新世代芸人・ヨネダ2000、愛と誠の大きな夢 「全人類を笑わせたい」「私もです」

ヨネダ2000(よねだにせん)
2020年4月1日に結成された愛と誠によるコンビ。東京NSC23期。
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1999年3月25日生まれ。東京都世田谷区出身。趣味はテニス、絵を描くこと、物作り、音楽鑑賞。特技はハーモニカ、散髪、顔剃り(理容師免許取得)。
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1996年9月19日生まれ。神奈川県横浜市出身。趣味は動物鑑賞、音楽鑑賞、SMAP。特技は犬の基本的なしつけ、ブルースハープ(ハーモニカ)、肩もみ。
Twitter:@yonedaai2000
Instagram:@yonedaai2000

昨年、結成1年半というキャリアで『M-1グランプリ 2021』準決勝進出、『THE W 2021』決勝進出という快挙で注目を集めた新世代のお笑いコンビ・ヨネダ2000。1996年生まれの愛と、1999年生まれの誠は、2018年に初めてコンビを結成。その後、もう1人を加えたトリオでの活動を経て、2020年に再びコンビとなった。そして今年、『キングオブコント2022』で準決勝まで進み、コントでも日本有数のお笑い芸人であることを証明した。漫才の固定観念を覆すようなネタを披露し、フレッシュな才能を開花させた2人は、これまでどんな道を歩んできたのか。

——お二人がお笑い芸人になろうと決めたのは、いつ頃なんですか?

愛:私は専門学校の2年生の時、就活のタイミングです。動物園の飼育員になりたくて、ドッグトレーナーの専門学校に通っていました。まわりの同級生達がペットショップとか動物病院とかを志望して就活しているのを見ながら、私もインターンに参加したりはしていたんですけど、このまま就職して人生を終わらせるのも違うかなって。それで、専門学校を卒業したあと、東京のNSCに入りました。

——その前から芸人に憧れはあったんですか?

愛:ありました。高校の時も芸人になりたいっていう思いはあったんですど、兄弟は頭も良くてちゃんとした学校に行ってるし、なかなか親には言えなくて。動物は小さい頃からずっと好きだったので、冷静に考えて、とりあえず専門学校には行こうと。ただ、このまま就職してしまったら、もう芸人の道に入るのは難しいだろうなと思って、決心して、親にちゃんと言いました。

——誠さんは、いつ頃ですか?

誠:職業としてお笑い芸人を意識したのが中2くらいで、養成所について調べたりしたのが高2くらいです。とにかく勉強が苦手で、私にも賢い兄がいるんですけど、兄みたいになるのは絶対に無理だってわかってたんですよね。それで、両親に「高校を卒業したらNSCに入りたい」って言ったら、うちの実家は理容室なので、「理容師免許は取りなさい」って言われて、NSCと理容学校をダブルスクールで通いました。なので、一応理容師免許は持ってます。

——学生の頃は、どういうお笑いを見ていたんですか?

誠:ダウンタウンさんが好きだったので、『リンカーン』(TBS/2005〜2013年)とか『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ/1989年〜)とかを家族でよく見ていました。

愛:私は『はねるのトびら』(フジテレビ/2001〜2012年)とか『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ/2007〜2014年)が大好きで、はんにゃさんやフルーツポンチさんに憧れてました。

——ネタというよりは、バラエティ番組がきっかけだった?

愛:そうですね。私が高校生の時は、ちょうど『M-1グランプリ』もやっていない時期で、テレビはネタ番組よりバラエティのほうが多かったんです。

誠:私もバラエティ番組ばっかり見てました。

——お笑い芸人やバラエティ好きは、クラスにもたくさんいましたか?

誠:私の周りにはお笑いの話をできる人はいなかったです。やっぱりジャニーズとかのほうが人気だったのかな……いや、すみません、周りと情報交換していなかったので、正直あんまりわかりません。

愛:ジャニーズは人気でしたよ。ドラマの『花より男子』とかが流行っていて、嵐を好きな子はたくさんいました。でも『はねるのトびら』も見てる同級生はけっこういましたし、小学生の時はCOWCOWさんの「あたりまえ体操」が流行っていたので、放課後に友達と真似したりして遊んでました。

——芸人を志した時点では、ネタというより、バラエティ番組がやりたかった?

