TBSラジオ Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/tbsラジオ/ Fri, 19 May 2023 01:16:27 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png TBSラジオ Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/tbsラジオ/ 32 32 TBSラジオ「JUNK」総括プロデューサー宮嵜守史が語る「ラジオの醍醐味」と「制作現場の実情」 https://tokion.jp/2023/05/19/interview-morifumi-miyazaki/ Fri, 19 May 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=185800 TBSラジオ「JUNK」総括プロデューサー宮嵜守史インタビュー。

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宮嵜守史(みやざき・もりふみ)

宮嵜守史(みやざき・もりふみ)
1976年生まれ、群馬県草津町出身。ラジオディレクター/プロデューサー。TBSラジオの深夜枠「JUNK」総括プロデューサー。担当番組は『伊集院光 深夜の馬鹿力』『爆笑問題カーボーイ』『山里亮太の不毛な議論』『おぎやはぎのメガネびいき』『バナナマンのバナナムーンGOLD』『アルコ&ピース D.C.GARAGE』『ハライチのターン!』など。YouTubeチャンネル『矢作とアイクの英会話』『岩場の女』でもディレクターを務める。
Twitter@miyazakimori
https://www.tbsradio.jp/junk/

伊集院光、爆笑問題、山里亮太、おぎやはぎ、バナナマンと、錚々たる芸人がパーソナリティを担当するTBSラジオの深夜番組『JUNK』(月〜金曜日25〜27時放送)。2002年にスタートし、今年2月には20周年記念イベントを3日間開催するなど、多くのファンを持つ。その総括プロデューサーを務めるのが宮嵜守史だ。

これまで彼がラジオ制作の現場で体験したエピソードや、自身のラジオとの出会いを綴ったエッセイ集『ラジオじゃないと届かない』(ポプラ社)には、『JUNK』パーソナリティのほか、極楽とんぼ、ハライチ、アルコ&ピース、パンサー向井慧、ヒコロヒーとの対談も収録されている。radikoが普及し、Podcastをはじめとした音声コンテンツも次々と配信される中、ラジオの現場では今何が起きているのか。

初めて企画書を書いた鳥肌実の番組

——本を書いてほしいというオファーの段階で、内容は「宮嵜さんのエッセイで」ということだったのですか。

宮嵜守史(以下、宮嵜):そうでした。実際に完成した本には、自分の半生について書いたエッセイだけではなく、芸人さんとの対談もたくさん収録されているんですけど、もともとは100パーセント僕のエッセイでお願いしますと。でもそれはどうしても嫌で。せっかくラジオ番組を制作する仕事をしているのだから、ラジオのおもしろさとか、ラジオパーソナリティの魅力を伝える本にしたかったんです。それで、僕が主役ではなく、ラジオやパーソナリティを主役にした本でもよければ、ぜひ書かせてくださいと。まぁその結果、対談してくれた人気者の名前が帯にずらっと並んで、人のふんどしで相撲を取るみたいな本になったんですけど(笑)。

——初めて企画書を書いたのが、鳥肌実の番組だったと。

宮嵜:ディレクターとしてうまくはいきませんでしたけどデビュー作ですね。当時『パーソナリティスペシャル』というTBSラジオで若手を発掘するお試し枠みたいな番組がありまして、パーソナリティだけではなく、ADからディレクターになるための登竜門にもなっていたので、そこで企画書を出しました。

鳥肌実さんのことは当時VHSで見て、きわどいネタの独演スタイルが一気に好きになり、そのあと代々木第一体育館で演説の単独公演があったんです。2001年ですね。演説というしゃべりのスタイルで、大きな会場でやっているのに、テレビには全く出ていない。これはラジオにぴったりだ、と思ったんです。

ただ、番組の立ち上げも経験したことなかったですから、鳥肌実さんをブッキングしたことでほっとしちゃって、番組の内容についてきちんと考えられていなかったんです。鳥肌実さんの芸風もありますが、そもそもファンが観に来る公演と、公共の電波で不特定多数に届けるラジオ番組では前提がまるで違うのに、そこをきちんと理解していなかった。

それで、収録した音声素材のきわどい発言にピーとかボカンとか効果音を入れまくった編集をしたら、プロデューサーに「良さが全然なくなってる」と言われて。そこから直しを入れまくり、どうにか放送しました。

——ラジオにおけるスタッフの役割というか、介在する余地みたいなものは、番組によってかなり差があるものですか。

宮嵜:番組や放送する時間帯もありますが、大きくはパーソナリティによりますね。どんなことを話せばいいか、事前にスタッフと雑談しながら構成を考えたりするパーソナリティもいます。

最も介在するパターンでいうと、キャリアが浅かったり、しゃべりの経験がほとんどない方がパーソナリティをやるとしたら、番組で話そうと思っているエピソードをまず聞かせてもらったあと、「その店員さんは若者? それとも年配の人?」とか「どんな風貌だった?」とか、リスナーとして聴いた時に気になるところを掘り下げたりします。別に話のオチを一緒に考えるとかではなく、リスナーに伝えるには、こういうところをフォローしないといけないんだっていうのを学んでほしいので。

——対面する相手がいない、1人しゃべりの番組だと、そういった情報の取捨選択はパーソナリティにすべて委ねられますからね。

宮嵜:普通に考えて、1人でマイクに向かってしゃべるって、かなり異様なことなんですよ。特に生放送の場合、スタッフにできることは、パーソナリティの話に笑っているとか驚いているとか、リアクションすることくらい。だからコロナ禍で全員がマスクをしていた時は、かなり難しかったですね。口元が隠れていると、こちらのリアクションが伝わらないので。

ハライチ、三四郎、オズワルド……テレビでは前に出ないほうがラジオで輝くのはなぜか

——芸人の番組を聴いていると、コンビのうちテレビだとあまり前に出ないタイプのほうが、ラジオでは活躍する傾向があると感じるのですが、そのあたりはどうでしょうか。

宮嵜:そういうケースもありますが、「傾向がある」とまでは言えないんじゃないかと、個人的には思います。決して確率が高いわけじゃない。例えば、ハライチの岩井くん、三四郎の相田くん、オズワルドの畠中くんは、ラジオだと活き活きしゃべっていますが、テレビとか一般的なイメージでは相方のほうが目立っているかもしれません。ただ一方で、テレビでも目立っているほうが、やっぱりラジオでも目立っているコンビもたくさんいるんですよ。

つまり、そのコンビのイメージから逸脱していると、意外性があってより強く印象に残るので、そういう傾向があるように感じられるんじゃないのかなと。もっと言えば、印象に残るだけじゃなく、コンビの新しい一面を感じられることで、おもしろみも増すんですよね。そのコンビの奥行きとか味わいが増すっていうのか。

テレビではどうしてもわかりやすいキャラクターとかスピード感が求められるので、そういう環境では引き出せなかったコンビの魅力が味わえるっていうのは、ラジオの大きな利点だと思います。

——ゲストのキャスティングについては、どういうふうに考えていますか。というのも、例えば、パーソナリティと仲がよくて、番組内でも名前がたびたび出てくるような人がゲストに来ても、思いのほか盛り上がらない時があったりするなと思いまして。

宮嵜:僕が思っているのは、「この人を呼ぼう」という考えでゲストを決めるのではなくて、「こういう企画やるには、誰が必要か」という考えで決めるようにしています。ゲストに来てもらうことが目的ではなく、企画や内容がうまくいくことを目的にしていれば、自ずと誰をゲストに呼べばいいのか見えてくる。

ラジオは特にパーソナリティとリスナーの結びつきが強いので、芸人コンビの番組であれば、リスナーは2人のしゃべりを楽しんでいます。そこにたとえ仲良しであれ、企画や文脈のない形で第三者が入ってくると、邪魔者になってしまうことがある。そうならないために、目的は企画のほうにあったほうがいい。こういう話をしたい、そのためには誰がゲストに来ると盛り上がるか、という順番で考えています。

ラジオだからって常に本音を吐き出す必要はない、素の状態でいい

——ラジオに向き合う姿勢も、パーソナリティごとにいろいろなパターンがありますよね。熱く語る人もいれば、肩の力が抜けたゆるいしゃべりが魅力になる人もいます。

宮嵜:ラジオを大切に思ってくれているのは、どのパーソナリティも同じだと思います。そこを前提として、大切なのは、どれだけリスナーのほうに気持ちが向いているか。しゃべりたくないのにラジオをやっている人っていないと思いますし。よく「熱量」とかって言われますが、熱く語ることだけがいいわけでもないし、ゆるいおしゃべりのほうがいいということでもない。まずは伝えたいこと、しゃべりたいことがあって、それをどう伝えるのかがパーソナリティによって違う。ラジオだからって、常に本音を吐き出す必要もなくて、素の状態でいいんです。自分を失わずにマイクの前に座って、リスナーに向かってしゃべることができる人、それがいいパーソナリティだと思います。ただ、単純そうに思える「素の状態でいる」って、実はかなり難しいことなんですけどね。

——本の中では「いろんなフェーズがあっていい」ということも書かれていました。パーソナリティの芸歴や年齢、それに付随する考え方の変化によって、番組の特色や方向性が変わってもいいんだ、と。

宮嵜:それは本当に思いますね。例えば、若い頃は尖った発言が番組の売りだったとしても、それをずっと続ける必要はない。『空気階段の踊り場』は、彼らのドキュメンタリーだと思います。番組開始の時は、劇場で頑張る若手芸人だったのが、「キングオブコント」のチャンピオンになって、テレビの人気者になり、やがて結婚して、そのあと離婚して……そういう彼らの人生がすべて番組に反映されている。誰の人生にもいろんな場面がありますから、その人生を歩んでいるパーソナリティにもいろんなフェーズがあって当たり前なんですよ。

その上で、「今自分はこういう状態です」と、リスナーにちゃんと言えることが大事だと思います。自分達が今どういう状況に置かれていて、リスナーに限らず世間からどういうふうに見られているか、そこを把握すること。人前に出る仕事をしているタレントさんは、当然そういうことには敏感だと思うのですが。

——自分達の番組はこれが売りなんだ、とかって決めなくてもいいんですね。

宮嵜:そう思います。毎週放送の番組だったら、その1週間の間に感じたこと、考えたこと、大げさに言えば「こんな生き方をしました」というのを発表する場所であり時間がラジオだと思うんです。例えば、『バナナマンのバナナムーンGOLD』を聴いていると、彼らの長い人生の中で、毎週金曜日の深夜25時から27時までの2時間をずっと切り取っているんですよね。5年前はこんなことを考えていた、10年前はこんなことを感じていた、そういうのを毎週2時間、ラジオで発表している。

——今テレビでトーク番組が増えていますよね。コスパがいいからだと思うのですが、タレントが感じたこと、考えていることを発表する場がテレビの中にどんどん作られています。

宮嵜:全部が全部ではないですが、中にはラジオっぽい雰囲気だなと感じるテレビ番組はあります。ただ、テレビ番組の場合は、きちっとトークテーマが決められていたり、パッケージとして完成されているので、そこがラジオとは決定的に違うかなとは思います。

ラジオ放送と音声配信は役割が全く違う

——ラジオ放送と、Podcastなどの音声配信メディアとの関係については、いかがでしょうか。

宮嵜:正直、これまでラジオ放送の大きなメリットだった、たまたまラジオをつけて、なんとなく聴いてみたらおもしろかった、みたいな偶然の出会いは減っているでしょうね。

電波にのせる放送と、Podcastなどの音声配信メディアでは、そもそもの役割が違います。放送は言うまでもなく、事故や事件、災害、交通情報などのニュースを伝えることが役割としてあり、深夜の番組だとしても、不特定多数に向けてしゃべることが大前提。芸人さんの番組であっても、きちんと名前を名乗るといった基本的なことから、わかりやすく伝えることが求められます。10人が聴いたら、10人が理解できるような内容にすることが望ましい。

