E-girls元メンバーで、現在はフォトグラファーとして活動しているDream Ayaと、盟友のArisaが手掛けるライフスタイルブランド「アセビ(asebi)」は、彼女達が「本当にほしいもの」を届けるブランドだ。100%草木染のサステナブルなウエアや、規格外で廃棄されるかんきつ類を使ったシロップなど、幅広いアイテムで注目を集めている。
2人は同ブランドの企画はもちろんのこと、アイテムの撮影やホームページの作成、梱包、発送まですべてを自身で行っている点は驚きだ。なぜ、彼女達がライフスタイルブランドをスタートさせたのか、なぜ自分達でやることを大切にしているのか、そして「本当にほしいもの」とはなんなのか。2人に「アセビ」のスタートから、込めた思いを語ってもらった。
「生活の中で、本当に必要なのか?」と追求しながら作るもの作り
――Ayaさんは、芸能界を引退して数年たちましたが現在、どのような活動をしているのでしょうか?
Dream Aya(以下、Aya):カメラマンとして撮影の仕事を軸に、イラストの仕事など、クリエイティブにかかわる活動をしています。他にも、自由ヶ丘にあるカメラ店「ポパイカメラ」でも働いてもいます。
――Arisaさんの普段は、どういった活動を?
Arisa:私はフリーランスでアパレルのプレスや販売、販促の仕事やSNS関係のコンサルなど、さまざまなメーカーやブランドのサポートをしています。この知識や経験を生かして「アセビ」を運営しています。
――そんな2人の出会いから「アセビ」が誕生するまでにはどんな経緯があったのですか?
Aya:私が芸能界の引退を決意した時に、体調を崩してしまったんです。その時に体を整えるために酵素浴に通うことにしたのですが、その施設を運営していたのがArisaちゃんでした。同い年ということもあって、すぐに打ち解けて仲良くなりましたね。それからプライベートでも遊ぶようになり、私は芸能界を引退。その中で、Arisaちゃんに「芸能界にいた頃は休みがほとんどなくて、友人と旅行に行ったことがない。引退したらいろんなところへ旅行に行くのが夢だ」という話をしたんですよね。そしたら「行こうよ!」って言ってくれて。
Arisa:旅行って、一緒に行く人と場所の相性ってあるじゃないですか。その相性が合わないとすごく疲れるというか……。でもAyaちゃんとは、共通の趣味が多かったり、行きたいところや食べたいものまでもどんぴしゃだったりで、一緒に旅行に行ったら楽しいだろうなっていうの想像できたんですよ。
Aya:それで一緒に旅行をする中で、「旅行中はもっとこういうものがあったらいいよね」とか「もっとこういう旅行グッズがあったら便利だよね」とか話すようになって、それなら「自分達で作ろうよ」って話すようになったんです。それが「アセビ」の原案でした。
――旅行がきっかけだったんですね。では、具体的にどういったブランドなのか聞かせてほしいのですが、まずは掲げるテーマは?
Aya:2020年11月に2人で立ち上げたライフスタイルブランドです。「あなたと2人で旅をしましょう」という花言葉を持つ、アセビという花が由来。私達が作った商品が、お客さんの手元に届いて、その方の人生と一緒に商品が旅していくというイメージをしながら、もの作りをしています。
――最初に作ったアイテムは、パラサント(部屋など空間の「浄化」や「気持ちのリフレッシュ」を目的とした、炊いて使用する香木)でしたよね。SNSで拝見したのを覚えています。
Aya:そうです。私達2人ともパロサントを愛用していたのですが、その中でパロサントってヨガする時に使用していたりもするのですが、かわいい売られ方がされていないなって2人で話していたんです。
Arisa:炊くだけではなくて、インテリアとして家に飾ってもかわいくなるようにドライフラワーでドレスアップして、「マルラニハワイ」のパワーストーンを使ったミサンガとのセットで販売してみたんです。それが思わず再販してしまうぐらい大きな反響があったんです。
――ゼロから立ち上げたブランドの初商品が、再販するほどの反響ってすごいですね。他にはどんな商品を作ったんですか?
