源馬大輔 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/源馬大輔/ Tue, 27 Dec 2022 05:10:50 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 源馬大輔 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/源馬大輔/ 32 32 内なるものと、取り巻くもの。2つの世界を体現したエリック・ヘイズ個展「INSIDE OUT」——鼎談:エリック・ヘイズ × 源馬大輔 × 西本将悠希 https://tokion.jp/2022/12/24/eric-haze-x-daisuke-gema-x-masayuki-nishimoto/ Sat, 24 Dec 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=162074 日本初の個展を開催し来日中のアーティスト、エリック・ヘイズと「サカイ」クリエイティブディレクターの源馬大輔、en one tokyoの西本将悠希の3人が個展を起点に語る。

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鼎談:エリック・ヘイズ × 源馬大輔 × 西本将悠希

左から、en one tokyoの西本将悠希、アーティストのエリック・ヘイズ、「サカイ」クリエイティブディレクターの源馬大輔

1970年代からアメリカを拠点に活動をするアーティスト兼デザイナー、エリック・ヘイズ(Eric Haze)が、日本初となる個展「INSIDE  OUT」を、 東京・渋谷にあるギャラリー「SAI」で開催した。エリック・ヘイズは、グラフィティやグラフィックデザイナーとして活躍しながら、アパレルブランド運営など、ストリートカルチャーとのリンクが多かったのだが、オリジナルの力強いストロークを残しながらもネクストステージに到達した新作アート作品は、コンテンポラリーアートの領域において新たなスタートを切っている。

またファッションブランド「サカイ(sacai)」との最新コラボレーションでは、エリック・ヘイズならではのメッセージ性のあるワードを打ち出し、来日中には「サカイ」青山店で開催中の「Hello sacai」のオープニングでライヴペインティングを行い、相互性の高いファッションとアートの関係を披露してくれた。

そこで数年ぶりの来日したエリック・ヘイズと、「サカイ」クリエイティブディレクターである源馬大輔と、ギャラリー「SAI」を運営するen one tokyoの西本将悠希の3者を交え、個展を起点にいろいろと語ってもらった。

エリック・ヘイズ(Eric Haze)
ニューヨークを拠点に活躍するアーティスト、デザイナー。1970 年代に“SE3”の名前でグラフィティアーティストとして活動をスタート。グラフィティ集団、The Soul Artistの創設メンバーとして、フューチュラ2000(Futura 2000)リー・キュノネス(Lee Quiñones)ドンディ(DONDI)らとともに過ごし、グラフィティ界のパイオニアとしてキャリアを積む。その後、グラフィックアートに焦点を移し、レコードレーベル「TOMMY BOYS」のロゴや、ビースティ・ボーイズ(Beastie Boys)パプリック・エナミー(Public Enemy)などのアルバムカバーなどを数多く制作。1991年には自身のアパレルブランド「ヘイズ(HAZE)」を立ち上げ、数多くの企業やブランドとコラボレーションを果たす。またアート作品の制作に本格的に取り組むようになり、2011年「Art in The Streets」、2018年「Beyond The Streets」などのストリートアートを軸としたアートの祭典ではペインティングやインスタレーションを披露。現在はファインアート、ストリートアートを網羅するアーティストとして、ブルックリンにスタジオを構え多岐にわたり活動中。
https://erichazenyc.com
Instagaram:@erichazenyc

源馬大輔(げんま・だいすけ)
1975年生まれ。1996年に渡英し、1997年にはロンドンにあるBROWNS社に入社し、バイヤーを務める。2002年に帰国後は、中目黒にセレクトショップ「ファミリー(FAMILY)」を立ち上げ、2007年に独立を果たし、源馬大輔事務所を設立。現在は、「サカイ」のクリエイティブディレクションをはじめ、ファッションを軸にさまざまな現場にてクリエイティヴディレクターとして活躍中。
Instagram:@daisukegema

西本将悠希(にしもと・まさゆき)
en one tokyo主宰。

ニューヨークでパンデミック中に描いた作品

「ISIDE  OUT」の展示風景

——個展「ISIDE  OUT」のコンセプトを教えていただけますか?

エリック・ヘイズ(以下、エリック):タイトルの「ISIDE  OUT」は、2つの異なった世界を表現しているんだ。 アブストラクトな作品は、私の内なる部分(=インサイド)……私のスピリット(魂)、頭、手から作り出されたもの。そしてポートレートの作品は、私の周辺にある世界や近しい人を題材に描いた。アブストラクションとリアリティ、その2つを混ぜたんだ。エキサイトだよ。

——人物が登場するリアリティの作品では、どんなひとびとを選んだのでしょうか?

エリック:私自身の個人的な歴史から選んだ人達を描いている。出会った人達も、私の人生の旅の一部であり、歴史へのラブレターみたいなものだね。私にはたくさんの日本の友人がいるんだけど、特に日本での個展を意識したわけではなく、描きたいと思ったのが作品にした人達だったんだ。日本は私の人生の旅の歴史の中で、大きな部分を担っているんだろうね。ニューヨークでパンデミック中に描いた作品だよ。

「ISIDE  OUT」の展示風景

——描かれた人達のことを教えていただいてもよろしいですか。

エリック:ハロシ(HAROSHI)タク(=小畑多丘)ポギー(小木“POGGY”基史)には、自分をレプレゼントできる写真を送ってくれないかと聞いて、それぞれが送ってきてくれた写真を元に描いた。ヒロシ(=藤原ヒロシ)、スケシン(=SK8thing)、ムラジュン(=村上淳)のは、このシリーズの一番最初の作品で、1990年初期の雑誌の広告を元に描いたんだよ。広告は私がまだ彼らに会う前のもの。私は日本に来て来年で30年になるんだんだけど、1990年代初頭はキャットストリートに1つだけセレクトショップがあるくらいだった。

——その頃の東京のストリートカルチャーはどのように感じましたか?

エリック:まだストリートシーンといえるものはなかったんじゃないかな。だけど1つ強く印象に残っているのは、30年前のアメリカはデザインとアートは交わることがなかったんだけど、当時、日本に来た時に感じたのは、日本のひとびとはデザインもアートも理解していたということ。それもスペシャルな方向性の中で。そのことは私をものすごく惹きつけたんだ。

1%から100%までのグレースケールにこだわる

アーティストのハロシとのコラボレーション作品。
「ISIDE  OUT」の展示風景

——ハロシさんとのコラボレーション作品もあります。こちらはどのような過程を経たのでしょうか。

エリック:私は簡単なことしかしていなくて、ハロシと彼の奥さんがハードに仕事してくれた(笑)。私がデザインをした「ハフ(HUF)」のスケートボードに、日本のスケートボーダー達が乗ってくれて、その使い切ったデッキをハロシが作品として作ってくれた。

ハロシと私は強い精神的なつながりがあるんだけど、私達はまだキース・ハフナゲル(Keith Hufnagel)が生きていた頃から「ハフ」と仕事をしていた数少ないアーティストなんだよ。それでキースが亡くなってから、追悼の意を込めた作品を制作したいと感じていたんだ。これはコミュニティのすべてのつながりを示す、またキースへの思いを込めて制作した、ものすごく愛が詰まった作品。

源馬大輔(以下、源馬):この作品は、ハロシと僕が一緒に座って、エリックがアイデアを話してくれたんだけど、「よし! 作ろう!」ってなった時、ハロシはエリックと一緒に仕事ができることにすごく嬉しそうだった。彼にとっては夢がかなったんじゃないかな。

「ISIDE  OUT」の展示風景

——作品全体を通じてブラック&ホワイトに、グレーを使用した理由はなぜでしょうか。

エリック:私はこの世界をあまりカラーで見ていないんだ。たぶんニューヨークで生まれて、グレーで汚いっていう環境で育ったからかな(笑)。それと私がデザイナー、アートディレクターとしてキャリアをスタートさせた時はすべてがローバジェッドで、コンピューターもなければ、jpgもなく、ノーデジタルワールドだった。だからアルバムカバーをデザインする時はブラック&ホワイトでデザインを作って、印刷所に行って色を指定していたんだ。その頃に学んだことが、ブラック&ホワイトと、グレーのレイヤーだったんだけど、その頃から自分のマインドは1%から100%までのグレースケールなんだよね。

多くの人に「色を使ったら?」と何度も勧められて使ったこともあるけど、「ちょっと待てよ?」と。デザインやロゴのデザインにおいての私の哲学は、「色を作るなら、色に依存してしまう」ということ。色は個人の好みだし、ブラック&ホワイトでうまくやることができたらいつでもカラーを追加できる。

——作品はブルックリンにあるスタジオで制作されたと思いますが、ニューヨークで活動をされていていかがですか。

エリック:今はウィリアムズバーグ、ネイビーヤードに近いクリントンヒルに住んでいる。ウォーターフロントだね。15年くらい同じスタジオなんだけど、スタジオのあるビルを2年前に買ったんだ。それによって心持ちも変わったし、そのスタジオで制作をしたよ。

「ISIDE  OUT」の会場風景

——では、ニューヨークのギャラリーシーンはどう変化したと感じてますか?

エリック:かつてのニューヨークには「Jeffrey Deitch」と「Jonathan Grant Gallery」くらいしかギャラリーはなかったんだけど、2010年に12年間住んでいたロサンゼルスからニューヨークに戻ってきた時には、良いギャラリーが増えていたよ。コニーアイランドも「Jeffrey Deitch」がしかけてたくさんのアートウォールがあって、アートの聖地のようになっているし。

西本将悠希(以下、西本):ニューヨークのギャラリーの話でいうと、僕は2008年に「Joshua Liner Gallery」のオープニングで、ブルックリンに行ったんですけど、その時にエレベーターでたまたまエリック(・ヘイズ)、フューチュラ2000、カウズ(KAWS)と一緒になったことがあったんです。それまで雑誌でしか見たことのなかった彼らが一緒にいるのを見て、現実にいる人達なんだって。この思い出は僕の中では、未来の道筋が作られた1つのできごとでもあります。

人生はバランスが大事

——2010年にニューヨークへ戻ってきて、エリックさんにはどのような変化がありましたか?

