担当。彼らのクリエイティヴィティがアリスの写真のクオリティをさらに高めている。

今回は、日本にも撮影で訪れたことがある彼女に同作を通して彼女が表現したかったこと、自身のアイドルであるドリーの魅力、フェミニニティについて、そして本人の女性像や日本人の女性像などについて語ってもらった。

自身のアイドル、ドリー・パートンにささげた本作

――『Dear Dolly』のコンセプトを教えてください。

アリス・ホーキンス(以下、アリス):これは、私が深く愛し、憧れる人について語っているとても個人的な作品です。この自己の世界でどのように動き回り、いかに自分を見せるか、という夢やファンタジーを探求しています。自分の個性をしっかりと保ち、コントロールすることで大きな力が発揮できると信じているから。

『Dear Dolly』は、名目上1人に宛てたものですが、変身し、喜びを分かちあいたいという願望を理解する人全員に向けたもの。偶像を通して自分自身をフィルターにかけることで、私達がどのような人間になりたいかを見いだすための探求です。この点についてドリーは「観客は、私が私であることを見るためにショーを見に来るのではない。彼らは自分達がなりたい姿を見に来るのだ」と言っています。

――この写真集を作ることになったきっかけは?

アリス:2010年に初めて「ドリーウッド」(ドリーが運営するテーマパーク)に行ってから、 いつか私のアイドルであるドリーの作品を作るためにまたここに戻って来たい、と思っていました。そして最近、大切な友人が命を断ってしまい、彼の葬儀を終えて傷心のままニューヨークに戻った時、夫が「ドリーウッド」へのドライブを提案してくれたんです。そこに再び訪れて、1970年代に実際に使われていた彼女のツアーバスに乗り込んだり、チャペルの中で静かに座ったり、幼少期に住んでいた小屋のレプリカの中をのぞいたりすると、ドリーを身近に感じ、深い感動に包まれました。ドリーのファンがここを訪れると、スピリチュアルな何かが起こるみたいで、この体験が癒やしと感動を与えてくれました。

その後『Ponystep』誌の編集者リチャード・モーティマーにアイデアを提案したら、幸運なことに出版することに同意してくれました。そして翌年、ヘアスタイリストとファッションスタイリストを連れて、テネシー州のナッシュビルにあるドリーの曲に関連する場所で撮影することができました。

――このプロジェクトを始めるのに、何かの決意があったのでしょうか?

アリス:他の誰のためでもなく、ただ自分自身のためにやる、という決意でした。大切な友人を失った傷心とともに、人生は短すぎるという直感が胸を打ち、亡くなった彼が私を駆り立てているのを感じました。少なくとも自分自身にそう言い聞かせていたんです。当時すでに妊娠後期で、もう1度自分自身何かを感じたいと切実に思っていたのも理由のひとつ。この時私は妊娠糖尿病と診断され、週1回は健診を受けていました。救命手術を伴うかもしれない危険な状態にあるという怖いトラウマから逃れたかったんです。そして母親になったら、もう2度と自分勝手なことはできないだろうとも思っていましたから。

妊娠後期中、大きなお腹に小さな生命を宿したという最も女性らしい身体をしていた私は、撮影のために全裸にならなければいけないと思っていました。それまで1度もやったことがなかったけれど、人生のその時点では、私は見た目よりもすべてに対処している自分の身体に誇りを感じていたんです。外部からの意見には一切左右されない、すべてを飲み込むような空間を移動しているような感覚でしたね。

――自身を含めてドリーのイメージを伝えるモデル達はかなり重要ですね。どのように見つけたのですか?

アリス:彼女達とは、ドリーのファンという共通の理由で知り合いました。1人はドラァグクイーンの友人を通じて知り合ったクレア、まさに運命の出会い。もう1人のトリクシーはロックダウン中にオンラインでの会話で決めました。2人ともコロナの影響でプロジェクトを進められない間、私に夢を与え続けてくれた人達です。

さらにもう一人のモデル、ケリー・オブライエンはプロのドリーのモノマネ芸人。彼女達はドリーの美学に共鳴し、愛し、尊敬している。クレアが撮影のために作ったウィッグ、ケリーが海外から取り寄せたドリーのレプリカの衣装、花柄のディテールやウッドチップを壁にあしらったピンクのベッドルームのインテリアまでドリーのイメージが表現されています。彼女達が素晴らしいのは、自分自身に誇りを持ち、信念を持って自身のセクシュアリティとフェミニニティを受け入れていることです。

――子ども達を作品に参加させた理由は?

アリス:母親というアイデンティティが大きな部分を占めているから。ケリーも母親で、10歳になる娘のアンバーも写真に登場しています。私の双子の息子バディとバスター、カメラマンのアシスタントのレオニの双子の娘、ルミン・ジュンとマコーレーも参加しています。

本作を通して、ドリーを慕う人達の間に見つけた姉妹愛も伝えたかった。それは彼等とつながることで感じる帰属意識です。だからレオニにはブロンドの双子の娘を連れてくるように頼みました。それがルミン・ジュンとマコーレー、トリクシー、私が一緒に写真に写っているもの。また写真集に私達全員の姿を何度も映し出すことで、作品全体を通して、新たに発見した姉妹愛の強さと、ドリーへの共通の愛を強調しようとも思いました。

――この本を作るにはどのくらいの期間を費やしましたか?

アリス:2010年から2021年の11年間。本の最後の章では、私が持っているドリーのチラシやパンフレットをひたすら紹介しています。これは20年以上前に彼女のファンになってから始めたドリー・スケッチブックという日記をスキャンしたものです。このファンダムという要素は悪趣味だと思われがちですが、私のプロジェクトには欠かせないものでした。

――歴史的に、ブロンドの女性は魅力的でセクシーな女性の代名詞だった。ドリーもその1人として知られています。彼女に憧れた理由は?

アリス:2001年に初めてドリーのアルバムを買って以来のファンですが、当時はアートスクールを卒業し『i-D』誌の撮影を始めた頃で、また同時に「エージェント・プロヴォケーター」のお店で時々アルバイトをしていました。2002年に初めて彼女のパフォーマンスを見た時は、魂を奪われたような感覚になり、一瞬で「私のアイドルを見つけた!」と確信したほど。ドリーが大胆不敵に、堂々と、自分の理想とする女性らしさを完全に受け入れていることに本当に感動しました。彼女の人柄と存在感は、ブロンドでセクシーで、しかも万能(美しく、賢く、強い)でいられるという概念を明確にしてくれました。とくに彼女の強さは、自身のセクシュアリティを用いることから引き出されていると思います。批判に対してユーモアと皮肉を使うことで、自身の宣伝としても利用しているから。

――実際にドリー本人に会いましたか?

アリス:今回のプロジェクトのためではないのですが、2011年に初めて彼女に会いました。写真集の最初のページの写真は、「O2」で行われたドリーのコンサートのバックステージで一緒に撮ったもの。イギリスのシンガーソングライターで友人のパロマ・フェイスが撮影してくれました。「バックステージで彼女に会わない?」とパロマからメールを受け取った時はすごく驚きました。フェイクメールかと思ったぐらい! ナッシュビルでの撮影を終えた私にとって大きな出来事でしたね。この時私が撮影した写真をプリントして彼女にプレゼントしました。ドリーはとても喜んでくれたのを覚えています。その翌日、彼女のマネージャーから「あなたはまるで若い頃のセクシーなドリーみたい。また今後もショーに来て彼女に会ってほしい」とお礼のメールが届きました。これは私にとって誇りであり、最後までプロジェクトを続ける励みになりましたね。

フェミニニティとセクシュアリティの探求

――この本で最も表現したかったことは?

アリス:ブロンドで、セクシーであると同時に、万能でいられるんだということ。そして心からドリーを愛していることを伝えたかった。今回アイドルに敬意を表して作品を作ることは、逃避と空想の場の機会を与えられるとともに、自身のフェミニニティとセクシュアリティに誇りをもち、分かち合い、探求することを可能にしてくれました。フォトグラファーとして仕事を始めた当初から、自分の作品に登場したり、セルフポートレートを撮ったり、フォトパフォーマンスを行なうなどしてきました。それは自身のアイデンティティと戯れ、探求するため。つねに被写体のように大胆で勇敢になりたいという夢があるからです。でも『Dear Dolly』は、私という人間や私自身のフェミニズムを理解するという点では、それ以上のものを与えてくれました。20代、30代、そして母親になってからも、ドリー自身の言葉を借りれば、「自分らしさを見つけ、目的を持って行動する」ことを可能にしてくれたんです。

――この本はフェミニニティに溢れていますが、あなたにとってフェミニニティとは?

