AAAMYYYがさらけ出す“正直な私”。最新アルバム『Annihilation』で脱皮した新しい姿を見せる

シンガーソングライター、トラックメイカーとして、2017年からAAAMYYY(エイミー)名義で活動を開始し、2018年にはバンド、Tempalayへと正式加入。さらには、TENDRERyohu(KANDYTOWN)のサポートメンバー、モデル、楽曲提供、CM歌唱提供など、幅広いフィールドで活動を続けてきた。

2019年2月に1stフルアルバム『BODY』を発表し、本格的にシーンへとAAAMYYYの音楽性を浸透させてきた。その彼女が、待望の2ndアルバム『Annihilation』をリリースした。

本作は、2019年から2020年にかけて自分と正直に向き合い、模索しながら自分らしい価値観を紡いでいった意欲作。Tempalayでの活動、コロナ、SNS、アーティストとして在るべき姿など、さまざまなできごとや想いが渦巻く中で“本当になりたい自分”を求め、このアルバムを通じて変革を試みている。

コロナ禍は自分が今まで持っていた善しあしの概念が、すべて崩れて落ちたという感じ

ーー2019年2月にリリースした『BODY』以来、本作が2枚目のフルアルバムとなりました。どのような内容・方向性にしようと考えていましたか?

AAAMYYY(以下、AMY):明確なコンセプトは決めず、2019〜2020年にかけて抱いていた心境や、世の中の情勢を受けて考えることを作品に投影しました。やっぱり、自分の感情の落としどころは音楽だなと思ったので。

ーーその期間、どんなことを考えたり感じたりしていたのですか?

AMY:2020年の3月頃からコロナ禍となり、ライヴもほぼ開催されなくなりましたよね。何をしたらよいかわからなくなり、自分も抜け殻のようになってしまいました……。

曲を作ろうとか新しいことにトライしてみようとかポジティブな気持ちはありつつ、SNSに疲れたり、人と会えないことが精神的なダメージに変わっていって……。とにかく、自分が今まで持っていた善しあしの概念が、すべて崩れて落ちたという感じでした。

ーーそれまで自分が持っていた概念とは、どういうものだったのですか?

AMY:日本人あるあるかもしれませんが、身を粉にして働くことが美しい、常に自分を高めていかないとならない、新しい何かに挑戦しなくてはならない、といったことですかね。

そういった概念の中で、いかに自分をカッコよく見せるかということが、コロナ前までの目標値であり自分を高める理由付けでしたが、そういうものがまったくなくなってしまったんです。

ーーもしコロナがなく今までどおりの日常が続いていれば、今も以前と同じマインドだった可能性はありますか?

AMY:そうですね。でも、全世界が共通した未曽有の事態に襲われたことで、自分だけじゃなくすべての人にとっての変革期にもなった気もしています。特に、今まで仕事中心で追われていた人達は、自分が今まで何に縛られて生きてきたのか、を実感したのではないかなと。

ーーミュージシャンとリスナーという関係性の中でも、そういう変化は感じられましたか?

AMY:あるかもしれませんね。これまで作品や活動を通じて「こういう社会システムって変だよ」と訴えたとしても、どこかで「とはいえ、そんな簡単に世の中に伝わるはずがない」という節があった。でも、コロナ禍になったことで、人間にとって何が大切なのかということをみんなも考えるようになり、初めて伝わり始めたという実感が少し湧いてきました。

ーーそういうことが『Annihilation』(※対消滅の意)というタイトルにもつながっていったのですか?

AMY:そういう捉え方もできるかもしれません。このタイトルにしようと思ったのは、自意識が関係しています。人の顔色をうかがったり、こういう人物像になりたいという気持ちから生まれる、多重人格のような自意識があったんです。

ーー自分の本心で生きていなかったというか。

AMY:例えば、静かにしている自分がいても、もう1人の自分は、実はもっとはしゃぎたい、楽しみたい、笑いたい、といった違う感情を持っていたり。そういう多重の自分達が、せめぎ合ってぶつかったら“消えた=Annihilation”と。

――そういうことを考えるようになったのは、実際の経験が関係していたのですか?

