新進ファッション・レーベル「ビエダ」と中国を代表する写真家のクエンティン・シーのコラボ展示が開催 クエンティン・シーへメールインタビューを敢行

さまざまな“境界”が揺らぎうすれゆく現在。この秋、そんな時代の流れに呼応したファッション・レーベルがデビューする。東京を拠点とするクリエイティブ・スタジオ、クラインシュタインがプロデュース・マネジメントを手掛ける「ビエダ(BIÉDE)」は、「ジェンダーレス」「ボーダーレス」をコンセプトに掲げ、新たな目線から「ユニフォーム」の定義やありようを刷新していくことを企図し設立された。そのクリエイティヴチームは多国籍な編成で構成されている。

コレクション第一弾として発表されるのは、中国広州の高度な技術を有した職人たちの手仕事によりつくられる3点のレザー・バッグ。クラフツマンシップとモダンなセンスを融合させ、同レーベルのデビューを飾るに相応しいアイテムへと仕上げた。

「ビエダ」は、記念すべきファースト・コレクションの発表にあたり、現在の中国を代表するビジュアル・アーティストの一人、クエンティン・シーとコラボレーションを実施。現在は北京を拠点とする同氏は、ロサンゼルスやパリのギャラリーでもその作品が紹介されてきた写真家・映像作家であり、これまで「ディオール」や「ルイ・ヴィトン」、「プラダ」などのラグジュアリー・ブランドとアート・プロジェクトやコマーシャル・ワークを行ってきたことでも知られる。

今回のコラボレーションにおいて、クエンティン・シーは中国のアパートの一室や海辺を舞台に、「ビエダ」のブランドコンセプト/ストーリーを基にしたシューティングを実施。色彩感覚やライティング、構図に独自性を持つ同氏の持ち味を存分に発揮させながら、「ここではないどこか」のような幻想的でシュールレアリスティックなイメージをつくりあげた。クエンティン・シーが撮り下ろした19点のうち8点の作品が、「ビエダ」の新作バッグ3点と共に東京・青山の「STIENBOX」にて展示され、9月12日から一般公開の運びとなる。

この度の展覧会の開催に際して、「TOKION」はクエンティン・シーにメールインタビューを敢行。ブランドとのコラボレーションの背景やそこで表現したかったもの、自身の創作哲学や中国の写真シーン、注目する日本の写真家などについて、尋ねてみた。

どこでもなく、どこでもありえるようなシーンを作りたかった

——今回の「ビエダ」とのコラボレーション企画で一番表現したかったことや、コレクションストーリーを読んだ時に考えたことを教えてください。

クエンティン・シー(以下、クエンティン):「ビエダ」のコンセプトをみて、東洋と西洋の間の何か、夢と現実の間、といった「どこでもない(no where)」ような、そして「どこでも(anywhere)」ありえるようなシーンを作りたいと思いました。「ビエダ」自体は日本のブランドだからという理由もありますね。僕達から見ると日本は東アジアにありながら、西側の国に見えたりもしますので。

——撮影のロケーションやモデルについては、どのようなことを意識して選定を行いましたか?

クエンティン:バッグのコレクションであり、そしてデザインがミニマルでモダンだから、ロケーションはシンプルで、近代的で、アパートメントだったりホテルの一室だったり、展示室のような場所を選んだんです。また、シュールレアルな夢のような雰囲気を作るために海辺での撮影も行いました。ワードローブはバッグの革の質感に合うよう、光を反射する光沢のある素材を選んでいます。モデルには、ユニセックスで人間とロボットの間のような雰囲気のある女の子をキャスティングしています。

——「ビエダ」のブランドコンセプトは「ジェンダーレス」「ボーダーレス」であり、クリエイションを通して新しい「ユニフォーム」の在り方を模索するというものでした。このキーワードについてあなたの考えを教えてください。

クエンティン:「ビエダ」はシンプルだけれど、複雑な心を持った人達のためのブランドだと思う。スタイルは未来的で、エモーションが控えめで、ひんやりとした印象があります。そこがとてもクールだと僕は思いますね。

——あなたの作品の色彩感覚や構図、「西洋/東洋」という二分法には収まりきらないイメージの在り方には強い独自性を感じます。あなたの創作哲学を教えてください。

クエンティン:僕は、いつも自分の記憶や思い出に関係しているイメージを作り出しています。光と色は私の強い視覚言語です。自分にとって写真を撮るということは、心の奥底にある思い出を呼び起こすようなもので、過去を旅したり、すでに知っている人や場所に会いに行ったりするようなものですね。

——中国の写真シーンの現状や独自性について教えてください。

クエンティン:現状はかなり多様ですね。若い写真家の中には、アメリカやヨーロッパで写真を学んで、そこで新しいビジュアル言語を取り入れてくる人もいます。
今の人達は、ソーシャルメディアのおかげで、以前よりもずっと簡単に作品を見せることができるようになりましたね。

——注目している日本の写真家がいれば教えてください。

クエンティン:20年以上前に写真の勉強をしていた時、モノクロのフィルムをよく撮ったのですが、当時の僕は森山大道のストリート写真に大きな影響を受けました。個人的には大ファンというわけではありませんが、日本の写真家だと、篠山紀信さんと上田義彦さんはどちらも中国でとても人気があります。彼らは、かなり多くの若い中国人写真家に影響を与えていますね。僕は川内倫子さんの作品がとても好きなんです。その日常を夢のように撮影したシュールでユニークなスタイルが。作品から虚無と意味を同時に感じることができます。

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本展は、これまで日本ではあまり紹介されてこなかった同氏の作品を、直接体験できるまたとない機会ともなる。「ビエダ」に触発され生まれた美しく幻想的なイメージを、ぜひともその目で確かめてみてはいかがだろうか。

■「BIÉDE COLLECTION 01 IN COLLABORATION WITH QUENTIN SHIH」
会期:9月12日〜9月18日
会場:STEIN BOX
住所:東京都港区南青山4-24-4 B1F TKハウス 001
時間:11:00〜19:00

「ビエダ」
https://biede.jp
Instagram: @biede_official

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TOKION EDITORIAL TEAM

2020年7月東京都生まれ。“日本のカッティングエッジなカルチャーを世界へ発信する”をテーマに音楽やアート、写真、ファッション、ビューティ、フードなどあらゆるジャンルのカルチャーに加え、社会性を持ったスタンスで読者とのコミュニケーションを拡張する。そして、デジタルメディア「TOKION」、雑誌、E-STOREで、カルチャーの中心地である東京から世界へ向けてメッセージを発信する。

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