アーティストでありモデルのColliuが作品を通して伝える「鑑賞者と作品の関係」

女性誌を中心にモデルとして活躍するColliu(以下、コリュ)は、平面、立体、インスタレーションなど、さまざまな表現手法で作品を創作するアーティストとしての顔も持つ。最近はギャラリーでの展示にとどまらず、MIYASHITA PARKにあるパブリックアートやブランドとのコラボレーションなど、幅広い創作活動を展開している。そんな彼女の創作のテーマは「鑑賞者と作品の関係」を意識しているという。そこで現在個展「FOLKS!」を開催中の彼女に、距離を意識した作品作りの考え方、コロナ禍での開催している個展のこと、そしてモデルとアーティストの両立について訊いてみた。

鑑賞者を主役に考えた空間作り

ーーコリュさんはどのような活動を行っているのですか?

コリュ:今回の個展もそうなのですが、私はもともと作品を作る時に、「鑑賞者と作品の関係」を意識しています。これは作品に込められたメッセージやコンセプトに加えて、作品が鑑賞者にどんな伝わり方をする環境にあるのかというのを考えることです。あくまでも鑑賞者が主役で、その先にある作品がどうポジティブに作用するかということ。私は作品が単純に作者の思いを感じるものというだけではなくて、見るという行為以外にももっと自由であるべきだと考えています。なので展示する環境を含めた作品との関わり方を大事にしています。
昨年開催した個展「Dear My Plinth」では、展示空間をすべて真っ白にし、作品を展示する台座をすべてカラフルでいろんな形にして、そこに小さく作った創作物を置きました。これは作品を楽しんでもらいながらも、真っ白な空間にあるカラフルな世界を楽しんでもらいたくて、台座を使って空間をコントロールしようとチャレンジした個展でした。他にもラフォーレ原宿のトイレで作品を展示した「Prospect-Refuge(眺望-隠れ家)」でも、空間から考えて作品を作りました。作品を発表する場所は、広さや高さ、そして床の色や壁の雰囲気が違うので、その場所の領域や制約のある世界を全部使って私は何が創作できるのかと考えて作っています。そのため私の作品は、平面があったり、立体物があったりと場所に合わせて作品の表現手法を変えています。

ーーご自身の創作活動とクライアントワークの考え方の違いはなんですか?

コリュ:私の中では違いはありません。クライアント仕事での制約がたくさんあったとしても、その中での自分らしさを考えていますし、創作の際も展示する空間の制約から考えています。なにより作品を観た人がポジティブな気持ちになってほしいという点では、どちらも同じ思いを込めています。

ーー具体的にどのようにして空間の制作を行なっているのですか?

コリュ:まずPCで3D空間を作って、どれくらいの大きさの作品をどこに置くかをシミュレーションしながら進めています。以前は、1/6スケールでミニチュアの空間を実際に作ったりしました。そうすることで自分の頭の中に描いたものが具現化されますし、クライアントにも伝わりやすいんですよね。

ーーこの制作手法に辿り着いたきっかけはありますか?

コリュ:MIYASHITA PARKのパブリックアートからですね。実際の公園の空間を3D上で見ながら、サイズや色彩の判断をしました。制約はいろいろありましたけど、常設のパブリックアートはずっとやりたかったのでとても嬉しかったです。ちなみに新しい渋谷のモニュメントということで、ハチ公に続くシンボルになってほしいという願いを込めて「きゅうちゃん」という犬の立体作品にしました。ちなみにきゅうちゃんは、宮下公園の“宮”が“きゅう”と読めることも掛けています。今後もパブックアートは挑戦したくて、触れたり座れたりするような遊べるものを作りたいです。それこそ“使える”という点で、今回の個展「FOLKS!」のテーマにしたフォークアートに通ずるものがあります。

“目”に個性を持たせることで生まれるオリジナリティ

ーーでは個展について聞かせてください。フォークアート(人々が生活を楽しむために身の周りの生活雑貨などに芸術を施す民衆芸術)をテーマにしたのなぜですか?