AMY:そうですね。Tempalayでの活動もその1つです。もともとは、メンバー同士が超仲良しという関係性ではなく、お互いのキャラクターを尊重しながら活動してきました。言葉をあまり発せずに探り合って、クリエイションを構築していくスタンスです。でも、コロナになったことで、さらにコミュニケーションが減ってしまった。ライヴ後の打ち上げを大事にしていたバンドだったので、それもできなくなったことも大きかったのですが。

――言いたいことが言える機会が減ると、お互いため込んでしまう状況になりますよね。

AMY:コロナという不可抗力とはいえ、その時に初めて崩壊寸前までいって、自分達のコミュニケーションがいかに浅はかだったかと気付かされました。例えば、(小原)綾斗は、リーダーじゃないけどみんなをまとめなきゃいけないという責任感を抱えていた。でも、実はそう考えるのは嫌だったけど、自己完結して諦めていたと思うんです。私達は私達で、その気持ちを理解してあげられなくて、そういうものだと思ってしまっていた。

本当は全員が人間味や温かみがあるコミュニケーションを求めていたし、インタラクティブな日常を求めていたんです。結果的に、コロナを経たことでお互いを理解して改善することができたのですが。

ーーネガティブな状況だからこそ、前向きになれるきっかけが生まれたというか。

AMY:そうですね。

曲の中に具体的な言葉が出てこないと、夢の中の話のようでイメージしづらいかな

ーーコロナ以前からコロナ禍にかけての心情や経験や変革が、今回のアルバムに投影されたわけですが、冒頭からその世界観を表現しているように思いました。

AMY:1曲目の「Elsewhere」はコロナ前に作ったのですが、その時期の自分はすごくモヤモヤしていたんです。憂鬱なのか怒りなのか原因がわからなくて、どこかに行ってしまいたいという逃避欲に駆られることもあって。

ーーそれって苦しい状況ですよね。

AMY:Tempalayのツアーでも、一緒に車に乗って移動しているのに、それぞれが別の世界にいるような感覚の時もありましたね。昔はみんなで人狼ゲームとかやったりして、すごく楽しかったのにって。LINEで連絡し合っても、みんな既読されたらOKみたいな、暗黙のルールみたいなものもあって。

それだけじゃないのですが、希薄な人間関係によって生まれる憂鬱など、そういうものを落とし込んだ曲です。もちろん、それだけじゃなく世の中的な状態も反映していますが。

ーー日常生活で感じたり、社会的なニュースが、曲のアイデアにつながっていることもあるということですかね。

AMY:はい。この曲の歌詞に<呼吸して許してよポルシェ>とありますが、私が都内のガソリンスタンドでアルバイトをしていた頃に感じたことが反映されています。土地柄富裕層の方がたくさん来るのですが、タクシー運転手さんは高級車の大きな排気音を聞くと嫌な顔をする。でも、高級車の運転手は、そんなこと気にしないですよね。そういう実際の情景から、社会の断片を感じ取れるというか。

ーー「ポルシェ」などの固有名詞を使うこともですが、AAAMYYYさんの歌詞は具体的な表現でリスナーの想像力を掻き立てるように思います。意図的に用いているのですか?

AMY:曲の中に具体的な言葉が出てこないと、夢の中の話のようでイメージしづらいかなと。俳句に季語があるように、季節や場所をほうふつさせることで、リスナーの方それぞれの思い出がよみがえって深みが増すことってありますよね。そういう意図で、具体的な表現を使っているところもあります。

ーーとはいえ、すべてを具体的にしているのではなく、余白の部分もちゃんと用意されていますよね。

AMY:例えば「PARADOX」という曲では、途中で英詞が出てきます。一度だけ聴くだけでは意味を理解できないかもしれませんが、それはそれで良いと思っています。基本的に、自分としては押し付けがましいメッセージを提示したり。楽しもうよ! と煽ったりするのはしたくなくて。なので、曲を聴いた人達が適度な没入感を持ってもらえたらいいなと思っています。

ーー今話に出た「PARADOX」は、どういうことを考えたり感じて書かれた曲ですか?