愛:はい。『爆笑レッドシアター』(フジテレビ/2009〜2010年)とかを見ていて、個性的なキャラが出てくるユニットコントに憧れてました。

誠:私はバラエティも好きでしたけど、ネタもやりたいと思ってました。高校生の時から自分でネタも書いていたので。ただ、書いている当時はおもしろいって思ってたんですけど、いま読み返すと全然おもしろくないです……。

体を張って果敢に挑む森三中はかっこいい

——芸人の養成所は各事務所にありますが、NSCを選んだのはどういう理由で?

愛:一緒に入る友達がいなかったので、1人で入るなら同期が多いNSC がいいかなと思って。

誠:私も愛さんと同じ理由です。あとは、好きだった芸人さんがよしもとの方が多かったので。

——お2人がNSCに通っていた当時、男女比はどのくらいでしたか?

愛:入学したのが390人くらいで、そのうち女性は30人くらいでした。

誠:それでも多いほうだと思います。

——NSCに入ったあと、視聴者とは違う目線で、影響を受けた芸人はいますか?

誠:あの頃は令和ロマンとか、大学時代に学生お笑いをやっていた同期に一番影響を受けてましたね。まだ養成所の生徒なのに、ネタがすごい仕上がっていて、どうやったらあんな完成度の高いネタを書けるんだろうって、ずっと不思議に思っていました。

愛:やっぱり養成所から始めた初心者と、大学で4年間やってきた人達の差は圧倒的でした。『M-1グランプリ』の決勝戦を見ても、普通に遠い世界のように感じるけれど、同期だと身近な分、その差がリアルにわかるんですよ。

——芸人としてのスタートラインに立ってから、ロールモデルになるような芸人はいましたか?

誠:養成所で好きな芸人を聞かれた時には、「森三中さんです」って答えてました。

愛:私も森三中さんですね。中学生の頃から『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ/2007年〜)をよく見ていて、それぞれ3人が違った役割を担っていながら、全員おもしろいのがすごいなって。

誠:あの頃の森三中さんは、体を張った笑いも多くて、今はコンプライアンス的に良しとされないけれど、やっぱりおもしろいんですよね。何にでも果敢に挑んで笑いにしていく姿を見て、かっこいいなって思ってました。

--NSC在学中から「コンプライアンス」みたいなことは言われていたんですか?

愛:NSC時代は言われてなかったです。

誠:むしろNSCにいた頃は、女であることや容姿をネタにしたボケを入れろって言われてました。

愛:ただ、入れろって言われても、私達は上手くネタに入れられなかったんですよね。自分達なりに入れてみたつもりが、「どこに入れたんだ?」って言われたり。「意味がわからない」とかも言われて。女とか容姿をネタに入れる能力が全然なかった。

誠:そもそも入れなくてもいけると思ってましたし、どうせ使いこなせないなら、やらなくていいかって。ネタにしておもしろくなる人もいれば、おもしろくならない人もいるんですよね。愛さんがふくよかな体型なのもあって、たまに「最近は見た目とかをネタにできなくて困りませんか?」って聞かれたりすることもあるんですけど、「困りません」って答えるしかなくて。やろうと思ってもできないし、あんまり考えてないしっていう。

愛:でも、テレビのトーク番組とかだと、自分としては先輩の芸人さんにいじってほしいと思っていても、今はなかなかいじってもらえないじゃないですか。そこはどうしていいのか正直わからないですね。あんまりそういう番組に呼ばれていないので、直面することはまだ少ないんですけど、それでも何回かは、誰にも何も触れられずに終わるっていう状況になったことはあります。

『M-1』準決勝で初めて「ちゃんと道がつながってるんだ」

——2018年に霜降り明星が『M-1グランプリ』で優勝して以降、第七世代と呼ばれる芸人のブームがありましたが、当時はどんな気持ちで見ていましたか?