エリック:ロサンゼルスにいた頃は、服のトレードショーにこれでもかと参加していたけど、ビジネスが良くなるごとに、私はストレスを抱えてしまい、幸せではなくなってしまったんだ。それでニューヨークに戻ることにして、すべて自分で責任を持ってやってみることにしたんだ。それで状況は変わったけれども、最終的にはリスクを負うことはなくなった。そこから再びファッションが自分の中でおもしろくなってきて、何かやりたいなと思えるようになってきたんだ。

人生はバランスが大切だと思うんだ。幸せであるには、人との関係、仕事とバランスをキープすること。僕は10年前に結婚したんだけど、そのことも新しいバランスを与えてくれている。今回の個展の素晴らしい点は、私の中でバランスが取れているということ。プロダクト制作に関しては、アートといい関係性を持てたと思うし、「サカイ」との仕事もだけど、こういったバランスの良いことは10年前や、20年前にはできないことだった。自分を知ることと、再びパッションを見つけたことで、次に進むことができたんだと思う。

源馬:僕はかつてロンドンにいた時に、「Mo’ Wax」の商品を見て、中でもポスターのデザインが本当に素晴らしくて、それが脳裏にこびりついていたんです。僕らがいるファッションの世界ではコレクションのメッセージを印象づけるために、外部の力を借りることがありますが、エリックは音楽やカルチャーとリンクして歴史を作ってきているので、そのメッセージがいつも的確なんですよね。なのでぜひ一緒に何かをやりたいと思ったんです。

エリック:それが私にとってはすごく特別なことだったんだよ。この5年くらいは新しい世代のファッションが出てきていて、その動きがとてもおもしろい。だから私も新鮮な視線を持って戻ってこれることができたんだよね。周りを見渡したら「サカイ」や、バージル(・アブロー)などが素晴らしい内容のことをやっていることに気付いたんだ。同世代にはインスパイアを受けなくなっていたのにね。

それで私は、これまで自分が通ってきた道には戻りたくない、ファッションの市場にカルチャーがもう一度いい形で参入する機会になるんじゃないかと(源馬)大輔に話をした。それまで誰もが知っている私の歴史の一部である、グラフィティやヒップホップなどの流れからは切り離しておきたかった。だから大輔や(阿部)千登勢(「サカイ」デザイナー)と仕事をしたことは自分にとってイメージ通りで、自分の中でフィンガープリントを押せる(=間違いない)、新しいことを証明できるだろうと素晴らしい話ができたんだよ。

「ISIDE  OUT」の会場風景

源馬:僕はエリックをアーティストとして認識したかった。彼はいつも素晴らしいコンセプトを持っているんですよね。2021年のコレクションでエリックに描いてもらった「ONE KIND ONE」という言葉があるんですけど、これはパンクバンドから来ていて、僕と阿部はいつも「愛」について話していたんです。それに対してふさわしい言葉を探していた時に、エリックに「何かおもしろい言葉はないかな」と聞いたらこの言葉が出てきて、「これだ!」ってなりましたね。

エリック:「サカイ」とは、もの作りにおいて最高な信頼関係を築けている。私を信頼してくれていて、手を差し伸べて任せてくれたことは、とても美しいサプライズだよ。

源馬:本当にビューティフル・サプライズ。それ以外ないですね。

オリジナリティを持ち、新しい視点で捉える

——ギャラリー運営やアート展のキュレーションをしている西本さんから見て、エリックさんはどんなアーティストでしょうか。

西本:やはりずっとアートシーンにいるというのは、1つの大きな魅力だと感じています。例えば、過去の作品を知っている人が、今のエリックの作品を観ても、彼の作品だとわかる。これって、もちろん人柄もありますけど、作品にオリジナリティがあるからなんです。最近は作品を見せられても、似ているものが多くて「それ誰の?」ってなってしまうことも多いんですけど、エリックの作品は見ただけで彼のものだとわかるんですよね。それは強み、そうストロングポイントなのかなって思います。

源馬:それは重要ですよね。今は誰かをまねすることが多い中、エリックは自分のものを持っている。

エリック:1980年代の初めにペインティグを始めた頃は、アブストラクトな絵を描きたいなと思ったんだけど、それは自分の前の世代の手法に近かった。そこで僕達はその世代を打ち破らなければならなかったから、自分達のスタイルを見つけられたんだ。私はアート活動をする上でトレンディが何かとか気にしていないし、他で誰かがやっていることをやりたいと思ったことがない。だからトレードショーに出展していた頃も自分のブースばかりにいたんだと思う(笑)。

「ISIDE  OUT」の展示風景

——お2人は今回の個展をどう感じましたか?

源馬:実際に作品を観るとわかると思いますが、写真で見るよりも実際の作品のエネルギーは半端ないです。なので、エリックの作品は生で観てエネルギーを感じてほしいですね。

西本:僕も源馬くんと同じで、ぜひ実物を観てほしいですね。捉え方は人それぞれだと思うんですけど、それまで知らないものを観に行くことって楽しいじゃないですか。なので、これまでのエリックのことを追ってきた人だけでなく、初めてという人でも観てほしいですね。

エリック:100%そう思う。これまでの信頼できるファンに加えて、新しい目を持った人たちにも観てもらって、それが拡大していくことがとても重要だと思う。

源馬:新しい目、大事ですよ。

「ISIDE  OUT」の展示風景

エリック:「サカイ」とのコラボレーションでも、ファッションのオーディエンスをアートに取り込み、アートのオーディエンスをファッションに取り込みたいんだ。それらが交わると新しいことが生まれる。

西本:そして互いに影響し合うんだよね。

——最後にファンにメッセージをください。

エリック:人はみなユニーク。音楽であれ、ビジネスであれ、ペインターであれ、成功するアーティストになるためにはみな自分自身を理解することが必要。なので、自分にしかできない表現方法を見つけほしいよね。そうすることで、世界に1つしかない特別なものを手に入れることがができると思うから

「ISIDE  OUT」の展示風景

■INSIDE OUT
会期:~12月25日
会場:SAI
住所:東京都渋谷区神宮前 6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3階
時間:11:00 – 20:00
入場料:無料
Webサイト:https://www.saiart.jp

Photography Teppei Hoshida

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「TOKION」 × 「レショップ」Vol.2 現代的に蘇るヴィンテージのストーリー こだわり抜いたデニムジャケットが完成 https://tokion.jp/2021/09/17/tokion-lechoppe-nexusvii-vol2/ Fri, 17 Sep 2021 04:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=59200 「TOKION」 × 「レショップ」 × 「ネクサスセブン」がトリプルネームでローンチするデニムジャケット。ヴィンテージを現代的にアップデートした1着が完成したが、その詳細を当事者の3人に聞く。

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“1番の名品と大差ない、2番目に良いもの”を意味する「GOOD SECOND」をキーワードに、「TOKION」キュレーターの源馬大輔とセレクトショップ「レショップ」コンセプターの金子恵治が、ヴィンテージアイテムを再解釈し現代的にアップデートしていくコラボレーションシリーズ。その第2弾として9月18日にリリースされるのが、「ネクサスセブン」の今野智弘を迎えたトリプルネームのデニムジャケット“Trucker JKT Mod.”だ。

「ベルベルジン」ディレクターの藤原裕が、ヴィンテージデニムアドバイザーとして持ち込んだ膨大な数のヴィンテージデニムジャケットを参考に、今の気分と寄りそうように仕立てた1着は、トリプルネームの3者の他、「スタビライザージーンズ」デザイナーの矢實(やざね)朋がパタンナーとして参加した。

そんな豪華な顔ぶれが作った渾身作を、中心メンバーである源馬、金子、今野によるコメントとスナップで、シルエットやディテールの詳細を紹介したい。

ヴィンテージの表情を再現しつつ今の気分に合わせたシルエットに

約1年前から「GOOD SECOND」によるデニムジャケットの製作がスタートし、ようやくリリースに至った。前回でも触れたが、ヴィンテージデニムジャケットのサンプルを手にしながら、ディテールやサイズ感、素材を見直しつつ、細部にまで一切の妥協を許すことなく全員の総力を結集して作り上げた自信作だ。汚れや補強やカットオフが施された完成品は、ヴィンテージさながらの表情を見せるが、着丈や身幅などのシルエットが微調整され、今っぽく着こなせる。

襟と袖がカットオフされている仕様が目を引くが、その理由を金子がこう話す。
「実は数年前、原宿の『ベルベルジン』で、衿と袖がカットオフされたデニムジャケットを購入していて、それがシャネルジャケットのようで気に入っていました。僕の身長(170cm)だと、袖口がカットオフされているほうがちょうど良い長さだったし、デザイン的にも普通にデニムジャケットを作るより、エッジを効かせたいと思い、叩き台として提案したら、みんなが賛成してくれました」(金子)。

生地の加工や縫製などを考案したのは、「ネクサスセブン」の他、デニム生地を追求するブランド「ビヨンデックス」も手掛けている今野。
「加工後に、できるだけヴィンテージのデニム生地に近い落ち感とシボ感を出せるように、『ベルベルジン』の藤原くんも含めて『ビヨンデックス』チームで議論しました。当時のデニムジャケットのように、綿糸での縫製をすると、加工後の縫製糸の脆弱化が懸念されたので、コアスパン糸を採用しています。デニムパターンのスペシャリストである矢實くんの協力を得ながら、みんなで話し合い、より今っぽいシルエットに微調整したことで、良い方向でオリジナル超えを果たせたのでは、と思っています。何度も修正してくれた矢實くんは、本当に大変だったと思いますが……(笑)」(今野)。

そして、たび重なる修正を経て完成した本作の完成を見た源馬は、「もともとベースとなった金子さんのデニムジャケットを見ていましたが、ここまでの完成度とは。僕自身もデニムは好きですし、今野さんの作る『ビヨンデックス』のファンで絶対的に信頼していたので、口を出すところなんてないですね」(源馬)。