コリュ:普段の創作活動をしている中で、李朝時代の朝鮮民画に出会ったのがきっかけです。調べていくうちに、朝鮮民画というのは作品を所有する人の生活を想定して作られていて、フォークアートの一種であると知りました。それは私の創作の考え方にも似ている気がして。それでフォークアートでの個展がしてみたいと思い、今回の開催につながりました。今まで動物をモチーフにするというのは割とハードルが高かったのですが、MIYASHITA PARKのきゅうちゃんを作ったことで、動物のモチーフを作ることがとても楽しめました。というよりも、今回の個展では人型モチーフはほとんどありません。これは私の新しいチャレンジですが、そもそも自分の作品が鑑賞者にとってポジティブなスパイスになったらいいと考えているので、人型にこだわる必要もないなと思いました。なにより私の作品は“目”で自分の作品だと認識してもらえているので、モチーフが人や動物でも変わりません。

ーー確かに。今回は動物がメインで、さらに虎が多いですね。そして動物たちの目はコリュさんの特徴である、ジグザグ模様になっています

コリュ:そうなんです。惹かれた李朝時代の朝鮮民画が、虎の鵲虎図 (じゃっこず)だったんですよね。これは護符や縁起担ぎとしての意味を持ちながら室内を装飾するために制作されてきたもので、さまざまな種類があります。なので私の個展でも絨毯やマット、椅子などといった、普段の生活に取り入れられるものに虎や狛犬を落とし込んでいます。そして私が“目”に注目しているのは、目ってその人のアイデンティティを確立するアイコニックなものなので、目にオリジナリティを持たせることができれば、どんな作品でも自分らしい作品になると思っています。

ーーちなみに目はの書き方は変化していますか?

コリュ:どんどん簡略化されてきました。最初は漫画の目のハイライトからインスパイアされて、目の中にイナズマを入れていたのですが、描いていくうちにふにゃふにゃしてきて今では線のようになって、その面影はまったくなくなりましたけど(笑)。

ーー一方、モデルの仕事もされていますが、対象を見る側から見られる側に変わるのはどう心境の変化がありますか?

コリュ:私はアーティストよりもモデルを始めたのが先なんです。モデルには客観性が求められるので、アーティスト活動でもこの客観性を生かしています。またモデルの仕事を通じて得られるトレンドや情報も、自分の大事な要素になっています。どちらが本業かと聞かれることもありますが、モデルとアーティストを合わせてコリュという存在だと思っているので、どちらも欠かせないですね。

ーー最後に個展を楽しみにしている方にメッセージを。

コリュ:私は作品を通してみなさんに明るくなってほしいという思いがあります。どう感じるかは観た人次第ですが、作品を意識しぎずになんだか気持ちが和らぐ、明るくなるなって感じてくれたら嬉しいです。そしてコロナ禍ということで来れない人も多いと思うので、今回の個展をオンライン上の3D空間でも楽しんでもらえるようにしていますので、リアル、ヴァーチャルのどちらでも楽しんでみてください。

Colliu
神奈川県横浜生まれ。アーティスト、モデル。武蔵野美術大学在学時よりモデルとしての活動を始め、後にアーティスト活動をスタートさせる。アーティストとしては、ドローイングから、立体物、空間、さらにインスタレーションまでと多岐にわたる。渋谷・MIYASHITA PARKの入り口にある犬のパブリックアートは彼女によるもの。
http://colliu.com/

■Colliu Solo Exhibition「FOLKS!」
会期:開催中〜9月5日
会場:東京・FARO Kagurazaka
住所:東京都新宿区袋町5-1
時間:13:00〜19:00
3D オンライン:http://colliu.com/post/exhibition/1999/
http://faroaoyama.com/gallery/2731
※ギャラリーが混雑した場合、入場制限をする場合があります。
©Colliu


Photography Shinpo Kimura

author:

相沢修一

宮城県生まれ。ストリートカルチャー誌をメインに書籍やカタログなどの編集を経て、2018年にINFAS パブリケーションズに入社。入社後は『STUDIO VOICE』編集部を経て『TOKION』編集部に所属。

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