アーティストREMIOのグラフィティに見るストリートアートの真髄

REMIO(レミオ)
パリ拠点のグラフィティライター。「ハフ」アンバサダーでもあり、アートシーンだけではなくストリートファッション界からも支持されている。アンダーグラウンドに限らず各国で精力的に幅広く活躍している。
Instagram:@rrremio

7月28日、「THE PLUG」で開催されたアートエキシビションは、HUF SET NFTホルダーのみが参加できるというユニークな試みで開催された。ここに「ハフ(HUF)」アンバサダーでもあるREMIO(レミオ)がメインゲストとして参加。作品展示から「ハフ」とのコラボアイテムの販売、会期中にはライブペイントも行われた。REMIOといえば、世界的に有名なグラフィティアーティストでもある。そんなREMIOに、グラフィティに感じる魅力や、自らが描いているアートについて話を聞く。

見た人が何か考えてくれる
それがグラフィティアートの面白さ

——今回の展示は「ハフ」とタッグを組んでの開催となりましたが、改めてブランドとの関係を教えてもらえますか?

REMIO:オレにとって「ハフ」=キース(キース・ハフナゲル、「ハフ」の創業者)なんだ。彼とは20年近く一緒にやってきたし、初めて日本のプロジェクトをやった時も一緒だったし、「ハフ」と聞くと彼のことを思い出すね。今回、展示用の作品を描いている時もずっと頭に思い浮かんでいたよ。

——キースとのエピソードで思い出されることはどんなことですか?

REMIO:ある日いきなり電話がかかってきて「ねぇ、スタジオ必要? うちに余っているスペースがあるんだけど使わない?」って言って、ハフのオフィス内に大きな場所を用意してくれたことがあったな。オレは18歳の頃から今もやっていることは変わらない。ずっとグラフィティアートをやってきたんだけど、今いる立場に引き上げてくれたのはキースだと思う。彼に出会えなかったら、こういう表現で自分のアートを評価してくれる場所には来れなかったんじゃないかな。いつも見守ってくれて、大きな機会を俺にくれたんだ。

——HUF SETは「ハフ」初となるNFT企画でもありますが、NFTについてどう思ってますか?

REMIO:純粋に面白いと思うよ。前に友達と一緒にNFTのプロジェクトをやってイベントを開催したこともあるし、NFTから派生する可能性は無限大だね。

——今回のイベントでもNFTアートを描かれたわけですが、表現する上で普段行っているグラフィティとの差はありますか?

REMIO:いや、ストリートで描くものもデジタルも同じだね。グラフィティっていうのはどこで表現しても同じものだから、ステッカーだろうとキャンバスだろうと何かのラベルだろうとNFTだろうと変わらない。全く同じものだよ。

——では、グラフィティアートの魅力はどういう点に感じていますか?

REMIO:ストリートで“REMIO”ってタギングされているのを見かけたら「え、あれは何?」って思うでしょ? そんな風に見た人が“REMIO”について何かを考える点に面白みを感じるよね。前に、電車の中で、年配の女性が街にある俺のタギングを見て「レミオってどういうことかしら?」って話している場面に出くわしたことがあるんだよ(笑)。そういうことが起きるのがいいね。あと、普段、街中では誰かに見つかる前に描かなくちゃいけないから、3分とか急いで描くんだけど、そういう緊張感が人に伝わるのも魅力の1つじゃないかな。

——展示された作品を見ていると、そうした魅力が伝わってくるような気がしますね。

REMIO:このエキシビションで展示している作品の制作には2日間もかけることができたんだ。普段とは大違い!  俺のグラフィティは、“R”が特徴的で見た人は一瞬でわかるようにキャラクター調で描いているんだけど、今回はHUF SETをコンセプトにして“H”をキャラクターにして、そのバリエーションを描いていったよ。入り口に展示しているキャンバスにはHUF SETのグラフィティを描いているけど、ここにある“E”はカーブを2個描くだけで表現されているでしょ。これは習字の一筆書きからの影響もあるし、何よりも早く描こうとする姿勢が自分の中に染み付いているから自然とこういうラインになったんだ。こういう点にもグラフィティのカルチャーが表れていると思うね。

——仰る通り、“H”に描かれたカートゥーン調のキャラクターはポップでいてインパクト抜群。実にREMIOさんらしい表現です。このキャラクターはどのように生まれたんですか?