一方で、podcastなど音声配信は、芸人さんの場合だと、トークライブに近い感覚。その人達のファンや、少なくとも興味を持っている人達がわざわざ聴きにくる。ノリやしゃべり手のパーソナルな情報を共有している人達には余計な説明を省いても十分伝わるし、それによってトーク内容の純度が高いまましゃべることができます。それを魅力だと思っている芸人さんも多いでしょう。

ただ、radikoでもPodcastでも、聴くのはスマホじゃないですか。となると、同じ画面の中に異常に強いライバルがごろごろいるんですよ。SNSやウェブメディア、Netflix やAmazonプライムといった世界基準の動画サービスとも並列で比べられる。数え切れないくらいのコンテンツの中から選んでもらうのは、相当に難しくなりました。

——ラジオを聴いていると、特に番組初回の放送では「ラジオをやることが夢でした」「ラジオで育ちました」のような、自身の原体験にラジオがあったことを表明するパーソナリティがいますが、今後は「Podcastやりたかったんです」という人も出てきますよね。

宮嵜:すでに出てきていますよ。ラジオはほとんど聴いたことないけど、Podcastは聴いている、という人はいます。

ラジオはマスコミではなく、カルチャーの1ジャンル

——本の中で印象的だったのは、「世の中におけるラジオの寸法を勘違いしてはいけない」という話でした。

宮嵜:人や世間に影響を与える規模感だったり、メディアとしてのお金のまわり方だったり、そういうものをすべてひっくるめて、今ラジオがどのくらいの大きさなのか、その寸法を勘違いしてはいけない、という話ですね。

新聞・雑誌・テレビ・ラジオが4大マスメディアと言われていますけど、今のラジオは、マスコミとは言えないくらいの規模感になっていると感じます。いろいろあるカルチャーの中の1ジャンル、実際の規模としてはそのくらいかなと。

何年か前から雑誌でラジオの特集が組まれるようになったのも、カルチャーの1ジャンルになったからだと、僕は思っています。なので、そういう特集だけを見て、ラジオが盛り上がっていると感じるのは誤解だと僕は思いますね。盛り上がっているのではなく、マスコミからカルチャーの1つになったという現実の表れ。だってリスナーからしたら、電波にのせて放送されているラジオ番組と、一定層を狙った趣味性の高いPodcastは、本来全く違うものなのに、もはや同じ音声コンテンツとして聴いています。そうやって並列で受け取られていることこそが、マスコミではなくなったことの証拠でもある。ラジオを聴いていることは、もはや趣味の1つで、ラジオをマスコミだと思っていない若い人はどんどん増えていると思いますよ。

——正直なところ、宮嵜さんはプロデューサーの仕事よりも、制作に専念できるディレクターのほうが性に合っている、と思っているのでしょうか。

宮嵜:やり続けられるなら、ディレクターだけをしていたいとは思いますね。でも、やっぱりちゃんとお金のことを考えたり、関係各所との調整役をやってみないと、結果的にいい番組は作れないと思うんですよ。番組がどういう状況に置かれて何を求められているのかわからないまま制作しても、いい番組は作れません。それはプロデューサーになってから、より身にしみて実感しました。

Photography Tameki Oshiro

ラジオじゃないと届かない

■ラジオじゃないと届かない
日常の中に無限にある「楽しみ」の中で、ラジオにしかできないことってなんだろう? TBSラジオ「JUNK」統括プロデューサーのラジオにささげた25年が詰まった初の書き下ろしエッセイ。ラジオとの出会いから、プロデューサーになるまでのエピソード、人気パーソナリティ達の魅力まで。極楽とんぼ、おぎやはぎ、バナナマン、ハライチ、アルコ&ピース、パンサー向井慧、ヒコロヒーとの読み応え抜群のロング対談も収録。

著者:宮嵜守史
ページ数:383ページ
価格:¥1,760
出版社:ポプラ社
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8008400.html

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芸人ラジオのニュースタンダード『ハライチのターン!』をめぐる、ラジオとハライチの絶妙な距離感——後編 鼎談:岩井勇気 × 澤部佑 × 宗岡芳樹 https://tokion.jp/2022/08/23/haraichi-yuki-iwai-x-yu-sawabe-vol2/ Tue, 23 Aug 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=140872 TBSラジオで放送中の人気番組『ハライチのターン!』。放送300回を迎え、ハライチの2人と番組ディレクターの宗岡芳樹の3人が番組作りについて語る。

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左からディレクターの宗岡芳樹、ハライチの岩井勇気、澤部佑

毎週木曜日、深夜24時からTBSラジオで放送されている番組『ハライチのターン!』が、6月23日に300回を迎えた。2014年4月にはじまった前身番組にして、ハライチ初のラジオレギュラー番組となった『デブッタンテ』を経て、2016年9月に『ハライチのターン!』がスタート。番組開始当時と比べると、大きく活動の幅を広げたハライチの岩井勇気と澤部佑が、ラジオと芸人をテーマに、現在までの8年間を振り返る。後編では、ハライチの2人に加えて、番組を裏で支えるラジオディレクターの宗岡芳樹にも同席してもらい、担当スタッフから見るハライチのラジオの魅力について語ってもらった。

前編はこちら

裏話もエピソードトークもするつもりはない

——宗岡さんから見て、ラジオパーソナリティとしてのハライチはいかがですか?

岩井勇気(以下、岩井):お、やっと宗岡さんの順番がきましたよ。

澤部佑(以下、澤部):何もしゃべらないで終わるかと思いきや、まわってきましたね。

宗岡芳樹(以下、宗岡):そもそも僕は『ハライチのターン!』を担当するまでは、芸人さんのラジオで1時間の番組ってやったことなかったんです。しかも収録で。前にいたニッポン放送の時に担当していた『オールナイトニッポン』は、2時間で、基本は生放送でしたから。『ハライチのターン!』は、最初から今も変わらず、冒頭に2人で話すトークゾーンがあって、次にコーナーが来て、最後に1人ずつのトークという構成。これを作った宮嵜さんはすごいなと思います。芸人さんのラジオ番組は、最初にフリートークがあって、コーナーは後半に持ってくるのが一般的なので。

それと、岩井さんはフリートークとは言わず、「トークゾーン」って言うんです。僕はそれがすごい好きで。岩井さんは、10分間なり15分間なり、音が出ていればいいんでしょっていう考えなんです。フリートークって言っちゃうと、いわゆるフリがあってオチがあって、みたいな、芸人さんのおもしろいエピソードトークを期待しちゃいますけど、そうではなく、とにかく音が出ていればいいと。

岩井:エピソードを話そうとはまったく思ってないですからね。説を唱えてもいいし、なんなら嘘ついてもいいし。

澤部:嘘はついちゃダメですけどね。

岩井:ラジオはエピソードトークをしなくちゃいけないって、誰が決めたんでしょうね。誰も決めてないと思いますよ。

宗岡:そういう考え方が、一般的な「深夜の芸人ラジオ」とは大きく違うんですよね。だからこそ、初めて聴くような人も入ってきやすい。それこそ僕が『オールナイトニッポン』を担当していたときは、まさにザ・内輪受け的な深夜ラジオをいろいろやってきたので、そのギャップは大きかったです。

——一方で、内輪受けのほうが熱狂を生みやすかったりはしませんか?

宗岡:う〜ん……どうなんでしょうね。一部そういうリスナーもいるかもしれませんが、初心者でも聴きやすいことを意識して間口を広げたところで、ヘビーリスナーを突き放すわけでもないですし、おもしろければ熱狂はしてくれるはず。それよりも、今のラジオは、とにかく新規のリスナーを獲得することが絶対的な使命なので、ハライチのやり方も正しいと僕は思います。

——テレビの裏話とかも、ほとんどしないですよね。

澤部:何かすごいおもしろいことがあったらしますけど、そんなにないですから。『平野レミの早わざレシピ!』くらいですね。

岩井:単純に自分自身が、テレビだったり芸能界の裏話とかを聴きたいって思ったことないんですよ。聴いてうれしかったこともないですし。ラジオだけじゃなく、テレビもあんまり見てこなかったんで。そもそも自分のこと芸能人だと思ってないですから。なので、普通の感覚として、仕事の裏話を他人にしようとも思わないし、特別な存在っていうか、芸能人のハライチ岩井としてしゃべるのも気持ち悪いって思っちゃうんです。あくまで1人の人間としてしゃべってるだけなので。

『ハライチのターン!』が新しいスタンダードを作った

——岩井さんのTwitterのプロフィール欄には、「大体のことはTBSラジオ『ハライチのターン!』を聴けばわかります」と書かれていますよね。

岩井:いろいろ書いてた時期もあったんですけど、あそこに情報をいっぱい書いてると、なんかガツガツしてるやつに見えていやだなと思って。仕事ください!って感じがするじゃないですか。

澤部:そういうふうに使ってる人もたくさんいるからね。

——このたび放送300回を迎えましたが、感慨はありますでしょうか。

澤部:まったくありません。通過点に過ぎないので。思い入れもないです。ただの通過点なので。

岩井:僕は感慨深いですよ。ついに300回か〜って。

澤部:ほんとに!? そんなこと思ってる?

岩井:『デブッタンテ』から数えると、もっと長いですからね。ラジオを聴いてこなかった人間のラジオがこんなに続くとは。非常に感慨深いです。

澤部:嘘くさいな〜。

——印象的なコーナーや思い出に残る回はありますか?

岩井:そういうのはないです。

澤部:それはないのかよ。

岩井:ないというか、まったく覚えてないです。

——長く続いているコーナーが1つもないのは、やはり珍しいですよね。

宗岡:固定のコーナーが全然ないのは珍しいですけど、『ハライチのターン!』以降、そういう流れにはなってきているのかもしれません。少なくとも、新しいスタンダードを作ったとは思います。ほかの番組では、いちいちコーナーの説明をしない場合もありますけど、『ハライチのターン!』では毎回必ず丁寧に説明してますからね。それでも2回とか3回で終わって、長くは続かないんですけど。

岩井:ちゃんと説明しないと、自分達でもどういうコーナーだったか覚えてないので。するしかないですよね。

澤部:ようやく覚えかけた4週目くらいになると、コーナーのはじまりに音が付いたりして、またわかんなくなっちゃうんですよ。で、音にもなれてきた頃には終わるっていう。

——宗岡さんは印象的な回ありますか?

宗岡:自分のことで大変恐縮ですが、僕の結婚式にハライチの2人が来てくれて、そのことを話した回ですね。僕の話とかは関係なく、同じ出来事を2人が体験して、それを2人がそれぞれ別の視点から語るって、まずないじゃないですか。そういう意味で貴重な放送だったなと思います。今でもたまに聴き返してます。

岩井:あの日はいろいろトラブルもありましたからね。

宗岡:2人とも披露宴から来てもらう予定が、呼んでない挙式から来ちゃったりとかね。

岩井:呼ばれてないのに誰よりも早く着きました。

澤部:僕は遅刻しましたし。2人とも招待状ちゃんと読んでないんですよ。

ラジオディレクターの特殊な能力

——ハライチのお2人から見て、ラジオディレクターとしての宗岡さんは、どんな人ですか?

