「エヴァンゲリオン」シリーズや「君の名は」から「ゴジラ」まで 「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」レポート

六本木の国立新美術館で『MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020』が11月3日まで開催中だ。同展は昨年、パリで開催し3万人以上を動員した展覧会『MANGA⇔TOKYO』の装いを新たにした凱旋展示である。

出品作は、東京の変化や特徴を表現した日本の漫画やアニメ、ゲーム、特撮作品を中心に90タイトル以上にものぼる。東京という都市を多角的に捉える試みで、原画やアニメ制作に関わる資料、映像やインスタレーションなど500点以上の展示物で埋め尽くされている。

構成はイントロダクションから始まりセクション1から3まで、オリジナルマスコットキャラクターのヨリコとヴィッピーの案内からスタートする。キャラクターデザインは、アニメ「リトルウィッチアカデミア」で監督を務めた吉成曜が手掛けた。その他のキャラクターの設定やデザインには森川嘉一郎、コヤマシゲト、草野剛らが参加している。イントロダクションの展示室内に入ると1/1000の縮尺で再現された、幅17メートル、長さ22 メートルの巨大な東京の都市模型が出現し、この模型を囲むように東京を舞台とする作品が展示されている。

セクション1「破壊と復興の反復」

日本の漫画やアニメ、特撮において、たびたび描かれてきた未曾有の天災や未知の生命体の襲来によって東京が壊滅的な打撃を受けるシチュエーション。実際に何度も壊されては復興を遂げてきた東京の歴史を裏付けるものだ。この“首都・東京の破壊と復興”を「ゴジラ」や「AKIRA」、「エヴァンゲリオン」シリーズなどの作品を通じて紹介している。

セクション2 「東京の日常」

「プレ東京としての江戸」「近代化の幕開けからポストモダン都市まで」「世紀末から現在まで」の3つのパートで構成されているセクション2。人々の日常生活を描写した作品を通じて、東京の歴史をたどる。江戸の町民文化からスタートし関東大震災、第二次世界大戦、戦後復興から高度経済成長期を経て、あらゆる文化が複雑に交錯する現在の東京までをテーマにした作品を、歴史に沿って展示している。新宿や渋谷、六本木など各時代の街並みを中心に鑑賞することで街の移り変わりが感じられる点も興味深い。

セクション3「キャラクター vs. 都市」

最後のセクションでは都市空間に召喚されたキャラクターにスポットを当てる。各キャラクターは商品の販売促進やPRキャンペーンのマスコット的な存在で、観光資源としても幅広く活用されている。「ラブライブ!」のJR山手線キャンペーンを電車ごと再現したインスタレーションや初音ミクとのコラボレーションで誕生したコンビニの様子を再現したインスタレーションなど大掛かりな展示空間に仕上がっている。『君の名は。』で描かれた四ツ谷界隈の街並みも紹介されている。

漫画やアニメの歴史から新たなフィクションに思いを馳せる

日本の漫画やアニメ、ゲーム、特撮は常に都市の特徴や変化を映し出してきた。同展は多数の作品の原画や都市模型などを通じてその歴史を振り返ることで、東京という都市そのものが、いかにフィクションの世界に影響を与え続けてきたかを知ることができる。一方で、フィクションによって生み出されたキャラクターが現実の都市に与えた影響や作用を知るきっかけにもなった。東京は日本のリアリティやフィクションの基盤を持つ特権的な都市でもある。皮肉にもコロナ禍においてまた1つ都市に歴史が刻まれるわけだが、こんな時代だからこそ、来る次代においての新しいフィクションを思い浮かべながら鑑賞してみてはいかがだろうか。

■「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」
会期:8月12日~11月3日
会場:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22-2
時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで ※当面、夜間は閉館 ※チケットは事前予約制
休日:毎週火曜(ただし9月22日、11月3日は開館。9月23日は閉館)

author:

芦澤純

1981年生まれ。大学卒業後、編集プロダクションで出版社のカルチャーコンテンツやファッションカタログの制作に従事。数年の海外放浪の後、2011年にINFASパブリケーションズに入社。2015年に復刊したカルチャー誌「スタジオ・ボイス」ではマネジングエディターとしてVol.406「YOUTH OF TODAY」~Vol.410「VS」までを担当。その後、「WWDジャパン」「WWD JAPAN.com」のシニアエディターとして主にメンズコレクションを担当し、ロンドンをはじめ、ピッティやミラノ、パリなどの海外コレクションを取材した。2020年7月から「TOKION」エディトリアルディレクター。

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