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ジェイミー・リードがパルコの2021年秋冬シーズン広告に込めた、自由な空想への憧れと未来へのポジティヴなメッセージ

ジェイミー・リードは、「Dazed & Confused」「POP」「ARENA HOMME PLUS」などのファッション・カルチャー誌のアートディレクションに加えて、「ヴェルサーチェ」「キコ コスタディノフ」「ウェールズ ボナー」など、ラグジュアリーから若手まで多くのファッションブランドともプロジェクトをともにしてきた。

リードの作品に一貫しているのは、人種やキャラクター、国境などあらゆる境界を設けない自由なスタイルで、その考え方は視覚的情報に集約される。世界中の人が発信者になれる今だからこそ、ヴィジュアル作品に求められるのは明確なストーリーとメッセージ性だろう。

2020年からリードが手掛けるパルコのシーズン広告の最新ヴィジュアルは、2021年春夏シーズンから引き続き、希望と重力を表現した“HOPE FLOATS”がテーマ。フォトグラファーにジョニー・デュフォート、スタイリストにガレス・ライトン等を起用し、撮影は2020年12月上旬にロンドン市内で行われた。未だ出口の見えないコロナ禍での制作にリードが込めた未来へのメッセージとは? 作品にどんな思いを馳せたのか?

無限大に広がる自由な空想やイマジネーションが今の人々に重要なこと

−−今回のキャンペーンに込めたメッセージについて、昨シーズンから続くストーリーも合わせて教えてください。

ジェイミー・リード(以下、リード):パルコとのコラボレーションでは、物語のシークエンスがテーマになっていて、今回のキャンペーンのコンセプト“HOPE FLOATS”は、友情や人との繋がり、空想というアイデアを探究していくことから生まれました。各シーズンのイメージでは、主人公と彼等の空想上の友人が生き生きとしている様子を捉えています。春夏に引き続き、秋冬の新しいアートワークは、登場するキャラクターやシチュエーション、場所やムードを通して、それぞれの季節を表現しています。すべてのヴィジュアルは、朝から夜にかけて1日を通じて撮影したのですが、時間の流れとともに明るさが変化することで、季節を感じさせるきっかけになっています。

−−今シーズンは春夏のバルーンのモチーフである、ウサギやアイスクリームがキツネやスノードームの雪山になって登場しました。

リード:自由に空想することやイマジネーションは無限大で、人々にとって重要な行為です。ヴィジュアルにおいて、空想上の友達は登場するキャラクターの心の中から生み出されたものなので、彼等が夢見るものなら何にでもなれる。なので、バルーンのモチーフをダイナミックかつ、意味のあるものに仕上げることが重要だったんです。

キツネは“秋”を連想させるモチーフで、季節感にぴったりのオレンジ色の体や夜行性という特徴がある一方で、イギリスでは、ゴミを漁る害獣のように捉えられることもあります。そういった考え方を覆すことによって多様性や新しい価値観を示したいと考えました。衣装をデザインしたガレス・ライトンとともに、ハイファッションなゴミ箱を服のモチーフにしたのもネガティブな固定観念と対照的な意味を持たせたかったから。

今回のキャンペーンで表現した4シーズンの写真は、ロンドンのテムズ川周辺のエリアで撮影しました。春夏のヴィジュアルに写っている街とスカイラインは、川の対岸に位置する場所から撮影した同じ街ですし、秋冬のヴィジュアルは近郊の農場の中にある森と丘の上で撮影しました。それぞれに別のシーズンとの繋がりを持たせることで、シークエンスが生まれるんです。

秋冬のヴィジュアルを今回のキャンペーンの”フィナーレ”として締めくくることで、キャンペーン全体を壮大なものにしたいと考えました。そこで主人公のモデルが友人である巨大なスノードームの山脈と戯れている様子を描いたわけです。ガレスによる手編みの衣装を着たモデルをさながらアクションシーンのように撮影し、背景に写る街の光にも動きを加えました。実は、遠くに写る街は春夏のヴィジュアルで撮影を行った場所でもあり、冬から春へと続く季節のループを表現しています。

−−過去作も含めて“自由”がリードさんの作風の特徴の1つであり、“HOPE FLOATS”のテーマにも共通していると思います。自由のきかない状況下において、改めて“自由”についてどう考えますか?

