新型コロナウイルス Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/新型コロナウイルス/ Tue, 23 Feb 2021 03:06:20 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 新型コロナウイルス Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/新型コロナウイルス/ 32 32 “ソロ活”のススメ“ アメリカのセラピスト、ローラ・デサンティスが提唱する「コロナ禍、ソロ活は心を鍛えるプロセス」 https://tokion.jp/2021/02/23/seeking-therapy-during-pandemic-times/ Tue, 23 Feb 2021 06:00:06 +0000 https://tokion.jp/?p=20738 日本と世界を比較し、“独り”の概念を考察する連載。今回は、心理療法の観点からソロ活を探る。

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コロナ禍の中、女性と若者の自殺者が特に増加している。原因は雇用状況、生活様式の変化が悩みとなり、心の健康を保つことが困難になっている可能性が高いとされている。

在宅時間が増え、他者とコミュニケーションを取る時間が大幅に減少したために孤独やストレスを感じている人は多い。これはアメリカでも大きな問題となっており、従業員向けのメンタルヘルスケア事業を充実させる企業は増加しており、さらに個人のセラピー需要も増加しているという。しかし日本で、専門家に自分の心の健康を診てもらうのは多くの人にとってまだハードルが高いのではないか。そして、相手が誰かに関わらず、自分の不安や悩みを話すのははばかられることも少なくない。

アメリカの重要な行事の一つ、冬の休暇期間(11月下旬から年末年始まで)に、心のフィットネス・ワークアウトを提供するオンライン・プラットフォーム Coaが「休暇中の一人暮らし」をテーマにオンラインQ&Aを開催した。同社は、個人とグループのセラピーを設けており、無料体験のグループセラピーも定期的に開いている

同Q&Aを担当したのはサンフランシスコを拠点とするアメリカ人セラピスト、ローラ・デサンティス。トラウマ・ケアを専門とし、コロナ禍を一人でも快適に過ごすための実践的なアドバイスをしている。自己理解を深める方法でもあるソロ活を、心の専門家はどう考えているのか? ソロ活と心の関係に迫る。

自分の内面に直面し心を癒すための学習・実践・習得が必要

――ソロをテーマに、グループセラピーを開催されましたが、パンデミックでどのような変化がありましたか?

ローラ・デサンティス(以下、ローラ):今まで1人暮らしを楽しんでいた私のクライアント達が、孤独を感じました。在宅時間の増加で他者との交流が減ったことで人との繋がりを求めたり、不安や憂鬱になる人が多くなったことが、オンラインでセラピーを始めたきっかけです。

――冬の休暇中は楽しいという共通認識がありますが、「気が重いなら、周りに合わせて楽しまなくていい」という言葉は印象的でした。

ローラ:コロナ禍に限らず、毎冬の休暇期間を憂鬱に感じたり、家族と過ごすことにプレッシャーを感じている人はいます。テレビ番組や広告で家族だんらんの様子や、にぎやかなパーティの光景を繰り返し目にしても、それを身近なものに感じる人は多くはありません。1人で過ごすことを余儀なくされた昨年の休暇期間は、1人を楽しむ好機だったかもしれませんね。

これに限らず、何をどう楽しむかを決めるのは自分です。その日が自分にとって特別か、そうではないのかを見極めるにも良い機会かもしれませんね。

――落ち込んでしまうきっかけや、その時の対処方法を参加者全員で共有することで、皆一緒に前向きになっていくような相乗効果を感じました。終始和やかな雰囲気で、楽しんで取り組んでいる参加者の姿も多かったです。

ローラ:「セラピーを受ける」と聞くと、つらい思いをするのではないか、深刻そうで怖い、と感じている人もいましたが、多少気軽に考えましょう。ユーモアを持って自分と向き合い、弱点を受け入れて笑えるようにするのは心の治療です。それができれば、物事を常に明るく考えられるようになります。

グループセラピーの場合、同じ悩みを抱えていても考え方や対処法は違うため、他人の話を聞くとたくさんの発見があります。そのすべてが、自分を受け入れ、笑うきっかけとなりますし、悩みを抱えているのは自分だけじゃないと知るだけでも安心できます。

――運動をして体を鍛えるように、心を鍛えたい場合、自分と対峙して、深く反省したり、苦しみに直面する訓練が必要でしょうか?

ローラ:体と心の鍛え方には類似点があります。しかし、心を鍛えることで不安や悩みは解消されますが、その経験は記憶として残ります。例えば、特定のトラウマを持つ人がそれを乗り越えたら、もうその事で苦しまなくなったとしても、完全に忘れてなかったことにはなりません。

セラピーは、精神を鍛えるには最適なトレーニングです。自分の内面に潜む負の部分に直面し、対峙すると心は癒されますが、これを行うには学習・実践・習得が必要です。

感情にうまく名前をつけて生活を豊かにする

――セラピーが必要かどうかを、自分で見極める方法はありますか?

ローラ:セラピーを受ける動機は、人それぞれです。自分をより深めたい、自分らしく健康的に生きるためなど、どれもその人にとってはセラピーが必要な理由です。モヤモヤしたりするなら、セラピーを考え始める時です。

セラピーの素晴らしいところは、「自分を見失ってしまい、自分らしく生きられていない」と話せることです。また自分が悪い方向に向かっていることに気付けないことが多々あるため、危機に陥り、悩み、実際に助けが必要になる極限まで我慢してしまうものです。不安、うつ、依存、睡眠や食事の悩みがある、好きなことなのに意欲が湧かないなどは明らかに生活に支障をきたしていて、助けが必要な証です。また、これらの症状が出る前に対処すれば、悪化防止・改善も可能です。優れたセラピストは、その人の悩みや不安を掘り下げ、違和感を取り除く支援をします。

――日本は、他人との協調性に重きを置くため自己主張が少なく、我慢は美徳という価値観もあります。自分をさらけ出すのが怖い、恥ずかしい場合、克服方法はありますか?

ローラ:これは国、人種を問わず、誰にとっても大変な挑戦です。多くの人は、自分の感情を話すのが苦手で、感情が不安定なのは自分が精神的に弱いからだと考えたり、今はたまたま調子が悪いだけと判断したりする。しかし、思考を変え、自分と向き合い、悩みを克服して自分らしく生きられるようになった人がたくさんいますから、変わりたいと願うならできるはずです。どのような国、文化に属していても、自分を取り巻く環境や社会に対して私達は無力ではありません。物心ついてから教えられてきたことや概念に疑問を持ち、立ち向かう事で精神的に安定できるようになり成熟します。

羞恥心や困惑に対峙し、「今は精神的に不安定で助けが必要なんだ」と自分の状況を受け入れることもセラピーの一部です。悩みを診断し、訓練を重ねることで心は鍛えられます。感情は言葉の集まりですから、自分の感情に名前を付けるだけでも長時間の対話が必要です。言葉がわからないと、自分の感情を表現するのは難しいですよね? ある脳研究で、否定的な感情に名前をつけると、不快感が和らぐという結果があります。私は、感情の名前の付け方を教えるのが大好きなのですが、うまくいけばこれをきっかけに生活も豊かになっていきます。

一方で、民族、人種、宗教、文化、性的な側面に対処するには感情に名前を付けるだけでは不十分です。その場合は、自分の価値観を共有できるセラピスト、もしくは少なくともその課題に精通し、問題点を知っている方を見つけましょう。

幸せを感じるために、自己肯定感を向上させる

――コロナ禍を含め、日々を前向きに過ごす方法はありますか?

ローラ:嫌なことがあったら、無理に前向きな気持ちになろうと頑張る必要はありません。自分の感情を受け入れずにいると、もっと憂鬱になります。悪い状況に陥っていたり、大きなストレスを感じている時は、自分の感情を素直に受け入れることが重要です。そのまま無理を続けると、涙もろい、キレやすい、無駄使い、食べ過ぎなどの症状が出ます。ここでもまた先ほどお話しした感情に名前をつける方法が役立ちます。これは特別なことではなく、必要なことです。否定的な感情にとらわれたくはありませんが、現実の状況が良くないのに自分を無理に奮い立たせても何も良いことはありません。ふと湧き上がってくる負の感情は抑えつけず受け入れる方が楽で、よりバランスの取れた生き方です。

感謝を習慣にするのは非常に良いことです。大変な状況でも自分の生活を見渡して、パートナーや猫がいること、今日ベッドから起き上がれたことに感謝する。うつの人にとって、ベッドから起き上がれるのはとても幸せなことです。自分には当たり前のことでも誰かにとっては特別なこと、何かしら感謝できることがあるはずです。さらに感謝の気持ちは私たちを能動的にさせ、意欲を高めます。日々を前向きに過ごすには、絶妙なバランスが必要です。

――自分と向き合えた時、その感覚は確信できるものでしょうか?

ローラ:それは特定の感覚ではなく、独自性があり、自分が人生に望むもの、理想の人格、どのような環境に身を置きたいかなどに大きく依存します。通常、自分と向き合えているかは自然と実感できます。

クライアントが「気分転換したい」と言った時、私はいつも「幸せを感じるのはどんな時? 毎朝ベッドから起き上がれること、それとも特定の職を得ること?」と尋ねます。その答えは通常、達成志向を満たすものではなく、自分を慈しみ、自己肯定感を向上させることです。自分を理解すると同時に自身をいたわるようにもなります。これらは測定できるとは言えませんが、自信が湧いてくる感覚を味わえると思います。何事も自分と向き合うことから始まり、終わります。

自分を見失わないために、自分と友達になり、どんな性格なのかを知るべき

――セラピストの観点から、望ましいソロ活方法はありますか?

