アメリカ生まれ大阪在住、流暢に操る関西弁。オタクの彫り師、彫紅と“ヲタトゥー”の世界

世は令和。かつてはアウトローの証明であったタトゥーも、ファッションの一部と捉えるユース世代を中心に、これまでとは文脈の異なるカルチャー的側面を有するものに変わりつつある。

そんな新たな価値観の下に生まれたのが、名作から最新作まで、アニメやゲームといったオタクコンテンツのキャラクターを、鮮やかな色彩と生き生きとした表情で肌に刻む“ヲタトゥー”。オタクとノンオタクの境界線が消失しつつある現代。“オタク×タトゥー”が融合して誕生したこのカルチャーは、今や世界中に広がり、盛り上がりを見せている。

今回は、その発信地である大阪・日本橋のタトゥースタジオ「インベージョンクラブ(Invasion Club)」を訪れ、“ヲタトゥーの伝道師”こと、彫紅に話を聞いた。柔らかな物腰と流暢な関西弁で、時にジョークを交えつつ語る“ヲタトゥー”の世界。作品への愛とたゆまぬ挑戦の日々について。

彫紅(ホリベニ)
1978年、アメリカ生まれ。2002年に来日し、2004年に「チョップスティックタトゥー(CHOP STICK TATTOO)」の彫渉に弟子入り。2007年に彫師としてデビューし、2014年に独立。大阪・日本橋にある自身のタトゥースタジオ「インベージョンクラブ」をベースに活動中。オフの時間はアニメや漫画に費やす。ちなみに「言語と声色次第で、ニュアンスが変わりすぎる」という理由から、どちらも日本語でたしなんでいる。
https://invasion.club/ja
Instagram:@Hori Benny

「アニメだからとばかにはできないレベルでタトゥーを彫ったらどうやろ? って」

——彫紅さんが最初に日本を訪れたのはいつ頃ですか?

彫紅:初来日は1998年。移住したのは2002年なので、もうかれこれ20年たちます。今って、文化や情報にアクセスする手段が自分のポケットの中にあるじゃないですか。それが当時は雑誌だけ。私もたまたま手に取った『バースト』で、ステレオタイプの日本とは違う“誰も知らない日本の姿”もあるんだと教えてもらいました。刺青という文化もすごく気になったし、いろいろな文化を自分の目で確かめたい気持ちが強くなっていって。それである日、ドロップキック・マーフィーズ(Dropkick Murphys)のライヴツアーに帯同していた、サグマーダー(THUG MURDER)っていう日本人バンドの子らに話しかけてみよと思うて、日本語で声をかけてみたんです。

——当時から日本語を話すことができたんですね。

彫紅:高校生の頃から勉強していました。あくまで独学やけどね。ほんで彼女らと友達になって「いつか日本に遊びに来てや」と言われたから遊びに行ったっていう。ずっと前から「いつかは日本に行きたい」と思っていたので、いいきっかけやなって。で、実際に来てみたら今よりもっとエキサイティングでラフな感じやって。なんせ1990年代末やからね。日本を訪れたことでこの国のことをもっと好きになって、もっと知りたくなって、「いつかはこの国で働きたい、住んでみたい!」と思うようになりました。

——そもそも、いつから自分はオタクだと自認していたんですか?

彫紅:最初は12〜13歳の頃。ずっと絵を描くことが好きやったから、アメコミのキャラをまねして描いてみたりしていましたね。まだ日本の漫画やアニメのブームは来ておらず、『ウルトラマン』や『超時空要塞マクロス』やらが、名前を変えて英語版として放映されたりしていた時代。そのあたりから、いろんな出版社が日本の版権物をピックアップしたり、出版するようになっていたのかな。『ドラゴンボール』や『美少女戦士セーラームーン』のアニメが、10年遅れてアメリカで放映され始めた頃には、自分はもう高校生でした。

——その世代だと、テレビで日本のアニメを観ていたアメリカの方は少なそうですね。

彫紅:当時はみんな、VHSのOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)。最初は『スター・ウォーズ』や『スタートレック』のためにビデオデッキを買ったのが、だんだんと日本のアニメタイトルが増えていって。そこで『アキラ』や『トップをねらえ!』を観て、めっちゃ衝撃を受けたんですよ。それはもう頭が爆発するくらい。当時のアメリカでアニメといえば、ディズニーか『ザ・シンプソンズ』だった中で、『アキラ』の近未来のヤンキー+サイバーパンク、しかも超能力もプラスってワケわからないじゃないですか。それが『超時空要塞マクロス』や『トップをねらえ!』になると、かわいい女の子がロボットに乗って、さらに人類を救うために戦うっていう。それまで筋肉ムキムキの男が格好いいと思って描いていたけど、髪の毛サラサラで目キラキラのかわいいボン・キュッ・ボンの女の子のほうがイイって気付いてしまって(笑)。

——当時の彫紅さんにとって、アニメキャラクターでミューズを挙げるなら?