誠:ブームの頃は、私達は芸歴1〜2年目で、自分も芸人だっていう自覚はありましたけど、第七世代の芸人さん達は身近な存在ではなかったので、ほかのテレビで活躍している人達と同じように、遠い存在でしたね。単純にすごいなと思って見てました。

愛:劇場とかでもお会いしたことなかったので、ほんと、すごいなっていうだけでした。

——2022年の今、芸人がブームになっていると感じることはありますか?

誠:『ラヴィット』(TBS/2021年〜)とか、朝から芸人だらけの番組もありますし、私達が学生だった頃に比べると、お笑いに興味のない人でも芸人の名前を知っていたり、そういう流れは感じています。どうにかその流れに乗っかりたい。

愛:乗っかりたいです。

——ヨネダ2000としては、結成1年半で『M-1グランプリ 2021』準決勝進出、『THE W 2021』決勝戦に初出場して、一気に注目が集まりました。

誠:それまでは賞レース用のネタを作っていても、自分達が決勝まで行けることの現実味がなくて。去年『M-1グランプリ』の準決勝に行って「あ、行けるんだ」と思ったんです。誰にも知られてなくても行けるんだ、ちゃんと道がつながってるんだって、初めて実感しました。

愛:その前の年に『THE W 2020』の準決勝までは行っていて、そのあたりから意識が変わってきましたね。

誠:でも『M-1グランプリ』の反響はちょっとすご過ぎます。YouTubeでネタが配信されているっていうのも大きいと思うんですけど。

——そして今年は『キングオブコント2022』でも準決勝まで進みました。

誠:私に演技力がなさ過ぎるので、コントにはずっと苦手意識があったんです。やってもウケないし。それで漫才にシフトして。でも、今のスタイルが生まれてからは、コントも無理なくできるようになりました。

——漫才とはいえ、明確なボケとツッコミではないネタですね。

誠:賞レースのために変わったネタを作ろうと思ったわけではなくて、お互いにやりづらいことをどんどんなくしていったら、自然と今のネタになっていった感じです。

愛:私は性格的にも強いツッコミをするのが苦手で、それに、誠はいつも設定からしてずれているネタを作ってくるので、そこにいちいちツッコミを入れてしまったら身も蓋もないですし。

誠が考えてきたことは私が忠実に再現したい

——相方の愛さんから見て、誠さんのずれた発想はどこからきていると思いますか?

誠:それ知りたい、私も知りたい!

愛:いや、知りたいって言われても、私にもわかんないです(笑)。ただ、普段からおかしなことは言ってますね。思考が脳を通過してないんじゃないかって感じる時がしょっちゅうあります。

誠:さっきも言いましたけど、私はとにかくずっと勉強が苦手で、親がいろんな塾に通わせてくれたんですけど、ダメでした。

愛:誠は文字を書くのも嫌らしく、作ってきたネタを私に伝える時も口頭ですし、一応ネタ帳はあるんですけど、ネタ案と流れがざっくり書かれているだけで、セリフが書かれているとかではないんです。

誠:文字は極力書きたくないです。だからネタが台本という形で残ってなくて、久しぶりに「どすこい」のネタをやろうと思った時は、録画した『THE W 2021』を見直しました。

愛:自分で考えたセリフも忘れるので、私が誠に言われた通りのセリフを言ったら、新鮮に「それおもしろいね!」みたいな反応をします。

誠:すぐに忘れてしまうので……。

愛:でも、あんなネタを書ける人はどこにもいないので、私は誠のやりたいことは普段から止めないようにしてるんです。誠が考えてきたことは、なるべく私が忠実に再現したいって、いつも思ってます。

誠:愛さんはあまりできの良くないネタを持っていくと、ちゃんとそういう反応をしてくれるから安心なんですよね。だから、愛さんが笑わないネタはやらないようにしています。

私は愛さんのことがめちゃくちゃ好きです

——お2人は普段から仲いいんですか?