ローラ:1人を体験し、孤独を楽しんでいる人たちを称賛します。ソロ活は自分を知り、向き合うための手段です。私達は自分を見失ってしまうこともありますが自分と友達になり、どんな性格なのか知るべきです。前からやってみたかったけれど、まだ挑戦していないことがあれば行動しましょう。心配事があると、ぼんやりしたり、気がかりなことが頭から離れなかったりして1人の時間を過ごすのが難しいかもしれません。しかし、そんな時でも自分に最適なソロ活を見つけて行動し、自分の価値観を知ることはとても大切です。

最近、ソーシャルメディアで“愛の言語”を見かけました。私達は言葉で愛を表現し、他人からの愛も言葉で実感できます。ある人は、誰かに親切にされたり、褒められた時に自分が本当に大切にされているとわかります。自分が人にされると嬉しいことが何か知っているなら、それを自分が自分にしてあげてください。そうすればソロ活をもっと楽しめるようになるかもしれません。

――ソーシャルメディアの利用頻度と心の健康は密接だという声があります。心のバランスを保ちながら使う方法はありますか?

ローラ:娯楽性が高いので中毒性があり、常用していると欠点も出てきます。「今日は最悪な日だった」、「今日のヘアスタイルは嫌」など自己否定的な投稿はおすすめしません。誰もが最高の自分を撮って投稿しているため、自分が見るのはすべて完璧な他人。そんな他人と、不完全な自分を比べて自尊心を大きく傷つけてしまう可能性があります。それを続けているとエコーチェンバー現象(自分と同じ意見があらゆる方向から返ってくること)で自分のアカウントがどんどん悲観なもので埋め尽くされ、まるで世界中に絶望感が漂っているかのように感じてしまうと深刻です。

心も体も健康を保つには、何事もほどほどにするバランスが大切です。アプリに時間制限を設定し、夜はスマホを別の部屋に置いて寝ながら見られないようにする。ストレスを感じさせるアカウントのフォローはやめ、良い気分になれるものだけフォローするのも良い方法です。たまには、スマホを持たずに散歩に出かけて、新鮮な空気を吸い、1人の時間を楽しむのも良いでしょう。

ローラ・デサンティス
サンフランシスコ在住のライセンス・プロフェッショナル臨床カウンセラー(LPCC)、心理療法士。ペンシルバニア大学で、カウンセリング専門とカウンセリング&メンタルヘルスサービスの修士号を取得。ペンシルバニア州立大学で広報学と歴史学の学士号を取得。セラピストとしての目標は、内省、癒し、自己受容を通して、クライアントが自身と対峙し、人生を探求する場を提供すること。個人が持つ洞察力と自己への慈しみを重視した対話型のセラピーで、クライアントの否定的な思考パターンや行動を特定している。
https://lauradesantistherapy.com/

Picture Provided Laura DeSantis

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アート連載「境界のかたち」Vol.2 アートコレクターであり教育者の宮津大輔が考える、ポストコロナ時代のアートに求められるもの https://tokion.jp/2021/01/17/daisuke-miyatsu-is-thinking-about-art/ Sun, 17 Jan 2021 06:00:02 +0000 https://tokion.jp/?p=16837 ポストコロナにおけるアートを識者達の言葉から紐解く本連載。第2回はアートコレクターであり、横浜美術大学学長、森美術館理事を務める宮津大輔が登場。

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ビジネスからサイエンスに至るまで、アートの必要性を説くシチュエーションが激増している。コロナ禍で見える世界は変わらないものの、人々の心情が変容していく中で、その心はアートに対してどう反応するのか。ギャラリストやアーティスト、コレクターらが、ポストコロナにおけるアートを対象として、次代に現れるイメージを考察する。

第2回は横浜美術大学学長の宮津大輔が登場する。1994年、サラリーマン時代に現代アートの収集を始め、その審美眼がアート業界で注目され、京都造形芸術大学客員教授に就任した。長年にわたり、アートの収集を続け、国内外のアーティストとパーソナルな関係を築いてきた。現在は森美術館の理事でもある。2020年4月、横浜美術大学の学長に就任し、アーティストと社会の関係に焦点を当てた研究を数々の著書にまとめている。同年10月には、『新型コロナはアートをどう変えるか』(光文社新書)を出版。今回は、新型コロナウイルスによるパンデミックが現代アートのさまざまな側面に及ぼす影響について語った。

――美術教育の分野、特に横浜美術大学の学長としての新たな仕事と関心分野について教えてください。

宮津大輔(以下、宮津):以前勤めていたソフトバンクでは人事部に勤務し、社内研修制度の充実やシニア人材の活性化支援などを行っていました。現在は美術大学の学長として、大学運営の傍ら経済や社会と芸術の関係についての研究を行っています。アーティストやデザイナーが、社会の様々な問題解決に携われるようサポートしたいと常に考えています。

現代アートのコレクションをはじめて以来、世界中のアーティストやアート関係者とは密にコミュニケーションをとり続けています。英語が堪能ではなく苦労した経験から、日本語を解さない世界中の人達とどうやって意思疎通を図るかにフォーカスした「実践グローバル・コミュニケーション演習」というオリジナルの授業も受け持っています。学生が自分のアイデアや作品を、現在持っている語彙力を活用することで、世界中で発表するために必要なスキルを習得することを目指しています。

――宮津さんの新著と教育者としての仕事において、アートと社会との関係に興味があります。アートが時代形成にどのように関係するかということに重点を置いている理由を教えてください。

宮津:現代アートは英語の“コンテンポラリーアート”の翻訳です。 “contemporary”は、”現代の”という意味だけではなく”同時代の”という意味も有しています。従っていわゆる同時代性、つまり、今、この時代に表現されるべきコンセプトや問題意識を包含していなければ、真の現代アート作品とは呼べません。

社会に対してどのような問題意識を持っているのかが重要です。アーティストの中には“現代アート”という意味を誤解している方も少なくありません。現代アートとは制作された時代や様式的なものと誤解されがちですが、単なるスタイルではなく、同時代性を伝えるものであることを、優れたアーティストなら理解しているはずです。

――日本の若手アーティストは、アーティストとして社会で果たす役割や、特定の責任を伴うと感じているのでしょうか?

宮津:アーティストによって異なりますね。例えば、米国ではBlack Lives Matter運動や、保守的なドナルド・トランプ前大統領とリベラルなジョー・バイデン大統領による大統領選など人種、ジェンダーから経済政策、外交まで、身近に様々な社会問題が顕在化しています。あるいは民主化運動や国家治安維持法が自らの生命を左右する香港の政治的緊張も同様でしょう。良くも悪くも、そこに住む人々は自らの国や地域の現況について高い関心を寄せています。対照的に、政情や治安がより安定している日本では、若手アーティストが社会構造における問題把握し、作品化しづらいのも事実だと思います。しかし、3.11.以降は従来の”かわいい”アートも大分下火になり、優れたアーティスト達が現在の日本の状況を冷静に捉え作品化していると思います。

今や世界的なアーティストとなった村上隆さんは、日本におけるアニメーションの歴史と、西洋の遠近法とは異なる空間把握の視点「スーパー・フラット」を唱え、そのコンセプトに基づいた絵画・彫刻作品を発表、グローバルに活躍しています。市場評価システムとオリジナティ溢れる創造性を連動させ、世界中で成功を収めた稀有な日本人アーティストの1人と言えます。

ただ、若手アーティストに多くにとって、自身が内包する問題を社会と関連付けて正確に把握することは決して容易ではありません。少なくとも、日本は表面的には平和で安全であり、経済も他国と比べればそれほど深刻な状況に陥っているとは思えません。ですから、やや楽観的に感じるのかもしれません。

しかし、デジタル・ネイティブ世代である幾人かのアーティスト達が、ゲームやシンギュラリティあるいは多様な価値観をテーマにした優れた作品を生み出しており、日本の若者も「なかなかやるなぁ」と感心しています。

――一方でアーティストは自分の作品を展示する機会が必要ですよね。メディアによる芸術と文化についての活発なサポートが必要だとも思います。しかし、日本では、この種の批判的な議論が成立しづらいですし、メディアも積極的ではないように感じます。

宮津:まず、経済的な問題があります。日本のアートマーケット、特に現代アートの市場はその経済規模に比べて非常に小さいといえます。ニューヨークやロンドンなどの大きなマーケットでは、アートや哲学、美術史について十分な教育を受け、知見を持っている人々がギャラリー、オークション・ハウスに就職する傾向にあります。優秀な人材を惹きつける、高額な報酬や好待遇も用意されています。しかし、マーケットが小さい日本では、残念ながらアート業界は、金融業界ほど経済的に魅力的ではありません。また、批評家や批判的な議論が少ないことは、大きな問題でもあります。アート作品が評価され歴史化されてゆくには、言説による評価が必要です。それは、第二次世界大戦後に米国の抽象表現主義が、パリからニューヨークに芸術の覇権をもたらせた陰に、グリーンバーグやローゼンバーグら評論家の力があったことからも明らかです。しかし、日本では美術教育において、哲学や美学、美術史より技術的な側面にフォーカスが強く当たり続けているのが現状です。

また、日本ではほとんどのアーティストが美術大学や美術系の専門学校を卒業していますが、外国のアーティストは、建築や美術以外の分野、例えば人類学、医学、工学、文学、政治学などを学んでいることが少なくありません。これは、日本と欧米諸国との顕著な違いと言えますね。

――新型コロナウイルスのパンデミックが終息した後のアートはどのようになっていると思いますか? また、アーティストはどのような作品を作るべきだと思いますか?