彫紅:そうですねぇ…1人に選ばないとダメなんですか? う〜ん、1番好きなのは『トップをねらえ!』のタカヤ・ノリコかな。あと『うる星やつら』のラムちゃん、『らんま1/2』の天道あかねちゃん……。最近の作品だと『侵略!イカ娘』のキャラも結構好きです。『トップをねらえ!』を初めて観たのも、多分12歳の頃だったかな。男の青春が始まる時期に、ブルマーをはいて戦ったりしているキャラを見ちゃったから……。

——目覚めちゃいますよね。

彫紅:そうなんですよ! もちろんストーリー性も素晴らしかったですよ。庵野(秀明)監督作品だとみんな『新世紀エヴァンゲリオン』とかの有名な作品は知っとんねんけど、『トップ』が彼のデビュー作ですからね。ちょっと前にあった「庵野秀明展」。あれもスゴかった。彼は、過去の作品への尊敬の念を持った上で、新しい命を吹き込む。それがスゴイんですよ。過去の文化があるから今の自分があって、そしてその文化を未来へとつなげていく。もともと、特撮にあまり興味がなかったんやけど、彼の作品を観て、その良さや魅力を再発見しましたからね。

——初めて訪れた日本でいろいろな影響を受けたんですね。再来日したのはいつですか?

彫紅:その約1年後のクリスマスあたりかな。アメリカの友達が「俺も日本に行ってみたい!」ということで、彼と一緒に再び来日して、東京でクリスマスを過ごしました。青春の思い出ですね。私達アメリカ人にとって家族と一緒に過ごすクリスマスを全然知らない街で、それも下手くそな日本語だけを頼りに、そこでできた日本人の友達と街を歩いてライヴに行きまくって、ビールを飲んで酔っ払って「バーミヤン」でご飯を食べて過ごす。そんな生活が2週間くらい続いて、ものすごく楽しかったです。

——ご自身の身体に入っているタトゥーは基本、和彫りですよね。その当時に彫ったものですか?

彫紅:彫り師さんはバラバラですが、すべて日本で彫ってもらったものです。最初に日本を訪れた際には何も入っていませんでした。

——それがなぜ、刺青を入れようと思ったのか、気になります。

彫紅:彫り師の友達もおって、彼らと遊んでいるうちに、毎日絵を描いて彫って、お金をもらう生活がすごく刺激的に見えたんです。それで、自分も毎日スケッチブックに絵を描いていたので「彫り師になれるんかな」と思って、まずは刺青を入れてみなきゃなって。最初は和彫りを深く知りたいという思いからでしたが、1度入れたらもう病みつきに。そんで自分も「チョップスティックタトゥー」というお店で修業を始めました。でも、実際に入ってみるとこれが厳しい世界で……。

——最初は雑務のような仕事から?

彫紅:はい。なんせ当時の私は、なんもわかっていない鼻垂れ小僧。行儀も悪ければ、敬語も全然使えない状態でしたからね。予約の受け付けも全部日本語で、スケジュール管理も手書き。電話で店までの道案内もせなあかんかったし、それらをやりながら仕事を覚えていって。とにかくやることが多くて、寝る間もない日々。そこで10年間働いて2014年9月に独立し、今年で8年になりました。

——当初は和彫りがメインだったんですか?

彫紅:いえ、確かに最初は龍や虎とか和柄ばっかり描いていたんですけれど、途中でスキルアップのため他のジャンルもやり出すように。最初はどんなリクエストでも受け入れて、とりあえずバンバン彫っていました。そのうちに自分なりのこだわりも生まれてくるんですが、とにかく忙しすぎて、デビューから約5年間は週末どころか正月も休みなし。まさに月月火水木金金みたいな。

——“夢や目的を叶えるためには、ガムシャラにやるしかない”って時代でしたからね。そんな日々の中で、いつアニメや漫画のタトゥーを考案したんですか?

