スネイル・メイルが語る「映画出演」から「Jホラー」や「シティポップ 」の魅力、そして次作への手応え

スネイル・メイル(Snail Mail)
ボーカル / ギターを担当するリンジー・ジョーダンによって2015年に結成された。リンジーが16歳でリリースしたEP作品で注目を集め、2018年のデビュー作『Lush』で一躍USインディーを背負うスターへと成長を遂げ、2021年にはセカンドアルバム『Valentine』をリリース。2023年に『Valentine』の発売から2周年を記念し、『Valentine Demo』を〈Matador〉からリリース。
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繊細な心の機微をオープンに歌い、アメリカを代表する新世代のシンガー・ソングライターとして共感を得たスネイル・メイル(Snail Mail)ことリンジー・ジョーダン(Lindsey Jordan)。そんなジョーダンにとって3年前の2作目『Valentine』は、失恋の痛みや環境の変化に翻弄される中で自身の感情、クィアネスと深く向き合った作品だった。いわく「スネイル・メイルという本の新たな章のページをめくる作品」。リリース直後のジョーダンはアルバムについてそう話し、その制作が“癒やしと再生”をもたらす経験だったと振り返っていたのを思い出す。自分自身が抱えているさまざまな感情のための居場所を作り、それについて理解すること――そして『Valentine』は同時に、10代で鮮烈なデビューを飾ったジョーダンが20代となり成長していく過程を捉えたドキュメンタリーでもあった、とも言える。

スネイル・メイルは昨年末、実に5年ぶりとなるジャパン・ツアーを開催。併せて『Valentine』の発売2周年を記念した作品『Valentine Demo』をリリースしたほか、今年には“役者デビュー”作となるA24プロデュースのホラー映画『I Saw the TV Glow』の公開も控える。『Valentine』以降の多忙を極めた時間を彼女はどんなふうに過ごしたのか。そしてキャリアの新たな一歩を踏み出し、次のアルバムも見据えた今の境地について話を聞いた。

——日本でのツアーは5年ぶりでしたが、いかがですか。

リンジー・ジョーダン(以下、リンジー):最高。ただ来る前は少しナーバスになっていて。日本のファンはみんな素晴らしいし、日本はこれまで自分が行ったことがある中で一番好きな場所。でも私の友達やバンドのメンバーのほとんどは日本に来たことがないし、日本でツアーをやるのも久しぶりで、だからいいショーにするために自分にプレッシャーをかけていたところがあって。でも本当に満足しているよ。

——東京公演ではオアシスの「Wonderwall」のカヴァーをやっていましたね。

リンジー:オアシスは大好きなバンド。正直、(「Wonderwall」を)うまく演奏できるか自信がなかったんだけど、ただあの曲をやることは自分の中である種の“通過儀礼”であるような気がしていて。避けては通れないというか(笑)、前にも口ずさんだりしたことはあったんだけど――練習なしにぶっつけ本番でね、でもあの日は誰かがあの曲を叫んだのを聞いて「今だ!」って思ったんだよね。内心、そこまでショーがうまくいっていたから祈るような気持ちだった。「Wonderwall」を台無しにしちゃいけない、あの曲を台無しにするなんてクレイジーだって(笑)。でも昨日はあの瞬間、「できるかもしれない」って思ったんだ。大好きな曲だし、うまくいってよかったよ。

——ちなみに、ノエルとリアムから同じタイミングでツアーに誘われたら、どっちのオファーを受ける?

リンジー:ノエル(即答)。ノエルはソングライターで、リアムはシンガーであり、オアシスというバンドの顔でもある。でも結局のところ、リアムって歌おうと思えばどんな曲でも歌える人なんだと思う。だけどノエルが曲を書くと、そこには彼にしかないサインのようなものを感じられるところがあって。ハイ・フライング・バーズ(※ノエルが結成した新しいバンド)のアルバムにもいくつか好きな曲があるし、自分とノエルは少し似ているような気がするんだ。猫 vs 犬というか……自分は猫に近いと思うけど(笑)、でもきっとうまくやれるんじゃないかな。それに、ノエルは私の叔父によく似ていて(笑)、だから一緒にいて居心地がいいと思うんだ。

