アメリカン・ドリーム・エクスプレスというバンドを知っているだろうか。昨年の10月27日にアルバム『PURE LOVE』をリリースしてから、東京を拠点に活動する彼等。11月に下北沢でイベントを開催する他、突如長澤まさみがMVに参加するなどポテンシャルは未知数。2ndアルバム『PURE LOVE』を通じて、伝えようとする音はどのようなものなのだろうか。首謀者のTomas(トーマス)とKaito SAKUMA (カイト)を中心にメンバーに話を聞いた。コロナ禍の最中、気持ちを落としてしまいそうな時代に「周りはなぜこんなにも難しく考えるのか」という疑問を抱き、「全員ハッピーでいてほしい」という気持ちを込めたというアルバムが発売になった経緯、そしてこれからバンドとして実践していきたいこととは?
――トーマスがこのバンドを始めた経緯にはどういう流れが?
トーマス:僕は元々音楽をやったことがなかったけど、10年くらい前からカイトと友達で。当時カイトのバンドのライヴによく遊びに行ってたんです。僕はその頃下北沢にある「pebble」でバイトをしてたのもあって……。友達がバーでバイトしてたら、みんな来るじゃないですか? カイトもそんな感じで週3〜4日飲みに来ていて、毎日パーティみたいな感じで(笑)。さすがにカイトが「酒を飲んでるだけなのはやめよう」と発破をかけてくれてバンドを組みました。それが4年くらい前?
カイト:そうだね。
トーマス:バンド自体やったことがなかったから、まずはカヴァーから。それこそボン・ジョヴィの「It’s My Life」のカヴァーもしました。それからだんだんと曲が1曲できて。そしたら、ライヴが決まっちゃったよ、とか。1個ずつ徐々にステップが上がっていって、今現在アルバム2枚作るとこまで持ってくることができた。そんな感じです(笑)。
最初にいたのって2人だけかな。徐々に人数が増えていって。1人台湾に行ったメンバーもいて、あと亡くなっちゃったギタリストであるイチワ。それから現メンバーの6人で2ndアルバム制作に取り掛かりました。コロナ禍が始まって、ライヴができなくなったタイミングでした。最初のシングルリリースが2021年の3月くらいからで、それからほぼ毎月連続でリリースしていって。そうしてリリースしたのが2ndの流れです。
――1回1stでアルバム作ってるからプロセスもわかってるし、2ndアルバム作るのは難しくなかったということですか?
カイト:フジロックに出させてもらった直後から2nd作ってたんですけど、そのタイミングから録り溜めてました。でも、だいぶやり方は変わっていて。というのもコロナの影響でライヴハウスが壊滅していてあんまりライヴができなかったんです。
――なるほど。それは幸か不幸かライヴができない分、アルバム制作に専念できたということなんですかね?
カイト:まあ、気持ちを切り替えて制作に専念しましたね。ロックバンドってレコーディングコストがお金以外にもたくさんかかるんですよ。単純に生楽器が多いし、時間もかかるし、メンバーを集合させるだけでも大変で。けれどライヴができる状況でもない中で、シングル曲がどんどん出る状態を目指して制作してリリースしたのが2ndアルバム。
――アメドリの制作スタイルはどのようなものなんでしょうか?
トーマス:基本的にはカイトが作って、僕達が聴いてやる流れがありますね。それが基本で1曲だけ僕のアコギからなんですけど。「Planetrip」という曲ですね。
――どんな経緯で制作されたんですか?
トーマス:毎年夏に新島に旅をしてて、サクちゃんとゲートボーラーズの夏椰くんと1ヵ月過ごしてたんですけど。その時にメンバーでアルバムリリース直前亡くなったイチワ君が夜空を見て「宇宙ってあったかいんだね」て言いはじめて(笑)。その時にあっこれだって思ってリリックができたのが「Planetrip」。
――アルバムの『Good For Nothing』とかサイケだなて思ったり。最近あまり日本でいなかった明るいフォークとカラッとしたサイケ感があるバンドだなと思ったんです。
トーマス:この曲を作るのおもしろくて。CANを聴いた後にレコーディングしてできたという(笑)。
カイト:要するに僕らってアルバムを作る感覚よりは、シングルを毎月出す前提なんです。毎曲作りながら考えてた。逆にその時々で聴いてる音楽も違うから、この感じで。
トーマス:リリース日が決まってるのに全然できてないとかありましたね(笑)。だからかなりライヴっぽいというか。
――音楽的なルーツもわりとバラバラなのかなと思っているんですけど、いかがでしょうか?
