蛭子能収の個展「最後の展覧会」展が9月7日から開催 根本敬監修の元、全点描き下ろしの新作を発表

東京・青山の「Akio Nagasawa Gallery Aoyama」は、蛭子能収個展「最後の展覧会」展を9月7日から30日まで開催。本展では、「特殊漫画家」根本敬監修の元、全点描き下ろしの新作を発表する。

蛭子能収は1947年生まれの漫画家。⻑崎商業高校卒業後に看板店やちりがみ交換、ダスキン配達などの職業を経て、26歳で「月刊漫画ガロ」誌上にて漫画家としてデビューした。俳優やタレントとしても活躍し、2020年に認知症であることを公表している。

【ステートメント】
蛭子能収といえば、世間一般の認識としてはテレビタレントにいたおかしな人ですが、私にとっては前衛的な漫画やイラストを描く「ガロ」の実に偉大な先輩です。その蛭子さんが2014年に認知症の初期段階とTV番組の企画で診断されました。たしかにその頃から物忘れは著しく、画力も微妙な感じになってきてはいました。従来の手抜きとは違い、線が思わぬ方向へ変化しているのです。

その頃自身の描いたイラストを指して「小学生みたいな絵やね」と自嘲する様に言いました。しかし、蛭子さんと私が師とあおぐ湯村輝彦(akaテリージョンソン)さんが「小学生みたいに見えても絶対におじさんにしか描けない絵」と前向きに評したのでした。6年後の2020年、皆さんもご存じの通り蛭子さんは「レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の合併症」である旨を公表しました。その際に放った「(これからは)認知症のオレを笑って下さい」という言葉に偽りはなく、オレは今まで通りバリバリ仕事をするからこれからも宜しく頼みますという意思表明だったと思います。しかし、現実はそうは行かず、認知症を公表したタレントの仕事はみるみる減り、漫画家としての描いたり、もしくは書いたりといった仕事も激減し今や限りなくゼロに等しいのです。

このまま蛭子さんをフェイドアウトさせてはならない、絵を描くことからスタートした蛭子さんを 最後は絵=芸術家として飾って貰えたらと考える人達が少なからずいて、この度の展覧会は企画されました。約1年と少し前の話です。
そして準備も整い今年の春から絵を描き出しました。とはいえ、この展覧会へ向けてキャンバスに向かう頃には症状は進み、かつて自らの口から出た「小学生みたいな絵」は「幼児みたいな絵」になっていました。しかし、件(くだん)の湯村さんの言葉に倣えば「幼児みたいに見えても絶対におじさんにしか描けない」、 より具体的言えば「幼児みたいな絵に見えても75歳、認知症の蛭子能収にしか描けない絵」なのです。どの絵も「生きる」ということが本質的に内包する儚さを突きつけてくるのですが、それでいて幸せな気持ちに もなってしまうのは企画した私達だけでしょうか。

根本 敬(特殊漫画家)

■蛭子能収「最後の展覧会」展
会期:2023年9月7〜30日
会場:Akio Nagasawa Gallery Aoyama
住所:東京都港区南⻘山5-12-3 Noirビル2F
時間:11:00‒13:00 / 14:00‒19:00 
休日:日〜火曜・祝日
https://www.akionagasawa.com/jp/exhibition/the-last-exhibition/

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TOKION EDITORIAL TEAM

2020年7月東京都生まれ。“日本のカッティングエッジなカルチャーを世界へ発信する”をテーマに音楽やアート、写真、ファッション、ビューティ、フードなどあらゆるジャンルのカルチャーに加え、社会性を持ったスタンスで読者とのコミュニケーションを拡張する。そして、デジタルメディア「TOKION」、雑誌、E-STOREで、カルチャーの中心地である東京から世界へ向けてメッセージを発信する。

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