彫紅:2014年に独立するんですが、その数年前から「大好きなアニメのキャラを彫ったらおもしろいかも」とは考えていました。当時はアメリカにもそんなんやってるヤツおらんかったし、いたとしても1つのジャンルっていうほどじゃないって感じで。とはいえ先輩がワンポイントで『機動戦士ガンダム』を彫ったりはしていたので、別に私がアニメタトゥーの元祖ってわけではありません。

——まだ“ジャンルとして”周知されていなかったということですね。

彫紅:ですね。今よりもジャンルごとに固まっていた時代だったので、オールドスクール、和彫り、ブラック&グレイ、西海岸、レタリング、トライバルと。それ以外をやったら師匠や先輩達から「お前、何しとんねん!」って言われるくらいでしたし。そもそも海外ではタトゥーをノリや遊び感覚で入れたりもするので、ネットで見かけるようなアニメタトゥーは、どれもものすごい下手くそだったんです。以前見たエヴァンゲリオンなんてめちゃくちゃな仕上がりで。また、そのタトゥーのオーナーをコメント欄でみんながばかにしているのを見て、私はそれが本当に悔しくって。

——それは、いちアニメファンとして?

彫紅:その人自身もかわいそうやし、私もアニメファンの1人だから「アニメが好きで何が悪いの?」って思ったんです。だったら「アニメだからとばかにはできないレベルで彫ったらどうやろ」ってことで彫り始めたのが、のちの“ヲタトゥー”。最初は確か『侵略!イカ娘』か『うる星やつら』やったかな。それで周りの友達にも「ちょっとこんなん彫らしてくれへん?」ってお願いして、ポートフォリオも作ったりして。

——かなり反応もあったでしょうね。

彫紅:みんな「なんじゃそりゃ!?」って。反応も良かったし、こちらも目立つのが嫌いじゃないから「これをイベントにしたらどうや?」と思って、味園ビルというサブカルビルのひと部屋を借りて、彫り師で友人のトムと「Otattoo Nights」というイベントを主催しました。彼自身もオタクだし、コスプレしている人がいて、DJがアニソンを回す中でタトゥーを彫るっていうミックスイベントが珍しかったこともあり、初回は70人くらいお客さんが集まりました。そこからだんだんとおもしろくなっていって、ピーク時で彫り師が5人くらい参加したのかな。その後もずっとその方向性でやり続けていたので、独立して、ヲタクのヴァイブスを注入した「インベージョンクラブ」というスタジオを設立しました。

「インベージョンクラブ」の外観

スタジオは、関西オタクカルチャーの聖地・日本橋からもほど近い

——現在の場所を選んだのも“大阪の秋葉原”とも称される関西オタクカルチャーの聖地・日本橋に近いからですか?

彫紅:そうですね。ただ外国人の彫り師では物件がなかなか借りられず……。万が一何かあった時にうそはつきたくないじゃないですか。だから最初に「タトゥーを彫ります」と伝えると、大体みんな固まっちゃう。「大丈夫か!?」って思われるのは、差別主義者とかでなくしょうがないことやし。で、8ヵ月くらい物件を探しまくって、やっと見つけたのがココ。もともとは車庫だったみたいで、なんもないスケルトン状態からドアをつけて間取りも変えて、ロフトもと。本当に全部ゼロから自分らで作りました。最初はお客さんも日本人ばっかりやったんですけど、インバウンドの影響で外国人観光客が増えていって徐々にシフト。そんな状況が3〜4年間続いて、コロナ禍に入ってからはほとんどが日本国内のお客さんですね。今だと予約が約半年待ちです。

「いかに自分のスタイルを“目立たせつつ、貫き続けられるか”」

——話をお聞きしている限りでは、忙しくて下絵のデザインを考える時間もなさそうですね。

彫紅:下絵は予約日に合わせてギリギリのタイミングで描いています。スケジュールも不定で、2日間オン→1日オフ→3日間オン→1日オフ→2日間オフといった感じなので、そのオフの間に翌週予約されているお客さんの希望する作品やキャラについて調べたりしつつ。時間があれば1、2話をチェックして、難しい場合は少なくともYouTubeのピックアップ動画を観て、勉強するようにはしています。みなさん、私がすべてのアニメを観ていると勘違いされているようだけど、さすがにそういうわけではないですからね(苦笑)。

たくさんの下絵

『もののけ姫』のサンの仮面&コダマ。

——依頼時には、キャラだけでなくポーズも指定されたりしますか?