時代を超えて新たな表情で現代によみがえるデニムジャケット

完成したデニムジャケットを、スタイルサンプルとしてそれぞれに着こなしてもらった。

「着古したヴィンテージさながらの仕上がりなので、積極的にキレイめなアイテムや上品なアイテムと合わせたいですね。例えば、ウールのスラックスとスニーカーを、チノパンと革靴を、といったように、どこかで締めていくのが気分です。ヴィンテージのスウェットとかと合わせて、1990年代のハードアメカジみたいにコーディネートするのもアリです。完成度が高いので、リアルな古着とも相性が良いのは間違いありません」(金子)。

「ノーカラー仕様ということもあり、襟元の汎用性も高いのが魅力だと思うので、襟付きのシャツスタイルでも、丸首でも合わせられると思います、でも個人的には、立ち襟の薄手のジャケットやパーカの上から羽織ってみるのも、おもしろいかなと思います」(今野)。

「トリッキーに見えるノーカラータイプだけど、デザイン自体はオーセンティックなので、なんでも合わせられると思います。僕だったら、コートの下でも着てしまうし自由に楽しんでほしいですね」(源馬)。

今回「GOOD SECOND」に携わった今野は、ヴィンテージをモチーフにして作ったデニムジャケットに、こんな思いを抱く。「価格の高騰や枯渇などで手を出しにくい人も多いヴィンテージデニムですが、今回作らせてもらったこちらは、ヴィンテージをモチーフにしつつも、デザイン性やシルエット感は現代の気分にマッチするので、ユース世代を含めて幅広いファッション好きに響いてくれるのでは、と期待しています」。
その言葉の通り、年々数が減少し、価格は右肩上がりとなっているヴィンテージデニム。それに匹敵するほどの完成度で仕上がり、現代らしく着こなせるこちらにも、満足できることだろう。

Photography Shinpo Kimura
Text Shogo Komatsu

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「TOKION」 × 「レショップ」 × 「ネクサスセブン」によるデニムジャケットが完成 日本屈指のデニム識者達の熱意がこの1着に https://tokion.jp/2021/09/10/tokion-lechoppe-nexusvii/ Fri, 10 Sep 2021 09:27:22 +0000 https://tokion.jp/?p=59156 「TOKION」とセレクトショップ「レショップ」による「GOOD SECOND」シリーズの第2弾がリリースされる。今回は「ネクサスセブン」を交えたトリプルネームのヴィンテージのデニムジャケットを現代的にアップデート。

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“1番の名品と大差ない、2番目に良いもの”を意味する「GOOD SECOND」をキーワードに、「TOKION」キュレーターの源馬大輔とセレクトショップ「レショップ」コンセプターの金子恵治が、ヴィンテージアイテムを再解釈し現代的にアップデートしていくコラボレーションシリーズ。8月に「アウトドアプロダクツ」のバックパックをリリースしたばかりだが、その第2弾が完成した。

今回リリースするのは、デニムジャケット。デニムに精通する「ネクサスセブン」デザイナーの今野智弘を迎えたトリプルネームとなり、さらには「スタビライザージーンズ」デザイナーの矢實(やざね)朋もプロジェクトに参加。おのおのの思いとセンスを注入した渾身作を、9月18日に発売する。

豪華な顔ぶれによってヴィンテージを再解釈したデニムジャケット

ヴィンテージ市場や1990年代の渋カジブームに欠かせない存在のデニムジャケット。「TOKION」と「レショップ」による「GOOD SECOND」の第2弾では、そのデニムジャケットにフォーカスしたアイテムの製作が決定し、「ネクサスセブン」をそのゲストパートナーに招いた。さらに、本作のパタンナーとして「スタビライザージーンズ」の矢實にプロジェクトへの協力を仰いだ。そんな盤石の布陣と呼べるメンバーにより、ヴィンテージデニムジャケットの再解釈プロジェクトが1年前から始まった。

それぞれが持ち寄ったデニムジャケットに加え、ヴィンテージデニムアドバイザーとして「ベルベルジン」の藤原も持ち込んだ、あらゆる年代のデニムジャケットの実物に触れながら方向性を話し合い、ベースとなる1着から、ディテールやシルエットまでを選定。ただ単純に再現したり、名品のハイブリッドを生み出したりするのではなく、それぞれが持つヴィンテージデニムに対する情熱や1990年代当時の空気感、そして現代の気分を融合し、識者全員が納得する1着が誕生した。

ヴィンテージの魅力を詰め込んだ現代的に着こなせる完成度の高さ

仕上がった1着を手に、プロジェクトの中心となった金子はこのように振り返る。「僕のワードローブの中心にあるのは、いつもデニムです。それはファッションに目覚めた頃からずっと変わらず、もう絶対になくてはならない存在。これだけ経年変化を楽しめて、汎用性も高く、ずっと飽きが来ないものなんて、他にないと思っています。今回のプロジェクトに携わってくれた座組みは本当にすごい。これだけたくさんのサンプルを集めて、このような豪華なメンバーで1着を作り上げていくなんて、僕にとっては、このプロジェクトそのものがスペシャルでした」。

ここ数年、若年層のデニム離れが話題となっていたが、1990年代のスタイルがトレンドとなり、デニム再燃のムーブメントが巻き起こっている。その中でローンチを控えるこちらのデニムジャケットは、ヴィンテージに思いをはせながら、今のムードで着こなすことができる1着だ。次回は、ディテールやシルエットをひもときながら、源馬、金子、今野3人によるスナップとコメントで詳細を紹介する。

Photography Shinpo Kimura
Text Shogo Komatsu

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源馬大輔×「オーラリー」岩井良太 ミニマルの中で主張する素材とシルエット 前例のないカラーパレットで完成したスキーニットのすべて https://tokion.jp/2021/09/03/daisuke-gemma-x-ryota-iwai-auralee/ Fri, 03 Sep 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=56994 「TOKION」キュレーターの源馬大輔と「オーラリー」デザイナーの岩井良太の対談。素材とシルエットの追求から前例のないカラーパレットまで、スキーニットが作られたきっかけとは?

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数々のアーティストやクリエイターとコラボを続けてきた「TOKION」。コラボアイテムは「TOKION」オフィシャルECで発売する。本企画では、「TOKION」のキュレーターである源馬大輔が“今”会いたい人と対談をしながら、プロダクト開発のきっかけを探る。今回は「オーラリー」デザイナーの岩井良太が登場。

「オーラリー」は糸から開発するオリジナルのテキスタイルと時代の空気感をとらえた絶妙なシルエットがブランドの代名詞で、生地問屋からスピンアウトした経験をもとに、素材開発の追求がコンセプトでもある。そのこだわりは、より良い原料を求めて、自身が国内外の産地を飛び回るほど。ブランドに意味深なスローガンはないが、ミニマルなデザインと知的さ、穏やかなムードが「オーラリー」らしさであり、ファンの心をつかんできた。

ブランドスタートから5年目にあたる、2019-20年秋冬のパリ・ファッション・ウイークでパリコレデビューも果たした。立ち上げから現在に至るまで、一貫して素材とシルエットにこだわるもの作りの視点を深掘りした、2人の対談から生まれたのは“スキーニット”だ。

パリコレで再認識したブランドの方向性

源馬:出会いのきっかけは昔、岩井さんが働いていたブランドのデザイナーが僕の友達の尾崎雄飛さんだったことでしたよね?

岩井:はい。まだ25、6歳の頃です。

源馬:ブランドはまだ、あります? ちなみに僕は物持ちが良くて、その頃に買ったカノコのパンツは今でも履いてますよ。

岩井:ありますよ。実は、僕がそのパターンを引いていたんです。あと、尾崎さんが源馬さんの名刺を持ってたので、「知ってるんですか?」って話になったことは覚えてます。

源馬:その後「オーラリー」がものすごく人気で売れていると周りから聞いて、ブランドの存在を知ったんです。荒木(信雄)さんがショップの設計をしていて、内装も雰囲気がいいらしいと見に行ったら、驚きましたよ。レイアウトも良いけど、ニットが抜群に素晴らしかった。着たらピタッとして本来のゆったりしたムードにはならないから、その時は買わなかったけど(笑)。

岩井:あるプロジェクトでご一緒する予定もありましたしね……。あとになってパリコレに挑戦するタイミングで、相談に乗ってもらえるきっかけにもなりました。

源馬:パリでは「サカイ」のアトリエから出ることもないので、人に会うことが少ないけど、僕のクライアントから「オーラリー」を海外で売りたいっていう話もありました。

岩井:ありました……海外について、いろいろ相談しましたよね。

源馬:結構ガチな話だったことは覚えてます。ちょうど “ファッション プライズ オブ トウキョウ”を受賞して、パリでコレクションを発表することになった時期。

岩井:想像以上に忙しかったです。他のブランドのコレクションを見に行く余裕もなかったですよ。でも、パリコレの経験から、身の程も知りましたし、制作以外の見せ方を考えたり、ブランドの方向性をもっと明確にしたりするべきだと痛感しました。

源馬:本当に? 岩井さんは自分の色を持ってるじゃないですか。例えば、KAWSって自分仕様のアクリル絵の具があるから、イメージする色を作るために他の画材メーカーの絵の具を混ぜる必要がない。要は“何を描いても自分の思い通りの色が出せる”わけ。「オーラリー」の服も一見シンプルだけど、見た人に「これ『オーラリー』だ」って理解させること自体すごいし、難しいですよ。

正直、「すごく人気」と聞いた時にどんなのか見てやろうじゃないかって思ったんです(笑)。でも、ハンガーに掛かっているニットもジャケットも、パッと見シンプルだけどはっきりと「オーラリー」って主張してるのがおもしろかった。カラーパレットも好きだけど、特にニットのシルエットが洒落てるなって。ブランドを立ち上げた頃に意識していたことってありますか?

