2019年、ロッテルダム国際映画祭で招待上映された初長編映画「ガーデンアパート」や英・BBCテレビ放映作品「狂気の管理人」等を手掛ける、石原海監督の新作「重力の光:祈りの記録篇」が、作品の舞台となった北九州で作品上映と未発表の映像を含むヴィデオインスタレーションの個展を行う。会期は4月16日〜5月15日。
上映会では、北九州で牧師とホームレス支援をしているNPO抱樸理事長の奥田知志や北九州の古着屋「BLOOMY DAYS VINTAGE」オーナー・池部哉太等が参加するトークイベントや音楽を制作したミュージシャン・荒井優作のライヴも開催する。
同作は、北九州の教会に集う元ホームレス達や元極道、虐待を受けていた人、生きる意味に悩む人、NPOで働く人、教会で働く夫婦等を含む9人の人々にフォーカスした、挑戦的なドキュメンタリー映画になっている。映像インスタレーション版である「重力の光」は「第15回 shiseido art egg」に選出され、銀座・資生堂ギャラリーで個展形式で発表した。作品は72分のドキュメンタリーヴァージョンとして再編集され「第14 回恵比寿映像祭」で公開し高い評価を受けた。
また、4月7日まで、全国上映に向けたクラウドファンディングを実施している。リターンは石原監督への悩み相談や本編のデータ、上映権等がある。また、映画監督の富田克也、漫画家の小林エリカ、プロデューサー・DJ・パフォーマーのサファイア・スロウズ、哲学研究者の永井玲衣、牧師・NPO抱樸理事長の奥田知志等からの同作へのコメントが寄せられており、クラウドファンディングのページから読むことができる。
石原監督は同作について「いきなり北九州に住むと決めたとき、アタシは途方に暮れていた。こんな混沌とした状況の中で自分の人生をどう進めたらよいかわからなくなっていたし、とにかく疲れ果てていた。数年前に友人に連れられて教会に寝泊りしていた生活の記憶だけを頼りに、地元でもない土地に戻ってきたのは、もうなんていうか、祈りでもしないと生きてることに耐えきれなくなっていたからだと思う。
北九州に連れてきてくれた友人の親は牧師と生活困窮者支援をやっていて、アタシも 徐々に教会に通うようになった。まだあまり知り合いのいない土地で、教会の人たちと 過ごしているうちに、この教会のみんなと一緒に作品を作りたいと思うようになった。この教会に集う、傷ついた愛すべき罪人たちの人生を記録することが、自分にとってすごく重要なことに思えたから。
『重力の光:祈りの記録篇』は、シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』から影響を受けて制作された、教会のみんなとイエス・キリストの十字架と復活を描いた受難劇とその稽古の日々、そしてそれぞれのインタヴューで構成されたドキュメンタリー映画である。生きているだけで、重力に引っ張られて下へ沈んでしまいそうな気持ちになるけれど、祈ることで一瞬だけ重力から解放されてふわりと浮かぶことができる、その瞬間を祝福するように本作を監督した」と制作背景を語る。