カルチャー誌「モダーン」Vol.2が発売 ティルマンスが巻頭企画を手掛け、五木田智央と塩田正幸の両個展の密着ドキュメントも収録

2019年に創刊したインディペンデントカルチャー誌「モダーン」のVol.2が2月4日に発売した。価格は¥3,300でドーバー ストリート マーケット ギンザと代田橋のフロットサムブックス、同誌の編集長、高宮啓が立ち上げたクリエイティブ レーべル「REPOR / TAGE(ルポルタージュ) 」のwebサイトで販売する。

特集は「REPORT AGE(時代の記録)」。奇しくも新型コロナウイルスのパンデミックで、世界中が激変したこの「時代」において、“多様化が加速するカルチャーは現代社会においてどのように触媒として機能しているか”を国内外のアーティストとともに、ノンフィクション、ドキュメンタリー形式で記録している。

巻頭企画には、写真家としての活動の他にも、世界情勢や社会問題についてSNSなどを駆使して発信を行う活動家のヴォルフガング・ティルマンスが登場する。10代の頃から音楽活動を続けており、近年は幾つものレコード作品をリリースしている。数多のジャンルを横断し活動を続けるティルマンスが、現在の拠点であるベルリンでのスナップ写真などを組み合わせることで、特集でもある「REPORT AGE」を表現している。

ティルマンスは、昨年から続く新型コロナウイルスの影響によるロックダウン中に、積極的に音楽制作を行っており、新発表となる楽曲をレコードとして収録する(限定版は7インチレコード、通常版はソノシート)。楽曲のマスタリングは坂本慎太郎やOGRE YOU ASSHOLE、BORISらのエンジニアとして知られるPEACE MUSICの中村宗一郎が手掛けた。

また、昨年にタカ・イシイギャラリーで同時開催された画家の五木田智央と写真家の塩田正幸の密着ドキュメントや、アート集団Chim↑Pom(チンポム)が、昨年の緊急事態宣言中に東京の街中に掲げたビルボードの記録作品、2019年に世界的な写真賞のフォーム・ポール・ハフ・アワードを受賞したガーナを拠点に活動する写真家のエリック・ギャムフィのポートフォリオ作品の他、1980年代から活動を続ける女性音楽家Phewのサウンドスケープなども収録する。

高宮編集長は「モダーン」創刊の経緯を「パーソナルな興味事を集めた雑誌です。創刊号も同じですが、自分の身の回りで起こったおもしろいことを好きなアーティストと誌面にしているので、ある意味、日記や手帳のようなものを雑誌に仕立て上げたようなものです」と語り、「インディペンデント誌なので締め切りもなく、題材が溜まってきたところで一気に動き出すといったスタイルです。実際に創刊号も2号目も、制作期間でいうとそれぞれ2年近く掛かっていて、商業誌では通用しない作り方だと思っています」と制作背景も覗かせた。

また、同号の特集テーマは自身が立ち上げたクリエイティブレーベルが起点になっている。「2019年の暮れに“reportage”という言葉にピンと来て、言葉遊びのようにREPORT AGEという特集タイトルを思い付きました。今回、同時に立ち上げたレーベルもREPOR / TAGE(ルポルタージュ)という名前でロゴなどを考えていましたが、奇しくも現在のような状況に変化してしまいました。結果、2020年という激動の時代を記録した号という落ちになりました」。

今後の「モダーン」については「『モダーン』はデザイナーの鈴木聖さんと写真家の塩田正幸さん、僕の3人が中心となって、ビールを飲みつつ編集談義を続けながら作っている小さな雑誌ですが、これまでに参加してくれたユルゲン・テラーやヴォルフガング・ティルマンスのように、世界的に活躍をしている作家からアンダーグラウンドな人達まで、フラットに編集することによって、世界中のどこにもない独創的、かつカルトな存在を目指しています。既視感のある雑誌が多い中、コピーを一切やらない、オリジナル曲だけを頑なにやるバンドのような雑誌でありたいです。日常的に情報があふれている今、インスト曲ばかりが入っているミックステープを聴くように、より感覚的に新しいカルチャーを『モダーン』を通して楽しんでほしいです」と展望を語った。

TOKION LIFESTYLEの最新記事

author:

芦澤純

1981年生まれ。大学卒業後、編集プロダクションで出版社のカルチャーコンテンツやファッションカタログの制作に従事。数年の海外放浪の後、2011年にINFASパブリケーションズに入社。2015年に復刊したカルチャー誌「スタジオ・ボイス」ではマネジングエディターとしてVol.406「YOUTH OF TODAY」~Vol.410「VS」までを担当。その後、「WWDジャパン」「WWD JAPAN.com」のシニアエディターとして主にメンズコレクションを担当し、ロンドンをはじめ、ピッティやミラノ、パリなどの海外コレクションを取材した。2020年7月から「TOKION」エディトリアルディレクター。

この記事を共有