カルティエ現代美術財団とミラノ トリエンナーレがパートナーシップを締結 展覧会のプログラムを開催

カルティエ現代美術財団はミラノ トリエンナーレと8年間にわたるパートナーシップを締結し、10月17日から2021年2 月7日まで展覧会をミラノで開催中だ。ミラノ トリエンナーレ内の1,300平方メートルのスペースが、カルティエ現代美術財団のプログラムによる展覧会、または両者によって企画される展覧会の会場にあてられている。

プログラムは、10月17日にブラジルのアーティスト、クラウディア・アンデュジャールの作品を取り上げる「クラウディア・アンデュジャール展:『The Yanomami Struggle』(ヤノマミ族の闘い)」で開幕し、2021年には、カルティエ現代美術財団のコレクションの中からアルゼンチン出身の画家ギジェルモ・クイッカが選定、監修にあたる「Les Citoyens(市民)」展が開催される。

クラウディアは50年以上にわたり、ブラジル最大級の先住民族ヤノマミ族の写真撮影と保護の活動に力を入れている。ヤノマミ族の居住地域は現在、違法な金採掘に加え、新型コロナウイルス感染症の蔓延が重なり、これまでにも増して危機にさらされており、同展は、人道および環境危機がコロナ禍によってさらに悪化する中、ヨーロッパの公的機関と民間機関における文化協力の新たなモデルを示すものだ。

同展はブラジル・サンパウロの文化センターである「モレイラ サレス インスティチュート」の現代写真部部長、チアゴ・ノゲイラがキュレーターを務め、クラウディアの4年間にわたるアーカイヴの研究をもとに、時代ごとに彼女の作品を絞り、300点以上の写真とオーディオ・ヴィジュアル インスタレーション、ヤノマミ族による一連のスケッチと1本の映画を公開する。クラウディアの写真芸術とヤノマミ族の擁護における人権活動家としての彼女の活動にフォーカスする。展示についてはアートと人権活動の両方に力を注いできたキャリアの二面性を反映し、2つのセクションに分けられている。

1つ目は、1971年にヤノマミ族と初めて出会い、その後ともに暮らした7年間の写真を展示。ヤノマミ族の シャーマニズム文化を視覚的に読み解くべく、いかに多様な写真技法を試みたかを示している。カメラのレンズにワセリンを塗ったり、フラッシュ装置、オイルランプや赤外線フィルムを使うことで、視覚的な歪みや光の筋、飽和色を生み出し、映像に異なる世界感を吹き込んだ。その他ヤノマミの神話や儀式、シャーマニズム的ヴィジョンを表現したスケッチも展示。複雑な文化を視覚的に読み解くという難題への取り組みを示している。

2つ目のセクションでは、写真を政治変革のためのツールとして使い始めた人権活動時代に手掛けた作品を展示している。1980年代初め、クラウディアが予防接種キャンペーンの一環として、ヤノマミ族の白黒ポートレート写真を撮影。彼らは本人確認用に番号付きのラべルを身につけていたが、このラべルが、ホロコーストの際に「死の烙印を押された」 人々の数字のタトゥーを思い起こさせ衝撃を与えた。その後、最終的にはヤノマミ族の存続のためであるにせよ、こうしたラべル表示に内在するあやふやさを明らかにする「Marcados」シリーズを制作。同シリーズの未発表作品が展示される。

また、同展のために特別に再現されたオーディオ・ヴィジュアル インスタレーションはもともと、ヤノマミの領地を19の居留地に分割する1989 年に署名された法令への反抗の意思表明として制作された。クラウディアのアーカイヴ写真を用いて制作され、調和の世界から 西洋文明の進歩によって破壊された世界へと導く。このインスタレーションは、ヤノマミ族の詠唱と実験音楽を融合したマルルイ・ミランダが作曲したサウンドトラックで構成されている。

クラウディアは同展の開催について「私は、先住民ヤノマミ族、彼らの土地、彼らの戦いと心でつながっています。そのすべてが私の心を揺さぶります。私にとってそれらすべてが本質的なものです。おそらく私は、この根源的な核の中に、生きる意味への答えを常に求めてきたのでしょう。だからこそアマゾンのジャングルに向かうことになったのです。それが本能であり、探し続けていた私自身なのです」と語る。

クラウディア・アンデュジャールは1931 年、スイスのヌーシャテル生まれ。現在はサンパウロに在住し活動をしている。幼少期を長年にわたるハンガリー支配の後、ルーマニアに組み込まれたばかりのトランシルバニアで過ごす。第2次世界大戦中、ハンガリー系ユダヤ人だった父親と父方の親族はダッハウの強制収容所へ送られた。クラウディアは母親とともにスイスに逃れ、1946年に米国へ移住。その後、1955年にブラジルへ移住し、フォトジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、活動家となった。

 

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TOKION EDITORIAL TEAM

2020年7月東京都生まれ。“日本のカッティングエッジなカルチャーを世界へ発信する”をテーマに音楽やアート、写真、ファッション、ビューティ、フードなどあらゆるジャンルのカルチャーに加え、社会性を持ったスタンスで読者とのコミュニケーションを拡張する。そして、デジタルメディア「TOKION」、雑誌、E-STOREで、カルチャーの中心地である東京から世界へ向けてメッセージを発信する。

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