スケートボードシーンの未来を切り開く スケートボーダー、西宮ジョシュアが目指す道

東京五輪での盛り上がりを経て、日本でも大きなムーブメントになったスケートボード。その本質的魅力はどこにあるのかと問われれば、個人的にはストリート(=街)にあると考える。なんでもない街中の一角でスケーターが新たなトリックを生み出す行為は、時には問題になるけどもクリエイティブな瞬間だと感じる。

今回取り上げる西宮ジョシュアは現在、東京を拠点にストリートスケートの新たなシーンを模索しながら、今後、アメリカで活動していくことも視野に入れ、独自のアクションを起こしている。最近では、「リーバイス」とともにスケートビデオ「MEADOWS」を制作し、その上映会では多くの人を集めた。

次世代を担うストリートスケーターは、どんな思考でスケートボートに向き合い、その未来を切り開くのか。西宮の声から探りたい。

西宮ジョシュア(にしみや・じゅしゅあ)
2000年生まれ。日本とガーナをルーツに持つストリートスケートボーダー。「ホッケー」のフロウライダーであり、「ニューエラ」「クラシックグリップ」「ベンチャートラック」「スピットファイヤー」などといったブランドからスポンサードされている。同時に、国内の「シュプリーム」「ファッキング オーサム」「リーバイス」などからもサポートを受ける。
Instagram:@joshuanishimiya

スケートの本質でもあるストリートに魅力を感じて

——まずはスケートボードカルチャーとの出会いと、のめり込んでいった経緯を教えてもらえますか。

西宮ジョシュア(以下、ジョシュア):スケートを始めたのが9歳の時で、小学校6年生までやって、中学ではサッカーをやっていたんです。それでやっぱりスケートをやりたいと思って、再開したのが高校1年生の時でした。そしてコンテストに出場したりもしていたんですけど、性格的にもちょっと合わないと感じていたんです。

スケートを続ける手段は、何も大会に出て良い成績を収めることだけではなくて、ストリートでビデオを作っていくという選択もあったので、ビデオ制作のほうを頑張っていこうと考えるようになりました。それで初めてビデオをリリースできたのは2018年頃だったと思うんですけど、制作期間が3年くらいかかっちゃって。うわ……ストリートスケートって超大変だなって実感したんですよね。

——ある種、ストリートスケートの洗礼的な体験をしたわけですね。それでもビデオの制作を続けていきたいと思ったということですか?

ジョシュア:はい。初めてパートを作れた時の達成感というか、ストリートでトリックを決めることができた時の快感にクラっちゃって、この道で頑張っていきたいと思ったんです。最初のビデオパートを作っている時に韓国のボードカンパニーがスポンサーについてくれて、2作目を制作している最中には「ニューエラ」が声をかけてくれてという流れで、なんとかスケートの活動ができる環境が整っていって、気付いたらスケートにのめり込んでいたという感じです。

——最初のビデオパートを撮影している段階で、どこかのカンパニーからスポンサードされる自信はありましたか?

ジョシュア:いや、なかったですよ(笑)。でも、スケートは昔から好きでやっていることだし、誰からもスポンサードされなかったとしても楽しいから続けていくって、当時は考えていました。でも、高校を卒業して、どんな仕事をやっていくかを考えなくちゃいけない時期は、葛藤がありましたね。いったん、大学に進学したものの忙しすぎてスケートする時間も作れないし、どうしようか悩んだ結果、1年間やって、その間にスポンサーがついたら大学をやめてスケートに振り切ろうと思ったんです。結果として、2つのカンパニーがサポートしてくれたお陰で、こうして今もスケートすることができているんですよ。

——ジュシュアさんは、今では「ホッケー」のフロウライダーでもありますし、「ファッキング オーサムジャパン(以下、「FA」)」からもサポートされていますよね。その辺りの話も聞かせてください。

ジョシュア:もともと「FA」のデッキに乗りたいと周囲に話していたんですけど、ちょうどYOPPIさん(=江川芳文)から、海外で活動していくことを目指しているのであればサポートするよってお話をいただいたんです。僕自身、将来はアメリカに活動拠点を移したいと思っているので、まずは物品提供から、ということでサポートしてもらっています。「ホッケー」に関しても同様で、これから契約をしたいと考えている段階なんですよ。

——実際にアメリカでも活動されたりしているんですか?

ジョシュア:サポートの際に本国の「FA」チームにもつないでもらって、パンデミックになる前にロサンゼルスに撮影しに行ってきました。「FA」のフィルマーの家に滞在させてもらって、そこで向こうのライダーとも知り合えました。まだパートを撮りためている段階なので、タイミングをみて、また早くロサンゼルスに撮影に行きたいんですけどね。

——今は、その準備段階でもあるということですね。最近では「リーバイス」とスケートビデオ「MEADOWS」を制作されましたが、それも海外活動への準備の一環でしょうか?

ジョシュア:そうですね。やっぱり国内で土台を整えた上で、長期間ロサンゼルスでパートを撮りたいと思っていますし、向こうのライダーとも長期間一緒にいないとホーミーになれないというか。なので、今は日本で土台を固めようと考えて、ブランドにも相談をしている段階です。その中で、「リーバイス」との取り組みは、第1弾的なプロジェクトでした。自由にやらせていただいて本当にありがたかったです。

「リーバイス」とともに制作したスケートビデオ「MEADOWS」。出演するのは、西宮ジョシュア、佐川海斗中田海斗森一成といった、国内ストリートスケートシーンを代表する4人のスケーター達

日本人ライダーとして新たなシーンを作りたい

——改めて、ジュシュアさんはスケーターとして、どんな活動をしていきたいと考えていますか?

ジョシュア:海外で活躍するのもそうなんですけど、日本人として、今までになかったシーンを作りたいと考えています。なので、スケートのイメージがないブランドともビデオを制作していきたいと思うし、実際にそういう活動をしているんですよね。今までにない動きをして、それを世界に発信していきたいです。スケーターとしても、今回の「リーバイス」と制作したビデオのように、プロジェクトをディレクションするという立場でも。

——より日本のスケートシーンに貢献して、その存在感を増していきたいという思いがあるのですね。

ジョシュア:はい。国内だけではなくアメリカもそうですけど、やっぱりストリートスケーターは、それだけで生活していくのが難しい状況にあるのが現状です。

これからの未来、いろんなブランドがスケート業界に参入して、多くのスケーターが活躍できる機会が増えれば、ストリートスケーターはもっと増えると思うんです。スケートの本質でもあるカッコいい、イケてるスケーターがもっともっと増えてほしいと思うので、とにかくいろんなことをしたいですね。人もブランドも業界も自分がハブになって、どんどんつないでいきたいです。そのためにも、まずは思いついたことをどんどんやっていこうと考えています。

Photography Masashi Ura

author:

田島諒

フリーランスのディレクター、エディター。ストリートカルチャーを取り扱う雑誌での編集経験を経て、2016年に独立。以後、カルチャー誌やWEBファッションメディアでの編集、音楽メディアやアーティストの制作物のディレクションに携わっている。日夜、渋谷の街をチャリで爆走する漆黒のCITY BOYで、筋肉増加のためプロテインにまみれながらダンベルを振り回している。 Instagram:@ryotajima_dmrt

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