六本木に新たなスペース「POST-FAKE projects」が4月7日にオープン 初回は大山エンリコイサムの個展「Map Drawings」が開催

現存のアートやカルチャーを再定義し、新たなムーブメントを創造するメディアプロジェクト「POST-FAKE」。さまざまなアーティストを多角的な視点から取り上げたドキュメンタリー番組をTOKYO MXにて放送するほか、YouTubeやInstagram、ウェブマガジンなどでこれまで発信してきた。

その「POST-FAKE」が六本木にリアルな場であるプロジェクトスペース「POST-FAKE projects」を4月7日にオープンする。初回の展示として、美術家・大山エンリコイサムの個展「Map Drawings」を5月21日まで開催する。

2022年の「POST-FAKE」への大山の出演をきっかけに企画された本展では、新たに制作された12点の新作を展示します。エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈した独自のモティーフ「クイックターン・ストラクチャー(QTS)」を、アノニマスなイメージの上に加筆する「ファウンド・オブジェクト」シリーズの最新作。

古地図にQTSを重ねることで、ニューヨークの地下鉄の記憶を呼び覚まそうとする本作には、大山のコンセプチュアルな姿勢が垣間見える。地図がもつ平面的な広がりのみでなく、はじめに古地図が作られた時、見知らぬ誰かの手によって赤や緑の線が引かれた時、そして大山によってQTSが加えられた時という時間が幾重にも編み込まれている。

大山は個展の開催にあわせて、以下のステートメントを発表した。

匿名の図像にクイックターン・ストラクチャー(QTS)をかき加える「ファウンド・オブジェクト」シリーズ。その最新作が、本展で紹介する「Map Drawings」である。1970〜80年代のニューヨークで発展したエアロゾル・ライティングは、都市を横断する地下鉄をメディアにして、さまざまなエリアに拡散した。

そのため当時のライターの心理には、都市を俯瞰する地図の視点がたえず組み込まれていた。
彼・彼女らが好んで地下鉄の路線図にドローイングしたのは、そうした理由による。

2021年の夏、英国オックスフォードの古道具屋で、私は12枚の古地図を見つけた。用途ははっきりしないが、新旧の行政区域の境界を示しており、なんらかの公的文書だったと推測できる。
興味を引いたのは、複数の区域が同一平面に並置されていた点である。
それは異なるエリアを走り抜けて結びつける、地下鉄の横断性を想起させた。「Map Drawings」では、同一平面にある複数の区域の外形を与件とし、その間に置かれたQTSの一部がそれらと接するように描画することで、地図同士が縫い合わされている。
QTSの形体と周囲のフレームの接触は、私の作品によく見られる特徴だが、 QTSを媒介に複数の形体がつなぎ留められる状態は、本作に固有の現象である。「Map Drawings」においてQTSは、走行する地下鉄の車体、または線路のネットワークという、その出自と切り離すことのできないモティーフの姿を、時空を超えて自らのうちに反響している。
「ファウンド・オブジェクト」シリーズの中でも、本作はとくにコンセプチュアルな意図をもって制作されたと言うことができるだろう。

大山エンリコイサム

■大山エンリコイサム 「 Map Drawings」 
会期:2023年4月7日〜5月21日
会場:POST-FAKE projects
住所:東京都港区六本木5-2-4 3F
時間:13:00〜20:00
休日:月〜水曜 
https://postfake.com

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TOKION EDITORIAL TEAM

2020年7月東京都生まれ。“日本のカッティングエッジなカルチャーを世界へ発信する”をテーマに音楽やアート、写真、ファッション、ビューティ、フードなどあらゆるジャンルのカルチャーに加え、社会性を持ったスタンスで読者とのコミュニケーションを拡張する。そして、デジタルメディア「TOKION」、雑誌、E-STOREで、カルチャーの中心地である東京から世界へ向けてメッセージを発信する。

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