アリス:私にとって女性らしさ=フェミニニティとは、自分自身の基準やルールを定義すること、つまり自分自身の体を所有し、人としてたたえられることです。女性らしさとは、単一のカテゴリーというよりはむしろスペクトルのようなもので、女性らしくあるために女性である必要はありません。それは自己表現であり、理想的な世界では、あなたの女性らしさがどれほど極端であろうとなかろうと、判断や固定観念なしに見られるべきです。

――何度か日本にも訪れていますが、あなたにとって日本の女性像とは?

アリス:日本の女性について私が抱く印象は、比較的保守的な集団主義文化の中で生活しているため、その中に溶け込むか、勇気を持って正反対のことをするかのどちらかではないかということ。彼女達は個人主義者になるか、あるいは集団でファッション・サブカルチャーの一部を形成する人々になる。そしてその多くは日本独自のものであり、神秘的で、魅了されます。

日本女性の中では少数派であろう「常識にとらわれない自分を見せる」という、彼女達の反抗心は素晴らしいことだと思うし、自己表現への追求には驚かされます。そして細部へのこだわりは世界トップクラスで、そこには多大な努力をしていることが窺われる。以前日本を訪れた時、道で芸者を見つけると、まるで王族かセレブが通りかかったような気がして、畏敬の念を抱いて目が釘付けになりました。

―ーそれはいつのことですか?

アリス:『インディペンデント・サンデー・レビュー』の仕事で日本に行った2007年。「ア ベイシング エイプ®」のNIGOが東京で「フェンディ」と開催したイベントを撮影するために行きました。それから2日間、『i-D』の仕事でミュージシャンを撮影したり、最終日には秋葉原の電気街を探索したり、メイド喫茶で働く女の子達を発見して嬉しくて有頂天になりました(笑)。典型的な18世紀英国ヴィクトリア朝のメイド服を着ていた彼女達の写真を撮るために、帰りの飛行機のスケジュールを変更したくらいです。その光景すべてが不思議で魅力的で、今まで日本で見たことがないものも多かったですね。

「エージェント・プロヴォケーター」のショップガールとして働いていた時、私もコスチュームのようなデザインの制服を着ていたので、カフェの女の子達に親近感を覚えました。当時は「ヴィヴィアン・ウエストウッド」による黒のボタンがついたピンクの短い丈のタイトなドレスにヒールを履いていました。実生活では許されないようなスタイルが、ショップガールとしては許される。そこに性的なパワーを見つけたのです。

でも日本で最も興味を持ったのは、制服の中には“セクシー”という西洋のステレオタイプの理想を覆すような、肉体をまったく見せないものが多くあったこと。私がポートレートを撮った女の子の制服の中にもバリエーションはありましたが皆同じような感じでした。最も魅力的だったのは、『ダウントン・アビー』から抜け出してきたかのようなメイドの制服。この古風なイギリスのピューリタン・スタイルを、私にとって未来都市のように感じられる現代の東京で見たのは不思議な感覚でした。

――その他に日本滞在時に何か驚いたことはありますか?

アリス:2度目の来日となった2015年。下田の温泉に行きましたが、それは忘れられない別世界のような不思議な場所と体験でした。夫も一緒だったのですが別々に入浴し、日本の伝統的な静謐な雰囲気の中で、日本の女性達と一緒に裸でお風呂に浸かりました。その場にいた外国人は私1人でしたが、自己表現のための外見的な要素はすべて取り除かれ、一体となった感覚がありました。今思い返しても、とても感動的な体験で癒やされます。もしこの場面を写真に撮っていたら、きっとこの経験は台無しになっていたでしょうね。

――憧れのドリーのような西洋の女性と日本の女性を比較してどのように思いますか?

アリス:もし私が芸者とドリーと同じ部屋にいると仮定したら、どちらを先に写真を撮るかわからないですね。それぞれが、別世界のクオリティとこだわりのある自己表現を放ち、まばゆいばかりに輝いているから。でも、もしドリーのような超フェミニンなイメージのブロンドで個性を主張する女性と比べ、保守的な社会のルールや制限された自己表現を守り、同じビジュアルに溶け込んだ日本女性についてどう感じるかといえば、それらはとても対照的だと言えます。日本では伝統的な保守的価値観が根強く、女性の人生のあらゆる時期において女性らしさに対する不文律や期待が存在するため、個人主義になるのは容易ではなく、奨励も期待もされていないのではないでしょうか。もしかしたら、西洋の象徴的なセクシーなブロンド女性の理想像の影響はそもそもなかったのかもしれない。この2つの対照的なイメージが存在するのは、形成されてきた文化がそれぞれ違うからでしょうね。

写真家からアーティストへ。新たな自己表現の仕方とは

――ファッションフォトグラファーからアーティストへ転身した理由は? 

アリス:今でもエディトリアルの撮影は継続しています。最近では、今年初めにパリで、アメリカの演劇プロデューサーでゲイのファッションアイコンのジョーダン・ロスを『キングコング』誌で撮影したり、友人のデザイナーであるオリンピア・ル・タンによるカプセルコレクション「メゾン キツネ」の広告キャンペーンも撮影しました。でも時には、私の作品はファッション誌や広告キャンペーンから旅立ち、アートギャラリーや本の中で別の人生を歩むこともあります。ナッシュビルでドリーのセルフ・パフォーマンス・ポートレートを撮るという私の提案を支持してくれたのは、ファッション・アート誌でした。そしてこれらの写真は『Dear Dolly』プロジェクトの最初の章になったのです。写真を撮ることは誰にでもできますが、私にとっては、それが私個人にとって本能的に何かを意味するものであり、自然に衝動的にやってみたくなるものでなければならないのです。自分の夢やファンタジーの実現を感じるために。

アーティストとして不可欠な要素は?

アリス:初めてカメラを手にしてからずっと、私は自分のアイデンティティを探求してきました。よく考えてみると、それは10歳の時から寄宿学校へ行ったこととかなり関係があると思います。学校はとても厳しくて普段は制服で誰もが同じ姿ですが、土曜の夜だけ私服が許される。それは自己表現ができる唯一の日。食事を受け取るために学校の巨大な食堂の中央に並び、闊歩する姿はまるでファッションショーのランウェイを歩いているような気分でしたね。入学当時、男子生徒は600人、女子生徒は100人ほどで、女性の先生も少なかった。男の世界のような場所で、“キャットウォーク”が耐え難いものになるか、素晴らしいものになるかは、他の女子たちの私服を借り服装をどう工夫できるかで決まる。服装と個人的なアイデンティティは、土曜日の夕方の学校で特に重要になったんです。

また、仕事の経験から言うと、私の場合コミッショナーや雑誌編集者が自分を信頼してくれた時、最高の仕事をすることができると気づきました。アートスクールを卒業した翌日に『i-D』誌のために初めて撮影したとき、プロジェクトにどうアプローチするか、依頼内容にどう反応するかは、自分の直感に耳を傾けるといいことを教えられました。その時の仕事は、ホワイト・キューブ・ギャラリーで開催されたスティーブン・マイゼルの「ヴェルサーチェの主婦たち」展のオープニング・ナイトの撮影でした。でもその中には怖くて入れず、代わりに入り口近くでパパラッチと一緒に立ち、そこに出入りするおもしろいものや人を撮影しました。編集者は私の写真を喜んで掲載してくれてホッとしましたが、それからは、自分がこうすべきだと思うことよりも、自分の感覚に従った方がいいと思うようになったんです。自身の心の声を聞くことは、アーティストとして不可欠なことだと思いますね。

――写真で最も大切にしていることは?

