Tokyo Wish List ―日本の伝統をファッションで着る―

今の気分にフィットする、手に入れたいアイテムをTOKION視点でピックアップする「Tokyo Wish List」。今回は、長年にわたって受け継がれている日本の伝統技法を取り入れたファッションアイテムにフォーカスしたい。日本の伝統技法といっても、民族服などではなく、あくまでもファッションとして昇華されたアイテムだ。長く愛され続けていることに納得できるはず。

KUON

今の社会情勢も取り入れたハリントンジャケット

“襤褸(ぼろ)”をファッションに取り入れるなど、オリジナルなブランド展開で、グローバルに展開する「クオン(KUON)」。そのことは以前、TOKIONでも取り上げているのだが、同ブランドから届いた新作は“遠州藍織物”(刺し子)を使ったブルゾン。ベースになったのは、1920年代のスペイン風邪終息後で、女性が社会進出をし始めた時代に流行したシャネルジャケットがモチーフになっており、今の時勢とリンクさせていることにも注目したい。
採用されている技法は、現在の静岡県西部地方を指す遠州地方で受け継がれている“遠州藍織物”を生地にした点。丹念に染め上げられた藍染の糸を、刺し子織りで織っており、繊細な表情が美しい仕上がりとなっている。
他にも、前端とカフス端にベルベット、サテンなどのテープがランダムに配置されており、クラシックで上品さも漂う。まさに和洋折衷を表現しながら、時代に左右されない服作りをする「クオン」らしい1着となっている。

クオン ストア 03-6804-2483

9M

京都生まれの伝統技術が詰まったコーチジャケット

これまでに国内外問わず、数多くのブランドのテキスタイルを京都の伝統的な技法である、”手捺染”とともに支えてきたデザイナーの吉田力が、2019年に京都でスタートさせた「9M(ナインエム)」。
“Luxury abnormal uniform(着ることで前向きになり、高揚するようなデザイン)”をコンセプトに掲げる同ブランドがリリースするのは、色鮮やかなビッグチェック柄のコーチジャケット。ウールメルトン生地を、職人による手捺染でチェック柄に仕上げたジャケットは、どこか温もりある風合いが魅力だ。シルエットは、ルーズフィットになっており、ラフに着こなせるのもいい。沈みがちな今の状況をファッションで少しでも前向きにできたら、そんなハートフルな願いも込められた1着となっている。

久山染工 075-932-1969

SOWBOW

日本の侘び寂びを堪能することができる開襟シャツ

主に九州地方を生産背景に、生地や染め、縫製などをその土地に伝わる技術を用いて、現代のファッションアイテムに昇華する「ソウボウ(SOWBOW)」。そんな同ブランドを象徴するのが、“蒼氓シャツ”とも名付けられた今回の1着。ボディは、福岡県の伝統的な綿織物である久留米絣を使用し、柔らかな生地感がいい。ちなみに久留米絣は、手作業の工程が多く、30以上の工程を2~4ヵ月を要して織り上げているという。デザインの特徴としては、立体感のあるイタリアンカラーなので、ラフながらも上品さも併せ持っている。そして、もう1点注目してほしいのが、色鮮やかなボタン。佐賀県の有田焼きで製作されたオリジナルの磁器ボタンになっている。素材や縫製はもちろんのこと、細かな部分までこだわり抜いた1着は、気構えずに気軽に着こなしたい。そして、同ブランドのエピソードをTOKIONでは取り上げているのであわせてチェックしてほしい。

ソウボウ sowbow.d@gmail.com

Photography Erina Takahashi
Styling Takuya Raita

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TOKION EDITORIAL TEAM

2020年7月東京都生まれ。“日本のカッティングエッジなカルチャーを世界へ発信する”をテーマに音楽やアート、写真、ファッション、ビューティ、フードなどあらゆるジャンルのカルチャーに加え、社会性を持ったスタンスで読者とのコミュニケーションを拡張する。そして、デジタルメディア「TOKION」、雑誌、E-STOREで、カルチャーの中心地である東京から世界へ向けてメッセージを発信する。

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