岩井:セレクトショップにたくさんのブランドと並んでラックにかかった時、唯一肩の部分だけ見えますよね。当時は、そこを見ただけでも目を引くような服を作りたいと考えていました。素材や生地の作り方、突き詰めて考えると原料にまで行き着くんですけど、自分が納得できる形で少しずつ広げようと思っていましたね。

源馬:原料から製品まで一貫して関わるデザイナーは珍しい。大手の海外ブランドなら生地専門のスタッフが日本に来て、京都の染屋とか刺しゅうの職人をリサーチして、デザイナーにプレゼンするわけじゃないですか。それを全部1人でやっちゃう。

岩井:もの作りのきっかけが欲しいんですよね。イメージする服を作りたいという思いから原料を探してますし、ある性質の原料だったらこんな糸にして、生地を作ったらいいんじゃないかとか、その逆の発想があったりもします。難しいので、良し悪しは未だにわからないですけど。

源馬:原料を見て生地をイメージできると。

岩井:コットンだけ見ても理解できないですけど、生産背景も含めた話を聞くと、イメージが湧く場合もあります。知識も経験も必要なので、いろいろな人に教わりながらです。

ミニマルな中にある素材とシルエットの際立つ主張

源馬:僕が関わっていることってデザイナークローズだったり、比較的キャラクターが見て取れる場合が多いんですよ。グラフィックとか、全くシルエットが違うものを組み合わせたり。正しい表現かわからないけど、雰囲気をデザインするのって難しいと思うんです。背が低くて肩幅が広い人とか、逆に背が高いけどなで肩の人とか、それぞれのイメージなんてわからないのに、実際に着るとブランドイメージが確立されるってマジですごい。なんでそうなるんでしょうね。

岩井:ある意味、逆のコンプレックスですね。個性がないという。

源馬:個性はあるんじゃないですか?

岩井:デザインが少ない分、素材など別のところに時間を費やしているというか……。

源馬:だから、顧客の年齢層も広いですよね。(山本)康一郎さんのディレクションもそうだけど、大御所も若い人の気持ちもつかんでいる。

岩井:特定の人物像を描いていないからかもしれません。もっと感覚的というか、言葉にするのがうまくないので、どう言えば良いのか難しいですけど……触感。シーズンテーマも人物像もはっきりとした言葉では伝えられないぼんやりした感覚があります。その雰囲気が気持ちよくて。

源馬:興味深い。ちなみにニットってメンズとウィメンズの明確な差があるんですか?

岩井:一応、パターンは変えてます。女性が着た場合にどう見えるかなど、デザインが同じでもシルエットを変えたり、逆に素材が一緒だったり。そこだけですね。

源馬:初めて「オーラリー」のショップを見た時に、いろいろなことが繋がったのを思い出しました。バックグラウンドを見て、もの作りが想像できるように、このインテリアのセンスだからこういう服なのかとか。ブランドイメージもあるので、ルックブックもある程度、服のディテールを見せなきゃいけないし。服以外でイメージしたものはあったんですか?

岩井:そうですね……。頭の中にある何となくのムードをしっかり人に伝えようとしたことがなかった。でも、荒木さんからの大量の質問に答えているうちに導かれた感覚もあります。なので、荒木さんにお願いして本当に良かったです。世界観をはっきりと示す事ができたのが大きい。

源馬:荒木さんに関してはおもしろい話があるんですよ。僕の友達が事務所の内装を荒木さんにお願いしていた時に、テーブルの見積もりが2つ提示されたらしいんです。金額もかなりの差があって、違いを聞いたところ、「天板が違う」と。片方は無垢材で、もう一方は集成材。無垢材のメリットを聞いたら「バイブスです」って(笑)。でも、芯を食ってる話なんですよね。無垢材を“バイブス”って表現するのが好きなんです。もちろん、友達はバイブスが良い方を選んだんですけれども。その事務所がめちゃくちゃかっこいい。

荒木さんはクライアントのことを真摯に考えているから「オーラリー」のバイブスにもなっていると思うんです。岩井さんは「オーラリー」が“ぼんやりしている”って言うけど、意志が強い服ですよね。僕が思う“ぼんやりしている”ブランドって、毎シーズン、トレンドを節操なくピックアップするような姿勢だと思うんです。一見、わかりやすいけど昨日まで主張してたことが急に変わるという。以前、ゴッホの「ひまわり」の贋作をずっと描いている中国人の作品を観た時に、本物のタッチとは全然違ったんですよね。僕がうれしいのは、こういう服が売れている=お客さんがブランドのコンセプトを理解しているっていうのが健全だし、未来があるということ。

淡色のグラデーションという前例のないカラーパレット

源馬:あと、素材以外でこだわっていることはありますか?

岩井:普通ですが、色使いとシルエットにはこだわっています。

源馬:ニットもボディとアームのバランスが難しいですけど、それがみんなに似合うように肩が落ちているものとか結構難しいですよね。色使いも一言で表現しづらいじゃないですか。そういう色使いの参考ってありますか?

岩井:パントンのカラースワッチを延々と見たり、気になる色のスワッチを集めて、大量の色をピックアップしたりしています。2色展開なのに4色作ったり。一番気にしているのは、その色がわざとらしくなく、上品に見えるかどうか。

源馬:普通、服のカラーバリエーションって黒とかネイビーみたいな着やすい色に加えて、差し色が1つくらいなんですけど、「オーラリー」は全部淡い色の場合もありますよね。かなり、ガッツあるなって。

岩井:そこは結構、突っ込まれますね。

源馬:なぜ、この色展開って? 今でも覚えているけど、初めてアトリエに行った当時、映画監督のテレンス・マリックに夢中だったんです。ブラッド・ピットが主演して「プランB」が手掛けた作品に出てくる、“マジックアワー”って言われる、夕焼けの色みたいな感じがしたんですよ。抽象的な色のセンスってうらやましいなって。僕にはそういうのないから。服以外に映画とかインスピレーション源ってあるんですか?

岩井:映画もギャラリーも美術館も好きで人並みに行きますけど、直接的なインスピレーションにはなっていないです。仕事しかしていないというのも理由なんですけど。昔から好きな作家はリ・ウーファンです。

源馬:意外かもしれないけど、「サカイ」のショップでもお世話になってる「GELCHOP」の森川さんも、今でこそポップだけど“もの派”と呼ばれる出身なんです。腑に落ちる説明。

岩井:おもしろいですね。

源馬:トップデザイナーは素材とか原料に詳しいけど、以前、岩井さんがいた会社が素材も手掛けていたから詳しいんだろうな。そういう意味ではいい影響ですね。マーケットに対して。リサーチはどうしているんですか?

岩井:いろいろですね。向こうから声をかけていただいたり。そういえば、前にイノウエブラザーズと一緒にペルーに行きましたよ。

「オーラリー」らしさを凝縮したスキーニットとは?

源馬:今回の企画では岩井さんの持っている古着がベースになっていますよね。

岩井:いろいろなジャンルでいくつか提案して、この辺がいいなって思いました。

源馬:これはスキーニットですけど、「オーラリー」的なシルエット。

岩井:それ、おもしろいですよね。普通の切り替えではないですし、バイク仕様というわけでもない。クッションにもなっていないです。

源馬:ヤバいですね。

岩井:昔はこの辺を着てましたけど、今は置いてるだけですね。

源馬:「ヴェルサーチ」のニットも見たいです。

岩井:はい。最近、ハマっているんですけど、なんでこんなに質が良いのかなって。洗い込んでこんな風合いになっていますけど、1980〜90年代くらいのやつです。

源馬:「ヴェルサーチ」のニットの雰囲気で、こういう(スキーニットの)形が作れたらおもしろい。

岩井:膨らみがいいですよね。

源馬:そう、膨らみがあったほうが良いです。だけど軽いっていうか、ふわっとしているみたいな。これも「ヴェルサーチ」ですか?

岩井:これは「バランタイン」です。あと、レタードニットみたいなのもあります。1940年代くらいですかね。昔、着てましたけど、今は着ないですね。重いからかな……チクチクするんですよ。

源馬:そういうのすごくわかる。なので、あまり、重くないものがいいですね。見せてもらった資料では圧倒的に「ヴェルサーチ」に興味があります。デザインに興味があったのはこれ。100%カシミア?

岩井:いえ、シルクが混ざっていると思いますね。

源馬:サイズは52の割に小さい……相当、洗ってますね。でも、この「ヴェルサーチ」のイメージでできたら。もっと編みが緩くてもいいかもしれませんね。

岩井:それでいろいろ編んだんです。仕上がりの感じを確認してもらいたくて。

源馬:100%カシミアとかだと、そこまでムードが出せなかったりしますよね。ひょっとしたらシルクとか混ぜたほうがいいのかなとか。でも、そこはお任せします。

岩井:これがカシミアと同じようなタッチのウールの別注の糸です。それか、これはハリがある普通のラムなんですけど、本数取りしているので膨らみがありますね。

源馬:あまり、ハリがない方がいいんじゃないですか? このスキーニットなのにふわっと柔らかい感じがいいです。

岩井:そうですね。スキーニットですから大き過ぎない方がいいですか? 

源馬:スキーニットのディテールをいつものサイズ感でお願いします。ちなみに今までスキーニットをデザインしたことはあるんですか?

岩井:3年くらい前にハイゲージで作りましたけど、今回はそれとは全く違う落とし込みにしたいです。もっと詰めたハイゲージで。

源馬:おもしろそう。ここ(アトリエ)にどんな生地があるか気になりますね。このカラーパレットの感覚ってなかなかないですよ。僕だったらベージュとかカーキのあとにブルー、その後に黒とかネイビーを組み合わせるようなイメージ。

岩井:はっきりした色を入れた方がいいのかもしれないですね。

源馬:でも、このパターンに入ってくるとムードが出なかったりしますからね。でも、自分ではけっこう濃色を着てますよね(笑)?

岩井:今日は特別、撮影用に(笑)。

源馬:僕は淡い色を見ると心配になるので濃色しか着ないんですけれども。ショップだとニュアンスカラーが人気なんですか?