アリス:新しい現実を約束すること。それは、最高の自分、あるいはまだ想像もしていない自分に自由になれることです。フィクションと現実の間のバランスを描くこと。現実と理想の境界線をぼかして、ある種の高められた現実を作り出すことです。でも当然のことながら、さまざまな要素を演出することで、最終的には私が感じる現実のバージョンを描いていることは自覚しています。私の写真の中で、現実が重みを与え、そこに空想が解き放たれることが重要なのです。

私が写っているかどうかにかかわらず、私の写真はすべて”セルフポートレート”です。私はただ単純に写真を撮っているわけではなく、感情を動かされたり、個人的にインスピレーションを感じたりしないものを撮ることは考えられません。被写体に共感すること、つまり個人的な感情で被写体を見つけてつながることが重要。私の写真と人生が確実に手を取り合っていることがとても大切なんです。

私の作品は、写真を作るプロセスで冒険し、発見し、ロードトリップの感覚で作られることが多く、その過程で主題を発見する。現実を描くという意味でのドキュメンタリー。現実的で、事実に基づいた、予測不可能な状況。つまりレンズを通した時に何を見つけられるかわからないところが好きなんです。私の写真の意図するところは、寓話と現実の境界線を探ること。そして、私が捉えたものが現実の瞬間であり、程度の差こそあれ、最終的に私自身が創作し、演出したものをそう信じてもらえれば満足です。

――あなたにとって写真とは何ですか?

アリス:人生を豊かにし、退屈しない生き方をするもの。表現し、伝えるための手段であり、私が気付き、捉える価値があると思うものを大切にするための手段でもあります。さらに言い換えれば、あらゆる文化圏の興味深い人々を調べたり、出会ったりするための口実。見知らぬ人と友達になり、新しい場所を経験すること。

――今後の予定を教えてください。

アリス:あなたと話していたら日本を思い出しました。また戻って芸者達の写真を撮りたいです!ドリーの言葉を借りれば、私の大好きな歌の一節、「そう、私は夢を見ているだけだとわかっている。でも夢を見続けるだけ」という気持ちですね。

アリス・ホーキンス(Alice Hawkins)
女性らしさとジェンダーの社会的定義について考察するイギリス人アーティスト・フォトグラファー。2001年カンバーウェル・カレッジ・オブ・アートを卒業後、『PPO』『i-D』『LOVE』『Vogue』などに寄稿。ロンドンのサマセット・ハウスや北京のUCCAでグループ展や個展を開催する他、昨年はハートルプールアートギャラリーで「The Female Gaze: Revisited」を、「メゾン キツネ」(ニューヨーク)による展覧会「Imagined Realities」を実施。今でも雑誌に寄稿する傍ら、今年5月『Dear Dolly』を発刊と同時にHABギャラリーで行った個展を開く。『Dear Dolly』は、初写真集『Alice’s Adventures』(2017年)に続く2冊目の写真集。

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連載「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」Vol.14 物心がついたときから絵が好きだった 見取り図・リリーの本棚に並んでいた3冊 https://tokion.jp/2023/06/25/creators-talk-about-books-vol14/ Sun, 25 Jun 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=191620 お笑いコンビ、見取り図のリリーが選んだ3冊のアートブック。

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今回、登場するのはNSC大阪に29期生として入学し、同期の盛山晋太郎と2007年に結成した見取り図でボケを担当している、リリー。大阪で圧倒的な支持を得ながら、2018年にオールザッツ漫才ネタバトル優勝、2019年に第4回上方漫才協会大賞受賞、2020年ではM-1グランプリ第3位と、漫才の実力もお墨付き。そうして彼等はいつからか、名実ともに次世代のお笑い界を背負って立つ存在となった。2022年に活動の拠点を東京へ移して以降、その人気にはさらに拍車が掛かり、その姿をテレビで見かけない日はないほどだ。そんな忙しい身でありながらリリーは、今でも美術館や展覧会に足を運び、自分でも油絵を描き、アートに関する連載まで手掛けている。“お笑い”と“アート”という、一見相反するように見える2つの芸事。両方のとりことなっているお笑い芸人のリリーに、彼の心を掴んだアートブック3冊を聞いてみた。

リリー
NSC大阪校29期生。2007年5月に盛山晋太郎と見取り図を結成。趣味は絵を描く、美術館巡り、麻雀、サッカー、水泳。特技は絵、水泳、サッカー、料理。

『フェルメールと17世紀オランダ絵画展公式図録』

オランダの絵画を集めた展覧会で買った図録です。オランダといえばフェルメールやレンブラントに注目が集まるんですけど、それ以外にも素晴らしい絵画が多いんですよ。特に僕はオランダの静物画が好きなんです。

『キジのパイがある静物』とかめっちゃきれいでみずみずしさがすごいでしょ。こんなのとか、ずっと見てまうんです。静物画って、絵画のヒエラルキーからしたら低くて、宗教画とかの方が高いんですよね。でも、僕は静物画が好きなんです。単純にこんなに細かいのは描けないですね。エグいですよ。単純に技術がすご過ぎますよね。キジが何を表しているとか、いろんな意味があるらしいのですが、僕はそういうのはわからないです(笑)。けど、計算してこんなにきれいな絵が描けるのはすごいなって思わされます。

『Okamoto Taro: A Retrospective』
岡本太郎

岡本太郎は作品より、著書から入りましたね。活字の本が強烈で、その生き方が格好良い。僕がこの中で好きな作品は『森の掟』ですね。これにもいろんな意味が込められていて。

弱肉強食の中央にいる巨大な猛獣は……真ん中は巨大な権力でチャックが開けば悲劇が喜劇に転じるみたいな。難しいけど、いろんな意味があるんでしょうね(笑)。躍動感もあって、見ていて気持ちの良い作品ですごい好きですね。本を読んでその人となりを知っていると、納得せざるを得ないなって思います。だから岡本太郎は人間味も含めて作品ですね。

『AMEDEO 展覧会の図録』

これはモディリアーニという画家がメインで、“パリ派”としてくくられている画家達の作品が集まっている画集なんです。藤田嗣治やシャガールとか、18世紀頃の画家も結構好きでどれも作品がめっちゃおしゃれなんですよね。時代の空気感も感じられるし。

どの人も首が長く描写されていて独特じゃないですか。これには諸説あるらしいですけど、アフリカとかの古代美術でも、そういう形の彫刻が多くて、それが好きだったって説があるんですよね。岡本太郎やピカソもアフリカの古代美術がめっちゃ好きだったみたいなんです。

「油絵を始めてからは『どうやって作品を描いているのかな?』と考えながら人の作品を見るようになりました」

アートは生まれた時から好きで別に好きになろうとか意識はしてなかったです。単純に昔から絵を描くことが好きでしたね。漫画の影響も大きいと思います。お母さんが本屋で働いていて、他のものは買ってくれないんですけど、漫画だけはいくらでも買ってくれたんですよ。子どもの時は『ドラゴンボール』や『ろくでなしBLUES』が好きで、よく模写をしていました。今は油絵を描いていて、まだまだ下手ですけど上手くなりたいと思って描いています。最近は忙しくて描き途中になっちゃっているんですけど、緊急事態宣言の時は毎日描いてました。今までは見る専門だったんですけど、油絵を始めてからは「どうやって作品を描いているのかな?」と考えながら人の作品を見るようになりましたね。絵とか描くのは好きですけど、仕事にしようと思ったことは一度もないですし。だからこそ、ずっと好きでいられると思うんですよね。

Photography Kentaro Oshio
Text Tsuneharu Mamiya
Edit Kumpei Kuwamoto(Mo-Green)

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連載「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」Vol.13 写真家・赤木楠平 長年、手元に置き続けてきた3冊の毛色が異なるアートブック https://tokion.jp/2023/05/31/creators-talk-about-books-vol13/ Wed, 31 May 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=187026 ”Kenko健光”シリーズ、多重露光写真”Zenzen”を生み出した、写真家・赤木楠平が選んだアートブック

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カメラのレンズを外し、光を採集/撮影をする“健光(Kenko)”等の手法を編み出した、写真家・赤木楠平。東京に生まれて、サウジアラビアやシンガポールで多感な時期を過ごしたからこそ培われた視点で、カメラを使った作品を生み出し続け、展示会やDJイベントなども精力的に開催し続けている。自身が生み出す作品は“健光”シリーズをはじめ、多重露光写真シリーズ“Zenzen”など、写真という技法を使った、独自のアプローチを用いることにより、偶発的に生まれる美しい色彩が最大の特徴だ。今回は誰もみたことのないものを捉えて描写し続け、写真家という枠に収まらない彼の有するアートブックと写真集をご紹介いただいた。