宮津:新型コロナのパンデミックが終息し、通常の生活に戻るのにどれだけの時間を要するかは、誰にもわからないですね。しかし、アーティストだけでなく、私達のライフスタイルや考え方も必ず変わっているはずから、どのような作品が生まれ、それをどのように私達が読み解くのかは興味があります。

新型コロナウイルスのパンデミックは単なるウイルスの蔓延ではなく、私達の考え方をドラスティックに変える”トリガー(引き金)”であると思っています。これからのアーティストは、人間が生活する上で最も重要な問題が何であるかを考えながら作品を制作しなければなりません。例えば、それは海洋のマイクロプラスチック問題や地球温暖化のように、環境や地球の問題かもしれません。

日本では、米国のBlack Lives Matterのような社会運動はまだまだ少ないのですが、パンデミック終息後の未来を見据えて、アーティストは社会問題に対して敏感であるべきでしょうね。LGBTQ+に代表される多様な価値観の是認や新自由主義台頭以降コロナ禍を経て拡大し続ける経済格差など、多くの社会問題が中途半端なまま放置されていますから。

他方、アート市場はますます二極化すると思っています。コロナ禍によって全世界的に富裕層と貧困層の格差が拡大していますので、評価が確立したアーティストの高額な作品の値上がり傾向は続いていくでしょう。

ブルックス・ブラザースやバーニーズの破綻(いずれも米国)に代表されるように、中間層の経済的な落ち込みによって、数万ドルから数十万ドルの作品は厳しい局面を迎えると思います。好調業種の企業に勤めるビジネス・パースンや起業家によって、趣味性の高い廉価な価格帯の作品も好調に推移すると予測しています。

――今、日本の現代アートのトレンドにはどのようなシーンがありますか?

宮津:2011年3月に発生した東日本大震災による原子力発電所の事故以前は、日本の現代アートの多くは表面的なものが多く、海外ではよく”かわいいアート”と揶揄されていました。しかし、痛ましい災害の後には多くのアーティストが“原子力”や”放射能”の功罪を認識、作品化しました。日本人アーティストが、作品の主題に少なからず政治的なアプローチを取り入れ始めたのもこの頃です。

当時、日本人は”核”や”放射能”に対して多くの不安や恐れを抱いていました。一見、新型コロナウイルスの危険性と類似しているように見えますが、不可視という共通点はあるものの、実態は大きく異なります。ウイルスは生物ですから、私達自身の身体の中で生きています。哲学者のティモシー・モートンが言うところの「友達であり、殺人鬼」です。一方で放射能は、私達の寿命を超えて長く消えることはありません。パンデミックの後、アーティストが考えるべき問題意識は、従来の二項対立から脱して、ものごとをレイヤーごとに見極める視点が重要になってくる気がしています。

――個人的なコレクションについて教えてください。アートの収集を始めたのはなぜですか?

宮津:1994年、当時の同僚や同級生達が車やワンルーム・マンション、高級腕時計の購入を考えている時に、私にとって最初のアート作品を購入しました。昔から草間彌生さんの作品の大ファンで、美術館で彼女の『無限の網』を見て一目惚れしたからです。絵の前に立っているだけで、作品の中に自分が吸い込まれるような気がしたんですね。当時彼女の作品を扱っていた東京のフジテレビギャラリーから、1950年代初頭に制作されたドローイング作品を夏・冬ボーナス全額で購入しました。

コレクションが増えるにつれて、アーティストと出会い、友人のような関係を築くことに強く興味を持つようになりました。アーティストとの会話を楽しんだり、食事したり、時には一緒に旅をして、作品創作の源泉に触れる楽しい経験を重ねました。フランスのアーティストであるドミニク・ゴンザレス゠フォルステルとは家族ぐるみで付き合い、今も住んでいる家を設計してもらいました。1990年代は特に、フランスの美術評論家であるニコラ・ブリオーが唱える「関係性の美学」に感銘を受けました。ニコラが語る「アートを創るためのリレーショナル・アプローチは、人間関係や社会的な文脈と切り離せない。」という考え方に共鳴し、アーティストの友人達と自宅やライフスタイルまで一緒に作り上げたことを懐かしく思い出します。

現在は、映像やニュー・メディアを含む400点以上のアート作品をコレクションしています。世界中の美術館からの貸し出し要請に応え、持ち主以上に世界中を旅している作品もあります。しかし私にとってコレクションという行為は、単なる作品収集ではなく、アーティストと直接会い、語らい、食事や旅をして思い出を積み重ねることでもあるのです。社会とアートの関係性とは、実は友人関係のようなものなのだと思いますよ。

――アジアの現代アートマーケットについてのご意見をお聞かせください。

宮津:日本を含めてアジアの現代アート・マーケットは未だ成熟しているとは言えません。しかし中国や産油国が牽引するバイイング・パワーは大きく、上海や香港、台北では重要なアートフェアも開催されています。インドネシアや中国、インドのアートは世界から注目されていますし、それに伴って各国のマーケットも活況を呈しています。現在では新型コロナのパンデミックによって、多くのアートフェアがオンライン開催となっていますが、上海で昨年11月にリアルで開催された2つのフェアは非常に好調であったと聞いています。コロナ禍終息後も、アジアの現代アート・マーケットは発展し続けると思います。注目しておいて、決して損はないと思います。

宮津大輔
1963年東京都生まれ。横浜美術大学学長、森美術館理事。主にアートと経済、社会との関係性を研究しており、世界的な現代アートのコレクターとしても知られる。文化庁「現代美術の海外発信に関する検討会議」の委員や「Asian Art Award 2017」「ART FUTURE PRIZE・亞州新星奬2019」の審査員などを歴任。著書に『現代アートを買おう』(集英社)、『アート×テクノロジーの時代』(光文社)、『現代アート経済学II 脱石油・AI・仮想通貨時代のアート』(ウェイツ)など。NHK総合テレビ「クローズアップ現代+」や「NHKニュース おはよう日本」に出演するなど、メディアでも幅広く活躍している。

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高齢者がオンラインゲーム、若者は美術館へバーチャル訪問。フランスではパンデミックが文化格差を縮める https://tokion.jp/2021/01/10/democratization-of-culture-in-france/ Sun, 10 Jan 2021 06:00:54 +0000 https://tokion.jp/?p=16638 ロックダウン中に60歳以上はオンラインビデオ配信、オンラインゲーム、SNSに時間を費やし、若年層は絵画や写真、歌、ダンスといった文化活動を実践した人が急増。

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新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で、あらゆる人々の生活様式は変化を強いられた。経済にも大きな打撃を与え、あらゆる方面で社会的格差が広がっている。一方で、フランスでは世代間や収入による文化活動のギャップが縮まったことがわかった。フランス文化省は、2020年3月から約2ヵ月にわたったロックダウン中の過ごし方についての調査を行った。1978年以来、毎年定期的に実施されている調査は、昨年前例のないパンデミックの最中に行われることとなった。

その調査結果から顕著だったのは、60歳以上の高齢者がデジタルの世界へと入り始めたことだ。ロックダウン中に60歳以上はオンラインビデオ配信、オンラインゲーム、SNSに時間を費やした。2018年の同じ調査で「オンラインゲームをやる」と回答したのは全体の17%だったのに対し、2020年には倍の34%に増加した。子どもや友人と会う機会がなくなり、孤立状態から社会との繋がりを求めてSNSを始めた人も増えたようで、「頻繁にSNSをやる」と答えた60歳以上は2年前の12%から43%へと大きな伸びを見せた。調査結果のレポートで社会学者フィリップ・ロンバルドは「物理的に人に会えないため必要に迫られたことと、デジタルに対するイメージが変わっている」ことを理由に挙げている。世界保健機関(WHO)は“Play Apart Together”(離れていっしょに遊ぼう)というスローガンを掲げ、デジタルの社会性を促進し、オンラインゲームが孤独感を解消するのに役立つことを積極的に発信している。

もともとデジタルカルチャーが身近にあり、SNSに多くの時間を費やしてきた若年層(15〜24歳)の慣行にも変化が見られた。この層で絵画、写真、歌、ダンスといった文化活動を少なくとも1つ実践した人は71%に急増し、2年前と比較して14%伸びた。SNS上では窓辺で歌う動画が多く投稿され、TikTokでダンスを披露するユーザーが増えたことから、SNSへの投稿を目的に実生活で文化的活動を取り入れる若者が増えたことが背景にある。なかでも、「写真について勉強した」という回答が最も多く、SNS上での自身のイメージを上げるためにロックダウン中に技術を習得しようと試みたようだ。この分野において、60歳以上の層では約35%と例年と変わらない数字だった。高齢者がデジタル化へ進み、若年層が文化活動を実践するといった、世代間でのデジタルカルチャーのギャップが縮まったのがわかる。