岩井:どうなんですかね。展示会では、買い付けがありますけど、その後は、いつも心配してます。消化率とか気になりますね。

源馬:今日、西麻布から根津美術館の方に歩いてる途中に淡い色のトップスをオーバーサイズで着ている人がいたので「オーラリー」なのかなと考えながら来ました。ただのオーバーサイズじゃないんですよね。デザインで構築されているオーバーサイズというかシルエットというか。今回で言うとスキーニットをそんなデザインと形でお願いしたいです。

岩井:はい、まずは素材から考えますね。

岩井良太
1983年生まれ。文化服装学院卒業。2015年春夏シーズンに自身のブランド 「オーラリー」を設立。2017年に初の路面店を南青山にオープンし、2018年に開催された第2回 「ファッション プライズ オブ トーキョー」 を受賞。2019年秋冬コレクションよりパリ・コレクションに参加。2019年に「第37回毎日ファッション大賞」で新人賞・資生堂奨励賞を獲得した。

Photography Kazuo Yoshida

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「TOKION」と「オーラリー」がコラボ 生後6ヵ月以内の希少なカシミヤを使用したスキーニットが9月4日に発売 https://tokion.jp/2021/08/31/auralee_skiknit/ Tue, 31 Aug 2021 10:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=56314 「TOKION」キュレーターの源馬大輔と「オーラリー」デザイナーの岩井良太の対談から誕生したのは、⽣後6ヵ⽉以内のカシミヤ⼭⽺の⽑のみを使⽤したスキーニット。

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糸から開発するオリジナルのテキスタイルと時代の空気感をとらえた絶妙なシルエットが「オーラリー」の代名詞で、生地問屋からのスピンアウトの経験をもとにした素材開発への追求がコンセプトでもある。そのこだわりは、より良い原料を求めて、自身が国内外の産地を飛び回るほど。ブランドに意味深なスローガンはないが、ミニマルなデザインと知的なイメージや穏やかなムードがファンの心をつかんできた。

今回、岩井と「TOKION」のキュレーター源馬大輔の対談から誕生したスキーニットを9月4日に発売する。価格は¥59,400で渋谷にあるMIYASHITA PARKの「TOKiON the STORE」と「TOKION」オフィシャルECで販売する。

素材には、厳しい環境の外モンゴルで育った⽣後6ヵ⽉以内のカシミヤ⼭⽺の⽑のみを使⽤している。世界中で限られたメーカーでしか使用できない希少素材でなので、加工では表現できない、上質な柔らかさや光沢感が特徴だ。カラーはトップ ライト ピンク、トップ ブラックの2色で、素材への負荷を軽減するために原毛を低音かつ時間を掛けて染めた後、自然乾燥で仕上げ、素材そのままの風合いを生かしている。

また、通常「捨て編み」と呼ばれるニットの裾の編みはじめの部分をデザインとして残し、ゆったりとしたシルエットのプルオーバーニットに仕上げた。

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「TOKION」×「レショップ」Vol.1 巨大なポケットが目を引く「アウトドアプロダクツ」のバックパックを発売 https://tokion.jp/2021/08/13/tokion-x-lechoppe-x-outdoor-products/ Fri, 13 Aug 2021 06:30:00 +0000 https://tokion.jp/?p=51987 「TOKION」とセレクトショップ「レショップ」がコラボし、1990年代に流行したヴィンテージアイテムを現代的に再解釈する。第1弾はデザイン性と利便性を兼ね備えたバックパック。

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「TOKION」とセレクトショップ「レショップ」は、1990年代の日本のヴィンテージをテーマにしたコラボレーションアイテムを発表する。

1990年代、ヴィンテージブームに沸く日本のメンズファッションシーン。キーワードは、1番質の高い名品と大差なく2番目に良いものという意味の「GOOD SECOND」。本シリーズでは「GOOD SECOND」を“架空の1番”として捉え、「TOKION」キュレーターの源馬大輔と「レショップ」コンセプターの金子恵治が、当時流行したヴィンテージアイテムを現代的に解釈して“架空の1番”良いものを発表していく。

第1弾は、「アウトドアプロダクツ」とのトリプルコラボのバックパック“452U Nylon Daypack Mod.”を8月14日に「TOKiON the STORE」と「レショップ」各店で発売する。アイテムは「アウトドアプロダクツ」の定番モデルであるデイパック“452”をアレンジしたもので、最大の特徴はフロントの巨大ポケットだ。「レショップ」が以前から採用しているアイデアで、身長190cmの人に合わせたバッグを作るという視点からスタートした企画。バッグのデザインには手を加えず、ポケットのサイズを調整することで見た目の違和感を生み出し、利便性も兼ね備える。今回は、フロントポケットの中にメッシュのインポケット、サイドには電車の中などでバッグを前に背負った時、財布や携帯電話を出し入れしやすくするようにファスナーを施した。メインコンパートメントの内側には、mo’design inc.を主宰する溝口基樹の長男、溝口元基がデザインした「GOOD SECOND」のタグをあしらっている。また、ショルダーストラップには、チェストストラップを配した。価格は¥18,700。

金子は“452”について「1970年代に発売してから基本設計が変わらない“452”はデイパックの代名詞ですが、それは『アウトドアプロダクツ』が“シンプル、軽量、丈夫でリーズナブル”という理念を追及し続けてきたことで、認知と信頼を獲得してきた結果だと思います。1990年代当時、なぜかわからないのですが、僕の周りはみんな『アウトドアプロダクツ』を背負っていました。ちなみに、当時は青いブランドタグが多く使われていましたが、それが一際カッコよく見えていたのは間違いないですね」と、クオリティの高さと人気の理由を語る。

「アウトドアプロダクツ」はカラーバリエーションの豊富さも魅力の1つ。今回は「TOKiON the STORE」ではグリーン、ブルー、ピンク、オレンジと鮮やかで素材に使っているコーデュラナイロンの発色の良さが感じられるカラー、「レショップ」ではオーセンティックなフォレスト、バーガンディ、ネイビー、カーキをそれぞれラインアップする。ブラックは両店で取り扱う。

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源馬大輔×「レショップ」金子恵治対談 未知のものを探すバイイングと、服の魅力を再発見できる店づくり 1990年代ヴィンテージブームをテーマに、2人が生み出すものとは? https://tokion.jp/2021/08/13/keiji-kaneko-x-daisuke-genmma/ Fri, 13 Aug 2021 01:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=52321 「レショップ」のコンセプター・金子恵治のバイイングの思いを通して1990年代ヴィンテージブームをテーマにしたコラボアイテムの背景に迫る。

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「TOKION」はMIYASHITA PARK内の「TOKiON the STORE」やECで、国内外のアーティストやクリエイターとタッグを組んだアイテムを展開している。本企画は、「TOKION」キュレーターの源馬大輔が“今”会いたい人と対談をしながら、プロダクト開発のきっかけを探る。

今回登場するのは、青山とMIYASHITAPARKに店舗を構えるセレクトショップ「レショップ」のコンセプターとして同店のバイイングなどを手掛ける金子恵治。「レショップ」は、シャツやデニムウェア、チノパンなど上品でトレンドに左右されないアイテムを中心にラインアップしながらも、素材やサイズ、ディテールなどが一癖あるものが多く、決して安易なスタンダードには陥らないセレクトが特徴だ。買い付け先も国内外のブランドをはじめ、時には一見ファッションとは縁がないような国外の田舎町へも足を運ぶなど、豊富な経験をもとにした金子のセレクトは、目の肥えた長年の服好きからファッションに情熱を注ぐ学生まで、幅広いファンを獲得している。2019年には「コモリ」のデザイナー・小森啓二郎とともに、9サイズ展開のシャツなどを制作する「レショップ」のオリジナルレーベル「LE」を立ち上げた。

源馬もまた、高校卒業後に渡英してイギリス・ロンドンのセレクトショップ「ブラウンズ」でバイヤーとしてキャリアをスタートさせた。今回は2人の対談から、金子のバイイングへの思いや「レショップ」の店舗としてのあり方に迫る。そして、今回の対談からどのようなプロダクトが生まれるのか。

まだ日本で知られていないものを探し出す

源馬:金子さんとは前にも一緒に仕事していましたが、それ以前から人づてに金子さんという人がやばいものをバイイングしているって話を聞いていたんです。へぇって思っていたんだけど、実際に会ってみたら本当にやばいものを買っている人だった(笑)。

金子:僕も「ブラウンズ」のバイヤーだった源馬さんを海外でよく見かけていたんですよ。源馬さんは背が高くてガタイも良いから目立っていて(笑)。「ブラウンズ」に日本人バイヤーがいることは噂で聞いていましたけど、まさか一緒に仕事をするようになるとは思いませんでした。

源馬:金子さんがバイイングしたものの中で特に印象的だったのはエスパドリーユです。僕はそれまでエスパドリーユにおしゃれなイメージがなかったんですがそれはとてもカッコよくて、僕が関わっているブランドのルックブックでも一度使ったことがあります。

金子:当時はインターネットも発達していなかったけど、バルセロナにはエスパドリーユが文化として根付いることは知っていて、お城の守衛とかが履いている写真なども見ていたんです。僕は現地に行けばなんとかなると思っているので、まずは行ってみようと。

源馬:金子さんみたいに世界中をまわって、高価なものから安いものまでカバーする人はなかなかいないと思います。ある時、アルゼンチンへ行くって聞いた時は何を買い付けるんだろうとびっくりしたけど、ちゃんと成果を持って帰ってくるんですよね。

金子:昔からやっていることは変わらなくて、扱うアイテムの幅が少し広がってきましたね。

源馬:僕は、アイテム自体はなじみがあるけど、ちょっと人と違うものをよく買うんですが、金子さんはそもそも「それ、何?」ってものを見つけてくる。

金子:多くの人が初めて見るような、日本では広まっていないものを紹介することはかなり意識しています。

源馬:僕も未だに見たことないものに出会えるのは嬉しいんですよね。

金子:そういう人達のためにもいろんな国に行くんです。他にもロサンゼルスでは田舎の海沿いでスニーカーを手作りしている職人を見つけたり、とにかく実際に現地での情報を稼ぐ。そうでないと、人を感動させられるものは見つけられません。

源馬:今はみんなが見たことないものを探すのは大変なんじゃないですか?