赤木楠平
幼少期をサウジアラビアやシンガポールで過ごす。日本大学芸術学部写真学科を卒業した後に渡英。2008年に帰国し、2013年からはポーランド・ワルシャワに拠点を置く写真家集団「Czulosc(感度)」に初の外国人メンバーとして参加している。また近年は、絵画の制作も行っている。

『タロット・トキ式』
マドモアゼル朱鷺

マドモアゼル朱鷺さんはタロット占い師でアーティストなんだけど、僕がロンドンに行く前の10代の頃に、毎日のように朱鷺さんに遊んでもらっていて本人からもらったんだよね。当時は僕もまだ子どもだったし、向こうは12歳上だったから、いろいろ教えてもらってたんです。タロットのタイトルごとにページが分かれていて、それぞれに写真と名言、そして朱鷺さんのメッセージが添えられています。

有名なカメラマン達の写真が使われていて、本としてもとてもかっこよくてさ。本全体が不安から希望に繋がる流れになっていて、ふとした時にパッとめくって、そのページを見て自分なりに感じたことを解釈して「そうだな」とか「そうしよう」と考えてから行動をするようにしてる。

『Shinjuku(Collage)』
吉田昌平

吉田昌平というアーティストの本なんだけど、彼は森山大道のファンで森山大道の写真集『新宿』を使ってコラージュした作品集。写真集のコラージュで新たな写真集を作っているわけだから、リミックスというか考え方が音楽的だよね。こうやって本を作るってあんまりない表現じゃん。

1人の作家の写真を勝手にコラージュして、OKが出たというのがいいなと思って。森山さんの写真が本当に好きだったんだろうね。森山さん本人も嬉しかったから「よくぞやったな」ってOKを出したと思うんだよ。

『タイトルなし』
赤木楠平

これは僕の最初の作品集。2013年にポーランドを拠点とする、写真家集団「Czulosc(感度)」に初の外国人メンバーとして参加したんだけど、その時に作ったステッカー本。コロナ禍に入る前まではグループ展があって、ポーランドに毎年行っていたんだよね。

この本は特にタイトルが無いんだよね(笑)。もともとはアルバムだったものにステッカーの作品を貼った手作りなんだよ。これを欲しがってくれる人もいたんだけど、売りたくないものでこれは自分で取っておいてあるんだよね。

「パーティによく行っていて、周りにDJの人達が多いから、その考え方とか行為とか手法に影響を受けているんだろうね」

「タロット・トキ式」はアートブックとしてのクオリティの高さもありながら道具としても使えるから、道具みたいに常に持ってる。僕はタロットの勉強をしていないから、細かいことはわからないんだけど(笑)。「Shinjuku(Collage)」は作品というよりも、アイデアとして好きだね。サンプリング、DJ的というか、考え方がおもしろいと思ったんだ。普段から僕はパーティによく行っていて、周りにDJの人達が多いから、その考え方とか行為とか手法に影響を受けているんだろうね。自分の作品集もたまに見るよ。作品をたくさん作っちゃうからこういうのがいっぱいあるんだよね(笑)。持ってると人にあげちゃうし、作品を作っているとどんどん時間がなくなっていくんだよ。だから最近はなるべく本とか読んだり、インプットしたいと思っている。だからパーティもほどほどにね(笑)。

Photography Kentaro Oshio
Text Tsuneharu Mamiya
Edit Kumpei Kuwamoto(Mo-Green)

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連載「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」Vol.12おもちゃ店「SPIRAL」オーナー・高橋香代子 自身のキャリアに寄り添ってきた3冊 https://tokion.jp/2023/05/14/creators-talk-about-books-vol12/ Sun, 14 May 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=184272 原宿のおもちゃ店「SPIRAL」オーナー・高橋香代子が選んだ3冊のアートブック。

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原宿の「SPIRAL」は1990年代から続く老舗のおもちゃ店だ。ディズニーやシンプソンズといったメジャーなキャラクターだけでなく、アメリカに買い付けに行き選んだ、遊び心あふれるアイテムの数々が小さな店内に所狭しと並ぶ、その世界観は原宿メルヘンと呼ぶに相応しい“KAWAII”があふれたおとぎの国のよう。一点ものを見つけるために宝探しをするコレクターから、その“KAWAII”を体感するために訪れるおもちゃ初心者、観光客、そしてセレブリティまで幅広いファンがこの原宿の小さなお店が醸し出すファンタジーあふれる世界観に魅了されている。今回は原宿のおもちゃ店「SPIRAL」のオーナーである高橋香代子にとって、お店の世界観作りに欠かせない3冊を、「SPIRAL」の原点となった露天商時代や「1990年代の東京」というまた別のおとぎ話とともに振り返った。

高橋香代子
原宿の「おもちゃやSPIRAL」オーナー。「SPIRAL」は1990年代のアメリカのおもちゃ・雑貨を中心に取り扱う。自らアメリカへ買付けに行き貴重なヴィンテージや一点ものが揃う。

『SNAPS』
エレン・フォン・アンワース

おもちゃ店を始める前は美容師だったんです。その頃は今ほどインターネットが普及していなかったから、仕事が終わったら最先端のヘアスタイルを勉強するために海外誌とか海外の写真集を探しに夜中まで開いてる本屋にチェックしに行くのが日課だった。私は六本木の方に住んでたから、麻布警察署の並びにあった青山ブックセンターに夜な夜な足を運んでいて、エレンが撮ったタバコを吸ってるナオミ・キャンベルの写真にすごい惹かれ「誰が撮っているんだろう?」と調べたことが最初の出会い。

別の機会に別の雑誌を見ていて「この広告格好いいな」と思ってクレジットを調べたら、またエレンだった。出ているモデルも髪形もかっこよかった。当時はかっこいいものを見たかったら海外誌を見るしかないから、ずっと立ち読みしてたんだよね(笑)。ちょうどこの頃、サロンで働くのが苦痛になってきていた時期で。ヘアメイクをやりたいと思っていたけど、ヘアメイクでやっていける人なんてほんのちょっとじゃん。結局、ヘアメイクがやりたいのか何がやりたいのか、よくわからなくなって。その時に六本木の道端で、私の元ボスに声かけられたの。道で物を売っているおじさんに(笑)。

『WARTER KEANE』
ウォルター・キーン

ウォルター・キーンはサンフランシスコ出身のアーティスト。道端で知り合った元ボスに買い付けに誘われて、あるタイミングで一緒に行ってみた。名前も知らないおじさんと行った、初めてのアメリカでの買い付けがおもしろくて美容師をやめて、自分で買い付けをするようになったんです。よく買い付けで「ブライス」っていうおもちゃの人形を買ってたんだけど、パルコのコマーシャルに使われてから値段が高騰してしまって。このウォルターの絵を見た時に「ブライスみたいだな」って感じた。

ウォルターの活躍していた時期も1960~70年代なんだけど、1970年代のアメリカのおもちゃって、泣いてるお人形とか、こういうちょっと寂しい感じのものが流行っていたんだけど、「この時代のものはなんでこんなに寂しい表情の人形や絵が多いんだろう?」って思って気になるようになったんです。この人の絵を「怖い」っていう人もいるんだけど、私は寂しくて大きい目に惹かれて、フリマで見かけると買うようになりました。クリエイターが語る写真集とアートブックの世界

『Gary Baseman』
ゲーリー・ベースマン

ゲーリーの本は何冊か持ってるんだけど。このアーティストの作風は「ポップだけどかわいすぎない」みたいな。キャラクターはみんな可愛いんだけど、口とか目から何か垂れていておもしろいし、どうしてこういう風にしちゃうのか気になる(笑)。彼の描く絵のキャラクターの目もウォルターの描くキャラクターの瞳みたいで大きくて印象的。

LAに買い付けに行った時に雑貨店兼ギャラリーみたいなところで見て、「何だこの絵?」って思ってから気になるようになったんです。フィギュアなどの立体も出ていて、リトグラフは知人にプレゼントしてもらいました。かわいくて何か気になる存在。