REMIO:もともとキャラクターを描くというのは他のライターもやっていて、俺の場合はライターネームであるREMIOの“R”をアイコン的に描いていたのがきっかけなんだよね。“R”の下部を折り曲げて描いていたら、いつのまにか足と口っていう感じで認識されるようになったから、目やサングラスを描いてキャラクターとして描くようになっていったんだ。でも、肝心なのは“R”の下半分。ここを見れば、俺のことを認識してもらえるからね。だから誰かとコラボレーションする時は、顔の上を変えて特別なものにしたりしているよ。

——このキャラクターの表情は、どういうところから影響を受けているんですか?

REMIO:子供の頃からディズニーのアニメが好きだったし、日本のコンビニに売られているお菓子や飲み物のパッケージに描かれているキャラから着想を得たりもしているよ。もう10回以上、日本に来ているけど、来るたびに新しいものが発見できて面白いね。

——キャラクターを描くという意味でのルーツはどこにありますか?

REMIO:俺はノルウェー出身なんだけど、子供の頃に買ってもらった本だとか、週に1時間だけ観られる子供向けの東ヨーロッパ系のアニメ番組に出てきたキャラクターがルーツにあるかな。それを背景に、子供の頃からずっと描き続けてきて今に繋がっているんだよ。

瞑想するように常に何かを描き続ける

——REMIOさんが感じるグラフィティの魅力とは何ですか?

REMIO:自分の場合は描いていることで心が落ち着くんだよね。だから、常にノートに何かを描いているし、俺にとってはメディテーションのような時間なんだ。本当にリラックスできるんだよ。逆にストリートでやっている時は誰か来ないかなってことで緊張感を抱いたりもするんだけど、すごく集中して描いているから周りが全然見えない状態になっちゃうんだよね(笑)。自分にとってはそれくらい欠かせないものだし熱中できる存在なんだよ。

——REMIOさんは日本での活動も顕著ですが、日本のグラフィティシーンの中で一緒に活動したりするライターはいますか? またシーンについてどう思いますか?

REMIO:昔から仲良くしているのはTOKYO ZOMBIEっていうクルー。あとは、今回の制作も手伝ってくれたMINTとか。彼等だけではなく、日本のグラフィティアーティストは世界に出て活動している人も多いし、ユースもいるから、しっかりとカルチャーとして根付いていると感じるね。真似事ではなく、ジャパニーズ・グラフィティがしっかりと存在していると思う。

——ありがとうございます。では最後に、今後の活動について教えてください。

REMIO:来年の3月頃に伊勢丹でポップアップが決まっているよ。ここでは俺が友達と一緒に本格始動させるブランドのお披露目ができるかな。あとは、さっき話したMINTとプロジェクトをやるかもしれないからチェックしてほしいな。最近では東京だけじゃなくて山口や九州だったり、日本のいろんなところから展示のリクエストをもらったりしているから、ツアー的な感覚でポップアップをやれたら面白そうだね。そんな風に今後も日本でも活動していくから、よろしくね。

Photography Kohei Omachi(W)

author:

田島諒

フリーランスのディレクター、エディター。ストリートカルチャーを取り扱う雑誌での編集経験を経て、2016年に独立。以後、カルチャー誌やWEBファッションメディアでの編集、音楽メディアやアーティストの制作物のディレクションに携わっている。日夜、渋谷の街をチャリで爆走する漆黒のCITY BOYで、筋肉増加のためプロテインにまみれながらダンベルを振り回している。 Instagram:@ryotajima_dmrt

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