「プラン C」が東京の街を表現したスペシャルプロジェクトを始動 「静寂と喧騒といった相反する要素が東京の魅力」

イタリア発ブランド「プラン C」が、ミラノの写真メディア「PERIMETRO」とタッグを組み、東京の街を表現したスペシャルプロジェクトを始動させた。ミラノ・ファッション・ウィーク期間中には、「TOKYO AND ITS CONTEMPORARY STORYTELLERS」と名付けた展覧会を開催。「PERIMETRO」東京版の発行やスペシャルTシャツのコレクションも発売された。

「プラン C」創設者で同プロジェクトを手掛けたカロリーナ・カスティリオーニは、東京の街を選んだ理由について「東京は常に身近な存在であり、インスピレーションに溢れた街だから」だと述べた。ブランド初となる旗艦店も東京の地を選び、コロナ前は年に最低2回は訪れ、この20年で数えられないほど来日しているという。「PERIMETRO」との同プロジェクト立案の際には、迷わず東京の街をテーマにすることを決めた。展覧会では、東京在住の8名のフォトグラファーの作品を選定し、それぞれの視点で捉えられた東京の異なる表情を紹介している。カスティリオーニが思う東京の魅力やミラノとの違い、同プロジェクトについて展覧会会場で詳しく聞いた。

「静寂と喧騒といった相反する要素が東京にはある」

−−「PERIMETRO」との同プロジェクト立ち上げの経緯とは?

カロリーナ・カスティリオーニ(以下、カスティリオーニ):以前から「PERIMETRO」のディレクターとは知り合いで、7月に会った時に何かおもしろいことを一緒にやろうと意気投合しました。「PERIMETRO」はミラノの街をテーマにしたマガジンを制作していますが、私が携わるからにはいつもとは違う特別な街を見せたいと思い、真っ先に東京が頭に浮かんだのです。私にとってはごく自然なこと。なぜなら、20年以上も東京に行き続けているし、そのたびにインスピレーションを与えてくれる唯一無二の場所だからです。

−−8名の東京在住のフォトグラファーはどのように選定したのですか?

カスティリオーニ:NPO「東京画」ファウンダーでキュレーターの太田菜穂子さんの協力のもと、東京の街を表現した作品を募りました。40名ほどの応募の中から、ユニークな視点で東京を捉えたフォトグラファーを選びました。国籍は日本、外国問わず、とにかく独自の視点を持っていることが重要でした。ビルの中から見える美しいパノラマ風景を写す寶槻稔さん、昔ながらの古い床屋をテーマにしたフラヴィオ・パリジ、大都市のダークな側面に焦点を当てた大西正さん、日常風景を詩的な写真で表現した青木 ユリシーズさんなど、本当に東京の異なる魅力を多角的に見せてくれる作品ばかりです。私自身も、東京という街の多様性と特異な文化を再発見した気分です。

−−なぜ、東京に魅了され続けているのでしょうか?

カスティリオーニ:東京の魅力は、多くの要素が混在し、ミックスされている点にあります。街を歩いていても、ファッションが好きもそうでない人も新しいものと古いものを掛け合わせているのがおもしろいといつも感じます。長い歴史を持つ建造物と近未来的な高層ビルがミックスされた街並みも好きですし、常に進化し続けていて、静寂と喧騒といった相反する要素が東京にはあります。私が生まれ育ったミラノとは大きく違うからこそ惹かれるんだと思います。

−−ミラノと東京、最も違うのはどんなところですか?

カスティリオーニ:ミラノはどこか、秘密主義的なところがあるんです。例えば、外観だけを見ると普通の建物であっても、中に入ってみると豪華な中庭や広場があったり、外からでは想像できない秘密を発見することができます。東京のように、歩いているだけで刺激を受けられる街とは少し異なります。もちろん、私が見慣れているからという理由もありますが。

−−ミラノも東京のように街が進化していると感じることはありますか?

カスティリオーニ:そうですね、この数年でポジティブな変化があると感じています。街の緑化が進んでいたり、自転車で移動したりする人が増えました。人々はよりオープンマインドでインターナショナルになっているし、日本などのアジア系レストランも増えたと思います。

−−PERIMETROの他の号と今回のスペシャルプロジェクトの両方を見ると、それぞれの街の魅力を再発見できそうですね。

カスティリオーニ:その通りだと思います。そして各フォトグラファーの写真をプリントしたTャツカプセルコレクションも私にとって特別なものとなりました。「プラン C」ではファーストシーズンからTシャツやスウェットを展開していますが、遊び心のあるグラフィックや私が撮影した写真をデザインに選んできたので、いつもの作品とは違うものに仕上がっています。「PERIMETRO」とのコラボレーションにより、東京をテーマにしたTシャツを制作できたことがとても嬉しいです。パンデミックにより長らく渡航できていませんが、今後は東京以外の場所にも足を運び、日本の魅力をもっと発見したいと思っています。

カロリーナ・カスティリオーニ
「マルニ」創業者の娘に生まれ、長年同ブランドのスペシャル・プロジェクト・ディレクターとしてキャリアを積んだ後に独立。2018年に「PLAN C」をミラノで立ち上げた。イタリア生産の品質にこだわり、カラフルなファブリックや豊富なテクスチャーをミックスして、ルールに縛られずに自己表現を楽しむ女性に向けたブランドとして展開している。Tシャツのカプセルコレクションは、「プラン C」青山旗艦店と公式オンラインストアで限定販売中

author:

井上エリ

1989年大阪府出身、パリ在住ジャーナリスト。12歳の時に母親と行ったヨーロッパ旅行で海外生活に憧れを抱き、武庫川女子大学卒業後に渡米。ニューヨークでファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。ファッションに携わるほどにヨーロッパの服飾文化や歴史に強く惹かれ、2016年から拠点をパリに移す。現在は各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビューの他、ライフスタイルやカルチャー、政治に関する執筆を手掛ける。

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