AMY:表の自分は強く見せなきゃと思って生きているけど、内側にある本当の自分はメンタルが弱いけど、その弱い部分を見せなきゃ崩壊しちゃう、というまさにパラドックスな状況を表現しています。

歌詞に<痛みも知らずに暮らしているだけなら 曖昧に濁した分だけ跳ね返ってくるね>とあるんですが、結局、素直に自分がなりたい自分になるために行動しないと、結果的にバチが当たっちゃう気がするんですよね。

ーーそんなふうに考えるようになったのは、何かきっかけがあったのですか?

AMY:この曲を書いた時は、和室の部屋に住んでいたんです。自分としては普通のことだったのですが、他の人から「和室に住むんだ。意外と自分で料理するんだ。話すと緩いんだ」と、言われることがあって。要は、実際の私と周囲が持っている私に対するイメージのギャップが、あまりにも大きかったというか。本当の自分はそうじゃないのになぁって。

ーーなるほど。「天狗」という曲では、Dos Monos荘子itさんが参加していますが、彼にお願いした理由を教えてください。

AMY:昔からの知り合いなんです。彼は難しいことでもわかりやすく説明してくれる人で、社会のことをよく見ているし、反発心も持ちながら、ひねりのあるおもしろいことをやる人だなと思っていました。

本当に誰にも会えない期間は、ウェブニュースや誰かのインタビューを読んでいたんです。その時に、Dos Monosがアーティストのスタンスについてインタビューで話していて、その記事に感銘を受けました。

この曲は、自分がなりたくない自分になってしまうこと、について書いています。でも、自分1人で完結してしまうと内容的に救いがなさすぎて、誰かに活をいれてもらわないと本当にネガティブな曲になってしまう。なので、荘子itくんを呼んだんです。

ーー荘子itさんにはどういうオーダーをしたのですか?

AMY:すでにデモのトラックと歌の部分ができていたので、ラップを入れたら良さそうと思った部分を指定して「自由にラップを入れてもらえませんか?」とお願いしました。

――自分がなりたくない自分になってしまう、ということですが、そのテーマに関して本人と話したりしましたか?

AMY:実際に聴いてもらって「これは実際にあったことなの?」「AAAMYYY自身がそうなってしまったの?」「ざんげなの?」と、彼のほうから質問があったので私の意図を伝えました。

ーータイトルを「天狗」にした意図は?

AMY:まさに、ピノキオ状態ということです。ある時期に「結構、私達って天狗になってるよね。そうなりたいんだっけ? いや、なりたくないな」って、自問自答していたというか。

実際、なりたい自分になるために、性格ビッチになっていくさまが自分でもわかる時期があって。それを止められないことへの嫌な気持ちがたまっていったのです、ざんげというか自分の汚い部分も出そうと。

ーーこの曲の内容は、アーティストに限らず世の中を象徴している側面もありますよね。SNSによる承認欲求や、周囲の目が気になりすぎて自意識が崩壊することなど、社会全体でも起きている気がします。

AMY:そうかもしれませんね。友達のシャララジマさんとも、それに近い話をしたことがあります。彼女は、文筆業やモデルなどの活動をしていて、インド人ですが白人風のメイクをしてモデルとして問題定義しているんです。

彼女も、モデルやクリエイターの世界でも、本質の部分がないのに売れちゃったりして、そのまま空虚なうそを貫き通さなきゃいけない人が多すぎる、という話をしていましたね。もちろん、自分がどうなりたいのかなんて人それぞれですし、その人の自由だと思います。ただ、私は私が良いと思うことに、ちゃんとうそなく向き合いたいなと。