20代の美容師時代に出会った写真集

エレンの写真はやっぱりどれもかっこいいんだけど、やっぱりナオミが髪をコーラの缶で巻いてるやつが好きかな。ゴメンね、この写真集には入ってなかったんだけど(笑)。ナオミの髪形も大好き。

キーンとベースマンのは改めて見てると、私ってちょっと暗いのが好みなのかなって思った(笑)。暗いというよりアダムス・ファミリーみたいな「奇妙な可愛さ」が好みではあるかな。ウォルターは10年くらい前にティム・バートンが監督した映画で取り上げられていたけど、あの映画によってすごい絵が高くなっちゃった。私が買った頃もそんなに安くはなかったけど。お客さんの中にも好きだと言ってくれる人がいて、以前はよく買い付けていました。

1990年代はインターネットが普及していなかったから、世界中に自分が知らないものがいっぱいあったの。だからアメリカや海外での買い付けがおもしろくて、私は買い物が好きなんだなって思って美容師をやめた。それで公園通りの路上にお店を出したのが「SPIRAL」の原点かな。作品集を見返して振り返ると、それぞれに思い出がありますよね。見返すとやる気が出るじゃないけど、「こういう世界をつくりたいな、こういう世界観がやっぱり好きだな」と楽しくなりますね。

Photography Kentaro Oshio
Text Tsuneharu Mamiya
Edit Kumpei Kuwamoto(Mo-Green)

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連載「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」Vol.11 セレクトショップ「カンナビス」バイヤー・HIMAWARI インスピレーションの源である3冊 https://tokion.jp/2023/04/15/creators-talk-about-books-vol11/ Sat, 15 Apr 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=178747 「カンナビス」のバイヤー兼オーナーのHIMAWARIのインスピレーション源といえる3冊を紹介。

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「音楽・ファッション・アートを切り口にアウトサイダー(異端児)達の集まる場所」をコンセプトに掲げ、2000年にオープンした原宿のセレクトショップ「カンナビス(CANNABIS)」。現在、同店でバイヤー兼オーナーとして働くHIMAWARIは、個性的なファッションをクールに着こなすセンスと飾らない人柄で、ファッションアイコンとして多くの支持を得ている。流行と個性がひしめき忙しく移り変わる渋谷と原宿、その2つを結ぶキャットストリートで20年以上続く「カンナビス」で育った彼女は、昨年から同店のオーナーとして一層精力的に活動の幅を広げている。「カンナビス」以前から始めていたDJは、今では自身のイベント以外にもゲストとして引く手数多であり、本業を忘れさせるほどの活躍を見せている。また不定期に刊行される『PETRICHOR』誌のメンバーとしては、美大出身という背景を生かして撮影やMVの制作にも携わってはその才能を発揮している。このようにHIMAWARIは、ファッションを軸に音楽とアートという、まさに「カンナビス」のコンセプトを地で行くようなクールな人生を満喫している。今回はそんな彼女の大切なアートブック3冊を紹介してもらった。

HIMAWARI
原宿にあるセレクトショップ「カンナビス(CANNABIS)」のバイヤーと店長を経て、2022年6月に元会社から独立し新たに「カンナビス」をスタート。DJとしても活動しており、多数のイベントでテクノ、アンビエント、トライバル等幅広くプレイ。インディー雑誌『PETRICHOR』のメンバーとしてMV等の制作にも携わっている。

『Parasites』
マルティン・エダー

ロンドンで偶然出合った、ポップでキモいアートブック

ウチはギャラリーに行くのが好きで、初めてロンドンに行った時も自分で調べて1人でいろいろ回ったの。これは内装が薬局をモチーフにしたカフェみたいになっている『ニューポート・ストリート・ギャラリー』で展示してた、油絵画家の本。ギャラリー自体が気になって行ったから、もともとこのアーティストのことは知らなかったんだけど、結構衝撃を受けた。ウチも油絵をやっていたからかもしれないけど。

犬とか猫の横にいきなり人間の裸が描かれてたり、ちょっとエロが入ってるんだけど、それが綺麗な裸じゃなくて、人間のキモい感じが描かれていて、作風も気に入った。わざわざ海外旅行中に、持って帰るのが大変な重い作品集を直感のまま2冊も買っちゃった、っていう思い出の本。

『Nam June Paik』
ナムジュン・パイク

ビデオ・アートの探究者・ナムジュン・パイクの作品集

彼はビデオアーティストで存在は前から知ってたんだよね。でも、パリに行った時にやってた彼の展示を見に行ったら、その展示がヤバくて。ブラウン管をいっぱい並べてその画面に映像を流すっていうインスタレーションだったんだけど、衝撃的すぎて、また作品集を海外で買っちゃった(笑)。2年くらい前に清澄白河でも展示をやってた。

東京で展示をやってた時はパカパカの携帯をいっぱい並べて映像を流したりとか、室内に森を作ってめちゃくちゃブラウン管を並べて部屋をつくってたりとか、彼の空間の使い方がマジでヤバい(笑)。

『ホテル ニューマキエ』
『おピンクマキエ画報』
『マキエマキの空想ピンク映画 ポスター集』
マキエマキ

自撮り熟女・マキエマキの写真集

これはウチの大好きなおばちゃん。おばちゃんって言っちゃいけないかもだけど(笑)。かわいい人で、作品はこの年齢の女の人だから出せるエロさで溢れてるんだよね。妖艶な感じでいながら全部自分でシャッターを切って撮る、自撮りおばちゃんなの。グラビアなんだけど、ロケ場所やアングル、それに衣装まで“ザ・昭和のポルノ”っていう感じ。ウチは昔から昭和のエロ本を集めているからすぐに気にいって、神保町でやってた写真展に行ったらご本人がいたから、話もさせてもらった。これも結構衝撃だったな。

デザインも古いエロ本みたいで好きだし、おっぱいに貝殻を付けた写真とか昼間の団地とかあるんだけど、セルフポートレートだからね(笑)。自撮りっていうのが超ヤバイなって。

「きれいなだけのアートよりもポップでありながらちょっとリアリティーがある、エログロとかが入ってるのが個人的な好み」

本がもともと好きで、このインタヴューの直前まで3冊に絞れなくて、重いのにたくさん持ってきた(笑)。もちろん洋服は好きだったんだけど、アートとか建築がもともと好きだった。ウチが働き始めたころの「カンナビス」は2フロアでギャラリーもあったから、空間デザインとかインスタレーションみたいなことがしたいなって思ったこともある。実際3冊に絞ってみると、ただきれいなだけのアートよりも、ポップでちょっとリアリティがあって、エログロとか入ってるのが個人的な好みなのかなって気付いたかも。

マキエさんの展示にいったのは、ちょうど『PETRICHOR MAGAZINE』で自分のページを作っていた時期で、もちろん作風は違うけど、自分なりのポルノを表現するインスピレーションになった。実際、今もいつか自分でポルノショップをやりたいなって思ってるし(笑)。今の「カンナビス」は前と違ってギャラリースペースはないけど、将来的にはこの店を大きくしたいと思っていて、こういった本とかを並べて紹介したり、アーティストの展示をやりたいなって思ってるの。そういった意味でも、今の私のインスピレーションの源になっている3冊かな。

Photography Kentaro Oshio
Text Tsuneharu Mamiya
Edit Kumpei Kuwamoto(Mo-Green)

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連載「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」Vol.10 アーティストのohiana ハードコアな作風に影響を与えた3冊 https://tokion.jp/2023/02/24/creators-talk-about-books-vol10/ Fri, 24 Feb 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=168519 ohianaのドープな世界観に影響をもたらした、3冊のアートブックについて話を聞いた。

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アヴァンギャルドなタッチのグラフィックとコラージュやアートワークによる独自の世界観を展開する、気鋭のアーティストohiana。そのホラーでカオスなアングラ感とどこかポップで笑える世界観に触れたら最後、“やめられない、止まらない”となるohiana中毒者が続出している。アーティスト活動以外にも、他のアーティストやアパレルブランドへのアートワーク提供やPV制作等で活動している。また2017年より展開している自身のアパレルブランド「A.C.C」は2月24日から原宿の「ドミサイル(Domicile)」でポップアップを開催する。今回は多岐にわたって活動するohianaのアーティストとしてのキャリアにおいて重要な3冊のアートブックを紹介してもらった。この記事でohianaが気になったなら、ぜひ「ドミサイル」で直接、彼の世界観に触れることをお勧めする。それでは行ってみよう!