金子:実は今のほうが探しやすいんです。昔は僕みたいなバイヤーが何人かいたんですけど、減っちゃって。みんな同じところに買い付けに行くようになったのかもしれません。

源馬:ライバルがいなくなっちゃったんだ。

金子:「レショップ」を始めた6年前には、これはもう探し放題だぞと。今はネットで情報を拾えるから、現地に行くきっかけも作りやすいんです。あとは、例えばパリの展示会に行く時はアメリカに寄ったり、回り道しながら多角的な視点でバイイングしています。

「レショップ」が行うのは、物の紹介と服の魅力を再発見できるきっかけを作ること

源馬:金子さんはスタンダードをちゃんと知っているから、変わったものをバイイングしても説得力があるんですよね。以前、フォトグラファーと服のギミックはもの自体のクオリティーが高いからこそ活きるっていう話をしたんですけど、その考えと一緒。

金子:さっき話したエスパドリーユも、探せばゴロゴロ見つかるんですよ。でも1つひとつ実物を見ていくと、クオリティーの差がはっきりわかります。 

源馬:常識を知らないで非常識なことはできないですもんね。

金子:ただ、バイヤーとしては地道に見つけたものをファッションとして発信するのが良いと思うんですけど、僕はあくまでものの紹介をするだけでいいんです。そのアイテムをおもしろいと思った人が、自由にかっこよく着こなしてくれるのが楽しみ。「レショップ」では基本的にスタイリングの提案はしませんし、トルソーも、ものを紹介するツールと考えています。

源馬:自由に着てほしいということに関連して言えば、「レショップ」ではオリジナルアイテムも作っているじゃないですか。一般的にはSからLの3サイズのところを、超小さいものから大きいものまでを何サイズも展開していますよね。

金子:そうですね。リスキーだけど、どこかの誰かが喜んでくれると思うんです。

源馬:小柄な女性でもジャストからオーバーサイズまで自由に着られる。今では豊富なサイズ展開もややスタンダードになりつつありますけど、以前からそれをやっているのはビジネス的にも挑戦ですよね。ロスが出ることも考えちゃいそうですが。

金子:そういうサービスをしていかないと、店舗としても先があまりないんじゃないかと。

源馬:スタンダードなものをサイズ違いでそろえることで、急に新鮮に見えるのがおもしろいですよね。

金子:お店を通して、アイテムの魅力を再発見してほしいとも思っています。白シャツでも、身幅が広かったり着丈が短かったりすることで、古着でしか見つけられなかったサイズ感を新品でも見つけられるような、再発見のきっかけになる商品作りをしています。そのような仕掛けは常に考えています。

1990年代の人気アイテムを再解釈

源馬:今回、金子さんと1990年代のヴィンテージブームをテーマにしたアイテムを作りたいと思うんです。

金子:懐古主義ではなくて、今の空気を含ませて、当時を知らない人達にも魅力が伝わるものが作りたいですね。

源馬:現代的にアップデートしたものがいいですよね。

金子:僕が最初に服のめり込んだきっかけはヴィンテージで、世代的にも1990年代のブームど真ん中でした。今また、当時くらいの勢いでヴィンテージが好きになっているんですが、それだけだとモヤモヤすることもあって、新しく編集したようなものを作りたいですね。

源馬:僕もファッションの入り口は古着でしたね。今でも覚えているんですけど、ネオ・ロカビリーって音楽が日本に入ってきた時に、1950年代の古着もブームになって。そのあとにデザイナーズ・ブランドと出会ったから、「リーバイス」のヴィンテージデニムと「レッド・ウィング」のブーツに、「ドリス・ヴァン・ノッテン」を合わせたりしていました。

金子:僕もそういう時期ありました。アイテムの雰囲気が違いすぎるとなかなか取り入れられないけど、中にはヴィンテージデニムとかにも合うデザイナーズブランドがあった。懐かしい。その感覚、忘れていました。

源馬:ヴィンテージはサイズが小さいものも多いから、最近は着る機会が減ったけど、ヴィンテージ特有のロマンチックなディテールには今も魅了されます。あと、昔、古いデニムジャケットに自分で内ポケットをつけているおじさんを見たんですよ。しかもボロボロになったバッファローチェックシャツの生地で。ステッチが表に出たりして粗い作りなんですが、そのイレギュラーな感じが印象に残っているんです。たぶんその人は自分の生活に合わせて軽いノリだったと思うんですけど。

金子:パーソナルな小ネタって実はすごく大事なんですよね。僕はなで肩なので着る服のパターンをかなり気にするのですが、仕入れにも反映しているんですよ。でも、その個人的なことって意外と人に伝わるというかおもしろがってくれる。

源馬:パーソナルな小ネタ、良いですね。大きかったら良くないんですよ。

金子:ちょっと話がそれるんですけど、昔のファッション業界は若い世代が先陣を切って作るものなんだと考えていた節もあって。アパレル企業はバイヤーに若手を採用しますし。だから自分がこの年までバイヤーを続けているとは思っていなかったんですが、今は感性よりも経験や知識が役に立っています。

アパレルの仕事は、昔の洋服を知らないとつまらないんじゃないかと思うことも多くて。昔のものを知っていれば知っているほど、もの作りの背景を深く理解できるし、自分も経験をもとに年々ものをたくさん作れるようになっているんです。

源馬:世代によって服の作り方も変わりますもんね。

金子:今回、アイテムによってはそれに詳しい人とも一緒に作れればと思っています。デニムだったら、「ネクサスセブン」の今野(智弘)さんとか。やっぱり、本物を作らないと当時を知っている人も満足しないし、若い人にも良さを伝えられないと思うんです。

源馬:昔、DJハーヴィーがDJはエデュケーションが大事だと言っていて。要は、みんなが知っている曲だけじゃなく、「この曲何?」って思われるものもかけないといけない。未知のものも発信することが大事なんです。

金子:すごくいい話ですね。

源馬:服にもエデュケーションの要素があったほうが、知識欲も満たされると思うんです。もちろんやりすぎも良くないけど、少なくとも半分くらいはその要素があってもいいと思っています。

源馬大輔
1975年生まれ。1996年に渡英し、1997年ロンドンのブラウンズに入社、バイヤーとしてのキャリアをスタートさせる。 2002年帰国後、中目黒にセレクトショップ、ファミリーを立ち上げ、 WR/ファミリー エグゼクティブ・ディレクターに就任。2007年に独立し、源馬大輔事務所を設立。セリュックス(旧LVJグループの会員制クラブ)のブランディング・ディレクターなどを務め、現在は「サカイ」のクリエイティブ・ディレクションや香港の高級専門店レーン・クロフォードのバイイング・コンサルタントなどを行っている。経済産業省「ファッション政策懇談会」の委員も務める。

金子恵治
1973年生まれ。セレクトショップ「エディフィス」にてバイヤーを務めた後に独立。自身の活動を経て、2015 年に「レショップ」を立ち上げる。最近で「ETS.マテリオ」や「アウトドアプロダクツ」のフラッグシップストアを立ち上げ、その活躍は多岐にわたる。

Photography Kazuo Yoshida

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源馬大輔×長場雄対談 情報が詰まったミニマルなアートワークから、「TOKION」とのコラボの背景までを聞く https://tokion.jp/2021/07/30/daisuke-gemma-x-yu-nagaba/ Fri, 30 Jul 2021 11:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=49555 「TOKION」キュレーターの源馬大輔とアーティストの長場雄の対談。長場の作品制作や現在のスタイルへの思い、そして今回のコラボアイテムの魅力に迫る。

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「TOKION」はMIYASHITA PARK内の「TOKiON the STORE」やECで、国内外のアーティストやクリエイターとタッグを組んだアイテムを展開している。本企画は、「TOKION」キュレーターの源馬大輔が“今”会いたい人と対談をしながら、プロダクト開発のきっかけを探る。

今回登場するのは、アーティストの長場雄。彼は自身が影響を受けたカルチャーをもとにしたアートワークや個展の開催をはじめ、「ユニクロ」や「コンバース」といったファッションブランド、ミュージシャンなどとのコラボレーションも行っている。昨年12月に開催した個展「The Last Supper」も大盛況のうちに幕を閉じた。

長場のアートワークは数本の線で描かれたシンプルな構成ながらもモチーフの特徴を正確に捉えており、そして笑顔からしかめっ面、どこか愛らしさのある真顔まで、さまざまな表情を見せてくれる。

今回の対談では、長場の制作への向き合い方やアートワークに込めた思い、そして「TOKION」とのコラボアイテムについて話を聞いた。

モチーフを的確に表す線を見つけるようにして描く

源馬大輔(以下、源馬):初めて長場さんにお会いしたのは、僕が2017年の東コレで「タカヒロミヤシタザソロイスト.」のショーを手伝った時ですね。長場さんが限定アイテムのグラフィックを描いていて。その前から作品は拝見していましたが、長場さんは自分にしかできない見方でモチーフを捉えているのが本当にすごいんですよ。そう思いませんか?(笑)

長場雄(以下、長場):たまに俯瞰して「自分はこういうふうに表現してたんだ」って思うこともありますね。

源馬:モチーフはもっと複雑なはずなのに、作品はたった数本の線で構成されていますよね。

長場:いかに線の数を減らしながら特徴を表現するかは常に課題にしてます。

源馬:モチーフを観察する時はどんなところを意識しているんですか?

長場:輪郭や全体のシルエットはよく見てますね。髪型や眉毛の角度とかもですし、この人は猫背だとか胸を張っているとか、姿勢は人となりを表しますから。もちろん輪郭だけに集中しているわけじゃないですが、モチーフを的確に表すのはどんな線なのかを見つけるように描いています。

源馬:長場さんの作品にはバイブスがあると思うんですよ。説明できないけど、何か伝わってくるもの。

長場:バイブスにつながっているかはわからないけど、モチーフから最初に受けた印象は薄れないうちに作品に落とし込むようにしています。理屈じゃなくて感覚的に表現しているというか。

源馬:興味深い。目は基本的に点で表現していますけど、それでいながら表情のバリエーションが広いですよね。

長場:目を点にすると無表情になりがちですけど、よくやるのが眉から鼻にかけてT字の線を入れて、それに合わせて目の高さを変えたり位置を寄せたりしています。そうすると印象が変わるんです。

線が少なくとも、観る人がいろんな情報をくみ取ってくれる作品を目指す

源馬:去年の個展にもたくさん人が集まっていて、長場さんの作品がいかに人を引きつけるかを再認識しました。例えばアートワークのモチーフを知らない人も夢中になれる。

長場:個展では自分が好きなミュージシャンや俳優みたいなカルチャーにまつわる人だけではなく、街中で見かけた一般の人達も描きました。有名無名問わず雰囲気のある人っているじゃないですか。最近はそういう人をすごく描きたくなるんです。

源馬:本人のセンスなんでしょうけど、絶妙なスタイリングをしている人っていますよね。描かれた人からしても名誉なことだと思います。前から聞きたかったんですが、長場さんはデッサンも得意なんですか?