岩井:宗岡さんって、ハライチのしゃべりを1回も滞らせたことがないんですよ。絶対に勢いを止めない。話を広げるとか、そういうことじゃなく、流れを遮らない能力っていうのがあるんですよね。

澤部:三四郎の小宮さんとたまに話すんですけど、ラジオディレクターってほんと異常な能力の持ち主なんです。僕らがしゃべっている時に、ぼそっとほんの一言だけ何か言ったりするんですけど、その速度だったりタイミングだったりが絶妙で、その能力何?っていう。

宗岡:収録でも生放送でも、現場におけるディレクターの仕事って、SEの音を出したりはしてますけど、それよりも大事なのは、滞りなくしゃべってもらいつつ、必要があれば何か一言入れることなんですよね。それだけが仕事と言ってもいいくらいで。

澤部:一言入れるときって、楽しいなぁって思ったりするんですか?

宗岡:すっごい楽しいです。

澤部:楽しいんだ!

宗岡:でも、こわさもありますよ。自分の一言で「え?」とかって流れが止まって、振り向かれたら一発で終わりなので。

澤部:それはそうですよね。

宗岡:だから『ハライチのターン!』の担当になった最初の頃は、ほとんど何も言ってないはずです。収録前とか後の楽屋で、ちゃんと関係性を作ってから、ようやく言えるようになりました。

——たとえばディレクターが一言も発しない、というのはダメなんですか?

宗岡:もちろん芸人さんは、それでも十分におもしろいしゃべりをしてくれます。でも、ディレクターの発言によって、1でも2でもプラスになることが必ずある。そのプラス1やプラス2をしなかったら、いる意味ないですからね。それこそ、ハライチのお2人だけでYouTubeやPodcastをやったとしても、絶対におもしろくなるのはわかっていますが、じゃあラジオでやる意味はどこにあるの、っていう。

——では最後に。かつてと比べて、ラジオ全体が盛り上がっているような動きは感じていますか?

宗岡:それこそ1980年代の『ビートたけしのオールナイトニッポン』みたいに、多くの若者が夢中で聴いていた時代のほうが盛り上がっていたとは思いますが、10年前と比べたら、いくらか盛り上がってるかなと思います。でも、その程度ですね。ものすごい盛り上がっているとは言えないでしょう。

澤部:雑誌とかウェブの取材は増えましたよね。なので、注目してくれている人はいるのかなって。

岩井:今の時代には合ってると思いますよ。何か作業しながら聴けるじゃないですか。みんな損したくないし。ラジオは耳だけなので得ですよね。あとは、たしかに「ラジオ聴いてます」って言われることは増えたんですけど、おれはそれも疑っていて。タレントとか「いつもラジオ聴いてます」って言っておけば芸人に好かれると思って、すぐ言うんですよ。なので、ラジオが好きとかじゃなく、「聴いてます」って言うためだけに聴いてる層が一定数いて、さらに、その「聴いてます」によって、盛り上がってる風の空気ができている。だから「ラジオ聴いてます」って言われても、おれは常に警戒してますよ。

ハライチ
幼稚園からの幼馴染だった岩井勇気と澤部佑が2006年に「ハライチ」結成。結成後すぐに注目を浴びる。
岩井勇気
1986年埼玉県生まれ。ボケ担当でネタも作っている。アニメと猫が大好き。特技はピアノ。
Twitter:@iwaiyu_ki
澤部佑
1986年埼玉県生まれ。ツッコミ担当。趣味はNBAとロックフェス巡り。特技はバスケットボール。

宗岡芳樹
1980年大阪府生まれ。2002年にニッポン放送入社。『ナインティナインのオールナイトニッポン』や『オードリーのオールナイトニッポン』を担当。ニッポン放送を退社後、2017年4月からTBSグロウディアでラジオディレクターを務める。『ハライチのターン!』のほか、『赤江珠緒たまむすび(木曜)』、『土曜朝6時 木梨の会。』などを担当している。
Twitter:@yoshiki_muneoka

■『ハライチのターン!』
毎週木曜日24:00〜25:00にTBSラジオで放送中
TBSラジオの深夜の入口をバッと盛り上げる、お笑い芸人による60分のトークバラエティ!
https://www.tbsradio.jp/ht/
Twitter:@tbsr_ht

■ハライチライブ『けもの道』
開催日:2022年10月23日
場所:LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
※詳細は追って発表

Photography Takahiro Otsuji(go relax E more)

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芸人ラジオのニュースタンダード『ハライチのターン!』をめぐる、ラジオとハライチの絶妙な距離感——前編 対談:岩井勇気 × 澤部佑 https://tokion.jp/2022/08/18/haraichi-yuki-iwai-x-yu-sawabe-vol1/ Thu, 18 Aug 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=140777 TBSラジオで放送中の人気番組『ハライチのターン!』。放送300回を迎え、これまでとこれからをハライチの2人が語る。

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芸人ラジオのニュースタンダード『ハライチのターン!』をめぐる、ラジオとハライチの絶妙な距離感——前編 対談:岩井勇気 × 澤部佑

毎週木曜日、深夜24時からTBSラジオで放送されている番組『ハライチのターン!』が、6月23日に300回を迎えた。2014年4月に始まった前身番組にして、ハライチ初のラジオレギュラー番組となった『デブッタンテ』を経て、2016年9月に『ハライチのターン!』がスタート。番組開始当時と比べると、大きく活動の幅を広げたハライチの岩井勇気と澤部佑が、ラジオと芸人をテーマに、現在までの8年間を振り返る。前編ではハライチの2人が番組誕生から番組での心得、そして選曲の秘密を語る。

——『ハライチのターン!』の成り立ちとしては、うしろシティとハライチが交代で約30分ずつトークをする番組『デブッタンテ』(2014年4月〜2016年9月)が前身となっています。

澤部佑(以下、澤部):ありましたね。正直あんまり……記憶ないですけど。番組発のイベントとかやりましたっけ?

岩井勇気(以下、岩井):番組のライブやったよ。2回くらいやったんじゃないか。

澤部:やったのか。覚えてないけど。

——2014年の12月と、2015年の3月に、東京・草月ホールで開催されています。

澤部:じゃあ、やったんですね。

——『ハライチのターン!』という番組名も、『デブッタンテ』の中で、うしろシティからハライチに交代するタイミングで澤部さんが発するフレーズがもとになっています。

澤部:あ、そうですか。じゃあ、そうなんですね。はい、そうでした。

——岩井さんは『デブッタンテ』が始まった時のこと、覚えてますか?

岩井:僕は澤部とは違うので、ちゃんと覚えてますよ。最初にTBSラジオで番組が始まるって聴いた時は、あんまりピンときてなかったんです。学生時代も含めて、ほとんどラジオを聴いてこなかったんで。TBSラジオで芸人が番組をやるっていうのがどういうことなのか、わかってなかったですし。それまでラジオのスタッフとも仕事をしたことがなかったので、関係性がない人達とレギュラー番組をやるのか……っていう感じでした。

澤部:TBSラジオで芸人が番組をやらせてもらえるなんて、すごく光栄なことなんですけどね。そういうプレッシャーを感じていたのは、僕だけだったかもしれないです。

——澤部さんは、学生時代から芸人のラジオをよく聴いていたと。

澤部:僕はラジオはずっと聴いてました。学生の時は、TBSラジオだと『伊集院光 深夜の馬鹿力』と『爆笑問題カーボーイ』、『雨上がり決死隊べしゃりブリンッ!』、『極楽とんぼの吠え魂』、あとは笑い飯さん(『笑い飯のトランジスタラジオくん』)とか、波田さん(『波田陽区の中までテキーラ!』)とか、スピードワゴンさん(『スピードワゴンのキャラメル on the beach』)とか。JUNKの枠は一通り聴いてました。ニッポン放送だと『ナインティナインのオールナイトニッポン』と、あとは『田中麗奈ハートをあげるっ♡』です。

——リスナーとして番組宛てにネタを送ったりは?

澤部:何回か考えたことはありましたが、もう全然おもしろいことが浮かばなくて、送るところまではいってないですね。ただ、唯一『田中麗奈ハートをあげるっ♡』には、ネタとかではなく、本気の恋の悩みを送って、それは採用されました。いい思い出です。

お兄ちゃんは弟ができるとサブカルに詳しくなる

——岩井さんは学生時代、ラジオに対してどんなイメージを持っていましたか?

岩井:イメージも何も、自分の生活の中にラジオを聴くっていう選択肢がなかったですね。普通に学生生活を送っていたら、ラジオを聴くっていうルート通らなくないですか? 澤部は洋楽も好きなんですけど、深夜ラジオとか洋楽とか、いわゆるサブカルに興味がある人って、よく「お兄ちゃんの影響で聴き始めた」って言いますよね。でも、「じゃあ、そのお兄ちゃんが聴き始めたのは誰の影響なの?」って、いつも思うんですよ。

澤部:たぶん、お兄ちゃんの学年に1人ぐらいはそういう趣味の人がいたんじゃない?

岩井:その1人は誰の影響でそういう趣味になったんだよ。

澤部:そりゃあ、その人のお兄ちゃんでしょう。

岩井:何だよそれ。ずっとそのループなわけねえだろ。いや、だから俺の説は、お兄ちゃんは弟ができるとサブカルに詳しくなるんじゃないかっていう。

澤部:教えたくなっちゃうんだ。弟は絶対に言うこと聞くもんな。

岩井:さらに、お兄ちゃんよりも、影響された弟のほうが詳しくなる。お兄ちゃんは1しか知らなくて、弟にも1しか教えてないのに、弟は勝手に深掘りしていく。

澤部:それはある。弟はどんどん吸収していくからね。いつの間にかお兄ちゃんよりハマってるんだよな。

——ちなみに、澤部さんがラジオを聴くようになったきっかけは?

澤部:お兄ちゃんの影響です。洋楽も、お兄ちゃんの影響です。

岩井:で、結局は弟のおまえがラジオやって、フジロックの仕事してるもんな。

澤部:勝手に深掘りしちゃいました。

伊集院光から受け継いだ「間口は広く、丁寧に」

——『ハライチのターン!』は、あえて長く続くコーナーを作らなかったり、初めて聴くリスナーも楽しめることを意識していると番組内でもおっしゃっていますよね。

岩井:それは初代ディレクターの宮嵜さん(現在は番組プロデューサーの宮嵜守史)の教えです。「間口は広く、丁寧に」っていう。宮嵜さんいわく、伊集院さんのラジオを分析してみると、先週話したことの続きを話す時は、ちゃんと振り返って内容を説明するし、スタッフの話をする時も、常に「作家の」とか「ディレクターの」って肩書きを説明してから名前を言っているって。あれだけ長くラジオを続けていて、しかもラジオを知り尽くしている伊集院さんがそれをやっているなら、自分達もやったほうがいい。なので、最初に宮嵜さんから言われたことを、今でも忠実に守っているだけです。

——逆に澤部さんは、ご自身が学生時代に聴いていたような、ヘビーリスナーと密な関係を作り上げていく番組をやりたいとかは思わなかったですか?

澤部:あの当時は、まさか自分がいつかラジオをやると思って聴いてなかったので、こういう番組をやりたい、みたいな憧れる目線は全然なかったですね。ただ楽しく聴いてるだけで。それでいざ自分達が番組をやることになった時には、ハライチの知名度なんかほとんどない時期でしたから、知られてもいないのに内輪の話をしても、ねえ。

——とはいえ、『デブッタンテ』が放送されていた2015年は、澤部さんが「タレント番組出演本数ランキング」で総合3位になっています。

澤部:テレビには出ていたかもしれませんが、その頃はロケに行っても名前を呼ばれることってほとんどなかったんですよ。

岩井:うしろシティよりは知名度あったと思いますけどね。

澤部:そういうことを言うな!