リード:自由に想像することや表現することは、どんな時でも大切だと思っています。私達がこのような変化の時代に生きたあとに、それぞれの気持ちのやり場やはけ口(出口)が存在することが重要なのではないでしょうか。そして、イメージを通じて楽観的で喜びに満ちた物語が皆さんに少しでも伝わってくれたらうれしい。イメージが過ぎ去っていく中で、ネガティブなことは過去のものとして、明るい未来へ集中するためのリマインダーになることを願っています。

−−撮影を行った2020年12月のロンドンでは、全域の警戒レベルが最高になるなど、規制が強化される中で実際の制作はどのように進められましたか? 新しい発見など気付いたことを教えてください。

リード:イギリス政府は撮影の2週間前に、野外での広告撮影を一定の制限下で行うことを許可しました。幸運なことに、優れたクリエイティヴと制作チームとともに仕事をしていたので、細かな政府のガイドラインに沿って協力してくれました。もちろん、スタッフの人数は最小限にして、それぞれ違ったロケーションで撮影を行うことで、撮影クルーを各ロケーションごとに分散させました。

映像撮影の間に次のロケに設置するバルーンの位置を遠隔で確認したり、スムーズに行えるよう工夫もしましたよ。実際には春、夏、秋、冬の順に撮影を行ったんですが、各シーズンのフィーリングを表現するのに1日の時間の流れの中で撮影できたのが素晴らしかったですね。かなりペースの早い1日でしたが。

常に意識する感情の“出口”。自分にとっての気持ちの拠り所は作品

−−普段から「旅をすることが創作の源」と話していますが、積極的に旅ができない状況でどのようにインスピレーションを得ていますか?

リード:新型コロナウイルスのパンデミックの間に、イギリスを離れたのは2回だけで、この習慣に慣れる必要がありましたね。それまで、年に数回の海外旅行をしていましたし、仕事で出張の際は訪れた街を納得するまで体験したいので、毎回、通常より長く滞在していました。歩きまわることで知らない場所で偶然に何かを見つけたりするのがとても好きなんです。近い将来、そんな日常が戻ってくると前向きに考えていますが、それまでの間にかつて旅行をした時と同じような精神状態を保てるように、ロンドンだけでなく、これまで知らなかったイギリスの街を探索しに出かけたり、アクティブに活動していますよ。友人や仕事仲間と一緒の時間を過ごしたり、会話をすることも重要ですよね。それに、作品を作ることが自分にとっての気持ちや感情の拠り所なので、いつも“出口”は意識しています。

−−早いサイクルで変化していくファッションのヴィジュアルにおいて、鑑賞者の心に残るクリエイティヴに最も重要なことは何だと考えますか?

リード:意味のあるメッセージというのは、タイムレスなものだと思っています。パルコとのコラボレーションの楽しみは、イメージを幅広い人々に向けて発信できることです。文化的にも非常に多様性に富んでいますが、誰もが魅力を感じ、笑顔になれるような何かを今回のキャンペーンから感じてくれたら良いなと思っています。今回のそれぞれのシーズンイメージは、主人公のキャラクター、空気人形、ロケーションという3つの要素に焦点を絞ったことで、目に入った時にその活気に満ちたメッセージがすぐに伝わると思っています。このビジュアルを見た人々のエモーショナルで個人的な感情を呼び起こし、そこから湧き上がった何かを長く心に留めさせると同時に、その何かがすぐに心に作用してくれることが願いです。

−−SNSの発達やアウトプットの多様化で、時間に影響されないストーリーを感じるヴィジュアルの価値、必要性は高まっていると感じます。今回のパルコとのキャンペーンも含めて、作品のストーリーはどのように組み立てていますか?