ohiana
1985年生まれ。東京工芸大学卒。コラージュ制作を続ける。アパレルブランド「A.C.C」を展開。anal dragonのブック参加、アーティストへのアートワーク提供、術ノ穴所属アーティストのPV、自身でのTシャツ制作や、ウェアブランド「サベージ(SUB-AGE.)」へのグラフィック提供等で活動する。

『CLOTING FOR A CURIOUS LIFE』
ブレインデッド

ルックの撮影やコラージュの着想を得るための“教科書”のような1冊

エド・デイヴィス(Ed Davis)がやっているカリフォルニアの「ブレインデッド(BRAIN DEAD)」のアーカイヴ集。「ブレインデッド」はストリートブランドですが、自分も仕事で一番多いのがTシャツのデザインだったりします。Tシャツのグラフィックで「人をくり抜いてどこにレイアウトしようか?」とか考えるんですけど、この本には相当な数のアーカイヴが載っていて、僕にとって教科書的な感じで見ていますね。

自分もエドもコラージュをやるんですけど、わりと近いスタイルなんで勉強にもなります。それと「ブレインデッド」がかっこいいのは、アーティストの人選。あとはルック写真も多く、自分もルックを撮る時に構図等を参考にさせてもらってる、教科書的な感じの本ですね。

『mango spirit』
河井美咲

手作りでしか生まれない風合いを感じる1冊

河井美咲さんはNY在住の作家なんですけど、彼女の力の抜けたドローイングが本当に好きで。この本は10年ぐらい前に「TOKYO ART BOOK FAIR」でご本人が販売していて「全部オリジナルの1点ものだから、気に入ったのを見て」って直接お話しさせてもらって買いました。

1部ずつ全部本人の手作りなんです。もちろんコピーで出力はしているんでしょうけど、用紙の色やページの順番とかも1部ずつ違うと思います。本を束ねている背の部分もいろんな柄の布を使ってのり綴じして留めてるんですけど1点1点違うんですよ。

『Amazing Wizard』
ジョン・マギー

アーティストとしての在り方に共鳴した、ジョン・マギーのパラパラ本

これはジョン・マギー(John Maggie)というミシガン在住のアーティストのパラパラ本。彼は若い頃から絵を描いていて、彼の作品はいろんな美術館に所蔵されていたりするんです。ジョンの絵の特徴はこの気の抜けた、いい意味でくだらない感じ。

親近感が湧いて真剣にくだらない、自身を支えるアート。

アートとしてこういったテイストってあんまり見たことがないんですけど、僕のキャリアを支えてくれているような本で、正直アーティストとしてこういうマインドで自分もいたいんですよ。アートなんだけど中指が立ってるじゃないですか。高尚なものだけがアートではないんだよって。そういう感じが伝わってきて親近感が湧きますね。真剣にくだらなくて。

ジョン・マギーのパラパラ本は手売りでしか売っていないし、河井美咲さんのは完全な自主制作、「ブレインデッド」の本は「リッゾーリ社(Rizzori)」から出版されてるけど今は希少だと思います。やっぱり自分の好きなアートブックはAmazonとかでは売っていない、アーティストが展示をやって手売りとか、自分のサイトのみで売ってるような、作り手の気持ちがダイレクトにビンビン伝わってくる代物。大量生産でも良いものがあったりしますけど、そういうのじゃなくて仲間内だけに伝わる“あの感じ”。そういうものが好きなんで。例えば自分達だけが知っているかっこいいフーディーがあったとして、それを有名人がテレビで着て広まっちゃったらあまり着たくなくなっちゃう。そうじゃなくて仲間内だけがその価値をわかって、仲間だけが着てたらもっとかっこいい。そういう3冊かな。

ジョン・マギーのは笑いたい時、河井美咲さんのは手作りの作業で心が折れそうな時とか、「河井さんはここまで手作りでやってきたんだぞ、お前はそんなんで心が折れてんじゃねえ」って、そんな感じで見させてもらっていて、「ブレインデッド」のは教科書です。それぞれ中身も素晴らしくて、どれも自分にとってはバイブルみたいなものです。ジョン・マギーの本は2月24日からのポップアップでも販売するし、彼の作品も展示します。気になったらぜひ来てください。

Photography Kentaro Oshio
Text Tsuneharu Mamiya
Edit Kumpei Kuwamoto(Mo-Green)

■idolatría
会期:2月24日〜3月2日
会場:ドミサイル東京
住所:東京都渋谷区神宮前4-28-9
時間:12:00〜20:00 
※オープニングパーティ24日 18:00〜21:00
公式サイト:https://domicile.tokyo/

■descargar
会期:2月24日〜3月2日
会場:ドミサイル東京 ギャラリー
住所:東京都渋谷区神宮前4-28-9
時間:12:00〜20:00 

■fiesta de clausura
日程:3月2日
会場:翠月(MITSUKI)
住所:東京都渋谷区道玄坂1-22-12長島第一ビルB1
時間:22:00〜
入場料:¥1,500

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連載「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」Vol.9 作家・島口大樹 アートブックにおける言葉の存在感 https://tokion.jp/2022/09/05/creators-talk-about-books-vol9/ Mon, 05 Sep 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=140134 作家、島口大樹によるテクストと繋がりのある写真集。

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常に新鮮な創造性を発揮するクリエイターにとって、写真集やアートブックを読むことは着想を得るきっかけになるだろう。この連載ではさまざまな領域で活躍するクリエイター達に、自らのクリエイションに影響を与えた写真集や注目のアートブック等の書籍を紹介してもらう。

第9回は、2021年に群像新人文学賞を受賞した1998年生まれの作家、島口大樹。圧倒的な文章力で物語を紡ぐ“言葉の人”が選ぶ、アートブック3冊とは?

『メメント・モリ』
藤原新也

写真の上に文章が載る大胆なデザイン

1983年初版発行のロングセラーで、今さら僕が紹介するべきか迷いました。この本は、写真だけでなく文章が特徴的。一般的な言語感覚でないというか、写真家の言葉だなと思います。写真家は言葉を介さずに、写真というある意味1つの答えが見えているというのがまずあって、そこから言葉が追いかけるかたちになっている。そのため、どうしても感覚が混ざったり、ポエティックになったり、弾丸として飛んでくるような力強さもあって、本当におもしろい。

写真がいいのはもちろん、言葉とともに表現されたテクストを読んだ時に僕は非常に強い衝撃をくらってしまい、胸焼けをする思いでした。僕が写真を撮ったり、文章を書いたりといった創作活動を始めるきっかけになった1冊です。今の時代、情報過多で制度として健康や長生きが叫ばれます。「生きる」というより「死を回避する」ための社会のシステムが確立しているくらい。でもこの本には、人の死体などが多く掲載されていて、検閲が内面化されている新しい表現者が読むと何か感じるものがあると思います。僕は、生と死について一切の揺らぎのない、突き抜けるような言葉と写真に影響を受けたと思っているので、この重みを、若い方にも受け取ってほしいなと思っています。

写真家の写真集で、大きな書体の文字を写真に載せているのも珍しい。言葉の選び方、助詞の選び方1つ取ってもユニークで、ジャーナリズムの言葉とも、小説を書いている人との言葉とも違う感覚の文章に引き込まれます。

『計画と偶然』
山崎博

カメラに従事した写真家

この写真集は、僕の本のカバーを担当してくださっている写真家の馬込将充さんに教えてもらいました。お話している時に「どういう時にシャッターを切るか」「書いている時はどういう状態か」という話になって、多分2人とも自分ではあまりわかっていなかった。だから、作品を作る時は無意識に自分を持っていくしかない、みたいな話になりました。無意識を意識するというのはおそらく禅の言葉ですが、そんな話をしている時に馬込さんが教えてくれたのが、この1冊です。