——その後は岩井さんのテレビ出演も増えていきました。

岩井:僕がピンでテレビに出るようになったきっかけとしては、『ゴッドタン』(テレビ東京)の「腐り芸人」っていう企画が大きくて、そこでプロデューサーの佐久間(宣行)さんが使い方を示してくれたっていうのがあるんですけど、それは佐久間さんや『ゴッドタン』のスタッフが『ハライチのターン!』を聴いていたから、そういう企画に呼ばれたわけで。テレビとラジオは相互関係というか、循環してはいますよね。

そういう層にうけると思って選曲している

——番組内でのトークは、事前にどのくらい準備しているのでしょうか。

澤部:最初の頃は、ケータイのメモに話すことを箇条書きにしてました。それを前日くらいになって見直したり。でもここ何年かは、箇条書きにもしてないですね。頭の中で、あれ話そうかなって考えるくらいで。

——澤部さんが『人志松本のすべらない話』(フジテレビ)で「最優秀すべらない話」を受賞した「個室ビデオ」のエピソードは、たびたび『ハライチのターン!』でも披露していますよね。

澤部:そうですね。個室ビデオには何度も行っているので、その都度番組で話したことをベースに、いろいろ足したり引いたりして。

——岩井さんは、トークの準備は?

岩井:ほとんどしてないですね。番組が始まる直前に、話すことを紙に書く程度です。それも話の構成を練るとかではなく、単純に覚えられないので書いているだけで。日常的にメモをとったりはしません。

——あと、番組で流れる音楽、岩井さんの選曲がすごくいいです。

岩井:僕の選曲ね、いいでしょう。

——いいです。

岩井:いいんですよ。

——いつも、いい選曲だな〜と思って聴いています。

岩井:僕の選曲、いいんですよね〜。

澤部:もういいよ! いつまでそのやりとり続けんだよ!

——ざっと並べると……岩井さんが大好きなスピッツをはじめとして、山下達郎、坂本慎太郎、電気グルーヴ、ザ・コレクターズ、GREAT3、SUPERCAR、くるり、ドレスコーズ、キセル、N’夙川BOYS、group_inou、ニガミ17才、女王蜂、小西康陽プロデュースの小倉優子、などなど。

岩井:いいとこ突いてますよね。

——いいとこ突いてます。

岩井:それを狙ってやってるんで。もちろん自分が好きな曲をかけてますけど、そういう層にうけるだろうなと思って選曲してますから。

澤部:そういう層ってどこだよ。

岩井:わかるだろ?

澤部:わかるけど!

岩井:特に強いこだわりがあるわけじゃなく、そういう層が好きそうな曲をかけてます。

澤部:いやらしいな! でも、アニソンとかもかけてるよな。

岩井:いくつかパターンがあって。トレンドのアニソンとか声優の曲、懐かしのアニメの主題歌、そして、そういう層が好きそうな曲。このへんを流しておけば、だいたい引っかかります。

澤部:引っかかるって言うなよ。

岩井:邦楽ばっかりなんですけど、だいたい音源がTBSのライブラリーにないんですよ。スタジオ入ってからディレクターの宗岡さんに曲を伝えると、宗岡さんがその場で買ってくれます。

澤部:いつもそのやりとりしてるよな。いったん探して、やっぱりなくて、宗岡さんが買うっていう。

岩井:なので、僕がどっかでクーポンとか割引券をもらったら、必ず宗岡さんに渡すようにしています。いつも買ってもらっているお返しに。

後編へ続く

ハライチ
幼稚園からの幼なじみだった岩井勇気と澤部佑が2006年に「ハライチ」結成。結成後すぐに注目を浴びる。
岩井勇気
1986年埼玉県生まれ。ボケ担当でネタも作っている。アニメと猫が大好き。特技はピアノ。
Twitter:@iwaiyu_ki
澤部佑
1986年埼玉県生まれ。ツッコミ担当。趣味はNBAとロックフェス巡り。特技はバスケットボール。

■『ハライチのターン!』
毎週木曜日24:00〜25:00にTBSラジオで放送中
TBSラジオの深夜の入口をバッと盛り上げる、お笑い芸人による60分のトークバラエティ!
https://www.tbsradio.jp/ht/
Twitter:@tbsr_ht

■ハライチライブ『けもの道』
開催日:2022年10月23日
場所:LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
※詳細は追って発表

Photography Takahiro Otsuji(go relax E more)
Edit Atsushi Takayama(TOKION)

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「自分で選んだ方を正解にしていくしかない」 ジェーン・スーが考える悩みへの対処法 https://tokion.jp/2021/06/10/jane-su/ Thu, 10 Jun 2021 02:00:16 +0000 https://tokion.jp/?p=37093 ラジオパーソナリティでコラムニストのジェーン・スーはなぜ「人生相談の名手」と呼ばれているのか。その根底にある考えに迫る。

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TBSラジオで放送中の「ジェーン・スーの生活は踊る」のパーソナリティをはじめ、エッセイや作詞など多方面で活躍するジェーン・スー。愛嬌はあるが自由奔放な父親と、父に振り回される娘の思い出や苦い記憶を書いた自伝的エッセイ『生きるとか死ぬとか父親とか』がテレビ東京でドラマ化され、6月25日で最終回を迎える。

相手に寄り添い、真摯な姿勢で言葉をかけるジェーン・スー。TBSラジオで2014年4月から2016年4月まで放送されたお悩み相談番組「ジェーン・スー相談は踊る」(現在も「生活は踊る」内の1コーナーとして「相談は踊る」は継続中)が評判を呼び、雑誌やインタビューでも数多くのお悩み相談に答え、「人生相談の名手」とも呼ばれている。TBSアナウンサー堀井美香とパーソナリティを務めるポッドキャスト「OVER THE SUN」は「ジャパンポッドキャストアワード2020」のベストパーソナリティ賞を受賞するなど、ジェーン・スーの言葉が多くの人の日常を彩っている。ドラマ、お悩み相談、ポッドキャストなど仕事におけるジェーン・スーの大事にしていることを聞いた。

疲労がたまってきている現代人に、寄り添えるような回答をする

——ドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』はいよいよ終盤です。原作者として、ドラマの感想をいただけますか。

ジェーン・スー(以下、スー):私と父の月報みたいなエピソードを吉田羊さんと國村隼さんに演じてもらえるなんて感激していますし、山戸結希監督と菊地健雄監督、それぞれの持ち味や個性が惜しみなく発揮されていて映像作品としても楽しく見ています。1つ1つの話を丁寧にくみ取ってくださっていると感じています。

——特に好きなシーンは?

スー:2人の蒲原トキコ(吉田羊、松岡茉優)と父(國村隼)の何気ないやりとりが好きです。若かりしトキコにとって苦しかったことも、年齢を重ねてお互い諦め半分でうまくやっていくことを選んだんだろうなと感じて。でも、そこにきちんと愛情があることがちょっとしたやりとりからわかるので、微笑ましく見ています。

——ドラマでは、原作にはないラジオシーンが組み込まれています。

スー:これほど原作に敬意を払ってもらえることってなかなかないと思うくらい、制作陣の皆さんが丁寧なんです。「ただラジオのシーンを入れておけばおもしろくなるでしょ」、みたいな感じが全くない。ラジオリスナー達が見ていて誇らしく思えるように、配慮して作ってくださっていると感じますね。

——ラジオシーンはスーさんが監修で入っていらっしゃると聞きましたが、どのように関わられているのでしょうか。

スー:ラジオのシーンは「相談は踊る」に来ていた過去の相談をメインに作ってくださいました。当時の回答をそのまま用いるのではなく、「今ならこう答えるだろうな」とアップデートした回答を私がフィードバックして、台詞に落とし込んでもらっています。

——お悩み、というのは普遍的なものに思えますが、アップデートされる部分もあるのですね。

スー:数年前とはいえ、社会状況がかなり違いますし、価値観にも変化はありますよね。当時はハッパをかけるような言葉遣いで通用していたことも今だときつく聞こえたり、「行っちゃえ!」と背中を押すようなアドバイスもご時世的に今は控えたほうがいいとアドバイスしたり。

コロナ禍ということもありますけど、6年前と比べてもっと人は疲れているように感じています。それは、人が弱くなったり傷つきやすくなったりしたのではなく、社会が厳しくなっているから。だから、リスナーにかけられる言葉の強度が変わってきていると実感しますね。当時は私がまだ未熟だったこともありますけど、今はもう少し寄り添えるような回答をするようにしています。

——ドラマの第2話「老いるとか 思い出とか」で、遺品を早く捨てたいという相談内容に対してスーさんが相手の意見を受け入れつつ、「人間には捨てられない記憶がある」という回答に優しさを感じました

スー:あれはあくまで蒲原トキコのセリフですね(笑)。とはいえ、私も共感できます。人の想像力なんて、基本的には自分が経験してきたものをベースに因数分解して、掛け合わせたものでしかないですよね。経験していないと、想像できないことばかり。それでも、想像するきっかけになるような言葉が伝えられたらいいなと思っています。

それぞれの親子で、それぞれの正解を見つけていくしかない

——原作本が出版されたのは2018年5月になります。別のインタビューで、本作を書かれるきっかけを「母の女性としての人生についてもっと聞きたかったけれど、聞くことができず後悔している。父については同じ悔いを残したくない」と仰っていました。お父さまと対話をされて、変化はありましたか?

スー:子ども目線で「父親として何点」という見方しかしていなかった親が、立体的に見えるようになりました。働いていた頃の話とか戦争時の話とか、「父親」という枠組みでは見えてこなかった人間としての敬意みたいなものが芽生えましたね。書いて、本当に良かったです。

——見たくない部分を見てしまった、ということはありませんでしたか。

スー:もともと、見たくないことを平気で見せる人だったので(笑)。改めて幻滅することよりも、加点されたことのほうが多いです。

——原作を読まれた吉田羊さんが「スーさんは親に対して子としての甘えが一切ないと感じた」と感想を述べていました。ご自身ではどう思われますか?

スー:言われて初めて気付きましたね。たぶん、無自覚に配慮していたんだと思います。甘えが出せるほどの余裕が私たち親子の関係値にはなかったですし、甘えるっていうのは“返してもらえる”という期待があってこそ成り立ちますよね。父親に愛情は持っていますけど、身を委ねられるような存在ではなかった。子どもの期待を100%拾ってくれるタイプではないことを覚悟していたので、甘えがないように映ったのかなと思います。

——逆に、お父さんはスーさんに甘えていますよね。嫌だと思ったことはありませんか?

スー:父親は甘えるコミュニケーションが上手なんです。向こうの思うつぼなんでしょうけど、甘えさせるほうがコミュニケーションとして円滑にいくんです。ただ、甘えることはあっても、攻撃してきたり傷つけてきたり「父親」というカードを切って私をやり込めることはなかった。私を「個人」として尊重してくれたので、私も今の関係を受け入れられたんだと思います。

——原作の中でスーさんが、お父さまとの関係性について「少し変わっている」「愛情はもちろんあるけれどもそれだけじゃ解消しきれない何かがある」と仰っていたのが印象的で。過去の過ちは引きずってしまいがちですが、スーさんはどのように向き合って書かれたのでしょうか。

スー:嫌だった悔しかった悲しい思いをした、という記憶からは目を背けずに書こうと思っていました。「昔はいろいろあったけど今は仲良し!」みたいな、ほっこりすてきな家族の物語は書きたくない。みだりに成り下がるようなことはしないように、かなり注意して書きました。

——家族に対して「どうしても許せない記憶」を抱えて悩んでいる人は、どう向き合うのがいいと思われますか?

