連載「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」Vol.10 アーティストのohiana ハードコアな作風に影響を与えた3冊

アヴァンギャルドなタッチのグラフィックとコラージュやアートワークによる独自の世界観を展開する、気鋭のアーティストohiana。そのホラーでカオスなアングラ感とどこかポップで笑える世界観に触れたら最後、“やめられない、止まらない”となるohiana中毒者が続出している。アーティスト活動以外にも、他のアーティストやアパレルブランドへのアートワーク提供やPV制作等で活動している。また2017年より展開している自身のアパレルブランド「A.C.C」は2月24日から原宿の「ドミサイル(Domicile)」でポップアップを開催する。今回は多岐にわたって活動するohianaのアーティストとしてのキャリアにおいて重要な3冊のアートブックを紹介してもらった。この記事でohianaが気になったなら、ぜひ「ドミサイル」で直接、彼の世界観に触れることをお勧めする。それでは行ってみよう!

ohiana
1985年生まれ。東京工芸大学卒。コラージュ制作を続ける。アパレルブランド「A.C.C」を展開。anal dragonのブック参加、アーティストへのアートワーク提供、術ノ穴所属アーティストのPV、自身でのTシャツ制作や、ウェアブランド「サベージ(SUB-AGE.)」へのグラフィック提供等で活動する。

『CLOTING FOR A CURIOUS LIFE』
ブレインデッド

ルックの撮影やコラージュの着想を得るための“教科書”のような1冊

エド・デイヴィス(Ed Davis)がやっているカリフォルニアの「ブレインデッド(BRAIN DEAD)」のアーカイヴ集。「ブレインデッド」はストリートブランドですが、自分も仕事で一番多いのがTシャツのデザインだったりします。Tシャツのグラフィックで「人をくり抜いてどこにレイアウトしようか?」とか考えるんですけど、この本には相当な数のアーカイヴが載っていて、僕にとって教科書的な感じで見ていますね。

自分もエドもコラージュをやるんですけど、わりと近いスタイルなんで勉強にもなります。それと「ブレインデッド」がかっこいいのは、アーティストの人選。あとはルック写真も多く、自分もルックを撮る時に構図等を参考にさせてもらってる、教科書的な感じの本ですね。

『mango spirit』
河井美咲

手作りでしか生まれない風合いを感じる1冊

河井美咲さんはNY在住の作家なんですけど、彼女の力の抜けたドローイングが本当に好きで。この本は10年ぐらい前に「TOKYO ART BOOK FAIR」でご本人が販売していて「全部オリジナルの1点ものだから、気に入ったのを見て」って直接お話しさせてもらって買いました。

1部ずつ全部本人の手作りなんです。もちろんコピーで出力はしているんでしょうけど、用紙の色やページの順番とかも1部ずつ違うと思います。本を束ねている背の部分もいろんな柄の布を使ってのり綴じして留めてるんですけど1点1点違うんですよ。

『Amazing Wizard』
ジョン・マギー

アーティストとしての在り方に共鳴した、ジョン・マギーのパラパラ本

これはジョン・マギー(John Maggie)というミシガン在住のアーティストのパラパラ本。彼は若い頃から絵を描いていて、彼の作品はいろんな美術館に所蔵されていたりするんです。ジョンの絵の特徴はこの気の抜けた、いい意味でくだらない感じ。

親近感が湧いて真剣にくだらない、自身を支えるアート。

アートとしてこういったテイストってあんまり見たことがないんですけど、僕のキャリアを支えてくれているような本で、正直アーティストとしてこういうマインドで自分もいたいんですよ。アートなんだけど中指が立ってるじゃないですか。高尚なものだけがアートではないんだよって。そういう感じが伝わってきて親近感が湧きますね。真剣にくだらなくて。

ジョン・マギーのパラパラ本は手売りでしか売っていないし、河井美咲さんのは完全な自主制作、「ブレインデッド」の本は「リッゾーリ社(Rizzori)」から出版されてるけど今は希少だと思います。やっぱり自分の好きなアートブックはAmazonとかでは売っていない、アーティストが展示をやって手売りとか、自分のサイトのみで売ってるような、作り手の気持ちがダイレクトにビンビン伝わってくる代物。大量生産でも良いものがあったりしますけど、そういうのじゃなくて仲間内だけに伝わる“あの感じ”。そういうものが好きなんで。例えば自分達だけが知っているかっこいいフーディーがあったとして、それを有名人がテレビで着て広まっちゃったらあまり着たくなくなっちゃう。そうじゃなくて仲間内だけがその価値をわかって、仲間だけが着てたらもっとかっこいい。そういう3冊かな。

ジョン・マギーのは笑いたい時、河井美咲さんのは手作りの作業で心が折れそうな時とか、「河井さんはここまで手作りでやってきたんだぞ、お前はそんなんで心が折れてんじゃねえ」って、そんな感じで見させてもらっていて、「ブレインデッド」のは教科書です。それぞれ中身も素晴らしくて、どれも自分にとってはバイブルみたいなものです。ジョン・マギーの本は2月24日からのポップアップでも販売するし、彼の作品も展示します。気になったらぜひ来てください。

Photography Kentaro Oshio
Text Tsuneharu Mamiya
Edit Kumpei Kuwamoto(Mo-Green)

■idolatría
会期:2月24日〜3月2日
会場:ドミサイル東京
住所:東京都渋谷区神宮前4-28-9
時間:12:00〜20:00 
※オープニングパーティ24日 18:00〜21:00
公式サイト:https://domicile.tokyo/

■descargar
会期:2月24日〜3月2日
会場:ドミサイル東京 ギャラリー
住所:東京都渋谷区神宮前4-28-9
時間:12:00〜20:00 

■fiesta de clausura
日程:3月2日
会場:翠月(MITSUKI)
住所:東京都渋谷区道玄坂1-22-12長島第一ビルB1
時間:22:00〜
入場料:¥1,500

author:

mo-green

編集力・デザイン思考をベースに、さまざまなメディアのクリエイティブディレクションを通じて「世界中の伝えたいを伝える」クリエイティブカンパニー。 mo-green Instagram

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