山崎さんは、長時間露光をして「カメラに写真を撮らせた」人。「写真はコンセプトに従属せず、コンセプトは写真に奉仕する、作家はカメラに従事しなければいけない」という考え方をしています。一般的なスナップショットというのは、「決定的瞬間」をフィルムで捉えるという認識が多いと思いますが、それとは逆。水の流れを撮ることに対しても、「決定的瞬間などという見る側のヒエラルキーは存在しない」といった言い方をしています。要は、決定的瞬間は誰が決めるのか? に基づいて写真を撮っている人で、「決定的瞬間を決定的瞬間と定めるあなたは何者なのか」という態度がすごくいいなと僕は思っています。

無意識を意識すること、作家が写真に対して奉仕するということ。これらを語り手が必要な小説で表現するのは難しいことですが、何か通じる作品を生み出すことができるのではないかと、考え続けているところです。

長時間露光をすることによって、人間が見ることのできない光の軌跡を写す。これを彼は、計画と偶然と呼んでいます。カメラには機能があるのだから、それに従事しなくちゃいけないというスタンスで、人間が決めるのではなくあくまでカメラに従事することで、写真の可能性を切り開いてきた人だと思います。

『正体不明』
赤瀬川原平

路上観察をまとめた写真集

赤瀬川さんは、前衛画家であり、尾辻克彦というペンネームで芥川賞を受賞している作家でもあります。この写真集は、かつては役に立っていてもはや意味をもたないもの、あるいはそもそも作った意図がわからないものなど無用の長物がまるで芸術のように都市に存在している景色を集めた写真集です。赤瀬川さんは、当時、読売ジャイアンツの助っ人外国人にちなんで、その存在をトマソンと命名して、路上観察を続けていました。

「読む写真集」とあるように、すべての写真にキャプションがついているのですが、それが徹底的にふざけている。あるいは、徹底的にふざけている自分を俯瞰しています。もともと前衛画家なので、いわゆる美術作品のアンチテーゼとしていろいろな活動をしていて、路上観察もその1つ。

まず、写真家の目線でなく観察者目線の写真が並んでいるのがおもしろい。日常にあふれているものなのに、そういう目線で見ていなかったということに気づかされます。2冊目の山崎さんの写真集にもつながりますが、トマソンには作為性がありません。作り手が存在せず、観察者に観察されることで作品になる。都市の無意識が生み出したもの。そこに彼が1つの美学を見出して、観察者目線の写真とキャプションで紹介しています。

添えられるキャプションはずっとふざけているのに、急に胸に刺さる言葉があります。この右ページの写真にある「僕が水道の蛇口だった頃、お父さんは井戸のポンプだった。東京」という表現も好きです。

「ヴィジュアルやデザインだけでなく、芸術作品における言葉の用い方、存在意義を探ること」

今回、アートブックを紹介するにあたって、僕は作家として呼んでいただいているので、テクストとの関わりについて話ができるものを選びました。選んだ3冊は、どれも写真集。「メメント・モリ」と「計画と偶然」は写真家による写真作品で、「正体不明」は単に写真なので、写真の方向性は全く異なりますが、恣意性がないという点は通底しています。

さらに、写真と文字のバランスはそれぞれちがいますが、どれも言葉が重要なファクターとなっているアートブックだと思います。美術作品と言葉の関係でいうと「テクストが必要な美術は美術ではない」と考える方もありますが、最後に紹介した赤瀬川さんは「写真というのは『ここにあるものを写して他に見せる』もの。写真の基本は報道だから、最低限の言葉の補助が必要だと思う。写真に言葉がないとそれを芸術として見ないといけないような義理が生じやすい」といった表現をしています。

僕自身は、言葉にして決定づけることや名前をつけることはある意味、暴力的な行為であると考えている節があります。言葉をそれほど信用していないというか、誰かに押しつける言葉遣いを望みません。でも、赤瀬川さんは言葉が必要だという言い方をしている。確かに路上観察においては、都市的な無意識の写真を見つけるだけでなく、そこに丁寧に丁寧に考えた言葉を添えることによって、その“わからなさ”を楽しめるようになります。写真の内容を解析したり究明したりする意味ではなく、わからなさを楽しむために言葉がある。

そう考えると、定義づけや暴力的ではない言葉のあり方が見えてきて、写真と言葉の両方があることで、1つの作品として写真をより深くまで味わうツールになることがわかります。僕はこの3冊によって、自分の小説における言葉のあり方について考えさせられました。ヴィジュアルやデザインだけでなく、芸術作品における言葉の用い方、存在意義を探ることができるのも、アートブックの楽しみ方のひとつになるかもしれません。

島口大樹
1998年埼玉県生まれ。横浜国立大学経営学部卒業。2021年、『鳥がぼくらは祈り、』で第64回群像新人文学賞を受賞しデビュー。同作が第43回野間文芸新人賞候補となる。2022年、第2作『オン・ザ・プラネット』が第166回芥川賞候補となる。今最も注目される新人作家の1人。新刊『遠い指先が触れて』が販売中。

Photography Kentaro Oshio
Text Akiko Yamamoto
Edit Kumpei Kuwamoto(Mo-Green)

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連載「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」Vol.8 全国を旅する映画館 「キノ・イグルー」有坂塁 映画鑑賞に深みを持たせる3冊のアートブック https://tokion.jp/2022/07/28/creators-talk-about-books-vol8/ Thu, 28 Jul 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=133028 「キノ・イグルー」として映画の楽しさを伝える、有坂塁に映画にまつわるアートブックとパンフレットの魅力について話を聞いた。

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常に新鮮な創造性を発揮するクリエイターにとって、写真集やアートブックを読むことは着想を得るきっかけになるだろう。この連載ではさまざまな領域で活躍するクリエイター達に、自らのクリエイションに影響を与えた写真集や注目のアートブック等の書籍を紹介してもらう。

第8回は、「キノ・イグルー」名義で移動映画館等、体験としての映画の楽しさを伝え続けている有坂塁。19歳の時に観た映画『クール・ランニング』で人生が一変したという有坂に、映画にまつわるアートブック3冊、そして日本独自の文化である映画パンフレットの魅力を教わった。

スタンリー・キューブリック

フィルムポスター アーカイブズ

キューブリックのアートワークを余すことなく味わう

アメリカの映画監督スタンリー・キューブリックのポスター等アートワークをまとめた1冊。ボツになったポスター含め300枚以上が掲載されています。キューブリックは、超コントロールフリークで、作品内だけでなく宣伝物まで完璧にコントロールする人だったそう。日本向けポスターのフォント等も全部チェックし、気に入らなければデザインを変更させたとか。

『博士の異常な愛情』(1964)は、アメリカとソ連の東西冷戦で、いよいよ核兵器が使われるかといった時代を皮肉ったブラックコメディ。今観ると、妙なリアリティがあります。

映画プロップ・グラフィックス
スクリーンの中の小道具たち

神は小道具に宿る

著者のアニー・アトキンズは、映画の中に出てくる手紙やメニュー、看板といった作品の世界観を演出するプロップ(小道具)を作ってきたデザイナー。小道具は一瞬しか映らないこともありますし、ストーリーに直接作用することはないですが、映画の世界観をつくるためには欠かせません。「せっかく作るなら」「せっかく見てもらうなら」より良いものにという、作り手のこだわりがうかがえます。

ウェス・アンダーソン監督の『グランド・ブダペスト・ホテル』のアートワーク。この本を見ると「これはどこに出てきたかな?」等、もう一度作品を観たくなります。

LE MUSEE IMAGINAIRE D’HENRI LANGLOIS

映画遺産を守り続けた、アンリ・ラングロワ

アンリ・ラングロワという映画人のコレクションや記録をまとめたアートブックです。ラングロワは、コレクションしていた古い映画のフィルムを上映する場所として「シネマテーク・フランセーズ」を創立した人。昔のフィルムは可燃性だったので、上映後に廃棄する必要があったんですが、それを買い取って蒐集していました。その後の世界大戦の時にもドイツ軍からフィルムを守る等、彼のおかげで僕らは初期のチャップリンの作品等も観ることができています。また、フランス映画にヌーヴェルヴァーグをもたらしたゴダールやトリュフォーは「シネマテークフランセーズ」の常連でした。ラングロワがいたから、今の映画があると言っても過言ではありません。

