連載「クリエイターが語る写真集とアートブックの世界」Vol.13 写真家・赤木楠平 長年、手元に置き続けてきた3冊の毛色が異なるアートブック

カメラのレンズを外し、光を採集/撮影をする“健光(Kenko)”等の手法を編み出した、写真家・赤木楠平。東京に生まれて、サウジアラビアやシンガポールで多感な時期を過ごしたからこそ培われた視点で、カメラを使った作品を生み出し続け、展示会やDJイベントなども精力的に開催し続けている。自身が生み出す作品は“健光”シリーズをはじめ、多重露光写真シリーズ“Zenzen”など、写真という技法を使った、独自のアプローチを用いることにより、偶発的に生まれる美しい色彩が最大の特徴だ。今回は誰もみたことのないものを捉えて描写し続け、写真家という枠に収まらない彼の有するアートブックと写真集をご紹介いただいた。

赤木楠平
幼少期をサウジアラビアやシンガポールで過ごす。日本大学芸術学部写真学科を卒業した後に渡英。2008年に帰国し、2013年からはポーランド・ワルシャワに拠点を置く写真家集団「Czulosc(感度)」に初の外国人メンバーとして参加している。また近年は、絵画の制作も行っている。

『タロット・トキ式』
マドモアゼル朱鷺

マドモアゼル朱鷺さんはタロット占い師でアーティストなんだけど、僕がロンドンに行く前の10代の頃に、毎日のように朱鷺さんに遊んでもらっていて本人からもらったんだよね。当時は僕もまだ子どもだったし、向こうは12歳上だったから、いろいろ教えてもらってたんです。タロットのタイトルごとにページが分かれていて、それぞれに写真と名言、そして朱鷺さんのメッセージが添えられています。

有名なカメラマン達の写真が使われていて、本としてもとてもかっこよくてさ。本全体が不安から希望に繋がる流れになっていて、ふとした時にパッとめくって、そのページを見て自分なりに感じたことを解釈して「そうだな」とか「そうしよう」と考えてから行動をするようにしてる。

『Shinjuku(Collage)』
吉田昌平

吉田昌平というアーティストの本なんだけど、彼は森山大道のファンで森山大道の写真集『新宿』を使ってコラージュした作品集。写真集のコラージュで新たな写真集を作っているわけだから、リミックスというか考え方が音楽的だよね。こうやって本を作るってあんまりない表現じゃん。

1人の作家の写真を勝手にコラージュして、OKが出たというのがいいなと思って。森山さんの写真が本当に好きだったんだろうね。森山さん本人も嬉しかったから「よくぞやったな」ってOKを出したと思うんだよ。

『タイトルなし』
赤木楠平

これは僕の最初の作品集。2013年にポーランドを拠点とする、写真家集団「Czulosc(感度)」に初の外国人メンバーとして参加したんだけど、その時に作ったステッカー本。コロナ禍に入る前まではグループ展があって、ポーランドに毎年行っていたんだよね。

この本は特にタイトルが無いんだよね(笑)。もともとはアルバムだったものにステッカーの作品を貼った手作りなんだよ。これを欲しがってくれる人もいたんだけど、売りたくないものでこれは自分で取っておいてあるんだよね。

「パーティによく行っていて、周りにDJの人達が多いから、その考え方とか行為とか手法に影響を受けているんだろうね」

「タロット・トキ式」はアートブックとしてのクオリティの高さもありながら道具としても使えるから、道具みたいに常に持ってる。僕はタロットの勉強をしていないから、細かいことはわからないんだけど(笑)。「Shinjuku(Collage)」は作品というよりも、アイデアとして好きだね。サンプリング、DJ的というか、考え方がおもしろいと思ったんだ。普段から僕はパーティによく行っていて、周りにDJの人達が多いから、その考え方とか行為とか手法に影響を受けているんだろうね。自分の作品集もたまに見るよ。作品をたくさん作っちゃうからこういうのがいっぱいあるんだよね(笑)。持ってると人にあげちゃうし、作品を作っているとどんどん時間がなくなっていくんだよ。だから最近はなるべく本とか読んだり、インプットしたいと思っている。だからパーティもほどほどにね(笑)。

Photography Kentaro Oshio
Text Tsuneharu Mamiya
Edit Kumpei Kuwamoto(Mo-Green)

author:

mo-green

編集力・デザイン思考をベースに、さまざまなメディアのクリエイティブディレクションを通じて「世界中の伝えたいを伝える」クリエイティブカンパニー。 mo-green Instagram

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