Aya:その次に作った商品は、リサイクルコットン(縫製工場で不要になった裁断くず)とオーガニックコットンをブレンドしたTexloopを使用している日本製のサスティナブルTシャツです。こちらは100%草木染で作っていて、今や「アセビ」の定番アイテムになっていて、Tシャツ以外にもロンT、パーカも作りました。他にも、裾の内側にキルト加工のポケットをつけ、簡易的な鍋つかみとして使用できるエプロンや、水洗い可能で持ち運びもできるグランピングマット、スーパーには出荷できず破棄されてしまっている規格外のかんきつ類を使ったジンジャーシロップ、生クリームが苦手な方でも食べられる豆乳ホイップサンドなど、幅広い商品を作ってきました。
――アパレルから飲食物まで本当に幅広いですね。中でも草木染めのアイテムが定番っておもしろいなって思うのですが、100%草木染ができるところってあまりないのでは?
Arisa:そうですね。草木染って基本的に5%~10%ほどの化学染料を使用していて、色落ちしないようにしていることが一般的なんです。だから、日本の伝統文化でもある100%の草木染をやっているところって、実は数えるぐらいしかないのが現状でなんですよね。だからこそ、この100%草木染を残していきたいなと思うんです。100%草木染だからこそ楽しめる色落ちも珍しいと思うので、ぜひ試していただきたいですね。
――どの商品にも2人ならではのこだわりが詰まっていますね。実際に商品を作る上で、大切にしていることはありますか?
Aya:私達が生活する上で「本当にほしいもの、使いたいもの」を作るようにしています。あとは、長く使えるもの。この1年間を振り返ると、作ってきたものは実際に私達が使っているものばかりです。Tシャツやパーカはもちろん、エプロンやグランピングマットも、日々愛用しています。
Arisa:確かにそうで、自分達が本当に使いたいと思えるということが大前提で「自分達の生活の中で、本当に必要なのか?」ということを念入りに考えるようにしていますね。だから2人の意見が一致しないと商品は作れないんです。どちらかが妥協してしまいそうなものは、世の中に出すことはないんですよね。
Aya:そうなんですよね。商品アイデアはつきないほどたくさんありますけど、そのすべてがリリースできるものではないんです。「アセビ」は、私達2人の気持ちを大切にしているんです。
地球や人への優しさだったり豊かさを「アセビ」をキッカケに感じてほしい
――「アセビ」の商品は、サステナブルのTシャツがそうですが、他にもパジャマやパンツなど、ジェンダーフリーな商品が多いですよね。その点は意識されていますか?
Aya:男性用、女性用ということを考えないようにしようと話していますが、ジェンダーフリーを掲げた商品を作ることはしていません。
Arisa:自分達がやっていることは、アパレルではないということを前提にして、本当にいろんな人に手に取ってもらえるもの作りというのを意識しています。なので自分達が作ったものが、たまたま性別を問わず、みんなが着られるような大きさだったり形になっているだけなんです。打ち合わせをしていて、自然とそういう方向性になっていきますね。
Aya:そうですね。Arisaちゃんと一緒にいると、ジェンダーや環境のこと、食生活のことを話していることが多いかもしれないですね。Arisaちゃんと出会ってからは、そういった問題を生活の中で考えるようにもなりました。だから「アセビ」は、サステナブルやジェンダーフリーなことを自然と商品に取り入れるようになっているのかもしれませんね。
――Arisaさんが、そのような問題を日常生活の中で意識するようになったのは、いつぐらいからですか?