調査結果では、ホワイトカラーとブルーカラーの文化活動の格差も数字に表れている。ロックダウン中にテレワークが行えないブルーカラーは、政府から給与7割の保障を受けて休業扱いとなり、自宅で余暇を過ごすこととなったことを受けて、オンラインで体験できる美術館のバーチャル訪問やオペラ鑑賞、科学・天文学・歴史研究など文化教養プログラムを子供とともに積極的に利用したという結果が出た。対し、テレワークを継続したホワイトカラーは文化活動において消極的で、本来最も熱心に取り組む「読書」においても減少傾向にあった。一日中スクリーンの前で過ごすテレワーク疲れによって、自由時間にはデジタルから離れて過ごしていたようだ。

ロックダウン中のパリ市役所は閉鎖されている美術館へのバーチャル訪問を促進するキャンペーンのために、専用サイトを立ち上げて市民に文化活動を推奨していた。フランス文化省が行った調査結果では、パンデミックによりデジタル化が進んだことで、学歴、収入、世代を問わず文化の民主化が可能になったと記されている。しかし、通常の生活に戻った後、これらの新しい文化慣行が継続されるのか現時点では不明だ。パリ市や各文化施設も、引き続きオンラインでのサービス提供についてはまだ言及していない。社会学者ロンバルドは「今後文化活動がどれだけ定着するかが注目すべき点である。一度見つけた楽しみはそう簡単には手放さない」と予想する。身体的な理由から美術館へ足を運ぶのが難しい高齢者や、経済的に教養プログラムを子どもに与えるのが難しい家庭などは、ロックダウン中に見つけた楽しみを諦めざるを得なくなるのだろうか。本当の意味で”文化の民主化”が進むのは、パンデミック終息後の政府と文化施設の方針にかかっている。

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“音を聴く”という行為に寄せて――コロナ禍の中で制作されたCOMPUMAと竹久圏による作品『Reflection』 https://tokion.jp/2021/01/07/merging-into-the-act-of-listening-to-a-sound/ Thu, 07 Jan 2021 06:00:04 +0000 https://tokion.jp/?p=12314 京都の山奥の茶園をインスピレーションにしたサウンドスケープと心象風景をCOMPUMAと竹久圏はどう描いたのか。

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COMPUMAと竹久圏(KIRIHITO/GROUP)による5年ぶりの新作『Reflection』。このアルバムは京都の老舗茶問屋、「宇治香園」の創業155年を記念して制作されたものだ。2015年より「宇治香園」は、茶と光と音の統合を探求するプロジェクト“Tealightsound”を展開しており、本作もその一環であり、番外編として制作された。
COMPUMAと竹久圏は、5年前にも同プロジェクトに参加しアルバム『SOMETHING IN THE AIR -the soul of quiet light and shadow layer-』を発表している。このアルバムは、京都の山奥の茶園を訪れた2人によるフィールドレコーディングとギター、エレクトロニクスを中心とした作品なのだが、2015年に茶園は廃園となり現在に至る。
新作『Reflection』の制作では、COMPUMAと竹久圏は廃園となったこの茶園を再訪している。2人は何を感じ、どう心象風景を形にしていったのか。2020年、コロナ禍のさなかに、茶園の光景はどう目に映り、感情を動かされたのか。その制作一連にまつわる話を聞いた。

京都の山奥の茶園との再会・巡り合いを経て

――新作の『Reflection』ですが、フィールドレコーディングした音源がベースにありますが、まずはその魅力について教えてください。

COMPUMA:私は長年にわたりレコードショップでバイヤーをやらせてもらっているという経緯があって、取り扱うさまざまな音楽ジャンルの中には実験的な音源もあったんです。その中で、フィールドレコーディングという行為やそこから聞こえてくる音の喜びを知りました。そして次第に、自分もその手法に挑戦したいという気持ちになっていたんですね。そこで新作『Reflection』を発表する5年前に前作をリリースしました。

――「宇治香園」の創業150年記念作であり、“Tealightsound”を掲げるシリーズの第1弾アルバムとなった『SOMETHING IN THE AIR -the soul of quiet light and shadow layer-』ですね。2015年のリリース作品になります。

COMPUMA:そうです。前作では茶園の神秘的な魅力、空気感をフィールドレコーディングすることで伝えたいという想いが強かったんです。それゆえに全曲がつながっているようなミックスCDのような構成で作品をまとめたんですよね。それに対して、今作はフィールドレコーディングを中心にして作るということではなく、楽曲が1曲ごとに独立しているようなアルバム作品にしたいと思って制作したんです。そこが大きく異なる点ですね。竹久圏さんと茶園で得たイメージを照合させながら掛け合わせて、お互いの考えやイメージ、表現の足し算引き算を繰り返しながら制作を進めていきました。

――制作を進行する段階で、2人の役割はどのように分かれていたんですか?

COMPUMA:私は自身の楽曲の制作はもちろんですが、それと同時にアルバムの全体像をイメージするような役割でしたね。圏さんが作った素材を入れ替えたり組み合わせたり、できている素材と今後必要である楽曲、時間の制約もあったので、仕上がり完成図に向けた設計を頭に描きながら、客観的な視点にも立って制作を進めるようにしていました。

――対して、ギターでイメージを具現化するにあたって、竹久さんはどのようなことを考えて制作を進めていったんでしょうか?

竹久圏(以下、竹久):今作の制作にあたって茶園を再訪するということは、自分にとって“再会”を意味することでした。実際に行ってみて、変貌した風景に驚き、そこで得た気持ちを後でフレーズや音色につなげていくという流れでしたね。まずは2ヵ月ほどでネタとなる音源を制作して録音して、ある程度制作が進んだところでCOMPUMAさんに渡してフィードバックをもらい、反応が良かったものを膨らませていく。そのように制作を進めていったんです。徐々に作品の片鱗が見えていく過程で、こういうシーン(曲)もあると良いだろうなだとか。作品の流れにある物語性を見て察しながら、楽しく制作させてもらいました。

――『Reflection』は、2人が茶園で得たインスピレーションを楽曲として昇華された内容となっていますが、いつ頃、廃園となった京都の山奥の茶園を再訪されたんですか? また、その時にどのような思いを抱かれましたか?

COMPUMA:2020年6月後半に行きました。そこで素材録りを2日間を行いました。5年前には何度も茶園に行って、音を採取するロケーションやポイントを探るところから始まったので非常に時間がかかったのですが、その経験があったので今回は短期間でしたね。それにコロナの件も考慮して、できるだけ短期間の滞在にしようと思ったんです。6月は、茶園の緑が生き生きしていて1年の中で最も美しい時季ということを「宇治香園」さんにも教えていただいておりました。とはいえ、廃園から5年が過ぎ、梅雨時だったこともあって、茶園はジャングルのように荒れ果ててました。

竹久:最初に訪れた時の気持ちと根っこは同じだと思うんですけど、もっと焼き付くような思いがしましたよね。

COMPUMA:ええ。まさにそうでした。それはマイナスの感情ではなく、さっき圏さんが言っていたような“再会”、“巡り合い”の思いがありましたよね。そして、今になって思えば、あの時期はずっと自宅での自粛生活が続いていたこともあったので、非日常的な場所に行けたことにも興奮したんだと思います。自然のパワーの中にいられる喜びを感じました。 

竹久:それはありましたね! 同時に、5年前も今回もそうなのですが、来ちゃいけないところに来ちゃった……みたいな印象がありました。

アルバムに込めたのは、山の音を軸に紡いだ物語

――その“来てはいけない場所”という感覚は不可侵の領域であるとか、何か神々しさを覚えるという意味ですか?

COMPUMA:過剰にスピリチュアルな神格化はしたくないですが、少なからずそういう気配、そういう場所ではあるのかなと思いますね。今回は印象的なエピソードもありました。1人、山頂で気配を殺してフィールドレコーディングをしていたら、ガサガサ、ガサガサという歩くような音が、少し離れたところから聞こえてきて、「あれ、圏さんかな?」って思って辺りを見回すけど誰もいなくて。そうしたら、また音がしてきて、何度がそれが繰り返されて……、なんとなく不安というか怖くなってきたもののレコーディング中なので身動きが取れないんですよ。

――人が動く雑音がマイクに入らないようにと。

COMPUMA:そうなんです。そこで、恐る恐る音がするほうを見ていたら、しばらくすると野生の鹿の親子がすぐ近くに現れて、鹿でよかったと落ち着いたと同時に、わわっ! と心の中で驚いたんですよ。その瞬間に鹿は大きな声で鳴いて身構えていて。鹿とはいえ、あのツノでこちらに突進してきたらやばいなとか思いつつ、しばらくお互い見つめあっていました(笑)。そうこうしていたら、鹿の親子は山の森の奥に行ってしまったので、安心しながらも心の中では「ごめんね」という気持ちでした。こちらがビックリさせてしまったかなと思って。そんなやりとりも音として残っていたので、2曲目「Decaying Field」の後半に1つの心象風景ドキュメント素材としてミックスしてみました(笑)。

竹久:お邪魔しているのはわれわれですからね。彼ら(鹿の親子)にしてみれば、「一体、誰が来たんだろう。何をガサガサやっているんだろう」って感じでしょうから

――作品の具体的な話に移ります。アルバムが「The Back of the Forest」でスタートし「Decaying Field」では不穏な空気をまといながら、3曲目の「Nostalgia」ではギターの音色で一気に拓けるような印象がありました。

COMPUMA:先ほど、曲順が決まったのは制作段階の後半であったことをお話ししましたが、「Decaying Field」を序盤に入れようというのはなんとなく決めていたんです。その次曲「Nostalgia」から、アルバムが動き出すような印象を伝えたい気持ちがありましたね。そこから具体的に物語が始まっていくような流れで。

――個人的に印象的だったのがアルバムの最終曲「Enka (Twilight Zone)」です。サブタイトルで中間領域を意味する“Twilight Zone”という言葉が入っていますが、これは茶園と現実世界のはざまを意味を示しているんですか?