トーマス:僕は1990年代的な音が好きで最初はニルヴァーナとかペイヴメントとか、ザ・フレーミング・リップスもそうだし。そういう音楽を聴いてたんですけど。
――ふにゃっとしたサウンドとサイケデリックバンドの揺らぎ感が好きなんですかね。
トーマス:媚びないスタンスにクールさを感じる傾向がありますね。それが自分の根底で。今だとキング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードとか。本人はどうかわからないけど、「世の中なめてる系」が僕の中でクールだと思います。
カイト:僕個人としてTOKIONの取材を受けた時にお話ししたかもですけど、そっちの方は音響みたいな感じ。でもアメリカン・ドリーム・エクスプレスとしては明るいサイケデリックロックをやりたくて。
――そこにはどんな背景が?
カイト:単純にトーマスのキャラかな。アメリカン・ドリーム・エクスプレスを組む直前に、僕がLAに仕事で行ったんです。そこでフランキー・アンド・ザ・ウィッチ・フィンガーズというLAのサイケバンドのライヴを見に行ってたんですよ。演奏している空間も含めてイケてて。実は向こうのシーンだとサイケデリックで楽しく踊ってる、みたいな。単純にクラブでロックやってるのとは違うかもしれないんですけど。そういうシーンがあったり、僕としては居心地がよかったという体験があって。明るいサイケデリックロックでみんながお酒を飲んで楽しめる空間を作りたいと思って。
トーマス:意外とサイケというとドロドロしていて暗い感じみたいな。でもそれだけじゃないよという気がしてて。
カイト:そうそう、もっと楽しんだらいいじゃんという。
――他のメンバーも同意されますか?
ナツキ:はい、その空気感でずっとやっているので。
レン:自分が聴いてきた古臭い1960年代のロックを1980〜90年代に自分達がロックやったらこうだという感じで。その空気感と近いことをアメドリはやってますね。それは(ギターとして加入前から)客観的にアメドリを見ていた時から思ってる印象。俺はギターだけ弾くバンドがずっとなかったから、ここではギターだけ弾けるな。「やったー」みたいな。
ライヴがやりにくい時代だからこそ、僕等みたいな明るい音楽を
トーマス:ヒットチャートもそうだし、特にコロナ禍の中のプレイリストを見ててもそうなんですけど、サイケデリックというよりマイブラみたいな曲をイヤホンで1人で聴いてて。良い感じに聴こえる音楽が、昔のロックインディー。ライヴに追体験しに行くみたいなキッズもいて。ライヴとなるとみんな緊張するとか、今回結構友達とか誘ってライヴに行ったことない友達も誘ったりして、そうするとライヴなんて行ったことない緊張するとかって言ってるけど、全然別にただの飲み会だと思って来てくれればいいなって(笑)。
――これからバンドとしてどんなふうに活躍していきたいと考えていますか? アメリカン・ドリームとバンド名にあるくらいだからアメリカ進出とか?
トーマス:バンド名はマジで適当に決めたんだけど(笑)。
カイト:でも強いて言うなら、この前の長澤まさみさんしかり、夢を与えるバンドではあると思うんですよね。だから、夢を与えるようなことはやった方がいいと思ってて。
トーマス:そういう動きしているのが、楽しいです。僕等もそうだし、多分喜んでくれる人もいると思うので。「あのバンドがやってることおもしろいよね?」みたいな。
カイト:1年に1回花火を上げて、あいつらまたやってるなっていう。そそれがアメドリとしての1番のギフトであって。そういう楽しいタイミングの提供を続けていけたらなと。
――言いそびれたことはありませんか?
カイト:フェス呼んでください(笑)。いつでもスタンバってます。
トーマス:楽しませるんで、よろしく!