この本は2005年にベルシーに移設オープンしたシネマテークで購入しました。フランス語なので読めませんが、アーカイブとしても貴重な1冊です。彼は仕事人としては付き合いづらい人だったらしく、一度シネマテークを解雇されましたが、当時の映画監督や俳優達が解雇反対のデモを起こし、2ヵ月後には解雇が撤回されたそう。

「映画館が、教会のように心の拠り所になる」

僕は、19歳の時に映画館で見た『クール・ランニング』で人生が一変しました。それまでに観ていた映画は、7歳の時に見た『グーニーズ』と『E.T』の2本だけ。『グーニーズ』を観て感動し、どうしてももう一度観たくなって、母親に映画館に連れて行ってもらったら、やっていたのは『E.T』だった。観たくもない映画を映画館で観るのは最高に苦痛で、双子の兄と一緒に映画館内を駆け回り、『もう二度と映画なんて観ない』と断言したのを鮮明に覚えています。

でも、19歳の時に付き合っていた彼女に無理やり連れて行かれた10数年ぶりの映画館では、上映前からすごくワクワクしている自分がいました。暗くなった瞬間に、ここが自分の居場所だとさえ感じました。当時の僕は、一卵性の双子の兄といつも比べられてストレスを感じていたのですが、映画館ではそういう周囲の目から離れ、完全に1人になれたのだと思います。

それまではサッカーに没頭していてプロを目指していたのですが、それがかなわなくなり、ワクワクを感じた映画のほうに進もうと考えました。それまで全く観てきていない分、1日1本は映画館で映画を観ようと決めて現在も続けています。

最近は配信が充実して主流になってきていますが、そうなればなるほど映画館の価値も高まると考えています。映画館ではスマホの電源を切らなければいけません。これにはすごく希望があって、「映画を観ていたから」という理由で、常に繋がっていることの無意識のストレスを解放できる。映画館は今後、教会のように心の拠り所になるのではとさえ考えています。

ちなみに僕は、映画館では前から3列目くらいの真ん中の席を選びます。せっかく行くのだから、映像や音を浴びて没入したい。後ろの席で見るという選択肢はないので、好きな席が取れなかったら「今日ではなかった」と観るのをあきらめます。上映中は水分補給程度で、食事はしない。それは、サッカーの1時間半の試合にコンディションをつくって臨む感覚に近いですね。

それから、映画のパンフレットは必ず購入します。映画のパンフレットは作品の世界観をギュッと集約したもので、映画を観終わったあとにコーヒーやビールを飲みながら、パンフレットを読んで映画の世界を反芻したり、“言葉にできない余韻”にまどろんだりするのに最適なアイテムです。よく、映画の感想をテキストで残しているのだろうと言われますが、僕は感想をまとめたりしません。映画を観終わった後は言語化できないほど感動しているし、言葉に落とし込めないからこその余韻があります。パンフレットは、すぐには現実に戻れずに余韻にひたっている時間を豊かなものにしてくれるのです。

これは一般にあまり知られていないことですが、映画パンフレットは日本独自の文化で、他の国では制作されていません。パンフレットをめくれば、「どこで誰と観た」「その後一緒にお茶したな」といった映画の記憶が何年経っても蘇りますが、そういった楽しみ方ができるのは、実は日本だけ。

大島依提亜さん、石井勇一さんといった映画愛をもつデザイナーさん達によって、アートブックのように丁寧に作られているものが多いのも魅力です。コストがかかるため、最近はパンフレットを作らない作品も増えていますが、僕は絶やしてはいけない文化だと思っています。

有坂塁
2003年に移動映画館「キノ・イグルー」を渡辺順也とともにスタート。美術館やカフェ、遊園地等さまざまな場所で映画上映界を開催。1対1のカウンセリングでその人におすすめの映画3本を導き出してくれる「あなたのために映画をえらびます」を定期的に行う等、映画の楽しみ方を広げてくれるイベントを開催し、映画の魅力を伝える。kinoiglu.com/
Instagram:@kinoiglu

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Edit Kumpei Kuwamoto(Mo-Green)

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連載「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」Vol.7 どついたるねん 先輩 本はほとんど手放す先輩が手元に残している3冊 https://tokion.jp/2022/06/04/creators-talk-about-books-vol7/ Sat, 04 Jun 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=119864 ロックバンド「どついたるねん」の先輩に「なぜか捨てられない」という理由で所有し続けているアートブックを紹介してもらう。

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常に新鮮な創造性を発揮するクリエイターにとって、写真集やアートブックを読むことは着想を得るきっかけになるだろう。この連載ではさまざまな領域で活躍するクリエイター達に、自らのクリエイションに影響を与えた写真集や注目のアートブックなどの書籍を紹介してもらう。

第7回に登場するのは、2007年に結成し今年で15周年を迎えるロックバンド「どついたるねん」の先輩。記憶に新しい音源ダウンロードコード付きの弁当箱リリースや、粗悪な画質の配信ライブ。いつ見ても変わらずに、進化し続けているバンドだ。そんなどついたるねんのメンバー先輩は、そもそもアートブックや写真集をほとんど持っていないという。その中でも「なぜか捨てられない」という理由で所有し続けているアートブック3冊を紹介する。

『LICENSED TO ILL TOUR 1987』
ビースティ・ボーイズ

古着店を開店するならば持っておくべき1冊

1987年のビースティ・ボーイズのツアーのパンフレット。高校生の時通っていた、町田の古着店に飾ってありました。店長が「この本1冊あれば古着店を始められる」と言っていて(笑)。意味がわからないじゃないですか。当時はちゃんと見たことがなくて、大人になってから買いました。確かに、ここに載っているものを全部そろえればお店が開けるだろうなと思いました。

自分のバンドも写真集を出していますが、1枚のアルバムのツアーで本を出すのはすごいですよね。あとグラフィティの感じも好きです。

『先輩ちゃん』
塚本弦汰

後輩が撮りためた先輩の写真集

これはマネージャー兼カメラマンを務めていて、今はYouTubeでも活躍している塚本弦汰が手がけた俺自身の写真集です。弦汰がバンドに帯同していた2015年のアメリカツアー等、2年ほどの間に撮影した写真がまとまっています。限定1部だったため、最初はウェブサイトで150万円で販売を始めて。売れなくてBASEで上限価格の50万円で出品しても売れなかったので、今ここにあります。希望者がいればいつでも販売しますよ。

このグラフィティ、自分が描いたみたいですよね。絵は小さい頃から描くのが好きで、漫画のようなイラストはよく描いていました。

『RAPID RABBIT HOLE』
伊藤彩

和歌山出身の現代アーティスト

絵画や立体作品、インスタレーションを制作しているアーティストの作品集。「ラブパワー」のアートワークも担当してもらったことがあります。この本にも寄稿させていただいたのですが、彼女は小さい頃に絵が好きだった感覚そのままで作品を作り続けていることがすごいなと思います。実家が和歌山のみかん農園で、ダブリンと和歌山を行ったり来たりしているみたいなんですが、和歌山でライブがあった時はバンドメンバーみんなで実家に泊めてもらいました。彼女の作るおにぎりも世界で一番おいしいです。

まず登場するモチーフを立体で制作したり、ためておいた落書きを切り抜いたりしてリアルなジオラマをつくり、それを写真に撮って油絵で描き直す「フォトドローイング」という手法で絵を描いているそう。

「捨てることがアウトプットに近い感覚なのかもしれない」

昔から絵を描くのは好きでした。小学生時代に巻物を作ったことがあるのですが、1日で完成させて周りを驚かせました。その時はカブトムシの絵をよく描いてました。甲虫が好きなのかもしれません。学生時代はよく本も読みましたが、今は本や漫画はほとんど持ってないです。所有欲はあって気になったもの、好きなものは一度手に入れますが、その後手放すのも早いです。本に限らず服やバンドの機材にも愛着がないので、数年前と今では持っているものも全然違います。

自分が作った曲ですら、作って出すまでがピークで昔の曲を聴き直すことはほとんどありません。捨てることがアウトプットに近い感覚なのかもしれないです。作品作りのためにアートブックを物理的に読み返すことはしませんが、これまで見たものが影響しているのだと思います。愛を持ってアートブックを読んでほしいですね。

Photography Kentaro Oshio
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Edit Kumpei Kuwamoto(Mo-Green)

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