COMPUMA:正直なところ、深い意味はないんです(笑)。ただ“Twilight Zone”という単語はタイトルに付けたかったんですね。いろんな意味を含めて、そういう場所、時間、時代といった意味合いがある気がしていたので。そういう意味では、茶園と現実世界のはざまという意味もあるのかもしれません。この楽曲にはハミングとしての歌心? メロディも含まれているので、表現のうえでも大きなチャレンジでした。“演歌”の意味もあれば“艶歌”でもあり、そこは、まあ、さまざまです(笑)。

この状況だからこそ気付いた山中のにぎやかさ

――アートワークは五木田智央さんの作品を鈴木聖さんがデザインされていらっしゃいます。これも前作『SOMETHING IN THE AIR -the soul of quiet light and shadow layer-』と同様ですね。

COMPUMA:はい。実は『Reflection』で使用している五木田さんの作品は、5年前にお願いした際に描いてくれたものなんですよ。当時、2つの作品を描いていただいていて、なので今作『Reflection』では音源制作前からわれわれの作品イメージとして、この五木田さんのドローイング作品が頭の中にあったんです。これをイメージしながら制作を進めていったと言ってもいいくらいに重要なイメージでもありました。

竹久:まさに今作のテーマにバッチリでしたよね。

COMPUMA:そう、まるで今作を5年前から五木田さんが予期していたかのような。そんな気持ちにすらなります。

――世界中がパンデミックにある状況で、『Reflection』も、そのさなかに制作された作品となりました。コロナとともに生きる時代において、自身が表現したり発信したりする内容に変化はありましたか?

竹久:当然ありましたね。ライヴが減り、人前で演奏する機会がどんどんなくなっていく中で、改めて客観的に自分のやりたいことを見つめ直せました。そんな状況だったので、『Reflection』はテーマをいただいて、作品を制作できたということに喜びを感じています。

COMPUMA:私も制作できて嬉しかったです。圏さんと同じ状況で、私もDJ活動が春以降ほぼなくなり、自宅で自粛生活を送ってきました。時間ができたことで、読めてなかった書籍などとも向き合うことができまして。その中で、“音を聴く”という行為やサウンドスケープの世界と改めて向かい合ったんです。そこで感じたのですが、東京はまさにそうですが、都市化が進んでいく中で、“静寂”というものがなくなってきているじゃないですか。でもコロナ禍になって、街が静かになったような気がするんです。だから、静かな時間の回復や静かな空間の回復というサウンドスケープの理念のようなものが都会にいてもちょっと体感できたような気がします。そういったことも少なからず『Reflection』の録音に反映されています。6月に茶園に行った時、都会よりも静かなところに行ったはずなのに、山の中でジッとレコーディングして、そこでの音そのものに耳を傾けていると、都会よりも自然の息吹や生命力をガヤガヤとにぎやかに感じたんですよね。今回のレコーディングやコロナ禍を通じて、今までそのような意識がなかったことを考えられたことが、すごくおもしろい体験になったと思っています。 

COMPUMA(松永耕一)
1968年熊本県生まれ。DJとして、国内外問わず多くのアーティストやDJと共演したり、サポートを行ったりしている。自身のプロジェクト、SOMETHING ABOUTよりミックスCDの新たな提案を試みたサウンドスケープなミックス『Something In The Air』シリーズ、悪魔の沼での活動など、DJミックスを中心にオリジナル、リミックスなどさまざまな作品を発表する。
http://compuma.blogspot.jp/

竹久圏
ギタリスト兼ヴォーカリスト兼コンポーザー兼プロデューサー。ロックバンド、KIRIHITOのギター、ヴォーカル、シンセを担当。同時にインストバンドのGROUP、younGSoundsのギタリスト兼コンポーザー、あるいはアイデアマンとして参加中。その他、UA、FLYING RHYTHMS、イルリメ、一十三十一、やけのはら、田我流などのライヴバンドや録音にも参加する。
http://www.takehisaken.com/

Photography Shinpo Kimura
Text Ryo Tajima

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連載「時の音」Vol.4 immaに見る、リアルもヴァーチャルも関係ない自分らしさとポジティブな思考 https://tokion.jp/2020/10/19/series-tokinooto-vol4-imma/ Mon, 19 Oct 2020 06:00:23 +0000 https://tokion.jp/?p=4221 日本初のヴァーチャル・インフルエンサー・immaに素朴な疑問から個々の発信力の強さ、パンデミックについて聞く。

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その時々だからこそ生まれ、同時に時代を超えて愛される価値観がある。本連載「時の音」では、そんな価値観を発信する人達に今までの活動を振り返りつつ、未来を見据えて話をしてもらう。

新型コロナウイルスの流行で、世界は誇張なしに様変わりした。終わりの見えない不安が蔓延しているが、それでも「時代が鳴らす音」に耳を傾けてみれば、この状況を少しでも良くするためのヒントや希望がきっと見つかるはずだ。

今回登場するのは、ピンクのボブヘアが特徴の日本初のバーチャルモデル・インフルエンサーのimma。

2018年に突如インスタグラムに現れたimmaは、身長や体重、国籍、経歴も一切不明だ。彼女の過去のインタビューからは、ファッションやアート、カルチャー好き、弟がいる(plusticboy/彼もまたヴァーチャルヒューマン)、アインシュタインという名の犬を飼っている、メイクや髪型はマイナーチェンジしている、多少のおふざけもする……ということがわかる。ヴァーチャルである以前に、“一人の女性”でもあることが、見るものの好奇心を掻き立てるのと同時に共感も集めるのだろう。インスタグラムは29万フォロワーを超えている(2020年10月19日現在)。2019年1月にコンピューターグラフィックスの総合誌「CGワールド」の表紙を飾って以降、多業界で活躍し、海外での活動も増えてきた。

彼女の言葉遣いも今時なものが多いが、時折発する言葉にはリアルもヴァーチャルも関係ない説得力がある。immaの話を聞くと、暗い話題ばかりの中でも明るい未来を信じて進む「姿」が見えてきた。

――そもそもモデル活動を始めたきっかけはなんでしょうか?

imma:最初は自分のインスタグラムを通して、好きなことを発信していただけなんです。それからだんだんとお声がけを頂くようになったので、モデル活動に挑戦しました。今もまだ挑戦している段階ではあります。

――インスタグラムの投稿で意識していることはありますか?

imma:実は何も意識していないかもしれません(笑)。考え方を柔軟に変えているせいか、「ここかっこいい」って思った場所で撮っているくらいで、その時々の思いつきでしかあげていないかもしれませんね。

――モデルとして服を着こなす際に意識していることはなんでしょうか?

imma:まずモデルという概念が大きく変わっていて、以前のようにスタイル重視ではなく、それぞれの人となりやライフスタイルをふまえて、モデルが選ばれている気がします。そのため、何より自分らしさというものをどう表現するかを一番に考えています。

――これまでの活動の中で、印象的だったお仕事はなんでしょうか?

imma:モデルとしては、「バーバリー」の仕事が印象的でした。日本を代表して、台湾と韓国のトップモデルと一緒に仕事ができたので嬉しかったですね。あとはモデルの枠を超えて、「SK-II」のグローバルで流れたブランドコマーシャル映像への出演も刺激的でした。

――今好きなものやハマっていることを教えてください。

imma:アートは引き続き好きですが、ハマっているとなるとMayaやUnreal EngineなどのCG制作ソフトです! 今自分でCGを作れるように勉強中なんです。

――immaさんにとって、アートやカルチャーに触れることはどういう意味がありますか?

imma:心を真ん中にしてくれる。そんな感じがします。

――過去に「ゲルハルト・リヒターが好き」と発言されていましたが、「オーバー・ペインテッド・フォト」「フォト・ペインティング」など絵画と写真の境界が曖昧な作品は、immaさんの存在ともリンクしているように感じます。

imma:とても好きです。ただ最初はパリでの一目惚れでした。そこからドキュメンタリー映画を観て、より好きになりました。もちろん境界の曖昧さも気になるポイントではありますが、シンプルに心が落ち着くんです。

ヴァーチャルヒューマンも“人それぞれ”

――日本でもヴァーチャルモデルが増えてきていますが、immaさんにしかない長所はなんでしょうか?

imma:長所……なんでしょう、本気で社会を良くしたいと思っているところでしょうか? 人それぞれ違うのと同じで、あたしにしかできないことはたくさんあって、それは他人も同様だと思っています。

――インスタグラムでは「#あたしCGらしい」というハッシュタグをつけて投稿しています。自分がCGだと言うと、物珍しさだけが目立ってしまう可能性もあると思います。

imma:使われ方次第では消費されてしまうと思います。ただ、1つひとつの仕事に対してもあたしにできること、あたしらしさを表現したいと思っていて、それができない場合はお断りすることも多いんです、実は。あたしらしさっていうのは、皆さんが感じ取ってくれればと思っています。そして、知らないことが多いので、いろんなことを吸収しながらアウトプットを止めずに活動していきたいなって思っています。