——2023年はどんな1年でしたか。

リンジー:良かったよ。ストレスも多かったけどね。この1年、実家に戻って(新しく住む)家を探していたんだ。だから24歳の自分は、両親と一緒に実家で過ごした1年だった。新しい車も買わなくちゃいけなかったし、それにツアーの合間に別のレコードを作ったりして、いろいろなことをやっていたんだ。でも振り返ってみると、家も車も手に入れて、ツアーもできて、自慢の曲もたくさんできたし、最終的にとても満足しているよ。チャレンジングなことばかりだったけど、でも今まで生きてきた中で一番可能性を感じている。どのショーも素晴らしかったし、スネイル・メイルとしてもどんどん良くなっている気がする。今の私達は3ピースとして、もう他のメンバーは必要ないって感じなんだ。だからどうなんだろう? 謙虚な気持ちにさせてくれるようなことがたくさんあったし、それは自分にとっていいことだったんじゃないかな。人生が自分に与えてくれたいくつかの平手打ちは(笑)、そういう意味のあるものだったんだと思う。それで今こうして、私は海の向こう側の日本にいる、という。

——そういえば先日公開された「フェンダー(Fender)」のキャンペーン企画で、サーストン・ムーアと一緒にルー・リードのカヴァー(「Satellite of Love」)をやってましたね。

リンジー:最高! すごくクールだった。ソニック・ユースの大ファンだったし、物心ついた時から大きなインスピレーションを受けてきたバンドだったから。その話は最初、メールで連絡をもらったんだ。「もしかしたら実現するかもしれない」って。でもその手の話が持ち上がった時って、あまり期待しちゃいけないんだよね。だって、他にもたくさんの人達に話がいっているだろうから。だから本当に実現した時はびっくりしたよ。それから1日だけ、サーストンと一緒にやる曲を考える時間があって。彼はたくさんのアイデアを送ってきてくれて、でもいよいよ決断しなくちゃいけないってタイミングになった時に、「よし、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドで何かやろう!」ってなったんだ。(サーストンとの共演は)まるでヴェルヴェット・アンダーグラウンドの講義を受けるようなというか、とても恐れ多い経験だったよ.

——ええ。

リンジー:彼はヴェルヴェット・アンダーグラウンドの大家であり、インディ・ロックやギタリストの巨匠でもある。だから夢のようだった。彼の演奏を側で聴けるのもそうだけど、彼とのジャム・セッションはクレイジーだったよ。彼のプレイはまさにソニック・ユースそのもので、一緒に演奏していると自分もソニック・ユースの一員になったような感覚だった。一緒の時間を過ごせて本当に楽しかったし、自分にとって大きな出来事だったのは間違いないね。他にもエキサイティングなことがたくさん起こっていた気がするし、そうした瞬間の1つひとつが自分にとってとても大切なものなんだ。

——サーストンとの会話で印象に残っていることは何かありますか。

リンジー:いろんなことを話したよ。今の音楽シーンについてだったり、1990年代のゴシップについて聞いたり(笑)。彼は本当にクールでお茶目な人で、でもとても普通の、地に足の付いた人だった。会う前はとても緊張していたんだけど……そういえば、すごく変わったコスチューム・デザインの人がいて。その人はどうしても自分が作ったコスチュームを着せたかったようで、でも自分達は「コスチュームなんて着たくない、そんなの絶対嫌だ!」「頼むから着てくれ!」っていろいろ揉めて。で、そうしたら「とりあえず試着しに来てくれないか?」ってメールが来たから行ってみたら、トゲトゲのレザーベストとか、赤い蛇革で稲妻のような模様が入ったブーツが用意してあって(笑)。バンドのメンバーも恥ずかしいから着たくないって言うし、だから「自分達の普段の服でやれないか?」って交渉しなくちゃいけなくて。それで、「もしサーストンが同じ格好をするなら着てもいいよ」って言ったんだ。そうしたら収録前日のバンド練習で、彼は「俺、こんなの着てやったことないよ、絶対に着ないよ」って言って(笑)、次の日にTシャツとジーンズで現れたんだ。それで自分達もコスチュームを着ることをなんとか回避できたんだよね。