長場:そんな上手いほうではないと思うんですけど……美術予備校に通っていた時はよく描いていましたが、他にもっと上手い人がいたので。独立前はいろんなスタイルをそつなくこなしていた感じですが、その時もキャラクターものが描きやすかったかもしれません。

今のスタイルは1〜2年くらい研究してできあがったんです。自分にしかできない、自然と内から出てくるようなものを表現したくて。そのために、まずは日常生活や身の回りのものを見直しながら必要なものを選別していきました。

源馬:確かに生活スペースのちょっとしたことも仕事に影響しますよね。例えば部屋にダンボール箱が2週間あるとするじゃないですか。それがなくなると急に開放感があってメンタルも変わりますもんね。

長場:目に入ってくるものが自分の中で積み重なっているんですよね。見たり聞いたりしたものから表現が生まれてくる。

源馬:クリエイションって意外と生活の延長線上にあったりしますもんね。それにアイデアが思いつかない時、掃除をしたり目線を変えたり実際に体を動かすと思考も変わるじゃないですか。どんなクリエイターもずっと机に向かっているわけじゃないですし。

長場:そうですね。それに無理して苦手なことをしないことも重要だと思います。前職では色を使ったアートワークを求められることも多かったんですがあまり得意ではなく、自分が本当にやりたいことは何かと考えた時に、思い切って苦手なものを全部切り捨てちゃおうと。だから、最初はシンプルな線だけで表現することも1つの挑戦だったんですよ。

源馬:線はミニマルなのに、伝わってくる情報量は多いんですよね。

長場:僕は好きなアーティストを聞かれたらドナルド・ジャッドを挙げることが多いんです。彼はミニマルと言われていて、作品は一見なんでもない箱なんだけど、僕が初めて彼の作品を見た時に何かすごく訴えかけてくるものを感じたんですよね。これはなんなんだ、と思って。作品を通して見るという行為を再定義してくれたんです。自分もそこに共感して、線が少ないからといって素っ気ない作品にするのではなく、観てくれる人がいろんな情報をくみ取って、視点も豊かになるきっかけなったら嬉しいです。

源馬:ジャッドはミニマリズムの代表格的な扱いだけど、箱とかが連続して並べられたり、サイズが変わったりするだけで違った印象になるじゃないですか。人間の脳みそってポンコツな時もあるけど、ミニマルなものが連続して並んでいる様子が美しいという考えは本当に素晴らしいと思うんです。

長場:この前、「エスパス ルイ・ヴィトン大阪」でカール・アンドレとジョアン・ミッチェルの展示を観たんですよ。木彫と抽象画の組み合わせももちろんですけど、アンドレの木彫が連続して並んでいるさまもすごく良くて。

源馬:ずっと観ちゃう、みたいな。

長場:観ていると吸い込まれるんですよね。しかも作品は木でできているから、ディテールも微妙に違ったりしていて。

源馬:僕はアーティストのちょっとした置き物とかを買う時は必ず3つとか5つとか奇数個にするんです。それをアンバランスに並べて見ると、良いねぇって思う(笑)。

長場:ちょっとした差を見つけるんですね。

源馬:長場さんはとんでもなく大きい作品とかは描かないんですか?

長場:去年の個展でも幅4メートルの作品は描きましたが、もっと大きいものもやりたいですね。

源馬:トーマス・ルフという写真家が、顔がアップになったポートレートを大きく引き伸ばした作品を制作しているんですけど、僕が初めてその作品を見た時にかなり衝撃を受けたんですよ。写っているのは全然知らない普通の人ですけど、その巨大なポートレートが複数枚並んでいるところも良くて、「これはやばい」と思ったんです。

長場:圧倒するものやりたいですね。それこそ、ビル丸々使って描くとか。

源馬:もちろん大きいものが良いというわけではないけど、それだけで1つの価値があると思うんです。巨大なパブリックアートとかもインパクトありますもんね。

生活の延長線上にあるクリエイション

源馬:今の生活もスタイルを模索していた時とあまり変わらないですか?

長場:そうですね。規則正しいですし、制作時間も決めています。

源馬:そういった中でも制作に集中できない日とかもありますか?

長場:ありますね。それにインプットする時間も減ってきちゃっているから……ちょっと行き詰まったら展覧会を回ったり、本屋に行ったりしています。SNSももちろんインプットの1つだけど、やっぱり実際に何かを見ることが大事なんですよね。

源馬:SNSでも発見はあるけれど、音楽でいえば自宅の見慣れたレコード棚をあさっている感じがしますね。やっぱり外に出ると、レコード屋みたいに新しいものに出会えるというか。

長場:そうそう。そういえば最近またレコードで音楽を聴くようになったんです。10年ぶりくらいにちゃんと環境を整えて。制作中もずっと音楽を流しています。パク・へジンやイェジのような最近のアーティストも好きですが、アナログでマッシヴ・アタックを聴き返したらやっぱりカッコいいと思いましたね。

源馬:良い環境でトリップ・ホップとかを聴くとその奥深さに気づきますよね。レコードってA面とB面で曲が止まるところも良いと思うんです。ずっと流れているんじゃなくて、いったん止まるからこそ音楽をちゃんと聴くマインドになるのかもしれません。昔の曲は展開も覚えているし。

長場:ストリーミングだとずっと音楽が流れていることもありますもんね。

源馬:そのせいか、曲名すらわかるかどうかあやしい(笑)。新しいこともインプットしつつ、自分の中にもともとある引き出しも開けていかないと精神衛生上良くないですもんね。

アートワークが“半立体”に

源馬:今回のコラボの話を最初にした時、作品を立体にするアイデアはおもしろくても、正直断られるかもしれないと思ってました。アーティストの意図しない提案になっていないかなって。

長場:ある日突然眼鏡が送られてきたんですよ(笑)。「ドローイングが立体になる」ということも、最初はどういうことなんだろう……って思って。

源馬:長場さんの作品は平面だからこその魅力もありますし、今回のような表現を許してもらえたのが嬉しかったです。

長場:話を聞くうちに立体までいかない、“半立体”の感じが良いなって思ったんですよね。あとはオブジェとして置きやすいものがいいとお話しはしましたね。

源馬:結果そうして良かったですね。眼鏡自体のクオリティーも高いし。長場さんの平面の作品に立体感が加わったことで、いつもとは違った鑑賞体験ができそうです。

長場:線も立体だから影とかも出ますもんね。

源馬:線がどのように描かれているかがよくわかるんです。普段作品を見ると、わりとサッと速い筆致で描かれているように思えるんだけど、実際は手描きだからどうしても線が揺れているわけじゃないですか。

長場:手描きの雰囲気は大切にしていますね。インクが紙ににじんでいく感じとかも好きで。線は速いスピードではなく、どちらかというとゆっくり描いているんです。それにパソコンで制作することもできるんだけど、手描きの感じは出ないから自分の中ではしっくりこなくて。

源馬:その手描きこそが作品のムードを生み出しているんでしょうね。今回は平面ではないけれど、かといって完全な立体でもない。絶妙な立ち位置のアートに仕上がったと思います。

長場雄
アーティスト。1976年東京都生まれ。東京造形大学デザイン学科卒業。アーティストとしての活動のほか、雑誌、書籍、広告、アパレルブランドとのコラボレーションなど様々な領域で活動。過去のワークスに、「ユニクロ」「アシックス」「G-SHOCK」「ビームス」とのコラボレーション、その他、マガジンハウス、「リモワ」、「テクニクス」、Spotify、ユニバーサルミュージック、モノクルなど国内外問わずさまざまなクライアントにアートワークを提供している。

源馬大輔
1975年生まれ。1996年に渡英し、1997年ロンドンのブラウンズに入社、バイヤーとしてのキャリアをスタートさせる。 2002年帰国後、中目黒にセレクトショップ、ファミリーを立ち上げ、 WR/ファミリー エグゼクティブ・ディレクターに就任。2007年に独立し、源馬大輔事務所を設立。セリュックス(旧LVJグループの会員制クラブ)のブランディング・ディレクターなどを務め、現在は「サカイ」のクリエイティブ・ディレクションや香港の高級専門店レーン・クロフォードのバイイング・コンサルタントなどを行っている。経済産業省「ファッション政策懇談会」の委員も務める。

Photography Kazuo Yoshida

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源馬大輔×「ノウハウ」十河幸太郎対談 ファッションにおける“究極の自己満足”のパジャマ、その遊び心と機能性について https://tokion.jp/2021/04/09/pajamas-fashions-ultimate-example-of-self-satisfaction/ Fri, 09 Apr 2021 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=28076 「TOKiON the STORE」キュレーターの源馬大輔と「ノウハウ」デザイナーの十河幸太郎の対談から生まれる、「自分が着たい」と思うパジャマとは? アイテムは4月16日発売。

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「TOKION」はMIYASHITA PARK内の「TOKiON the STORE」やECで、国内外のアーティストやクリエイターとタッグを組んだアイテムを展開している。本企画は、「TOKION」キュレーターの源馬大輔が“今”会いたい人と対談をしながら、プロダクト開発のきっかけを探る。

今回の相手は、“新しく思いがけない驚きのある休日と世界”がテーマのパジャマブランド「ノウハウ」デザイナーの十河幸太郎。プロデューサーで妻のチューソンとともに制作を行っており、1日中着られるジャケット型の“day”、ノーカラーや比翼などの“静かな”デザインが特徴の“shhh”など、コンセプチュアルなパジャマを展開している。利便性にも優れており、文庫本がちょうど入るポケットやちょっとした外出時に便利なベルトループ、さらには襟裏のシークレットポケットや暗闇の中でも目立つ蓄光ピスネームなど、気が利くものから軽い冗談を本気で実現してしまったようなディテールまでを詰め込んでいる。着心地が良いだけでなく、気兼ねなく洗濯できるようにステッチも強固に施されている。また、現代アーティストの加賀美健や平山昌尚らとのコラボレーションも行っている。

思わず笑顔になってしまうコンセプトとデザインの「ノウハウ」が表すように、十河自身もユーモアにあふれていて、対談は終始和やかな雰囲気で行われた。今回の対談からどのようなパジャマが生まれるのだろうか?