スー:親子の組み合わせは完全にガチャのようなもので、親も子も相手を選べないですよね。だから、うまくいかない組み合わせがあって当然。「親子は常に仲が良いもので、喧嘩したら和解するのが当然」とは思いません。我が家はたまたまこういう着地になりましたけど、同世代で親と縁を切った人も普通にいます。親子の関係性に正解はないので、それぞれの親子で、それぞれの正解を見つけていくしかないですね。

そういう人は、自分と話すのが大切だと思います。私の場合は、父親に対して許せないことがあっても母に対する後悔が大きかったので、父親で同じことを経験したくないという「自分だけの思い」によって再構築しました。自分と対話をして、親との関係をなんとかしたい思いがなければ、無理に問題を解決しようとしたり仲良くしたりしなくていいと思います。

いくつも問題が複雑に絡んでいる相談を、交通整理してあげるだけで十分かもしれない

——TBSラジオやポッドキャストをはじめ、「Oggi」の連載などたくさんの悩み相談に答えられていらっしゃいます。悩み相談を始められたきっかけを教えていただけますか?

スー:2011年にTBSラジオ「ザ・トップ5」という番組のコメンテーターをさせてもらっていた時に、「発言小町」で既に解決されているお悩みをわざわざ掘り出して、コメントするコーナーがあったんですよ。それでプロデューサーが、「スーさんは相談に答えるのが得意かもしれませんね」と言ってくださって。それがきっかけで「相談は踊る」が始まりました。

——やり始めた時はいかがでしたか?

スー:今も試行錯誤ですけど、相談に答えるのは難しいですね。最初の頃は言葉がきつかったり、決めつけていたりしたんですけどだんだんと、文面をそのままくみ取ること、解決策を出すんじゃなくて相談の交通整理をしてあげるだけで十分だと、わかってきました。

悩みとひとことでいっても、単なる「わがまま」だったり行政に対処してもらうべき「問題」だったり、いくつかのトラブルが複雑に絡み合っている場合もあります。例えば「こっぴどく振られた経験があり、それ以来コミュニケーションが苦手です。彼女ができません」という相談が来たとして、解決したい悩みは「どうしたら彼女ができますか」なんだけど、その前に過去にこっぴどく振られた理由を考えてみようと促したり。いきなり答えを出すのではなくて、文面から理解できる範囲で読み解いて、答えを出す手前で考えることも伝えるようにしていますね。それが正しいか、今もわからないですけど。

——交通整理、というのは納得です。他にも相談に答える上で、最近心掛けていらっしゃることは?

スー:「相談者の気持ちに寄り添う」「文面を読み違えないようにする」ことです。見ず知らずの人に相談を送ってきた時点で相当悩んでいたり疲れていたりしていると思うので、いきなり否定しないようにしています。ひと昔前の人生相談のように「あなたダメね!」と相手に意見するほうがスカッとして人気があるのかもしれないけれど、悩みをそんな風に消費したくないと思っていて。

——必ずしも正論だけが悩み相談の回答においては正解じゃないと思うのですが、どのようにバランスをとっていらっしゃいますか?

スー:私は「ストリート」に例えるんですけど、実際に上司からパワハラをされたとして、悪いのは100%上司ですよね。でも、上司の機嫌を損ねないように明日も働かないとその人はご飯が食べられなくなる現実もある。正論だけで考えると反旗を翻せない自分っていうのがふがいなく感じられて、自信を喪失することになりかねません。

実際の正しさはわかった上で、今日の妥協点を提案するようにしています。正しさと違うところの答えだとしても、「明日も元気に生きていく」という実生活目線で考えるのも1つの手ですよね。やっぱり、理想と現実はかけ離れていますから。その間を埋められないのは自分の力不足だ、となってしまうと変化は起きないと思うんですよ。

——LGBTQなどセンシティブなお悩みに対しては、どんな心掛けで回答されていますか。

スー:「当事者ではないのでわかりません」とは言わないようにしています。「自分だったら」と置き換えて、接点を見つけて考えるようにしています。ただ、相談によっては医療機関などの専門機関を頼ったほうが賢明だと思われるものもあります。そういう時はスタッフにリストを作ってもらって、相談者に送ってもらう場合もあります。

——相談によっては、SNSで物議を醸すかもといった内容もあると思うのですが。

スー:相談に関しては、スタッフが選んだものに答えるという感じで、それに対してNGを出すことはほとんどないですね。SNSの反応は見るようにしていますが、それを意識して相談に答えることはなくて、あくまでリアクション観察。不特定多数のリスナーではなく、相談者1人に対して真摯に答えるようにしています。

——自分でできる、悩みの交通整理の方法はありますか?

スー:おすすめは、モヤモヤしたら文章に書き出すこと。何に腹が立っているのか、なぜ気が滅入るのか。重複してもいいので、正直にひたすら書き出すことで客観的になれます。その共通項を整理していくと、悩みのパターンや自分の癖がわかってくるはずです。

とにかく、カッコつけないで正直に書くことが大事だと思います。よく言うんですけど、正解が先に決まっていることなんてあまりないんです。自分で選んだ方を正解にしていくしかないと、私は思っていて。自分で選んだ選択を「よかった」と思えるように行動することはできますから。選んだものを正解にしていくとしたらどちらを選択すべきか、という視点で考えることが多いですね。

——自分で選んだ選択肢を、努力で正解にしていくと?

スー:努力というか、そう心掛けたいですね。35歳を過ぎたあたりから、やりたいことよりも得意なことを選ぼう、と考えるようになって楽になりました。苦手を克服することでの自己顕示欲がなくなったというか。今やっている仕事のほとんどが人に勧められたからやってみたことばかりなんです。基本的に信用できる人から勧められたことは全部乗っかるようにしていて、やりながら改善を重ねた感じです。

——他人の意見を見定めるポイントはありますか?

スー:「なぜこの人は私に声をかけてくれたのか」を考えるようにしています。そこを間違えると私は失敗しやすいんですよ。

——期待とは逆に「私なんて」と自己評価が低い人も多いように思います。

スー:多いですね。声をかけてもらうには運とか縁もありますけど、そこできちんと波に乗っかって、小さな成功体験を積み重ねていかないと次の展開には進めないかもしれせん。もし自分を否定し過ぎてしまうなら、「どうして“私なんて”と思うのだろうか」っていうのを書き出すといいですね。自分に対する期待値が高過ぎるとか、恥をかきたくないとかいろんな理由が見えてくるはずです。

日々をきちんと生きていくことが大事

——ポッドキャスト「OVER THE SUN」もスタートして8ヵ月ほど経ちました。「ジャパンポッドキャストアワード2020」で、ベストパーソナリティ賞とリスナーズ・チョイスを受賞されました。どんなお気持ちでしたか?

スー:両方いただけて嬉しいです。リスナーズ・チョイスに関してはリスナーに投票をめちゃくちゃ呼びかけていたので、お互い困った時は助け合う「互助会」の役割がかなった感じがしました(笑)。

——ラジオとの違いはありますか?

スー:ラジオとポッドキャストは全然違います。ラジオは公共の場でも流れる放送なので、意図せず耳に入ってしまった人にも配慮して丁寧な言葉遣いですけど、ポッドキャストは自ら聴きに来てくれている人のためのメディアですから。話が通じる前提で話しています。あと、堀井さんと自由に喋れる場所ができたことは助かっていますね。「OVER THE SUN」があるおかげでお互いの近況がわかるし、堀井さんだからできるくだらないことも話せるし。

——ポッドキャストを拝聴していると2人の楽しい会話から、歳を重ねることを肯定的に捉えるようになりました。そういうメッセージを伝える意識をお持ちですか?

スー:ネガティブに捉える必要もないとは思いますが、年齢を重ねていくことをことさらポジティブに語るのもちょっと違うなとも思っていて。自分を楽しませるものがあったらいいなと思うくらいで、日々をきちんと生きていくことが大事だと思います。

中年に対するネガティブなイメージって、メディアが率先して作ってきたもので、ストリートとの格差はすごくあります。だから、当事者になった時に「われわれは結構おもしろいぞ」と思ったし、くだらない話で延々喋れるのも子どもの頃からずっと備わっている能力だなと。世間の思っているおばさんの型から意識的にハミ出そうとしているわけでないけれど、収めようとも思っていないですね。

——年を重ねることで確信に変わったことは?

スー: 40歳を過ぎたら楽になるのは間違いないですね。ただ、人によりますけど30代より忙しくなると思います。景気の悪さもあるんでしょうけど、現場も回して管理もして、プレイングマネージャー的な立場になりがち。体力も記憶力も落ちてくるのに、仕事量はめちゃくちゃ増える。それは予想と違ったので、声を大にして伝えておきたいです(笑)。

ジェーン・スー
1973年生まれ、東京都出身。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。「ジェーン・スー生活は踊る」(毎週月~木曜午前11時 TBSラジオ)に出演中。「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」(幻冬舎)で講談社エッセイ賞を受賞。著書に「私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな」(ポプラ社)、「女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。」(文藝春秋)、「今夜もカネで解決だ」(朝日新聞出版)、「これでもいいのだ」(中央公論新社)、「女のお悩み動物園」(小学館)など。コミック原作に「未中年~四十路から先、思い描いたことがなかったもので。~」(漫画:ナナトエリ、バンチコミックス)などがある。
Twitter:@janesu112
Instagram:@janesu112

「ジェーン・スー 生活は踊る」
https://www.tbsradio.jp/so/

ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」
https://anchor.fm/tbsradio-over?utm_source=podnews.net&utm_medium=web&utm_campaign=podcast-page

Photography Takahiro Otsuji (go relax E more)

TOKION LIFESTYLEの最新記事

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空気階段のコントに内在する“人への優しさ” 単独ライブ「anna」で見せたコアな部分 https://tokion.jp/2021/05/11/kuuki-kaidan-show-kindness/ Tue, 11 May 2021 06:00:12 +0000 https://tokion.jp/?p=31157 お笑いコンビ空気階段が語る単独コントライブ「anna」について。

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2020年の「キングオブコント」で3位になるなど、笑いの実力が高く評価されているお笑いコンビ空気階段。コントの実力はもちろんのこと、借金などのエピソードから“クズ芸人”とも呼ばれる鈴木もぐらと、女装姿が一部で人気の水川かたまりという個性が際立つ2人。彼らのコントでも少し変わった人が登場するが、その根底には“人への優しさ”がある。それは2人が影響を受けてきたザ・ブルーハーツや銀杏BOYZのように。

2021年2月に開催された第4回単独ライブ「anna」は、もともと2020年3月に開催を予定していたが、新型コロナウイルスによる影響のため延期となり、その後8月の振替公演も中止。そして、当初の開催予定から約1年後、念願の単独ライブの開催に至った。ライブチケットは即完売、オンラインチケットの販売も1万枚を超えるなど、SNSでも大きな話題となった。

彼らのラジオ番組『空気階段の踊り場』(TBSラジオ)も土曜日の27時30分から月曜日の24時に移動し、30分から1時間番組になるなど、ますますその人気は高まっている。今回、「anna」が5月19日にDVD化されるのに合わせて話を聞いた。

※インタビューには「anna」のネタバレに関わる部分も含まれています。

空気階段
水川かたまり(右)
1990年7月22日生まれ、岡山県出身。趣味は、読書、散歩、フットサル、絵本を読む、totoサッカーくじ。特技はヨーロッパサッカーの知識が豊富(全選手を覚えている)、人の血液型を当てる、テトリス。NSC東京校 17期生 Twitter:@kkkatmari

鈴木もぐら(左)
1987年5月13日生まれ、千葉県出身。趣味は将棋、卓球、漫画を読むこと、公園でのんびり過ごすこと、麻雀、音楽鑑賞、居酒屋巡り。特技は将棋(アマチュア2段)、麻雀(アマチュア4段)、縄跳び(三重跳びできます)、卓球(中学時代千葉県ベスト16)。NSC東京校 17期生 Twitter:@suzuki_mogura

オフィシャルサイト「空気階段の屋上」
https://www.kukikaidan-okujo.com

YouTubeチャンネル「空気階段チャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCMdLfSBEmAHXfjzG8nNwzxA

コントにおける役割分担は固定しない

——配信後のSNSでの評判もあって「anna」の配信チケットの売り上げ枚数が最終的に1万枚を超えました。想像していたよりも売れたなっていう感じでしょうか?