Arisa:きっかけは酵素浴を経営してた時になります。その経験が人生のターニングポイントにもなりました。酵素浴に来るお客さんの多くが、病気を患っていたり、体質改善を目的にされている方でした。酵素浴は、体を温めてくれたり、代謝力をアップさせたり、体質改善を後押ししてくれるものの1つになります。でも当時の私は、運営していたにもかかわらず、体のことや人それぞれいろんな悩みを抱えているけどもすべてのことに対応ができるほどの情報を持っていなかったんです。それはお客さんとの会話の中で気付かされました。もっと私自身が知識をきちんと身につけ、食や口にするもの、肌に触れるものに関心を持たないと、お客様と同じ目線に立つこともできないし、お店をやる必要もないと思ったんです。それから体に関するさまざまなことを勉強をし、アーユルヴェーダ(約5000年の歴史を持つ、インド・スリランカ発祥の伝統医療のこと)の資格も取りました。今もアーユルヴェーダなどを取り入れた生活もしています。
Aya:そんなArisaちゃんとライフスタイルブランドを作ったら、自分自身への刺激になるし、勉強にもなるなと思ったのも「アセビ」をスタートさせた理由の1つです。知識や発想がすごいので、常にワクワクさせてくれるんですよね。
Arisa:「アセビ」のTシャツを着ているだけで、地球や肌にも優しかったり、シロップを使うだけで、食品の廃棄の量が減るんです。すごくささいなことかもしれませんが、私達の商品を通して、普段から意識していることを知っていただけるきっかけにもなればいいなと思っています。
――今後はどんなアイテムを展開予定ですか? 2人のこだわりが詰まった新しい商品の発表が楽しみです。
Arisa:アパレルブランドではないので、もう少し素材にこだわった日用品を作ってみたいです。日常生活で使うものをはじめ、生きている上で絶対に必要なもの、さらにそれがプラスチックや化学物質じゃなかったりと、小さなことかもしれませんが、続けると地球のためになるものを作っていきたいですね。
Aya:それに内側から摂取するものだけではなくて、体の外側を意識した肌に優しいものも作ってみたいです。体を温めるための化学繊維を使った服や小物って、肌への影響が大きいんですよ。私も肌荒れを起こして、かゆくなったりしました。そういう肌が弱い方や、アレルギーを持っている方でも、身につけられるものを作りたいですね。ジェンダーフリーというより、もっと大きなくくりで体のことで悩んでいる人のことも考えていきたいです。
Arisa:あとはやっぱり、トラベルグッズは作りたいかな。
Aya:うん。来年は、トラベルグッズと肌と地球に優しいものだね。
――これまでにトラベルグッズは?
Aya:ブランド設立がコロナ禍だったこともあって、旅行に行ける状況ではありませんでした。そのため、家の中を意識した商品がメインになっています。もちろんライフスタイルブランドとして、こだわったものをたくさん作れたことは嬉しいのですが、旅行がブランドを作るきっかけにもなっているので、旅に行けなかったこの1年はすごく苦しかったです。
Arisa:やはり自分達がもっともインプットできる場所は旅先で、それをアウトプットしているのが「アセビ」になるので、旅行に行けなかったことは大きいですね。実際に旅ができていないので、トラベルグッズのアイデアが出なかったんだと思います。
――2人の旅行をSNSで拝見していて、その時に生まれたものが商品化されるって、消費者にとっても嬉しいですよね。それでは最後に、2022年の目標を教えてください。
Aya:1年間やってみての目標は、もうちょっとおだやかに良いもの作りをしていきたいなってことですかね。2021年は、毎月商品をリリースしたりと、時間に追われているように感じたので。
Arisa:そうですね。私達が本当にほしいと思って作ったものを、本気でほしいって言ってくれる方々がいることをこの1年で知ることができました。「アセビ」に価値を見出してくれる人がたくさんいたんですよね。だからこそ、自分達のもの作りがブレないように、2022年もこの2人だからできることを、じっくりと時間をかけてやっていきたいですね。
Aya:まだ2年目に突入したばかりなので、まずは1つ1つの商品に熱量を込めて、愛されるブランドになっていくっていうところが今の目標です。
――年内でいうと、12月25、26日にポップアップイベント「asebi Market 2021」がありますよね。このイベントではどんなことを?
Aya:「asebi Market 2021」は、横浜にある「オールドマンズカフェ」で開催される小さなマーケットになります。「アセビ」を通して出会った人達と行う、ブランドの集大成的なイベントです。
――集大成ということは体験型のイベントでしょうか?
Aya:そうですね。無農薬野菜の販売だったり、規格外となってしまったフルーツなどの食材を使ったドリンクやフードの提供、サステナブルで再着目されている洋服や本を破棄せずに届けるフリーマーケット、レスキューした保護犬とのふれあい譲渡会などを行います。大々的に発信していないのですが、「レスキュー」が裏テーマになっているんですよね。今回のイベントで行う1つ1つが、何かの救いになってくれたら嬉しいです。
Arisa:とはいえ、コロナ禍である現状、イベントを開催することは難しいことは十分に承知しています。そして、ちょっと都会から離れた場所なので、本当に行きたいと思ってくれた人が足を運んでくれて、ともにゆっくりとまったりした時間を過ごせればと思います。
Aya:人との出会いで「アセビ」が成り立っているのと同じように、「asebi Market 2021」も自然と集まった人達と開催する企画になっています。私達が普段何を意識し、もの作りをしているか、そして何かのために頑張っている人がどんなことを考えているのか。少しでも感じてもらえたら嬉しいです。