――今やVRや加工アプリなどにより、人間がCGに近づいています。immaさんはリアルとヴァーチャルの違いをどのように感じますか?

imma:あまり違いを感じません。もはやヴァーチャルはリアルであり、リアルはヴァーチャルになりました。何を信じるか、そういうことでしかないのかなってあたしは思っています。

今を生きて、世界と向き合う

――immaさんは、時折SNSなどで社会情勢に対しての意見も発信しています。個々の影響力が強くなっている今、発言に責任を持たなければいけないと同時に、無責任なことも発信しやすくなっています。

imma:ある意味誰もが発信できることで、生きづらくなってしまったと感じる人も多いのではないでしょうか? ただ、あたしは各々がどう感じたかを発信できることはいいことだと思っています。

議論が生まれてそのことをより深く知っていく、その積み重ねがつらい時もありますが、それが“個”なんだと思います。自分の人生でどう活かしていくか、それも個人次第ですが、恐れないことが大切だと思います。

――新型コロナウイルスの影響で、いくつか仕事がキャンセルになったそうですが、この期間を通じて仕事との向き合い方に変化はありましたか?

imma:はい、常に変化がある時代ですから昨日の当たり前は、今日は違うかもって考えることは多いです。ただ、社会や人間の行動において、正解はたくさんあります。それに純粋な気持ちで取り組めば、自分に嘘なく、そして間違った方向にいくことはないと思いながら過ごしています。

――今はネガティブなニュースばかりで気持ちが滅入ってしまう人も多いですが、immaさんはどのように気持ちを切り替えていますか?

imma:あたし自身もネガティブなニュースにとても気が滅入ることがあります。ただ過去に戻ることはできませんから、どうやって明るい未来に変えることができるか。どうしたら良くなるか。それを考えて行動することで常に気楽に、そしてポジティブに現状を捉えていきたいと思っています。

――アートやカルチャーの発信地の存続が危ぶまれています。それらを愛する1人として、どのようなことが必要だと考えていますか?

imma:守る心と許す心を持つこと、そしてそれらが消費されるものではないということを心に留めることも大事だと思っています。

――immaさんのような存在は今後さらに活躍の場が広がると思います。新しく挑戦していきたい仕事や分野はありますか?

imma:たくさんあります! ありすぎてここでは多く語ることができないんですが、今は1つひとつ進めています。未来は明るく、あたしにしかできないことはこれからもっとあると思っています。

まだ全容はお話できませんが、今もびっくりするようなお話を頂いています。海外での活動がすごく多いので、どこまで皆さんに見てもらえるかわかりません。でもあたしが思うあたしらしさで、みんなもワクワクできるようなことを発信していきたいと思っています。

imma
2018年7月にインスタグラムのアカウントを開設。身長や体重、国籍、経歴は一切不明。主にモデルとして活動し、「スライ」と「プーマ」のコラボレートコレクションやポルシェジャパンのビジュアル等に登場した他、「イケア」とパートナーシップを結ぶなど多業界で活躍している。https://www.instagram.com/imma.gram/?hl=ja

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ポスト・コロナ時代のプレ・ハッピーアワー https://tokion.jp/2020/10/15/pre-happy-hour-in-the-post-covid-19-era/ Thu, 15 Oct 2020 06:00:05 +0000 https://tokion.jp/?p=7768 ニューヨーク在住の文筆家・岡田育によるエッセイ。一時的な日本帰国から戻って感じた街の変化と、そこから見出した希望について綴る。

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2020年の9月初旬、半年間の日本一時滞在を終えてニューヨークの自宅へ戻った。羽田からJFK空港へ向かう飛行機の搭乗率は3割程度だったろうか。税関では足止めを食らったが入国審査はガラガラで、空港検疫もない。日本から渡航後の在宅14日間隔離もすでに「義務」ではなくなっている。

新型コロナウイルス感染拡大を受けての州非常事態宣言から約半年、ニューヨークの感染者数ピークは封じ込められ、検査陽性率も1%未満まで下がった。秋冬の再拡大を警戒しつつも、最悪の事態は脱したと言えるだろう。長く不在にしていたので経過を語ることはできないが、半年前、この世の終わりのようなパニックを起こしていた街の様子を思い返すに、だいぶ穏やかになったと感じられる。ひたすらに街が静かだ。

朝は表通りを行き交うトラックの大渋滞、昼は近所の大学に通う学生達の賑わいにガイドブック片手の旅行者が混じり、夜は明け方まで飲んで騒ぐパブの客達の大合唱、タクシー運転手の怒鳴り合いにパトカーのサイレン、うるさくて当たり前の住環境だったのに、どれもぱたりとやんでしまった。人出が減って、毎日がサンクスギビング休暇(日本でいうなら正月三が日)のような静寂に包まれている。

ある学生寮の前には、感染者が出て当面全館封鎖との通告が貼られていた。受付スタッフが常駐していたような駅前の立派なオフィスビルも、電気を切ってガラス張りのエントランスにベニヤ板で目張りをしている。今春、BLMの抗議運動が激化した時に塞ぎ、そのままにしてあるのだろうか。この建物に勤めていた人がみな在宅でリモートワークしていると考えると、それだけですごい人数がこの街から消えた計算になる。

ゴーストタウンになったわけではないけれど、元の活気を知る者には、街全体が半分眠っているような印象を受ける。飲食店は店内でのサービス提供が禁じられ、どの店も公道にサンシェード付きのテラス席を張り出して臨時営業中だ。コーヒーやサンドイッチの店ならテイクアウト客でしのげるだろうが、バーやレストランにとってはまだまだ厳しい経営状況が続くだろう。

ところで今この記事を書いているのは、イーストヴィレッジにある「Kindred」という店のテラス席である。近所にある超人気ワインバー「Ruffian」の系列店で、昨年末にオープンしたばかり。もともとは平日夜と週末のブランチしか営業していなかったが、最近始めた新業態が「Work From Kindred」、ワークフロムホームに飽きたら当店をどうぞ、という時間貸しのオフィス利用プランだ。

月曜から金曜までの平日、朝8時から午後4時まで。ウェブで予約すると店外テラスのテーブル席が確保でき、電源とwi-fiが無料で使えて、水とコーヒーがお代わり自由。別途、簡単な朝食と昼食のメニューがあって、グラスワインも頼めるし、夕方からはそのままハッピーアワーに突入できる。料金は半日で25ドル(約2620円)。日本のコワーキングスペースに比べれば割高だが、自粛期間中あちこちの店に投げ銭などしたことを考えれば、そう悪くない「食べて応援」プロジェクトだ。

9月半ばの某日、朝9時すぎに店の前へ行ってみると、10席ほどのテラスに先客が2組いた。店員に利用したい旨を告げると「事前予約してあるか? この後の時間、ほぼ満席まで埋まるんだよ」と言われて驚く。まだサービスが開始して数日のはずだ。もうそんなに混んでいるとは思わなかった! 常連客のよしみで、なんとか隅にある席を工面してもらう。

車道へ張り出したテーブル席、いくら仕切りがあるとはいえ目の前を自動車や自転車がびゅんびゅん通るのは、ちょっと気になるところ。でも、こちらもマスクを着けているので、排気ガスが不快というほどでもない。午前中の外気温は17度、日中は25度まで上がった。日差しが出ていて風もあり、上着は要るが汗はかかない、1年で最も過ごしやすい季節である。

あと1カ月もしたら、コートやマフラーなしには外出できなくなってしまう。うちのアパートメントには庭はもちろんベランダもバルコニーもないから、今のこの時期の自然光を全身で楽しめるだけでもありがたい。毎日25ドルは払えないけれど、たまに気分を変えて優雅に仕事ができるなら、よしとしよう。

きちんと距離を保った隣の席には、女性2人組の客がいる。ノートパソコンと紙の書類をテーブルいっぱいに広げているが、職場の同僚ではなく、友達同士でそれぞれ違う仕事をしているようだ。新しい生活様式における、新しい“シェアオフィス”である。「本日のランチ」、フォカッチャのオープンサンドとヒヨコ豆のサラダを注文して、グラスのロゼワインまでつけている。イエーイ、と歓声を上げてSNS投稿用の写真撮影大会が始まった。はい、私も今まったく同じことやりました、飲み物は水ですけどね。

ところで私は、飲食店で盗み聞きした会話を集めた『天国飯と地獄耳』(キノブックス)という著作のある、いわば「盗み聞きのプロ」だ。大変無礼な行為なのは承知の上で、これもまた仕事、と思って耳を傾けていると、彼女達の口からしきりに飛び出すのは「Such a memorable moment!」という言葉。なんと思い出深いひととき。今年のこの季節に、道端のテラス席で、こうして一緒にワインを飲みながら働いたこと、絶対に忘れられない思い出になるよね、ほんとほんと、と楽しそうに言い合っている。

この街を離れていた半年間の、大きな変化がこれだろう。今年3月、いつまで続くかわからない前代未聞の健康危機に、誰もがひどくおびえていた。人々は顔を見合わせて、二度と元通りの日常を取り戻すことはできないんだ、と深く深く嘆いていた。まだ謎の多い感染症による深刻な健康危機、予断を許さない状況に変わりはないが、この街に少しだけ楽観主義が還ってきたようで嬉しく思う。