鈴木もぐら(以下、もぐら):驚きましたね。そんなに観てくれるとはありがたかったです。

水川かたまり(以下、かたまり):なんかラジオで目標枚数を言う時に5万枚とか2兆枚とかふざけて言ってて、最初は自分でも冗談だったのに、だんだんそういう感覚になってきちゃって、1万枚と聞いても「なんだ1万枚か」なんて思ったりもしてしまいましたが(笑)、でもめちゃめちゃありがたいです。

——普段のコントもそうですが、もぐらさんが変わった人をやって、かたまりさんがつっこむようなネタもあれば、逆の役割になるネタもあっておもしろいですよね。特に「コインランドリー」のネタは、どちらが洗濯機の中に入るか決まってなかったそうで。

かたまり:あれは結構前に、郵便ポストに入るネタがあって、そんな感じのネタをまたやりたいということから作り始めて、洗濯機で心の洗濯もするようなものにしようと作っていったネタなんです。

もぐら:最初からどっちがやったほうがいいか決まってるネタもあるんですけど、あのコントはそれがないまま作った感じです。

かたまり:単独って1時間半から2時間くらいあるから、ずっと1人がおかしな役割をやり続けるのも難しいなというのもあります。

——リハーサルをやってみたらすごく長くなり過ぎて、本番前日に時間を削るのが大変だったとラジオで話されていましたが、どういうところを削ったんですか?

かたまり:それは単純に物理的な問題で、着替えがこの時間内では間に合わないとかそういうことだったんです。

もぐら:ネタとネタの合間が長かったんですよね。単純にテーブルはいらないなとか、洗濯機は何個もいらないなとかセッティングにかかる時間を削っていきました。

かたまり:リハーサルをやってみたら長くてびっくりしました。ほんとはリハをする前に確認をしないといけなかったんでしょうけど。逆に、笑いどころの修正みたいなものは、初日の反応を見て変えたところはありました。

——かたまりさんは、単独の前に、テレビドラマ『でっけぇ風呂場で待ってます』で脚本も手掛けられて、その経験が「anna」に役立ったと聞きました。

かたまり:確かに聞かれて「活かされた」って答えたんですけど……。

もぐら:嘘ついたってこと?

かたまり:コントに影響ありますかって言われて、そうですねって……。でも、ドラマの脚本を書いてる時に、ドラマのスタッフの人達に意見を聞いたら「ここはお芝居を深掘ったほうが全体のストーリーも見やすいし、笑いどころも映えますよ」とかそういう風に教えてもらったので、確かに活かされてますね。

ラジオ愛が詰まった「anna」

——タイトルでもあり、最後にやっていた「anna」のネタですが、このネタを軸にしようと思ったのは?

もぐら:これはけっこう早めに案が出てたんですよ。それに僕らがラジオ好きなので、最後に持っていったところもありますね。あと、展開を考えても長くなるのはわかっていたので、最後にしか持っていけないということもありました。

——いろんなネタが最後に向かってつながるように作ったことはどういう意図がありましたか?

かたまり:単純に生きていて、後で考えたら、これとこれがこうなってつながってたなってわかるってことあるじゃないですか。僕自身がそういうことが好きなので入れたいなと思いました。日常でどうしようもないこと、自分のせいじゃないことが重なってるという感じが好きなので。全体を見ると、がっつり絡んでないこともあるんですけど、やっぱりそういうのって見てる側だとしても好きなので。

もぐら:でも無理やりつながる感じは変なので、基本的には全部のコントは、つながりとかを考えないで1本ずつ完結するように作って、出来上がった時に、「こことここをつなげたらおもしろいよね」ってアイデアを出し合って、何かつなげられる部分を見つけていくという感じですかね。

——さきほど、もぐらさんも「ラジオが好きなので」と言われてましたが、コントを見ててもやっぱりそれが伝わりました。お2人にとってラジオってどういうものですか?

かたまり:ラジオって人との距離が近いなというのはありますよね。僕も『爆笑問題カーボーイ』を聴いてきて、やっぱりテレビでは話さない思いについてラジオだとがんがん話してくれる。聴いている側として考えても、すごい距離が近いなって。自分にだけしゃべってくれている感覚はありますよね。

もぐら:テレビは開かれてるから「公園」みたいな感じがあるんですよね。でもラジオは「秘密基地」的というか。「電波」っていう見えないものが飛んでいて、チューニングで合わせることでその「電波」を見つけたら、大人の人が表には出せないような話をしているということにワクワクして、そういうところからラジオに入っていったと思います。

——実際に自分がそのラジオのパーソナリティーになってからはいかがですか?

かたまり:なんとか一日でも長く続けられるようにということで必死です!

——でも、『空気階段の踊り場』は4月から月曜日24時から1時間の放送になったりと、順調ですよね。

かたまり:本当にありがたいですね。放送時間も30分から1時間になったので、いろいろと話せるようになってうれしいです。自分達の好きな曲をかけられるようにもなりましたし。

良い面は誰でも持っているはずだから見た目だけで判断しない

——「anna」のコントの中のラジオDJチャールズ宮城にしても、コントに出てくる人、みんな少し変わっているけど、その一方で、どこか憎めない愛らしいところがありますよね。

かたまり:そうですね。全く理解できないことってやってないと思うので。自分達の中で、どっか共感できたり、そうだよなっていう感覚があるからネタにしてます。まあヤバい人はヤバい人ではあるんですけど、完全に受け取る側をシャットダウンさせるような感じではないのかなと。もしも、こういう人がいたら、こういう対応をしてしまうのかなという感覚を描いてます。

——ギリギリの境界を見せるネタの中でも、空気階段さんのコントって、ハッピーエンドに向かってたりすると思うんですが。

かたまり:ギリギリをうまく見せられたらめっちゃおもしろいですけど、悪意みたいなものを、みんながおもしろいと思えるようにするのはすごく難しいので、その技術がないからというのはあるかもしれません。

——とはいえ、ギリギリの人間のせつない感じはけっこう伝わってきて、「anna」の中で、最初のほうにあった「27歳」というネタに出てくる、もぐらさんが演じる「カメちゃん」にしても、「コインランドリー」でかたまりさんが演じた「マキムラ」にしても、やっぱりどっか良いところもありますよね。空気階段の笑いの根底には人への優しさが感じられます。

かたまり:マキムラもああ見えて実は普段はちゃんと仕事してますからね(笑)。

もぐら:良い面って誰でも持ってると思うんですよね。それを見た目だけで「この人近寄っちゃだめよ」って遮断してしまったりして。もちろん、そっちのほうが危険は少ないのかもしれないけど、その人達だって本当に危険な人なわけじゃない。それは、実際に僕の地元にそういう人がいて、先生とかに「ああいう人に関わっちゃだめ」って言われたことがあるので。

かたまり:それに、自分がそっちの側じゃないとは言い切れないしね。誰しも、表面にそっちが出てきたら「関わっちゃだめ」って言われる側になるかもしれない。そういうことって絶対あると思うんで。

もぐら:うまく隠してるだけってこともありますからね。

——コント「メガトンパンチマンカフェ」の中で、「ミスターアイホープ」が言っていた「こちらから見たら正義だけど、もう一方から見たらそれは悪だ」というセリフが印象的で、空気階段さんはそういう見方を意識しているのかなって思ったんですが。

もぐら:立場と状況で変わったりするということですよね。正解はこれだって決めるほうが難しいということをミスターアイホープが……。

かたまり:教えたかったのかもしれないですね。

もぐら:世の中の人、全員が変だと言えば変ですからね。

「漫才は照れる」

——「anna」を見て、コントの良さを再認識したんですが、お2人にとって「コント」とは?

もぐら:「コント」は「コント」なんですけど、その中で1個の物語が作れるところですかね、僕が好きなのは。

かたまり:難しいんですよね。良さを語るのって。実はNSCの時に漫才をやって怒られて、それでコントをやってるところもあるので……。

——漫才をするのが照れるというのも聞きましたが。

かたまり:はい。照れます。

もぐら:それもコントばっかりやってるからなんでしょうね。ずっと醤油ラーメンでやってるのに、急に味噌ラーメン出しますというのは照れるってことなのかもしれないですね。

かたまり:それと、単純にお客さんの顔が見えている状況ってのがコントにはないので。

もぐら:技術もありますよね。最初から客席も含めての世界なので。

かたまり:漫才が、舞台に出ていく時にお客さんを惹きつけて「さあ見てください」って感じなのと、コントはひっそり始まって「よかったら見てください」という感じというか。

——それで思ったんですが、お2人って前説とかやられたりは?

もぐら:何回かあります。

かたまり:お客さんより僕らが緊張していて。

もぐら:お客さんはこの番組を楽しみにしていて、このために休み取って来てる人もいるだろうし、スタッフさんもいろんなこと考えて番組作ってて、それを照れて声が出せないなんてことじゃいけないと思ってやってました。でも、そこまで考えてやんないとできないくらい照れちゃうというのはあるかもしれません(笑)。

——最後に、「anna」のDVDが発売されるということで、DVDについても一言いただけたら。

もぐら:僕らはDVD世代だし、芸人としては、やっぱりDVDを出したいという、憧れがあるんですよね。

かたまり:僕も大学やめてからなんもしてない時にレンタルDVDを観まくって、それに救われました。今回の特典でいうと、ラジオのディレクター(越崎恭平)さんが勝手にビデオを回してくれていた記録映像が、けっこうなボリュームで特典としてつきます。

もぐら:なのでそれを楽しんでもらえたらと。あとは、DVDになると、カメラ割り、カット割りも入ってくるので、劇場で観た人も楽しめると思います。

■『空気階段 単独ライブ「anna」』
第4回単独ライブ「anna」の公演を初めてDVD化。
発売日:2021年5月19日
本体価格:¥3,850
https://www.tbsradio.jp/562457

空気階段 単独LIVE「anna」
@kuki_tandoku

『空気階段の踊り場』
Twitter:@kuki_odoriba

Photography Takahiro Otsuji(go relax E more)

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「アフター6ジャンクション」が掲げる多様性 TBSラジオ橋本吉史インタビュー後編 https://tokion.jp/2021/04/30/tbs-radio-yoshifumi-hashimoto-part2/ Fri, 30 Apr 2021 06:00:20 +0000 https://tokion.jp/?p=30393 TBSラジオで平日18〜21時に放送されている「アフター6ジャンクション」の橋本吉史プロデューサーのインタビュー後編。今回は番組作りについて語る。

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2018年4月からTBSラジオでスタートしたカルチャーキュレーション番組「アフター6ジャンクション」(以下、「アトロク」)。メインMCはライムスターの宇多丸が務め、平日18〜21時、3時間生放送で、毎回多様なテーマでカルチャーを紹介している。今回、番組のプロデューサーを務めるTBSラジオの橋本吉史に話を聞いた。前編では、「アトロク」を始める経緯からそこに込められた想いを語ってもらったが、後編では、「アトロク」の番組作りについて詳しく聞いた。

玄人向けにせず、リスナーの間口を広げる

——「アトロク」では、パートナーとしてTBSのアナウンサーが加わりました。「ウィークエンド・シャッフル」は玄人向けに作っていた印象がありましたが、「アトロク」ではアナウンサーが加わったことで、リスナーの間口が広がった印象があります。それは意図していたんですか?