誠:私は愛さんのことがめちゃくちゃ好きです。芸人の相方としてだけじゃなく、友達としての相性もいいと、私は思ってます。

愛:私は……別に嫌いではないです。

——ちょっと温度差ありますね。

愛:私には誠じゃなくても、気の合う友達いますし。

誠:私にも友達はいるよ!

愛:あ、いるんだ。よかった。

誠:愛さんは自分が好きなものにしか興味がないんです。あと、自分のことも本当はしゃべりたくないんだと思います。

愛:それはありますね。別に自分のことを誰かに話す必要はないかなって。でも誠は、自分のこと私にめっちゃ話してきます。

——例えば、どういうことですか?

愛:あんまり聞いてないので細かくは覚えてないんですけど、1日の流れとかですかね。朝フルーツ食べたとか。あとは、自分が思ったことを全部伝えてきます。

誠:私は愛さんだから話してるんです。別にほかの人にはそんなこと言いません。

愛:自分からめっちゃ話してくるのに、話し終わったら満足して、スマホいじりだしたりするんですよ。私が質問とかしても無視するし。

誠:1つのことしか集中できないので……。

愛:だからすぐに物を見失うんです。しかも、見当たらないって思うと、一瞬で「ないないない!」ってマックスの騒ぎ方をして、5秒くらいすると見つかる。最初の頃は一緒に捜してましたけど、最近は「ないない!」って騒いでも無視ですね。どうせすぐ見つかるので。

誠:だいたいすぐ見つかります。

愛:「だいたい」じゃないよ。見つからなかったこと、1回もないじゃん。そういうところが嫌なんです。

「目標は全人類を笑わせること」「私も同じです」

——舞台ではいつも同じ衣装を着ていますが、どういう経緯でその衣装に決まったのでしょう?

愛:2020年に再結成して「ヨネダ2000」になってから、衣装どうしようかっていう話はずっとしていました。今の衣装に決まったのは『THE W 2021』の準決勝の前ですね。

誠:私が着ている緑のトレーナーは、下北沢の古着屋さんで買ったので、1着しかないんです。他の衣装も探したりはしてますけど、見つかるまではこの1着でどうにか頑張ります。

愛:私も同じ柄は1着しかないですけど、違う柄もあるので3着を着回しています。牛とイルカと、ほとんど着てない馬が3頭いるTシャツです。

誠:愛さんのTシャツは衣装用に買ったものですけど、私のトレーナーはもともと私服だったんです。神保町よしもと漫才劇場で、たまたま通りかかった「素敵じゃないか」というコンビの吉野さんに「いい衣装やね」ってほめていただいて。「いや、これ私服なんですよ」って言ったら「それ衣装でいいんじゃない?」と言われたので、じゃあそうしようってことで、この衣装になりました。

——衣装用に買った服が別にあったんですね。

誠:ありました。ちっちゃいマーブル柄の、水面に絵の具がいっぱい描いてある服で……。

愛:あの服にしなくて本当によかったね。

——今後の目標はありますか?

誠:一番大きい目標は、全人類を笑わせたいです。

愛:私もです。前に劇場のトークコーナーで同じ質問をされたことがあって、二人とも答えが一緒だったんですよ。「全人類を笑わせたい」って。

——では最後に。ヨネダ2000のネタには、たびたびミュージシャンの名前や曲が出てきますよね。

誠:はい、使わせてもらってます。

——長渕剛は好きなんですか?

誠:普通です。

——Def Techは?

誠:普通です。

——稲川淳二は?

誠:好きです。

——なるほど。ありがとうございました。

Photography Mikako Kozai(L MANAGEMENT)


author:

おぐらりゅうじ

1980年生まれ。編集など。雑誌「TV Bros.」編集部を経て、フリーランスの編集者・ライター・構成作家。映画『みうらじゅん&いとうせいこう ザ・スライドショーがやって来る!』構成・監督、テレビ東京『「ゴッドタン」完全読本』企画監修ほか。速水健朗との時事対談ポッドキャスト番組『すべてのニュースは賞味期限切れである』配信中。 https://linktr.ee/kigengire Twitter: @oguraryuji

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