20種類以上の食物アレルギーと向き合って10年 黒田エイミが語る苦悩とセルフケア

モデルとして雜誌や広告で活躍するかたわら、私生活では妻であり、一児の母でもある黒田エイミ。生き生きとした美しさを持つ彼女だが、20代前半の時に突然重い遅延型フードアレルギーを発症したことがきっかけで、ライフスタイルを根本から見直したという。反応する食品をとると肌荒れや倦怠感、頭痛等、さまざまな不調に見舞われ、発症してから10年経った現在は20種類以上のフードアレルギーを抱えている。

食事制限を余儀なくされた黒田だが、自身のYouTube「EIMI CHANNEL」やInstagramではアレルギーとの上手な向き合い方を発信し、彼女のポジティブな姿勢に背中を押されるファンも多い。真剣にアレルギーと向き合う彼女に、日々の苦労からセルフケアまでを語ってもらった。

――フードアレルギーがあることに気づいたきっかけは?

黒田エイミ(以下、黒田):20代前半まではジャンクフードを食べたり、不規則な生活を送ったりしていましたが、健康面では特に問題ありませんでした。でも24歳ぐらいから突然ニキビのような湿疹が顔や首にでき始めてしまったんです。当時は「ニキビかな?」と思ったぐらいで、ニキビの薬やビタミン剤を飲んだり、当時流行っていたファスティングをしたりしましたが一向に治らなくて。その時通っていた松倉クリニックの松倉先生に相談してみたら、遅延型アレルギーの検査を勧めてもらいました。今よりも受診料は高く、検査結果が出るのも約3ヵ月かかるんですが、遅延型アレルギーについては何も知らなかったので、まずは試しに受けてみることに。検査結果の数値からは乳製品に対してアレルギーを持っていることが判明し、その後は卵と小麦も受け付けられなくなりました。それから原因となる食べ物を控えたら、今まで悩んでいた肌荒れや、顔や手の腫れが落ち着いたんです。

――アレルギー反応があった食べ物は何種類ありましたか?

黒田:検査した当時は3種類ぐらい。アレルギー反応が下がればまた食べられるようになるので、1年に1回(もしくは2年に1回)は検査を受けていましたが、今では20種類以上に増えてしまいました。原因は腸の粘膜が傷つき、有害物質が血液中に漏れ出ることでアレルギー反応を引き起こす、リーキーガット症候群(腸漏れ)。腸の不調によってトラブルを招くことが分かったので、食習慣を改善することにしました。

――20 種類以上もアレルギーがあることを知り、その現実を受け入れるのに最初は不安だったのではないでしょうか?

黒田:とにかく前に進むしか方法がなかったので、食生活を見直しながら抜け道を探していきました。私の場合は醸造用イーストや乳糖が含まれている調味料も使えないので、スーパー等で買う時は原材料やアレルギー表示の有無を細かく見るようにしています。時にはおいしいものを食べたいという諦められない気持ちがあって、大好物のピザやチーズ等にトライしたこともありましたが、やっぱり症状が出てしまって…はじめはストレスなことばかりでした。でも、もともと料理をするのが好きだったので、まずは素材を見直しながら作ることに挑戦。今では自分でチーズやパンを作ったり、代替できる調味料を探したり、新しいことにチャレンジするのが楽しいんです。

――YouTube「EIMI CHANNEL」ではアレルギーに配慮したレシピも紹介しています。メニューは自身で考案しましたか?

黒田:一般的なレシピを見て、自己流にアレンジしています。例えばクッキー。小麦粉が使えないので生地にはオートミールを使ってみたり、サクッとした食感を出すためにくず粉を入れてみたり。摂取頻度が高いものからアレルギー症状が出るので、よく食べるものは1、2日必ず空けて、偏らないようにメニューは毎日変えています。

健康維持は「知識」と「準備」が鍵

――アレルギーと向き合うために心掛けていることは?

黒田:とにかくストレスを溜めないこと。自分なりにおいしいものを食べて、よく運動して、よく寝て、あまり無理をしないというシンプルなことを常に心掛けています。私の場合はこれらの一つでも欠けてしまうと心身ともにボロボロになってしまうので、きちんと両方のバランスを保つようにしていますね。あとは知識を持って、準備をしっかりしておくことも大切。知識があれば対策を考えたり、選択できたり、間違えて食べてしまったりすることもないですから。準備においては、朝ごはんの作り置きや冷蔵庫に何かしら用意しておくと、急な外出がある場合はお弁当が作れるから安心です。

――客観的に物事を見ている印象がありますが、アレルギーで苦労した経験があるからでしょうか?

黒田:夫の影響が大きいですね。もともと感受性が強いタイプで、いろんなことに対して一喜一憂してしまうんです。そんな私の性格を知る、当時まだ友人関係だった夫から「物事をパーソナルに捉えないこと。自分事のように受け止めてしまうのは自意識過剰になっているのが原因なんじゃないかな」とアドバイスされました。彼の言葉のおかげで、一歩引いて、広い視野で物事を見られるようになりましたね。あとは妊娠・出産した時に、ホルモンバランスが崩れて産後うつ手前の状態になったことも理由かもしれません。ネガティブな気分が続いた時期があったので、自分の感情をコントロールする方法を学んだことも生かされています。

――どうやって学びましたか?

黒田:とにかくいろんな本を読みました。ありがたいことに、本にはもう自分が思ったことや経験したことが書かれているんですよね。私の場合は、本に書いてあることを鵜呑みにするのではなく、自分に合う部分をピックアップして実践しました。「こっちの方が自分に向いているから、これはやめよう」と、徐々にトライしながら自分にとってぴったりな方法を探すようにしています。

――同じ悩みを持つ読者に向けて伝えたいことは?

黒田:周りに同じような悩みを持っている人がいるわけではないので、孤独に感じる時があるかもしれません。まずはこの経験をポジティブに捉えられるようになってみましょう。限られたものの中から自分が楽しめるものはないか探してみてください。料理をしてみたり、おいしい食べ物を見つけてみたり、何かしらプラスになるものがあるはずだから。時にはトライアンドエラーなこともありますが、自分と向き合う良いきっかけにもなると思います。

Photography Anna Miyoshi

author:

竹内菜奈

1993年、東京都生まれ。日本女子大学卒業。学生時代に出版社の編集部アルバイトを経験したことをきっかけに、本格的に編集者としての道に進む。2018年にハースト・デジタル・ジャパンに入社。「ハーパーズ バザー」でウェブエディターとして経験を積んだ後、2022年にINFASパブリケーションズに就職。「WWDJAPAN」では編集・記者を務め、主に一般消費者向けのウェブコンテンツを手掛けている。取材分野はファッションからアンダーグラウンドなカルチャーまでを担当。

この記事を共有