橋本吉史(以下、橋本):そうですね。月~金の18〜21時の帯番組を作る上では、より開かれたものである必要がありました。「ウィークエンド・シャッフル」も玄人向けに作っていたわけでは決してなかったんですが、もっといろんな人が聴く番組にしていかなきゃいけないという意識は強くありました。その中で宇多丸さんと世代や性別、好きなものが全く違う人とが対話をする場を作ることで、どの立場の人でも入っていきやすくなると考えました。

カルチャーでいうと、例えば「ガンダム懐かしい」「ポケモンやってた」といっても世代で思い入れのある作品が違っていたりするし、特定の年齢から見た視点だけにならないよう、そして価値観に偏りがないようにするのも目的です。世代や性別が異なる人同士が対話することで、いろいろな側面からそのカルチャーを見ることができます。今は多様性をあたりまえにしていく時代だから、まず番組の在り方がそうなってなきゃいけない。

その中で、じゃあアナウンサーだったら誰でもいいかというとそうではなくて、僕は番組がスタートする前にTBSのアナウンサーとすごく長く仕事をしてきたので、どのアナウンサーがラジオ的に、もっと言えばこの番組的に適しているかっていうのはずっと前からリサーチしていました。アニメ好き、ゲーム好き、映画好き、とかの個性もありますが、自意識をこじらせていて人間味あるなとか(笑)。だから、「アトロク」のメンバーは、僕は前に仕事をして、この人なら大丈夫という勝算のある5人※なんです。

※「アトロク」のパートナーは、月曜日が熊崎風斗、火曜日が宇垣美里、水曜日が日比麻音子、木曜日が宇内梨沙、金曜日が山本匠晃。

——多少の噛み合わなさも番組としてはあってもいいと。

橋本:価値観が同じ者同士の会話の気持ち良さは当然ある。でも、いろんな立場の人達がそれぞれの視点を気持ち良くぶつけあう場のほうが聴いていて気付きが多いんじゃないかと。要は人として認めあってればトークとしては楽しく聴けるわけなので。あと、アナウンサーが主役になることだってあります。

例えば宇垣さんがいなかったらアニメや漫画の企画はほとんどできていなかったし、宇内アナがいなかったらゲームの企画もここまで育たなかったと思います。日比アナの演劇関連の企画、熊崎アナが韓国ドラマにハマり出した流れでの特集、山本アナのフード描写で映画を読み解く視線など、アナウンサーが主導する回もたくさんあります。

それと、宇多丸さんのどんな人からでも学ぶ姿勢も素晴らしくて。本人は保守的なタイプだと言っていますが、常にアップデートしようとする姿勢がある人ですね。それと、カルチャーって世代を超えて共感する部分もあるのがいいですよね。『エヴァンゲリオン』が世代によって愛し方が違ってたりするのもあるし、ゲーム好きで知られる加山雄三さんが以前ラジオで「バイオハザードのスコアを孫と競っている」って言っていて、そういうの良いなあって。

——「ウィークエンド・シャッフル」でパートナーだったしまおまほさんを、そのまま「アトロク」のパートナーにするっていうのは考えなかったんですか?

橋本:長く聴いてくれてる人ならではの突っ込んだ質問ですね!(笑) 作り手からすると、しまおさんって自由にさせたほうがいいんです。でも「アトロク」のパートナーになると交通情報とか段取り的にやらないといけないことがたくさんあるので、しまおさんはそのポジションじゃないなと。

あとは、しまおさん本人も言ってましたが、番組とは距離があったほうが良くて、入り込みすぎずに番組を冷静に見て、足りないものを言ってくれたり。そういうスタンスのほうがお互い良い気がしています。それで今は月に1〜2回、しまおさんが理想とするラジオ番組の追求という形で自由すぎる企画をやったり、たまに出演するオブザーバー的な役割をお願いしたりしています。実は、しまおさんってものすごく自分に厳しくて、なれ合いになることをすごく気にするのでそれもあるのかも。アウトプットに対して実はストイックという。ストイックという言葉とすごくギャップがある人かもしれないですが。

特集は「まだ知られていないこと」が起点

——特集の内容は、ビギナー向けから玄人向けまでかなり幅広くやられていますが、どのように決めているんですか?

橋本:基本的には玄人にしかわからない企画、というものはやるつもりはなくて、題材がニッチだったとしても、むしろ、いかに知らない人や興味ない人に対して届けるかを大切にしています。玄人向けのように聴こえてたとするとその特集は失敗ですね(笑)。

一方で、みんなが知っているものでも「実はここが知られてない」とかも企画としてはあって。例えば最近やった企画だと「ダンサー」の仕事ってみんななんとなくは知っていますが、実はすごく不遇な条件で活動している人も多い。そういう「知らなかった」ことを伝えていきたい。だから基本的に、特集企画は、「まだ知られていないこと」が起点になることが多いです。

——どのくらい前から考えるんですか?

橋本:だいたい1〜2ヵ月前から考えています。特集によっては、ギリギリまで決まらないものもありますけど。

——映画、音楽、漫画、ゲームなど扱うカルチャーの割合は考えていますか?

橋本: あまり強くは意識してないですが、曜日スタッフやパートナーの得意分野で自然と分かれてくる感じですね。アニメや漫画は宇垣さんのいる火曜が多く、ゲームは宇内アナの木曜、とか。っていうか、こんな細かいとこまでインタビューしてくれるなんて! 扱うジャンルのバランスの話なんて局内で気にされたことないですよ(笑)。

——番組を聴いていると幅広く扱っているので、気になっていました。それでも毎日特集企画を考えるのは大変なのでは?

橋本:確かに、番組を始める時は「毎日特集ってできるかな?」って思いもありましたが、「できなかったらその時は特集をやめよう」くらいに考えていましたね(笑)。でも結果、企画案は渋滞しているくらいあります。カルチャーってトレンドも移り変わるし、視点次第でいくらでも語りがいがあるし、ディレクターや作家が優秀で素晴らしいチームなこともあってアイデアが尽きることはないですね。

あとは、出演者とスタッフが「あの映画が良かった」「この曲やばい」「この漫画スゴすぎ」「あのゲームやってる?」とか本気で雑談するんですよ、放送前後に。リモートでも仕事終わってるのにZoomでずっと話してたり。僕自身もですけど、番組クルーが本気でカルチャーを楽しんでいるっていうのが、あたりまえではあるんだけど、伝える側としての大切な原動力ですね。

——宇多丸さんから企画に対してNGが出ることはありますか?

橋本:あります。視点がよくわからないとか、切り口がよくわからないとか、スタッフと同じく編集者目線なこともあれば、「そのロジックだとゲストと話しづらい」とか「喋り手の目線」でも指摘してくれます。それこそなんとなくブッキングしただけでやろうとすると「なんで出るの? 出てもらって何するの?」って宇多丸さんも言いますね。そこから議論して企画がブラッシュアップされて「これだ!」って視点が定まっていく過程は、産みの苦しみでもありながら、チームで何かを作る冥利に尽きます。

——19時台の「LIVE&DIRECT」では、毎日ミュージシャンのライブが放送されています。あのブッキングも大変そうです。

橋本:これは前身番組からの積み重ねもあるし、ブッキングチームが優秀で、FMのミュージックステーション系で活躍するディレクターと、クラブやライブハウスを運営してたDJオフィスラブさんが担当してくれているので、5日間、毎日、注目アーティストがパフォーマンスを披露するという前代未聞の企画が可能になっています。これまだ伝わりきっていないので強調したいんですけど、このペースでやってるのは、日本はもちろん世界的にもたぶんこの番組だけなんですよ! アメリカのラジオ局NPRの「タイニー・デスク・コンサート」を目指そうって思ってたのに、実施ペースでいえばもう勝ってるという。

ただ、コロナの影響が出てきてからは、今後どうするかって話にもなったんです。前はライブもスタジオでやっていて、ここに十何人集まってやったりもしていました。たまに海外のミュージシャンも来てくれたりして、それが楽しかったんですけどね。でも、コロナでそれができなくなって。今は事前に録音してもらったライブ音源を放送したり、外部スタジオからリモートでライブするスタイルをとっています。

それこそ生でライブができないならやめるって選択もあったかもしれませんが、ミュージシャンがMCやっている番組で、ミュージシャンの活動の場を減らすってなんだよ、って。今苦しいアーティストやクリエイターがいるんだったら、その場を提供するのがカルチャーキュレーション番組の役割だろ!ということで続けています。

ライブショーと音声コンテンツのプロとして

——橋本さんはラジオの魅力はどういった点だと考えていますか?

橋本:「プロフェッショナル」の最後で聞かれそうなやつですね(笑)。庵野さんばりにはぐらかしたいところですが……もともとラジオはパーソナリティとリスナーの距離の近さっていうのは1つの魅力で、テレビなどよりも親近感の湧くメディアであることは間違いないと思います。「ラジオだけは本音を言ってくれる」みたいな信頼性も今の時代に貴重です。

その上で、「音声だけで表現しているということ」に今後は大きな可能性があると思っています。さらに言うと僕らの場合は生放送に対しての対応っていうのはかなりできるので、それはかなり強みになると思います。

——やはり生放送へのこだわりがあるんですね。

橋本:単に伝統的に生放送の割合が多い、ってだけなんですが、自然とそういう仕事の仕方になっていますね。一発勝負だったり、その瞬間に対応する瞬発力や対応力は、他のメディアの人よりはあると思います。だから、ラジオで働く人の強みとしては、ライブショーとしてのプロと、音声コンテンツとしてのプロという2つ。今は音声コンテンツに注目が集まっているからこそ、質の高い音声コンテンツを意識的に作る必要があるなと思います。

あと、番組とは別でオーディオムービーという、これまでのオーディオドラマのクオリティーを高めるプロジェクトをやっていて、そこにも可能性があるんじゃないかと思っています。最近「JapanPodcastAward」を受賞した「令和版・夜のミステリー」という作品があるんですが、経緯を話すと長くなるので「詳しくはオーディオムービーで検索」で!

——最後にラジオは今後どうなっていくべきだと思いますか?