映画『I Saw the TV Glow』への出演

——『Valentine』以降で言うと、映画『I Saw the TV Glow』への出演も大きなトピックだったと思います。

リンジー:最高にクールだったよ。私がこの世の中で一番興味があるのは映画で、中でもホラー映画は最も好きなジャンルなんだ。きっかけは、この映画のオーディションの話を聞いたことだった。で、面白いことに、その話を聞いた同じ週にマドンナの伝記映画で20歳のマドンナを演じるオーディションの依頼を受けたりもして(※その後、企画自体が白紙に)。まあ、それまでオーディションを受けたことなんて1度もなかったし、受かりっこないって思っていたけど、でも一生懸命やったよ。それで何種類ものオーディションをへて、あの役を掴み取ったんだ。今まで生きてきた中で一番クールな瞬間だったかも。役に決まったと聞いた時は、本当に飛び跳ねて喜んでいたような気がするし。あんなに飛び跳ねたのはいつ以来だろうって感じで……まあ、先日のライヴでも飛び跳ねたりしてたけどさ(笑)。

それに、映画の舞台裏を覗いたり、映画の撮影現場に忍び込んで見て回るのは最高にワクワクした。あちこち歩き回って「これは何に使うの?」「どうやってメイクするの?」ってスタッフにいちいち聞いたり(笑)。監督(ジェーン・シェーンブルン)とも仲良くなれたし、映画についてたくさん学ぶことができてオタク(nerd)になれた気がする(笑)。サンダンス映画祭に出品されることになったから、行けるのが楽しみだよ。

——自分の演技についてはどうですか。

リンジー:演技することはとても好き。不思議な感じだったけど、でも自然にできたと思う。思っていたよりもいい感じだったんじゃないかな。撮影現場に着いた時はとても緊張したけどね。それと、共演したヘレナ・ハワードが本当に素晴らしくて。彼女は驚異的な(phenomenal)女優だよ。今までに見たことのないような感じで。私の台詞はほとんどが彼女とのシーンのもので、私は彼女のパートナーになろうと必死だった。でも、彼女とのシーンは現実の世界で普通に会話をしているように自然で、だから自分が何をすべきなのかを考えるのは簡単だった。それに彼女は真摯な眼差しで私を見つめてきて、私は泣かされっぱなしだった。あの経験はとても得難いものだったし、運命が許してくれるならまたやりたいね。

——ちなみに、映画にはフィービー・ブリジャーズもキャストとしてクレジットされていましたが、話す機会はありましたか。

リンジー:彼女の出演はエキストラ的な感じで。だから撮影現場で彼女と一緒になることは1度もなくて。それに、彼女が出演するのも撮影現場に行くまで知らなかったんだ。誰かに「そこの衣装はフィービー・ブリジャーズが着ているものだよ」って言われて、それで彼女が出演しているのを知ったという感じで。この前、ヨーロッパのフェスティヴァルで一緒になった時に「映画はもう観た?」って聞いたら「まだ観てない」って。というか、現場に行くまで他のキャストのことを全く知らないって、ちょっとクレイジーな話だよね(笑)。

そういえばフレッド・ダースト(リンプ・ビズキット)は1度だけ見かけたよ。私が現場に入った最初の日にいたんだ。「おいおいおいおい、フレッド・ダーストが出演しているなんてどうして誰も教えてくれなかったんだ?」って(笑)。まあ結局彼とは絡むことはなかったんだけど、でも彼を見た時は衝撃的だったな。フレッド・ダーストにあいさつしたかったんだけど、「おい、彼は今仕事中だから邪魔するな」って誰かに言われてね。それで結局、その日が彼にとって撮影現場での最後の日だった。だからサンダンスで会えることを期待しているよ。

