音楽制作歴1年でメジャーデビュー。TikTok発次世代アーティストimaseとは?

今やSNS上でのバズから派生し、世界中で有名になることができるチャンスがある。そんな時代に突入している。そして、音楽は専門的な知識や長い鍛錬を積まないと作れないもの……と、考えるのは時代遅れだ。

21歳のアーティストのimaseは、ゼロから独学で音楽制作を1年間(たったの!?)学び、実家の自室で作ったオリジナル曲をTikTokで発表することでバズを生み続けた。そして、2021年12月にメジャーレーベルから「Have a nice day」を配信リリースしデビューを飾った。その後2曲目となる「逃避行」を発表すると、TikTok週間楽曲ランキングで1位を獲得。すでにサブスクでも回りまくっている。そんな“バズ”を念頭にメロディを作り、それを世間に届けているimaseとは、一体どんな人物で、どんな考えを持っているのだろうか。デビューに至る経緯から、制作にまつわる話まで、本人に聞いた。

曲を作ってバズりたい! が初期衝動

——imaseさんはまだ2曲しか正式に発表されていませんが、今や大勢の人に聴かれていますよね。しかも、そもそも音楽制作を始めたのが1年前と聞きました。

imase:そうです。2020年11月頃に制作を始めました。それまでは楽器は何もできなかったし、音楽の専門的な勉強もしていたわけではないんですよ。せいぜいカラオケで歌うのが好きだったくらいで(笑)。

——そんな状況からなぜまた音楽を作ってみようと思ったのですか?

imase:TikTokでは以前から多くの人が音楽を発信していて、それを見ているうちに自分も作ってみたいと思うようになったんです。TikTokにのせるショート(ショートムービー、以下ショート)なら、僕みたいな初心者でも作れるんじゃないかな? って。それがきっかけです。

——にしても、音楽って作ろうと思って、すぐに作れるものですか? 難しそうな気がしてならないのですが……。

imase:最初の頃は、それこそ「かっこいい コード進行」ってネットで調べたりもしましたよ(笑)。それでトラックメイカーの方々が紹介している制作方法を見よう見まねで作っていましたね。なので初期のトラックはピアノとベースだけという、すごくシンプルなものでそれに自分で考えたメロディを歌としてのっけていたんです。

——最近、TikTokにアップされていた動画を見ると、キーボードの弾き語りもやっていますよね。あれもイチから勉強されたのですか?

imase:最初は全然弾けなかったんですけど、独学で調べながら勉強して、今はコードもわかるようになりました。そこまでサラサラと上手に弾けるわけじゃないんですけど、一応コードは弾けます!

——では、音楽制作では、どんなアプリケーションを使っていますか?

imase:Logicですね。それもやろうと思ってから勉強を始めたんです。

——Logicも扱うのがかなり難しくないですか!?

imase:最初はめっちゃ難しかったです! どうやってピアノを出すんだ?? みたいな。触りながら勉強していったんですよね。

——ではめちゃくちゃ頑張ったと?

imase:めっちゃ頑張りました(笑)。調べていたら「とりあえず1時間でもいいから毎日続けるべき」っていうネット記事を見つけたりして。何もわからないけど、毎日ちょっとずつ頑張って、できることを増やしていきました。

——ちなみに、TikTokで発信することにしたのはなぜですか? YouTubeだったりと、他のSNSも手段としてあったと思うんですが……。

imase:最初にTikTokから影響を受けて思い立ったというのがありましたし、ショートで動画が跳ねたりすると、協力してくださる方がたくさん見てくださるじゃないですか。素人がいきなりフル尺で曲を作るとなると、ハードルがとても高いし、編曲も自分1人でどうにかなるものでもない。再生数を稼ぎやすくて拡散力があるのがTikTokの特徴なので、そのTikTokで活動することで、自分の制作活動に協力してくれる人を集めたいという考えもあったんですよね。

——そのように協力してくれている人の中で、今でもimaseさんの表現に大きく携わっている方はいますか?

imase:ジャケットのイラストやMVを描いてくれている、こぱくさんはその1人ですね。ショートで出してた時期に「いいね!」って言ってくださって。こぱくさんが描かれているイラストの世界観も好きだったので、フル尺で曲を出すとなった時に、お願いさせていただきました。でも、直接会えたのは最近なんですよ。こぱくさんの個展に行ってお話できて嬉しかったです。

imase 「逃避行」

——imaseさんのショートは見事にバズり、多くの協力者が集まることで、2021年12月にメジャーデビューすることになりましたが、やはりアーティストとして生きていきたいという考えが根底にはありますか?