彫紅:お客さんも十人十色やから、こだわる部分がみんな違うじゃないですか。「このキャラはこういう衣装であとはお任せで」っていう人もおれば、「絶対このシーンそのままでやってほしい」っていう人もおって。なのでまず、キャラが決まった段階で彫りたい部位の写真も送ってもらうようにしています。これは私が修業してきた和彫りの影響やけれども、人体の流れに合わせてキャラクターのポージングを考えるのに必要なので。

左、写真の中央に描かれた下絵が右のように仕上がる。右、『メイドインアビス』のナナチ

——なるほど。キャラの特徴をしっかり押さえながら、ちゃんと彫紅タッチになっていて、原作ファンの期待も裏切らない。そのバランス感がすごく巧みだなって。

彫紅:例えば、「高橋留美子先生のタッチやったら、こうでしょ!」っていうバランスがあるんですよ。「めちゃくちゃ愛しているキャラだから原作のままで」っていう人もおれば、「もう好きにしてください!」っていう人もおって、そこで100%自分のスタイルで描くことをお客さんが納得するかどうか。

——こちらはオリジナルキャラですか?

オリジナルキャラのサキュバス嬢。花魁に特攻服風セーラー服とケレン味たっぷり

彫紅:はい。コロナ禍前に「既存のアニメキャラばっかり彫っていると、自分の味が薄うなってるんじゃないか?」って気がして、オリジナルキャラを推すようにもなりました。例えば、このサキュバスちゃん。不良っぽくスケバン風のセーラー服を着させたり、どういったかっこうをさせるか考えるのがものすっごい楽しいし、やればやるほどアイデアの引き出しも増えて、お客さんにもオンリーワンの作品を提供できる。最近はそれが理想ですね。確かに好きなキャラを彫るのも楽しいけれど、時計の針は日々ちょっとずつ進んでいくし、自分もまだまだ進化中やからね。

——では、自身がもっともこだわっている部分を挙げるとしたら?

『戦姫絶唱シンフォギア』の雪音クリス、『ソード・アート・オンライン』のアリス・シンセシス・サーティ

彫紅:たくさんあるけど、動かない平面だからこそ動きを見せるようにしないとダメなので、“絵の流れ”ですかね。例えば、ポージングの体のひねりや飛び散る汗、風に吹かれた髪の毛とか。そういった物理と流れを意識することで、キャラのかわいさが増すんです。お尻ならパンツやショートパンツがギュッと上がっていたり、ちょっと腰の肉がのってたり、オッパイならボタンが引っ張られたりと動きによってできる服のしわとか、めちゃくちゃエッチじゃないですか。アニメフィギュアからもめちゃくちゃヒントを得ることが多いですよ。アレは基本的にどこの角度から見ても、かっこよくかわいく見せないとダメなんです。自分のタトゥーもそんな感じで描けたらいいなと。

動きのあるポージング、汗などのシズル感が見どころ。服のしわと影の表現に注視してもらいたい

——お客さんからは、作品のどこを褒められることが多いんですか?

彫紅:どうだろう? なぁ、さっちん(※彫紅さんのマネージャー)、俺のタトゥーはどこがええ?

さっちん:乳首ですかね(即答)。完全に“抜ける”乳首です!

さっちんが絶賛する乳首。実になまめかしい

彫紅:乳首かーい(笑)! 私、お尻派やで。あ、でも「色使いがかわいい」とはよく褒められますね。あとこの作品だと、花の柔らかさと剣の硬さ、そして背景のグラデーション、そういった奥行きや質感の差を表現するのは難しく、だからこそ狙いたいところ。いかに感情をのせて伝えるかも大事ですね。例えばその煉獄(杏寿郎)さんのタトゥー。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は観ていますか?

  

左、花と剣の質感の違いが巧みに表現されている。右、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』での煉獄杏寿郎。キャラの心情と物語性を余すことなく表現

——もちろんです。

彫紅:映画のラストシーンを表現してんねんから、劇中で描かれていた彼の決意や覚悟といった物語性を感じてもらえないと成功とは言えませんからね。その部分にはこだわりました。あとは入れた本人だけではなく、周りの友達や家族など“誰かに見せた時のこと”も考えなくちゃいけない。タトゥーは一生消えないモノだからね。

『ドラゴンボールZ』の魔人ブウと『ポプテピピック』のポプ子、『富江』の川上富江。カラフルな配色の巧みさとモノクロームの表現力が秀逸

——その点でいえば、モチーフとなった作品やキャラを知らない人にも良さが伝わるんじゃないかなと。作品やキャラのリクエストでは、どんなものが多いですか?