自分の力は微力ですが、表現しないで死ぬよりもやって死ぬほうがいい

ーーお話を伺っていると、今回のアルバムは自分の内面をかなりさらけ出しているということになりますよね。

AMY:ここまで踏み込んだのは、今回が初めてでした。一時期、AAAMYYYを知ってもらうためには、こういう見た目が良いとか、こういうやり方が良いとか、そればっかり考えていたんです。

正直、作り上げた自分を実らせたり、それを継続していくための努力に疲れてしまったというか。しかも、そのままの状態で進んでしまったら、さらに正直な自分を失って苦しくなっていくだろうなと。なので、もういっちゃえ!って(笑)。

ーーただ、自分の嫌な部分と向き合うことって、決してラクなことではないですよね。

AMY:でも、自分にうそをつき続けてしまうと、それこそ「パラドックス」のように、いつか自分に跳ね返ってくる。苦しくても、少しずつウミを出していけば、大きな腫瘍にはならないかなと。

ーーAAAMYYYさんの作品は、生きる・死ぬといったご自身の死生観も反映されているところがあると思います。今回の作品でも、それは継続されていますか?

AMY:そうですね。たまたま、身近な人が亡くなったということもありましたし、ここ最近はSNSの誹謗中傷が原因でつらい思いをする人が増えていますよね。そんな状況ですが、少しは救いのある世の中になってほしい。自分の力は微力ですが、表現しないで死ぬよりもやって死ぬほうがいいって。そういう想いが、このアルバムを作る時にありました。「AFTER LIFE」という曲も、その気持ちが表現されています。

最新作に収録されている「AFTER LIFE」のMV

ーー自分をさらけ出し、自分を正直に表現したパーソナルな作品となりましたが、作り終えてみてどんな収穫がありましたか?

AMY:脱皮したような感覚があります。それは、化けの皮が剥がれたという言い方もできると思いますが、やっぱり自己投影をせざるを得なかった。しかも、その想いをSNSで発信するのではなく、友達に悩み相談するのでもなく、音楽で表現するしかなかったんだな、と。おそらく、この想いを吐き出さなかったら爆発していたと思います。

ーーこのアルバムを聴いた人達から、どんな反応が生まれるかも楽しみですね。中には、自分ごとのように受け取ってくれる人もいると思います。

AMY:きっと、ハッとしてくれる人もいると思います。それに、今まではほぼ1人で作っていましたが、今回はギターやベースを演奏してくれる人がいたり、ビートを手伝ってくれる人がいたり、自分以外の人との関わりも多かったんです。

その人達も含め仲間も聴いていない状況なので、正直、まだ消化し切れていない自分もいます。ですから、仲間やリスナーの方に聴いてもらうことで、本当に脱皮した新しい自分になれるような気がしています。

AAAMYYY
シンガーソングライター、トラックメイカー。2017年からソロとしてAAAMYYY名義で活動を開始。2018年6月からTempalayに正式加入、TENDREやKANDYTOWNのメンバー、Ryohuのサポートメンバー、多種多様なアーティストとのコラボレーション、モデル、楽曲提供、CM歌唱提供など、幅広い活動で注目を集める。2019年には1stアルバム『BODY』、2020年5月に配信シングル「HOME」、7月に「Leeloo」をリリースしている。
https://aaamyyy.jp
Instagram:@amy0aaamyyy
Twitter:@amy0aaamyyy
YouTube:AAAMYYY

Photography Shinpo Kimura
Styling Masataka Hattori
Hair & Make-Up Hitomi Kanto
Text Analog Assasin

author:

相沢修一

宮城県生まれ。ストリートカルチャー誌をメインに書籍やカタログなどの編集を経て、2018年にINFAS パブリケーションズに入社。入社後は『STUDIO VOICE』編集部を経て『TOKION』編集部に所属。現在、子育てに奮闘中。

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