日本のカルチャーについて

——日本に来るのは(2022年のフジロックに続いて)3度目になりますが、日本のカルチャーやアートで好きなものや気になるものって何かありますか。

リンジー:私の好きなホラー映画の多くは日本で作られたものだし、クールな音楽――例えばシティポップも大好き。キミコ・カサイ(笠井紀美子)とかイエロー・マジック・オーケストラとか、お気に入りのレコードをよくかけているよ。世界中のいろんなところに行ってみて、どこを訪れても大抵の場合はそんなに違いを感じないけど――アメリカとイギリスだって昼夜が逆転しているぐらいだし、でも日本に初めて来た時に「わあ、こんな経験初めて!」って思ったんだ。スタイルがドープだし、ここで生まれた多くのアートはとてもユニークで。

私は8歳の頃からホラー映画にハマっていたから、“怖い”っていう感覚に麻痺していたところがあって。でも“Jホラー”を初めて観た時、本当に目を見開かされたような感じだった。使われている映像のアプローチが違うし、ストーリーテリングも異なる。本当に“戦慄”したんだ。実は最近、そのことばかり考えているんだよね。だからこの話についてはもう少し考える時間があったらいいんだけど……とにかく(“Jホラー”との出会いは)自分にとっては大きなことだったね。

——シティポップについてはどんなところに魅力を感じますか。

リンジー:いい質問。でも説明するのは難しくて、ただとにかく惹かれてしまう感じなんだよね。アキコ・ヤノ(矢野顕子)のレコードも全部持っているよ。他のポップ・ミュージシャンで彼女が作るようなメロディを聴いたことがないし、シンセの音とかもすごく独特で。一体何にインスパイアされてあんな音楽が生まれるのか……自分が知識不足のせいもあるかもしれないけど、とにかく全てが新鮮に聴こえるんだ。歌詞は理解できないけど、トラックもとても魅力的で、世界全体がまったく“色あせていない”というか。音楽をやっていてシティ・ポップにのめり込んでいる友達に教えてもらって聴くようになって、そこから自分でも面白そうなものを見つけるようになったんだ。「2、3年前までの自分は何をやっていたんだろう!?」って感じで(笑)、すっかりハマってしまって。だから私は、その道の“新入生”みたいなものだね。

YouTubeをサーフィンしたり、レコード・ショップでシティポップのコーナーを漁ってたくさんレコードを手に入れたけど、がっかりさせられたことは1度もないよ。中でもお気に入りは、キミコ・カサイの……なんてレコードだったかな? 紫のジャケットで、確か蝶に関係している作品だったと思うんだけど(※『Butterfly』、1979年)。いろんなところを見て回ってようやく探し当てたんだ。とにかくおすすめ。あと、1970年代後半の日本のディスコやシティ・ポップを集めたコンピレーションもよく聴いていて。どうして誰もそれを見つけられなかったのか、不思議で仕方ない(笑)。そうやって、昨日まで全く知らなかったような音楽を探求するのが好きなんだ。

次の作品に向けて

——『Valentine』のリリースから2年が経ちます。先ほども少し話に出ましたが、次の作品に向けた制作状況はどんな感じですか。

リンジー:順調だよ。今の状況にとても満足している。自分としては、これまでと全く別のプロジェクトのような感覚なんだ。同じ世界から生まれたはずなのに、人として大きく変わった気がする。でもそれって、15歳の時に10代のアーティストとしてキャリアを始めた自分にしてみたら当然のことだと思う。私の人生は変化の連続で、だから私自身も常に変化している。今のこの時点においてもそう。だから言いたいのは、何もかもが全く違うということ。それと、前に比べて音楽をあまり聴かなくなったような気がする。今でも気になる音楽はたくさんあるけど、常に聴いているレコードはほんの数枚だけ。以前はもっと、音楽に対するハングリー精神というか、“(音楽を)発見する”ことに貪欲だったしその範囲も広かったけど、今はもっと限られたアーティストから直接インスピレーションを受けるようになったというか。でも、それぞれから受けるインスピレーションはとても大きくて、そういう音楽を聴くと心を揺さぶられて、涙が出そうになるほど感動してしまうんだ。