彫紅:多いのは『週刊少年ジャンプ』系で、最近だと『チェンソーマン』とか。あとは『東方Project』とかV-Tuberも。これまで10人くらい彫りましたがジャンル的にも熱いですね。ただタトゥーとして入れるまでの人気になるとは、すごい時代が来たなって。V-Tuberって要は3Dモデルなのでアレンジしやすいんだけど、その分、数百時間のコンテンツを全部チェックしたとしても、キャラのニュアンスがつかみづらくって……。本当にキャラクターの魅力を表現できているのか心配になることもあります。

人気のジャンプ系から『鬼滅の刃』の竈門禰豆子(覚醒)、堕姫

——知っているか、知らないかの理解度の差が、タトゥーとして表現する際の解像度に関わってくるでしょうし。

彫紅:そう、知識はやっぱり大事です。和彫りの世界にも『水滸伝』や『三国志演義』やらありますが、登場人物の着物の柄1つとっても意味があったりして。そういった伝統的な部分をどう進化させていくのかっていうのもあるしね。今はそのあたりが結構自由になってはいるけど、知識が思いっきり間違っているのはちょっと恥ずかしい。お客さんは彫り師を信頼して任せてくれるわけやからね。私も和彫りに関してある程度の知識はあるんやけど、その世界のエキスパートってわけでもないですし。アニメだってそう。ただ、そのアニメや漫画をめちゃくちゃ愛している人達の気持ちは、すごくよくわかるっていうだけで。

——今、ヲタトゥーを手掛ける彫り師はどれくらいいるんですか?

彫紅:東京だと「キャリコ サーカス タトゥー」のミカ(=Mica Cat)ちゃんがそうですね。彼女もオールジャンル彫りますが、本物のオタクですし、自分のスタイルを持っていてめっちゃ上手です。ヲタトゥーが海外でも増えとって“MONONOKE TATOO”でググるとめちゃくちゃヒットするんやけど、だからこそ“いかに自分のスタイルを目立たせつつ、貫き続けられるか”。私自身、今でも作品を彫る前には「今回はどうしよう?」とプレッシャーを感じていますよ。1番のライバルは自分自身じゃないですか。毎日、「昨日の自分を超えたい!」と思ってやっているし、そのためには自分の世界観を手に入れることが必要。ひと目で彫紅の絵だとわかってもらえたら、それが1番の成功だと思います。

『美少女戦士セーラームーン』のちびうさ&ルナ

——『トップをねらえ!』のセリフを借りるなら「努力を止めるな、乗り越えろ。そして、戦え!」ということですね。また、「インベージョンクラブ」はアパレルブランドでもあります。

彫紅:若い頃から、シルクスクリーンでTシャツに自分の好きなバンドのロゴやイラストを刷って、自分用の服を作ったりしてました。で、そんなんやってると、自分のロゴや名前をデザインしたTシャツも作ろうかってなるじゃないですか。それがエスカレートしてブランドにしちゃいました(笑)。一応、お客さんがお土産として買って帰るマーチャンダイズのつもりやったんですが、「どうせならもっと目立ちたい!」「もっとクオリティにこだわりたい!」ってやっているうちに、どんどんアイテム数が増えていってしまって……。ウェアだけではなく、エコバッグ、マスク、かんざし、チョーカー、ポディバッグなんかも。

——一体どこへと向かっているんでしょうか(苦笑)。

彫紅:いや、ほんまにそうなんですよ。なんせソフビ(フィギュア)も作っちゃいましたし。年末にはまた新しいカラーも出す予定です。タトゥーもそうやけど、やればやるほど次の冒険が待っていて、そのたびにおもしろくなっていくからね。もうここまで来ちゃったら、行けるとこまで行くしかないやろって(笑)。

Edit Shuichi Aizawa(TOKION)

author:

Tommy

メンズファッション誌、ファッションウェブメディアを中心に、ファッションやアイドル、ホビーなどの記事を執筆するライター・編集者。プライベートにおいては漫画、アニメ、特撮、オカルト、ストリート&駄カルチャー全般を愛するアラフォー、39歳。 Twitter:@TOMMYTHETIGER13

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