リード:可能な限りオーダーメイドですべてのプロジェクトに取り組んでいて、決まった方法で仕事をしないようにしています。つまり、与えられた概要やタスクの意図をくみ取ると同時に、あらゆる人がいつでも作品を通してメッセージを感じ取れることができるようにしています。今回のキャンペーンでは、視覚的に小さなヒントをたくさん散りばめました。“イースターエッグ”という言葉がありますが、冬のビジュアルに登場する衣装のニットには、バルーンとして登場するスノードームの山並みが描かれているように、ちょっとした工夫を加えてメッセージに込めました。そのような小さな仕掛けが、さまざまな視点を生み出すきっかけになります。人によっては気付かないかもしれませんが、描かれるイメージや世界観にもう1度触れた時の新しい発見こそが大切なんです。

−−若手クリエイターとの協業は、あなたのクリエイティヴにどんな影響を与えますか? 現在のロンドンのクリエイティヴシーンについても教えてください。

リード:もちろん、ロンドンのクリエイティヴシーンはこれまでとは全く異なる状況になってきています。個人的にはオープニングイベントやギャラリーを訪れたりすることに慣れているので、デジタルギャラリーは、実際にその場で体験したい自分にとっては魅力的ではありませんね。口コミや誰かと会話することに価値があり、友人や同僚とのやりとりが活力を与えてくれます。そういった行為が困難な状況下においても、クリエイティヴな人は前向きで毅然としていますし、時代や制約を含めて、人々はどんなものからでもインスピレーションを受けることができるのです。私が最初に見たアート作品はマシュー・バーニーの「Drawing Restraint」というもので、彼はあえて制限された環境に身を置いて絵を描いていましたし、音楽プロデューサーのリック・ルービンも、自身に制限を課して新たな発想を生み出すことで知られています。UKがロックダウンされたときにそんなことを考えていました。クリエイティヴな人は強く、いつだってアーティストとして革新的な方法を見つけ出すのです。

−−2020年の“PARCO HEROS”、今季の“HOPE FLOATS”のSSから続く四季のストーリーの完成において、改めてPARCOチームとの協業で感じたことを教えてください。

リード:パルコとのコラボレーションは特別なものです。いつも自分のアイデアを信頼してくれますし、作り上げていくプロセスをとにかく楽しんでいます! 毎回、クリエイティヴのために強力なチームを編成していますので、これまでの2シーズンではそれぞれ美的感覚は違いますが、根底には同じメッセージが流れています。表現力にあふれた作品を作る機会を与えてくれて、継続的にサポートしてくれるパルコチームにとても感謝していますよ。

ジェイミー・リード
イギリス・ロンドンを拠点に活動するアートディレクター。2012年には、自身のデザインスタジオを設立し、エディトリアルやブックデザイン、広告、ブランディングなど、多岐にわたるアートディレクションを手掛ける。ファッション雑誌「POP」「ARENA HOMME PLUS」のアートディレクターを務めた後、2015年に雑誌『Dazed & Confused』のアートディレクターに就任しリデザインを行う。2018年にはスタイリストのアリスター・マッキーとコラボレーションしたプロジェクト「The Leopard」を立ち上げた。次世代を代表する「キコ コスタディノフ」や「ウェールズ ボナー」等、若手ファッションブランドへのサポートやコラボレーションも行っている。2020年からパルコのシーズン広告を手掛けている。

問い合わせ先
パルコ
https://parco.jp/

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TOKION EDITORIAL TEAM

2020年7月東京都生まれ。“日本のカッティングエッジなカルチャーを世界へ発信する”をテーマに音楽やアート、写真、ファッション、ビューティ、フードなどあらゆるジャンルのカルチャーに加え、社会性を持ったスタンスで読者とのコミュニケーションを拡張する。そして、デジタルメディア「TOKION」、雑誌、E-STOREで、カルチャーの中心地である東京から世界へ向けてメッセージを発信する。

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