imase:最初はとりあえず音楽を作ろうってことだけだったので、アーティストになりたいっという強い思いはなかったですね。初期衝動という意味でいくと、「曲を作ってバズりたい!」ってことだったかもしれないです。

——それが実現できたわけですね。今の状況は、imaseさん的には想像できましたか?

imase:いえ。正直、「Have a nice day」がすごい伸びたのは驚きでしたね。こんなにいくものか!? って。ちょこっと伸びるかなぁくらいに思ってたので、ビックリしちゃったんです(笑)。

imase 「Have a nice day」

やりたいことがあるならすぐ始めてみればいいと思う

——imaseさんはバズるメロディを研究しながら音楽制作をされているとのことですが、それは実際にどういうことをされているんでしょうか?

imase:「n1ght」って曲を最初に出したんですけど、それが伸びたんですよね。その曲から、なぜ伸びることができたのかを自分なりに考えたんです。BPM90くらいなので、そのテンポ感で4小節の中に文字を6~8個入れてリズムを取ると良い曲になるんじゃないか? といった感じで研究していきました。もちろん、導き出した考えが絶対的な正解ではありませんし、そうやって考えて作った曲でも伸びないこともあるので、常日頃、何がバズるのかを研究し続けているんですよね。でも、どうしたらバズるのかは、まだまだわからないんですけどね。難しいところです(笑)。

imase 「n1ght(short ver.)」

——メロディもさることながら、imaseさんの曲は歌詞が心に響きますね。どのように作詞されているんですか?

imase:僕の場合は、最初にメロディをバチっと決めちゃって、後から歌詞を入れるんですよね。最初に歌詞から書こうとしても、おもしろい言葉遣いが生まれなくって。僕なりには俳句や短歌みたいな作り方の方が新しい言い回しになると思っています。メロディ的にハマる文字数を決めて、それが8文字なら、そこにうまく当てはめようとしたほうがおもしろい単語が出てくるんです。

——では、どういうところから言葉をインプットされているんですか?

imase:自分でもわかってないんですけれども、あるとしたら映画はすごいたくさん観るので、映画の字幕の影響かもしれません。

——自分の好きな映画作品を挙げるとしたら?

imase:『セッション』と『インターステラー』はおもしろかったですね。あと、みんな好きでしょうけど、『レオン』や『ショーシャンクの空に』だったり。そういう好きな映画から言葉のヒントを得ているのかもしれないですね。

——では、音楽ではいかがでしょう? 今のimaseさんの気分的に好きで聴いている音楽を教えてください。

imase:今の気分だと、ジェレミー・ザッカー(Jeremy Zucker)の「not ur friend」ですかね。映画の『セッション』的な興奮があると言いますか……。終盤に一気に盛り上がって爆発させるような感じがあるじゃないですか。ああいう起伏があるものが好きなんです。そういう意味でmillennium paradeの「FAMILIA」も大好きです。

——今、挙がった曲は、これからimaseさんが作っていく音楽に影響を与えそうですか?

imase:ベースとして影響を受けていると思いますが、僕の今年の目標としては、いろんなジャンルの曲を作りたいんです。最近、ノーバシーズ(No Buses)といったオルタナティブロックも好きで聴いていますし、チルな曲以外にも自分の好きな音楽を作っていきたいです。

——今後、imaseさんが音楽活動を続けていく中で目標としていることはありますか?

imase:やはり僕はバズを狙って作っているので、再生数という意味で、ストリーミング1億回再生! とかいきたいなぁって。

——最後に、自分の音楽をどんな人達に届けたいですか?

imase:届ける、というのとはちょっと違うかもしれないですけど、自分と同じように音楽経験がなくても音楽をやりたい、けどやっていない人って多いと思うんですよね。そういった人達も1年ぐらい頑張ればできるよ! って伝えたいですかね。音楽だけじゃなくても、何歳だろうとも、やろうと思った時に始めれてみればやりたいことはできるかもしれない。そういうことを自分の活動を通じて伝えていきたいです。

imase
TikTokを中心にオリジナル曲を投稿している21歳の新世代アーティスト。2021年12月に「Have a nice day」を配信リリースし、ユニバーサルミュージックよりメジャーデビューを果たした。
TikTok:@imase119
Instagram:@imase11_9
Twitter:@imase_1109

Photography Shinpo Kimura
Text Ryo Tajima

author:

相沢修一

宮城県生まれ。ストリートカルチャー誌をメインに書籍やカタログなどの編集を経て、2018年にINFAS パブリケーションズに入社。入社後は『STUDIO VOICE』編集部を経て『TOKION』編集部に所属。

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