 橋本:これまた「プロフェッショナルとは?」的な……(笑)。まず、今はスマホでも聴けるなどより身近な存在になってきているとは思いますが、そういったテック面、ハード面で時代に合わせて進化し続ける必要性ですね。

それと昨今のPodcastブームや音声SNSブームで、音声コンテンツの裾野が広がっているのも、すごくいい状況だと捉えています。YouTubeみたいにみんなが音声コンテンツにコミットしやすくなると、僕らが思いもよらない音声コンテンツも出てくるかもしれない。一方で映画のような、すごく作り込んだ、技術力の高い音声コンテンツっていうものを僕らがプロとして作っていかないといけない。そこに意識的であるラジオのプロを増やしていくことが、ラジオ業界にとっては重要なことだと思います。

あとは精神面で「ラジオに求められがちな、昔から変わらない安心感」に作り手が甘えすぎないことですね。アントニオ猪木引退時に古舘さんが言った「闘魂に癒やされながら時代の砂漠をさまよってはいられない」になぞらえて言うと「ラジオに癒やされながら時代の砂漠をさまよい続けないように」していくべきだなと。

橋本吉史(はしもと・よしふみ)
1979年富山県生まれ。2004年TBSラジオ入社。2007年『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』を立ち上げ、プロデューサーを務めた。2018年4月に『アフター6ジャンクション』を立ち上げ、現在は同番組のプロデューサーを務める。大学生時代は、一橋大学世界プロレスリング同盟(学生プロレス団体)に所属。
https://www.tbsradio.jp/a6j/
Twitter:@nakapiro

Photography Hironori Sakunaga

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「アフター6ジャンクション」が提示するカルチャーの意義 TBSラジオ橋本吉史インタビュー前編 https://tokion.jp/2021/04/15/tbs-radio-yoshifumi-hashimoto-part1/ Thu, 15 Apr 2021 06:00:30 +0000 https://tokion.jp/?p=28866 TBSラジオで放送中のカルチャー番組「アフター6ジャンクション」に込められたプロデューサー・橋本吉史の想い。

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2018年4月からTBSラジオでスタートしたカルチャーキュレーション番組「アフター6ジャンクション」(以下、「アトロク」)。番組のコンセプトは、「あなたの”好き”が否定されない、あなたの”好き”が見つかる場所。映画・音楽・本・ゲームなどの分析や、独自視点による文化研究など、日常の中にある『おもしろ』を掘り起こすカルチャー・キュレーションで現代社会に広がるさまざまな趣味嗜好の多様性を受け止める」というもの。

メインMCはライムスターの宇多丸が務め、平日18〜21時、3時間生放送で、毎回多様なテーマでカルチャーを紹介している。「アトロク」の前身となる番組「ウィークエンド・シャッフル」は2007年4月〜2018年3月まで毎週土曜日の22時から2時間生放送で行われていて、多くのコアなリスナーから支持を得ていた。そうした実績があるものの、平日の18〜21時にカルチャーを扱う番組にどれだけ勝算があったのか。番組のプロデューサーを務めるTBSラジオの橋本吉史に話を聞いた。前編では、「アトロク」を始める経緯からそこに込められた想いについて。

カルチャーとの偶然の出合いを創出する

——個人的に「ウィークエンド・シャッフル」は好きだったんですが、「アトロク」が始まると聴いて、平日の18〜21時で大丈夫かって思いもありました。当初から平日の18時~21時の時間帯でカルチャー番組をやるというのは、勝算はあったんですか?

橋本吉史(以下、橋本):もちろん勝算はありましたが、勝利してるのかどうか、は視点によるんだろうなとも思いつつ(笑)、ただなんでこの時間帯にカルチャー番組をやるのかについては、しっかりとした理由があります。

もともとTBSラジオでは平日の18〜21時って野球のナイター中継をしていた時間なんです。それでナイター中継をやめて次に何をやるか、そのあと枠を考えてくれというのが会社からのオーダーでした。それでまず考えたのは、平日の18〜21時はどういう時間なんだっていうこと。この時間って仕事をしている人もいれば、家でくつろいでいる人もいたり、人によって何をしているかが違う。そんな中でも、あえていうならば、「仕事や学校からプライベートへと、自分の時間に移行していくグラデーションの時間帯」だと思っています。

その時間帯にどんな情報が流れていればいいのかを考えると、自分のための時間の使い方、つまり余暇や、趣味にまつわるものだとフィットするんじゃないかと。それを番組に落とし込む時に、宇多丸さんとずっとやってきた「ウィークエンド・シャッフル」の要素をうまくミックスすると、カルチャー・キュレーション番組みたいなものが成立するんじゃないか、というのがまずありました。

あとは番組のコンセプトともつながるのですが、1人で趣味を楽しんでいた人が番組を通して仲間がいるんだって気が付いたり、趣味がなかった人でも「これだったらもしかして自分も楽しめるかも」みたいなカルチャーが見つかったり、そういった“好きが見つかる”とか“好きがつながる”場を番組を通して作れたらいいなと思って。それはラジオがもともと持っている「リスナーとのつながり」や「コミュニティー性」と相性がいいだろうという考えもあって始めました。

——なるほど。そういう意図があったんですね。番組制作で意識していることはありますか?

橋本:番組を運営する上で、「ただみんなが好きそうなものばかりを提供する番組にはしない」というのは意識しています。今はインターネットでも自分が好きそうなものを自動でおすすめされていく。それが当たり前になってきているので、「思いもよらない好きなものとの出合い」という体験がなかなかなかできなくなっています。そうした体験は今や不特定多数に向けたメディアじゃないと作れない。全く興味のなかった音楽だけど、勝手に流れてきて、それと接触したらすごく良かった。そういう体験ってたぶんその人の人生の中で楽しみが増えることにつながる、すごくいい体験なはずなんです。だから「勝手に出合わされてしまうことの価値」を番組で作れたら、それは意味のあることだし、それであればやる意味があるはずだと信じています。少なくとも自分は出身がカルチャー不毛な地域だったので(笑)、学生の頃とかまだ自我が形成されきってない時期に、いろんなカルチャーを教えてくれる場があってほしかったこともあり、こんな番組があったら最高だっただろうなあと思ってやっているところもあります。

——「ウィークエンド・シャッフル」の実績があったとはいえ、平日毎日3時間、しかも生放送でカルチャー番組をやることに対して、「それで数字が取れるのか」とか「スポンサーが本当につくのか」みたいな否定的な意見はなかったんですか?

橋本:それはなかったですね。というか「カルチャー番組」ってだけで数字が取れない、っていうイメージがあるんですか? それ知ってたら考え直したかな(笑)。確かに番組作りで言えば、すごく人気がある人を起用したり、ゲストに呼んだりすると、当然数字が取りやすいというロジックが出てくるのも想像できますし、スポンサーにも人気者の◯◯さんの番組ですといえば話をしやすいのかもしれません。

「みんなが聴きたい番組」っていうのはもちろん大事なことなんですが、加えて「メディアがやるべき番組」っていうことも考えないといけない。かといって “お勉強”みたいなことを地味にやっても仕方がないので、そこにエンタメとして聞ける要素もケレン味ある演出でプラスしてカルチャーを紹介する番組であれば「おもしろくて、ためになる」可能性はあると思っていました。

インターネットのPV至上主義みたいに、「わかりやすくて、みんなが聴きたい」だけを考えると、当然、人気者に出てもらえばいいって話が出てくる。でも、「人気者が出て何をするんですか」「人気者が出て何を伝えるんですか」っていうことがあまり考えられていない。番組を通して、どういうビジョンを描いてリスナーに伝えていくのかを答えられる作り手は、ラジオ業界に少なくなっている気がします。要は「ブッキングさえできれば、あとはその人が好きなことをやってくれればそれでいい」と思っているスタッフも少なからずいる気がして。そうじゃなくて、「この人にこれをやってほしい」と企画もしっかり作るというのが、僕らの仕事。YouTubeやClubhouseでタレント自身が直接受け手に発信できる時代になって、ラジオのプロとしての役割って何なのかっていうのが、問われてきていると思います。

もちろんタレントさんや芸人さん、アーティストさんと一緒に何かを作ることの楽しさ、重要さ、キャッチーさも当然あるから、それをしてないわけじゃないんですが、そこにもう1つ「番組としてこういうスタンスを打ち出すんだ」っていうところはあるべきですね。

パーソナリティの覚悟

——そもそも宇多丸さんのスケジュールを押さえるのも大変だったんじゃないですか?

橋本:現役バリバリのミュージシャンですから、もちろん大変でした。ただ、以前から宇多丸さんには「ラジオパーソナリティを長くやっていくと、この先、月曜日から金曜日の帯番組をやらないかって話が来るのが普通の流れです。だからその時にどうするかっていうのは、覚悟しておいたほうがいいかもしれないです」って話をしていました。

それでいよいよ帯番組の話が来るなって予感があったので、前振り的に「たぶん来るかもしれないです」って話したら、「まずはやってみる」と宇多丸さんが快諾してくれて。全然もめることもなく決まりました。

これは放送でも言っていましたけど、土曜日の夜のほうが実はスケジュールを押さえられているのがミュージシャンとしてはきつかったみたいで、週末空くほうがツアーやライブがやりやすいそうです。ただ平日の帯の3時間生放送は大変ですけどね(笑)。

——番組をスタートしてどれくらいの時期に手応えを感じましたか?

橋本:何をもって手応えとするか次第ですが、開始してまもない頃に、「今まで知らなかったけどこれ好きになりました」とか、「今まで全くその人が接触してなかったジャンルにハマってオタクになりました」とか、リスナーの声が聴けると、やっている意味があるなって思うし、その人の人生の選択肢が増えたことがすごくうれしいですね。生放送中に、働くビジネスマンから「今日はまっすぐ帰る予定でしたが、紹介されていた書店に帰り道の途中で寄れそうだったので、立ち寄ってみたらそこで出合った本が素晴らしかった」と感謝のメッセージをいただいたこともありました。これこそまさに!といううれしいリアクションでしたね。

「おもしろかった」っていうのももちろんうれしいんですけど、番組を通じて何か行動を起こしてくれたり、視点が変わったりっていう報告があるのが一番の手応えです。また、映画業界の人に「番組で聴いてた話を自分の作品の参考にした」とか音楽関係者の人が「紹介されてたアーティストが気になったのでコラボした」とか、「番組でやっていた企画を書籍化したい」「ドラマ化したい」など、クリエイターの方々からリアクションをもらえるのも、こんな光栄なことってないなと思いますね。

——実際の指標としては、聴取率やradikoの再生数ですか?

橋本:あとはマネタイズも大切と言われますね。民放なので。これらはもちろん頑張らないといけないんですが、それだけをクリアするものが良いメディアです、って状況がいいのだろうかって思っています。「広告収入がたくさんあります」「大勢の人に聴いてもらえています」って、それは素晴らしいことだけど、メディアの役割ってそれだけじゃない。もう1つ発信する側の責任というか、それは絶対に必要で、番組の作り手としての矜持がないといけないんじゃないかと思います。

番組が社会に対してどう役に立ってるのか、とか、あとは他メディアにも取り上げられるような存在感も重要ですね。ラジオってよくネットニュースに取り上げられますが、「出演者がこんなことを言った」というゴシップ的な視点も多い中で、「あの番組でこんな企画やるらしいぞ」と番組側が企画したことについてニュースになることが大事かなと。

——「アトロク」は、その番組内容と姿勢からリスナーからの信頼度は高そうですね。

橋本:そうですね。だからその信頼を裏切れないし、そういった意味では慎重に作っています。というと腰が引けているように聴こえるかもしれないですが、「何この企画」と思われる攻めた姿勢を忘れないという意味での慎重さと、時代に取り残されないようにするという意味での慎重さ、です!

後編へ続く

橋本吉史(はしもと・よしふみ)
1979年富山県生まれ。2004年TBSラジオ入社。2007年『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』を立上げ、プロデューサーを務めた。2018年4月に『アフター6ジャンクション』を立ち上げ、現在は同番組のプロデューサーを務める。大学生時代は、一橋大学世界プロレスリング同盟(学生プロレス団体)に所属。
https://www.tbsradio.jp/a6j/
Twitter:@nakapiro

Photography Hironori Sakunaga

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