ニューヨーカーは新しいものが好き、新しくできた店には誰より早く行きたいし、まだ見たことのない出来事を目撃してみたい、まだ知らない異文化を体験してみたい。来年の夏にはきっとまた別のことが起こる。でも今は、この二度とない2020年の一番すてきな季節を、私達にできる範囲で、今までにないスタイルで、存分に楽しみましょう。そんな笑い声が聞こえるようになったこの街でなら、なんだって乗り越えていける気がする。

Picture Provided Iku Okada

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新型コロナウイルスのパンデミックを機に、フランス人のバカンス意識に変化が生じた理由 https://tokion.jp/2020/10/07/french-people-vacation-destination/ Wed, 07 Oct 2020 11:00:58 +0000 https://tokion.jp/?p=7040 コロナ禍で変化したバカンスの価値観。人気リゾート地と並ぶ注目エリアになった場所とその理由を探る。

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ロックダウンが明けた6月のフランスでは、例年通り夏のバカンスを取れるのか、国内旅行はどこへ行くべきかという話題で持ちきりだった。バカンスを返上してロックダウン時の仕事の穴埋めをするという考えはなく、パリジャン達は7〜8月の約1ヵ月間を地方で過ごし、観光客の少ない今年の夏のパリは静まり返っていた。例年と異なる点は、パリジャン達がバカンス先に選んだ場所である。もちろんビーチの美しいリゾート地は人気だが、周囲に大自然が広がる田園風景の中にあるホテルも人気を博した。その背景には、外出制限を経験したことで、人々の自然との関係やパーソナルスペースといった空間の捉え方に変化が生まれたことにある。

調査会社ifopが4月に実施した調査によると、フランス人が住空間に求める条件の第一位に「屋外スペース」が挙がり、81%のフランス人が、庭やテラス、バルコニーなどの屋外スペースが最も重要と答えた。多くの企業がテレワークの推奨を継続する今、都市部に暮らす必要性が薄れ、地方での広々とした庭付き戸建て暮らしが現実的な選択肢の一つとして浮上しているのだ。ロックダウンの約2ヵ月間をパリの狭いアパートや地方のセカンドハウスの地方で過ごしたことが、自分自身が本当に理想とする暮らし方や自然との触れ合いについて考え直すきっかけとなったのだろう。日本でも、緊急事態宣言が全面解除された5月25日から6月5日までの間、内閣府が1万人を対象にした調査した結果、リモートワーク経験者のうち24.6%が地方移住への関心を示した。特に東京23区在住の20代では35.4%という高い数値を出した。

フランス人が、人口密度の高い人気リゾート地よりも、自然の広大なスケールの自然の中でパーソナルスペースを保てるホテルをのバカンス先として選ぶ傾向が強くなったのも不思議ではない。フランス中部・ロアンヌの豊かな自然の中に構える老舗ホテル「トロワグロ」は、フランス人が一度は訪れたいホテルとして名を挙げる憧れの場所であり、ロックダウン後に自分へのご褒美として訪れた人が多かったようだ。

同ホテルの魅力はなんといっても、1968年以降、50年以上ミシュラン三つ星を獲得し続けるレストランである。フランス料理の伝統と歴史を守りながら、現在は三代目ミッシェル・トロワグロが現料理長を務める。6月に再開した際の来訪者の95%がフランス国内、5%が隣国のベルギーとスイスからだったという。新たな試みとして、35歳未満向けに120ユーロ(ドリンク代込み)の特別メニューを設けたことで、多くの若者がガストロノミーを手頃に体験できる機会を得た。「来訪者は、どのような感染対策を取っているかという点だけでなく、私達がどのように働き、何をしているかということに以前より関心を寄せていた。互いの共感性が高まり、困難な状況を共有しているという印象を強く受けた」と、ミッシェルはパンデミック後の来訪者の変化について語る。また、「パンデミックは私達が脆弱な社会の中にいて、企業も脆弱であり、両者は相互依存関係にあるという事実を浮き彫りにすると同時に、連携態勢の意識を強化させた。これまで以上に農業の重要性を認識し、地元の農家や生産者と協力を続けていく」と語るなど、多くの気付きを得たようだ。

ミッシェルの父で二代目料理長のピエールは、フランス料理人として訪日した最初のフランス人として知られている。息子であるミッシェルが初めて訪日したのは45年前で、料理人としてのキャリアの早い段階で日本料理と文化に影響を受けたそうだ。「日本食という特定のコンセプトを作り出したくはなかったが、生姜の砂糖漬け、わさび、柚子、すだち、梅干しなどに自然と魅かれた。私が考案したメニューの中で最も成功を収めたのは“鱈の出汁漬けとコシヒカリ米”」。父と同じ料理人の道を選んだミシェルによってその味は受け継がれ、「トロワグロ」は人々の心身を癒す特別な場所として歴史を刻んでいる。

一方、フランスでは3年ほど前から、ラグジュアリーな非日常体験を提供する「トロワグロ」とは毛色が異なる、自然の中にこぢんまりと佇むロッジホテルが新設される流れがある。なかでも美食家や感度の高いパリジャンに最も人気なのが、フランス北西部の小さな街レマラールの田園地帯に位置する「デュヌ・イル」。パリで予約困難なミシュラン1ツ星レストラン「セプティム」と姉妹店「クラマト」を経営するシェフのベルトラン・グレボーとビジネスパートナーのテオ・プリアが2018年に開いたホテルで、17世紀の石造りの建物内にアンティーク家具で飾られた8部屋を備えている。レストラン同様、自然体の気取らない雰囲気とナチュラルで素朴な空間が、慎ましやかに来訪者を迎え入れる。まるで田舎の祖父母の自宅を訪れたような、温かく明るい光の中で寛げるホテルだ。敷地内にある菜園と、地元ノルマンディで収穫された農作物で作られる独創的な食事は、自然の中で味わうことでより一層おいしく感じられる。ここでも日本食からのインスパイアが大きいようで「燻製酢、味噌、かつお節などの日本調味料を使用している。日本食には、洗練された美意識、繊細なエレガンスなど日本の文化に通じる哲学を感じた」とベルトランは訪日した際の印象について語った。まだまだ海外からの旅行客が少ないフランスだが、「デュヌ・イル」は国内旅行者によって盛況で「週末を田舎で過ごすという楽しみを国民が見出したことは喜ばしい」と話した。

ここ数年、生活の価値観が物質的豊かさから体験的豊かさへと比重を移してきた中で、パンデミックがさらにそれを後押しした。働き方や暮らし方、消費傾向が変わり、この先も見通しが不透明な状況で社会のあり方を定義するのは困難だ。今回、取材したミッシェルとベルトランはともに「私たちはまだパンデミックの最中にいる、それは終わっていない」と口をそろえた。新型コロナウイルスのパンデミックが収束した未来は、素晴らしい変化に満ちているに違いない。今後も変わる気配がないのは、フランス人のバカンスに対する高い熱量くらいだ。

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大切なのは主体性と当事者意識 パンデミック下で強烈に繰り出すギャルの強さ“つよつよマインド” https://tokion.jp/2020/09/14/gyarus-tsuyo-tsuyo-mind/ Mon, 14 Sep 2020 06:00:50 +0000 https://tokion.jp/?p=4059 コロナ禍に有志を集めて制作した参加型のZINEプロジェクト『#SayHello』。込められた真意とラッパー、あっこゴリラが考えるギャルの強さとは。

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“ギャル”は最高とうたうフィメールラッパー、あっこゴリラ。彼女に新時代の女性像を重ねる人も多いだろう。コロナ禍に事務所から独立し、5月には参加型ZINE『#SayHello』をリリースした。「コロナ禍でいま吐き出したいこと」をテーマに掲げ、一般公募で集めた自由作品を掲載したZINEと、テーマソングとも言える楽曲「SayHello」を発表。この2つにはあっこゴリラが現代に感じる思いが込められている。その真意は一体何か。そして、どんな状況であっても自分らしく“つよつよギャル”として生きるラッパーのアティテュードとは。

小さくても個人に対して変革を起こせる装置として

――コロナ禍でもあっこゴリラさんの行動はスピーディでしたが、その理由は、5月に発表された参加型ZINEプロジェクト『#SayHello』に反映されているのではないでしょうか?

あっこゴリラ(以下、あっこ):自分の中では早く動いたという感覚はないんですよね。コロナ禍以降、私も普通に病んでいたんですけど、何に病んでいるのかを自問自答していたんです。その時にすごく感じたのが、当事者意識が世間にないってこと。根源には、喜怒哀楽の感情を表に出すことが社会的にNGとされている風潮があって、その上に成り立っている価値観に私自身、違和感を感じていました。そんな状況にもかかわらず、エンターテインメントが現実逃避する役割を担うのはおかしいんじゃないかって。それでみんなと何かをやりたいと思い立って、“うちらは当事者”をテーマにした楽曲とZINEを作ろうと思ったのがきっかけです。私の名義で発表した作品ではあるけれど、みんなで発信している以上、全員が当事者です。

――ZINEの表紙では口元を隠したあっこさんの写真が掲載されていてインパクトがありますね。

あっこ:このバンダナは「ミラクルミーONE MAN TOUR」(3月20日から東名阪で開催される予定だったワンマンツアー。コロナ禍を受けて中止)で、お客さんにマスクの代わりとして無料配布する予定だったんですよ。あの時期ではツアーがまだ中止になるかならないか微妙な状況で、すでに製作を終えていました。「言いたいことも言えないバンダナ(『ウイルス撃退バンダナ』として発売中)」として、口元を隠して何も言えない状況だけど「ハロー! って言うよ」って思いをアートワークに込めています。その後ツアーの中止を受けて、4月にZINEと楽曲制作を行って5月にリリースしました。

――では『#SayHello』に込められている感情は、やはり“怒り”でしょうか?