源馬大輔(以下、源馬): 6年くらい前に雑誌で「ノウハウ」の“kung-fu”(チャイナジャケット風のデザイン)を見つけて、超良いと思って。それですぐに連絡して展示会に行った時に初めて出会ったんですよね。

十河幸太郎(以下、十河):源馬さんが来た時は驚きましたよ。思わず「え!? 暇なんですか?」って聞いちゃいました(笑)。

源馬:「ノウハウ」はモノが良いのはもちろんですけど、全員人柄も良いし、それにめちゃくちゃおもしろいんです。

十河:僕達が何言っても笑ってくれるので、チューソンと一緒に嬉しくなっちゃって。こんなアンダーグラウンドなパジャマメーカーもチェックしているなんて、信頼できる人だって思いました。

源馬:ブランドの話を聞いていくと、どのモデルもコンセプチュアルだし、デザインのさじ加減も絶妙で。

十河:めちゃくちゃ嬉しいですね。それこそ源馬さんや藤原ヒロシさんみたいにセンスを生業にしている人達を見て、僕達もブランドを始めたわけですから。源馬さんは僕達のパジャマを着込んでくれていますよね。

源馬:夏はTシャツに短パンですけど、冬はよく“kung-fu”を着ていますよ。それにコンビニなんかにもそのまま着て行けますからね。

十河:華やかにバシって着飾るのもかっこいいけど、全く気を使ってないようで実はシャレているのも魅力の1つだし、僕達はそっちをやりたいんです。「ノウハウ」を始めた頃は代官山に住んでいたんで、近所の蔦屋書店に着て行けるようなパジャマを作りたいというのが根底にあります。出掛けるためにわざわざ着替えなくてもいいもの。

「みんなダラダラするの好きでしょ?」

源馬:そもそもパジャマを作ろうとしたきっかけはなんだったんですか?

十河:僕はパジャマを着て家で過ごすのが好きだったし、「ノウハウ」を始めたのも30歳を過ぎてからだったので、長く気楽に続けられるものを作りたかったというのが理由の1つです。それに、家でダラダラ過ごすことに対する世間的なイメージはあまり良くないけど、声に出さないだけで「みんなダラダラするの好きでしょ?」って思ったんですよね。

源馬:僕なんか大好きですよ。家に“おひとりさまソファ”って呼んでいる足を伸ばせるソファがあるんですけど、休みの日はそれに座りながら観たい映画をひたすら探して、本当に何も考えずにぼーっと過ごしてる。

十河:僕も一緒ですよ。そういう時間のために日々の雑務をこなしているんですから。だから、家でゴロゴロできることに特化しつつも、昔読んでいた雑誌から受けた影響や好きなカルチャーなんかを落とし込んだり、アーティストとコラボしたりするようなブランドを作ろうと思ったんです。

源馬:新型コロナが流行って、それまでみんな無理して出掛けていた部分もあったんだなって思いましたよ。

十河:意外とダラダラするのも良いじゃんってね。

源馬:家の中のものにこだわる潮流もありますし。

十河:当初は誰からもうまくいかないと言われましたよ。一般的には外で着る服にお金をかけるし、やっぱりパジャマはニッチなマーケットです。

源馬:まあ、洋服は自己満足で楽しむ部分もありますけど、パジャマはその最たる例ですよね。

十河:そうそう、僕もそう思っていましたし。今は時代に合っているとか言ってくれることもありますけど、いち早く「ノウハウ」を見つけてくれたのは源馬さんですから。6年も前によく展示会に来てくれましたよ。

「ノウハウ」を巡る機能美とサイズ感

源馬:「ノウハウ」のパジャマはコンセプチュアルですよね。

十河:もちろん“伝えすぎない”魅力もあると思うんですけどね。パジャマは一般的なファッションとはちょっと違って生活雑貨の側面が強いですが、寝心地や機能性さえ担保されていればデザインで遊べると思うんです。それに人に見られることを前提としていないから似合う、似合わないではなくて、着たいと思ったら買えるアイテムなんですよね。

源馬:確かに、パジャマって究極のプライベートな服装じゃないですか。誰かに見せるものじゃないから買う時は純粋に気に入ったものを選ぶし、そういう意味ではパジャマはファッションの本質を突くものだとも思います。「ノウハウ」を始める前って、何か服作りはしていたんですか?

十河:デザイナーズブランドのパタンナーでした……とか言えたらいいんですけど、そうじゃないんですよ。20代の頃はゴミ収集車に乗ったり、六本木の「わけあり熟女倶楽部」ってお店の厨房で働いたり、定職に就かずブラブラしていました。その後も紆余曲折あるんですけど、「A.P.C.」の販売員もやっていました。結構売っていたんですよ。

源馬:意外な一面を出してきましたね。

十河:接客の経験も少なからず今に活きていて。店頭の商品から、お客さんは限られた予算の中でお買い物をするわけじゃないですか。だから買おうかどうか悩んでいる時に、「お似合いですね」とか「今日はいているパンツと合っていますよ」みたいなセールストークをしてもただ虚しいだけなんです。全然刺さらない。そういう時には、機能について話すと盛り上がります。

源馬:へぇ、おもしろいですね。

十河:例えば「このポケットだったらiPad miniが入りますね」とか。勝手な後付けでもいいから、機能美の話をするとお客さんの背中を押せることは肌で感じました。「ノウハウ」のパジャマには家の中の動きに対応できるような機能を随所に盛り込んでいます。あとはくつろぎやすさを考えるとパジャマはゆったり着るほうが良いと思ってるので、サイズで悩んでいる人には大きいサイズを薦めますよ。

源馬:機能的にも良いし、だらっと大きめのサイズを着るのも可愛いですもんね。

十河:いにしえから「大は小を兼ねる」って言葉があるし、うちのおかんもよく言っていました。たまにおかんのパンチラインを思い出します。

源馬:母親が言うことは聞いておくべきですよ(笑)。デザインは生活に根付いたものが多いけど、どういう時に思いつくんですか?

十河:意識してはいないですけど、普段の生活の中で引っかかることがあれば、後々それをデザインに落とし込んだりはしています。ただ僕達は器用なタイプじゃないので、サンプルを作ってはボツにしていますよ。チューソンのジャッジが厳しくて……。

源馬:声が小さくなった(笑)。

十河:企画とデザインは僕なんですけど、それを世に出すかどうかをジャッジするのはチューソンなので。もう、ボロクソ言われますよ。「そんなの誰が着るの?」って。

源馬:チューソンさんはしっかりされていますよね。鍛えられるんじゃないですか?

十河:僕も「はーい……」って言って、何事もなかったようにまた仕事に戻るんです。ただ、なんだかんだ言われてもサンプルまでは作らせてくれるのはありがたいですよ。

源馬:良い関係性じゃないですか。

「自分達が着たいもの」――「TOKION」とのコラボで何を作るか?

十河:僕達は自分からの営業があんまり得意ではないんで……ありがたいことにこうやって好き者が声かけてくれるんですよ。

源馬:好き者って(笑)。

十河:でも僕達も好き者に引かれていますから。好き者から影響を受けていますし、実際そういう人が僕達の相手をしてくれるんですよ。源馬さんだって僕からしたら大先輩ですから、胸を借りるつもりでコラボしたいです。

源馬:一緒に何かを作る時にアーキタイプというか、共通の感覚があるのは大事ですからね。

十河:僕もコラボは楽しいんですよ。でも、やっぱり、自分達が着たいものを作りたいじゃないですか。源馬さんは短パンが好きだし、上は長袖で下は短パンが良いなと。真夏だったら短パンとTシャツで過ごせるし、ちょっと寒くなったら長袖を羽織るみたいな感じで、長く使えるもの。「ノウハウ」のパジャマは必ずセットアップで作っていますが、その縛りの中でどれだけ遊ぶかっていうのもコラボの醍醐味なんです。

源馬:ポケットにマチを付けても良さそうですね。

十河:トートバッグも作りたいんです。僕がよく行くスーパーのLサイズのレジ袋と同じ大きさで。上下でパジャマ着て、同じ柄のバッグ持ったらとても可愛いと思います。

源馬:それと僕、ある時に職質されて、警官に「なんで職質したんですか?」って聞いたら「全身黒だから」って言われたんですよ(笑)。だから今回は黒じゃなくてネイビーの無地を作りたいなと。

十河:“職質されないパジャマ”、良いですね(笑)。

十河幸太郎
1980年、北海道生まれ。2013年に「ノウハウ」をスタート。チューソンとともに夫婦で制作を行っている。加賀美健や平山昌尚、Yuki MIKAMI、BAKIBAKI、今井俊介、書道家の万美など、アーティストとのコラボレーションも積極的に行う。また、パジャマを着る前後の時間のためのインナールームウェアを制作する「トワイライト(Twilight)」や、シルク100%の“家が恋しくなる”着心地のパジャマを制作する「ホームシック バイ ノウハウ(HOMESICK by NOWHAW)」などのラインも展開している。
www.nowhaw.com

源馬大輔
1975年生まれ。1996年に渡英し、1997年ロンドンのブラウンズに入社、バイヤーとしてのキャリアをスタートさせる。 2002年帰国後、中目黒にセレクトショップ、ファミリーを立ち上げ、 WR/ファミリー エグゼクティブ・ディレクターに就任。2007年に独立し、源馬大輔事務所を設立。セリュックス(旧LVJグループの会員制クラブ)のブランディング・ディレクターなどを務め、現在は「サカイ」のクリエイティブ・ディレクションや香港の高級専門店レーン・クロフォードのバイイング・コンサルタントなどを行っている。経済産業省「ファッション政策懇談会」の委員も務める。

Photography Kazuo Yoshida
Cooperation MIDORI.so NAKAMEGURO

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