リリシズムの部分についても全く違う方向に向かっている。“悲しい女の子(sad girl)”みたいなレッテルを貼られるのは違う気がするんだ。それは私ができることを示すものではないし、私が望んでいるものでもない。そうした“ブランド”の一部にはなりたくないし、正直、“悲しいアルバム”をまた作ることなんて簡単なんだ。目をつぶってもできてしまうと思う。いつまでも同じことを繰り返すようなことはしたくないし、自分に何ができるのか自分で見てみたいんだ。私のレコードはすべて、私が心から大切にしている音楽からインスパイアされた、とても真摯なものだから。それに、今はそれほど悲しくはないしね。

——はい。

リンジー:それと、ギターのプレイをもっと洗練させるためにたくさんの時間を費やしてきた。作詞家としてもそうだけど、作品を作るたびに「もっといいギタリストになりたい」っていつも思っている。映画を観てインスピレーションを集めてギターを弾いてみたり、そのこと自体を楽しみながら、なるべく自分にプレッシャーをかけないように気をつけている。そしてそういう時に、自ずと素晴らしいメロディが生まれたりするものなんだよね。

——『Valentine』をリリースした際、アルバムについて「スネイル・メイルという本の新たな章のページをめくる作品」と話していたのが印象的でした。実際に『Valentine』の制作やその後の時間を経て、自分の中で芽生えた変化を感じるところはありますか。

リンジー:今の時点での私は、まだ2枚半のレコードしか出していない。でもその中で、スタジオで作業をする時に自分が何を望んでいて、何を望んでいないのか、その判断についてより深く理解できるようになった気がする。おかげで自分自身をより信頼できるようになったし、例えば『Valentine』や(当時の)デモを聴き返しても「妥協しなくてよかった」って思うんだ。自分の直感に従うことができてよかったなって。あれは本当にクールだったからね。そして、自分がみんなにリスペクトされるような作品を作れるということを、自分自身に証明することができたと思う。決して偶然の産物じゃないってことを。他人の評価は必要ないってわけじゃないけど、自分が一度きりのアーティストじゃなくてよかったと心から思えた時は、本当に救われた気持ちになる。そして、自分にとってミュージシャンとしての最終的な目標があるとするなら、それは自分が誇りに思えるような作品をたくさん作って、それを継続することだと思う。自分が好きでやっているんだから。

——次のアルバムは『Valentine』とまた違った作品になりそうですね?

リンジー:『Valentine』は感情やインスピレーションが爆発して、あっという間にできたような作品だった。でも今は、そんなふうにがむしゃらになるって感じじゃないんだ。それって、ソングライターとしての自分を信頼できるようになったってことだと思う。手間をかけることでいいレコードができるって確信しているし、だからデモをダブルチェックしたり、時間をかけて遡ったりして作業を進めている。そうしたプロセスのすべてが今の自分にとっては重要だし、良い影響をもたらしていると思う。自分自身をちゃんと理解できているし、それに感情の部分でも以前よりもずっと成熟しているように感じる。

ソングライターとしての自分の面白いところは、自分の嫌いなところや嫌な思いをした記憶についてたくさんレコードに残していることで(笑)。今の自分が嫌いで、私が私であることを憎んでいて、でもそれを解決するのは自己責任だ、みたいな。でも今は、そうしたネガティヴな感情はあまり抱いていない。それに、以前の自分だったら間違いなくメンバーにも嫌われていたと思う。いいリリシストになるために、人として成長する必要があるんだと思う。『Valentine』を経て多くのことを学んだよ。1つのことに固執するのは嫌だし、かといって、みんなが好きなスネイル・メイルの良さを変えてしまうのも嫌だし……だから、あまり考えすぎないようにしているんだ。年齢を重ねるにつれて歌詞を書くこと、レコードを作ることは難しくなってきている気がするけど、でもいい感じだよ。すごくいいアルバムになると思う。

Photography Mikako Kozai(L MANAGEMENT)

author:

天井潤之介

ライター。雑誌やウェブで音楽にまつわる文章を書いています。 Twitter:@junnosukeamai

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