あっこ:ひと言で“怒り”というわけでもないんですよね。あの頃、確かに怒りMAXでしたけど、ZINE全体の構成を振り返るとカオスというか……。このプロジェクトでは「私は怒っているんだぞ!」ということを発信することが目的ではなくて、なんだか社会が持つ風潮や空気の読み合いで様子をうかがっているような、正直に感情を表現できない状況に対して1つの風穴を開けたいという気持ちがあったんです。私が発信しているのは、コロナ禍に当事者としてやれることをやっているだけなんですよね。『#SayHello』は小さいプロジェクトなんですけど、小さいながらも個人に対して確実に変革を起こせる装置にしてやろうという気持ちで作りました。ZINEはミニマムなフォーマットの表現ですけど、人の心に深く届けることができて、自由度も高いです。今、変えなきゃいけないことって本当にたくさんあるじゃないですか。私は政治家でも教育者でもなくラッパーなので、変えることができるのは“人の意識”だと思うんですよね。

生きる理由として必要だったZINE制作という目的

――『#SayHello』は参加型のプロジェクトでしたが、改めてどのように作品を募集したのか教えてください。

あっこ:noteとSNSのみですね。SNSでは「参加型ZINE制作プロジェクト始めました」ってことだけを投稿して、募集の細かなことや気持ちはすべてnoteにまとめました。最初はあまり応募がなかったんですけど、結果的にはものすごい数の作品が送られてきました。作品を見て「気持ちを込めれば伝わるんだ!」って思いました。それに応募者達は若い世代が多かったことにも驚きました。10~20代前半の子達の印象はしっかりとアンテナを張って情報収集をして、この社会に対して違和感を感じて、何かアクションを起こしたいんだなということですかね。

――送られてきた作品はどんな内容でしたか?

あっこ:本当にさまざまな表現がありましたよ。かわいらしい絵なのにプロテストな内容だったり、オリジナルのプレイリストを送ってくれた人もいました。今回の『#SayHello』は、あえて私から具体的な参加内容を訴えるような呼びかけは行わなかったんです。それはプロジェクト自体がプリミティブでありたかったし、純度をすごく大事にしたかったから。アーティストも参加してくれていますけど、彼らの意志で作品を制作してくれたので、そこにも熱量を感じましたね。

――『#SayHello』を制作したことで、自分自身の変化はありましたか?

あっこ:ちょっと考え方が変わった部分もありますね。このプロジェクトがあったから私自身も一歩前に踏み出すことができたし、その後の活動の幅も広がりました。私の役割は、みんなに「遠慮したままでいないで、一歩踏み出そうよ」って発信することだと思っています。それに今『#SayHello』の制作を振り返ってみると、自分に活動目的というハードルを課したことも大事なことだったのかもしれないです。

――4月から5月の自粛期間中は、目的を見失っていたのですか?

あっこ:私にとってライヴは自己表現の大切な場所で、言い換えれば政治参加と捉えている部分もあります。これまでのライヴでは自分のアティテュードをしっかり提示してきたので、ライヴがなかった期間はつらかったです。自分に何か目的を与えなくては頑張れないし、どうしたらいいのかもわからなくなるので、とりあえず生きる理由を設定しようって気持ちで『#SayHello』のプロジェクトをスタートしました。noteにも「目的はうちらにとって大事じゃない? その生きる理由を作らない?」と書きました。ZINEは細かな作業の繰り返しでしたけど、とても楽しかったです。今回参加してくれた人にも、目的を与えることができたのかなとも思っています。

不完全で当たり前 一緒に失敗しようという姿勢

――4月1日にはツイッターで結婚と独立の宣言をしました。独立は以前から決めていたんですか?

あっこ:独立に関しては新型コロナウイルスは関係なくて、何年も前から決めていたんです。そもそもアーティストとしての活動目的が、メジャーで売れるということではないので。私がメジャーでやりたかったことは、多くの人の目や耳に触れる環境で、リリックを通して彼らの意識を変えていくことでした。2018年にメジャーに移ってからは、どうやってみんなの世界を変えていこうかってことに共感してくれたスタッフと一緒にやってきました。結果として、オーバーグラウンドでも現在のようなアンダーグラウンドな活動をしていても、いろんな人とつながれる環境を作ることができたので、予定通りに独立しました。もちろん円満な独立なので、今でも当時のスタッフとは仲良くやっています。そして身軽になった分、思い付いたアイデアは即行動に移すことができるので、私の性にも合っているんですよね。なんせ思い付いたら即行動! そして、はい、次! みたいなタイプなので(笑)。『#SayHello』や製作したバンダナは「EVERGREEN」という私のWEBストアで販売しているんですが、試行錯誤しながら友人に手伝ってもらって運営しています。友人の手を借りながら、自分の時間も大切にできている今が楽しいです。

――新たにあっこさんと一緒にサバイブする連帯コミュニティ「GORICHAN CLUB」もスタートされましたよね。

あっこ:そう、これはファンコミュニティなんですけど、マジで最高。自粛期間中はちょっとSNSと距離を置いたんですよ。SNSにおけるマウントの取り合いや炎上といった争いの概念のないユートピアをファンコミュニティで作りたかったんです。私のコミュニティに参加する人は、それぞれ主体性を持って話してくれます。大勢が参加しているわけではないんですけど、少しずつ人数が増えてきて、想像していなかった動きも出てきておもしろくなってますよ。例えば、コミュニティ内でファン達が独自に配信をしたり、その流れでビジネスになるような動きも生まれたり。これが例のオンラインサロンってやつか! って感じです(笑)。これからもヴァイブス重視のコミュニティで、それぞれ知識をつけて褒め合う場所にしていきたいです。

――あっこさんが大切にする“ギャル”の考え方は現在、自身にどんな影響を与えていますか?

あっこ:ギャルに関してはいろんな流派があるので、一概には言えないんですけど。私は漫画雑誌『りぼん』に掲載されていた『GALS!』を読んで育ったギャルなんです。『GALS!』で描かれているギャル像は、シンプルに自分を誇示していて、HIPHOP的な主体性があったんです。「享楽的な自分たち! マジ・誇示・最高!」、これが私の思うギャルのイメージで、人格者でも知識があるわけでもないけど、「私は胸を張って生きていますが何か?」って感じがすごく好きなんです。例えば、「政治のことを何も知らないから発言はできない」で終わらせるのではなく、「私たちは当事者であって、完全な人間なんて一人もいないんだから、一緒に失敗していこうよ」ってスタンスがギャルにはあると思うんです。そのスタンスが、パンデミックの中で強烈に影響しています。2月にリリースした『ミラクルミー E.P.』では、「どうせわかってくれない」って思考がちょっと込められているんですけど、最後は「自ら選んだ“つよつよ(強強)マインド”ですが何か?」と結んでます。「好き好んでやっているだけです」っていう考え方に徐々に変わってるんですよね。ギャルの思想には時代の暗さをぶち壊してくれるような破壊力があるんです。

――なるほど。今後の予定は?

あっこ:リリースのタイミングは未定ですが、アルバムを制作しています。あとは友達と雑誌を作ろうと動いているところです。この雑誌では、私なりのギャル年表を作る予定で、今、歴史の研究をしまくっています。ギャル年表では、歴史的な女性を全員ギャルとみなして作ろうと思っているんですよ。「ジャンヌ・ダルク? 平塚らいてう? ああ、ギャルですね!」って感じです(笑)。さらにそこにHIPHOPの文脈も合わせていくともっとおもしろくなりそうで。アレサ・フランクリンの女性の在り方なども踏まえて、誰でも楽しく読めるように、柔らかく私なりのチャラさも表現した内容にしたいと思っています。ギャル研究はなかなか難しいんですけど、知識は視野を広げてくれるのでがんばります。できあがりをお楽しみに。

あっこゴリラ
ラッパー。2019年よりJ-WAVEラジオ『SONAR MUSIC』のナビゲーターも務めている。4月1日にメジャーを離れ独立してからも精力的に活動中。ファンコミュニティ「GORICHAN CLUB」とマーチャンダイズWEBストア「EVERGREEN」では自ら運営を管理している。
https://akkoakkogorilla.com/
Instagram:@akkogorilla

Photography Satoshi Ohmura
Text Ryo Tajima

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パンデミックにより美容業界が活況 ヨーロッパのトレンド“DIYスキンケア”に見る美容の役割 https://tokion.jp/2020/09/04/pandemic-booms-diy-skincare/ Fri, 04 Sep 2020 06:00:18 +0000 https://tokion.jp/?p=3359 外出自粛の影響で個人消費が落ち込むヨーロッパ。不景気のニュースが続く中、美容トレンドに浮上しているDIYスキンケアの背景にある消費者意識とは。

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新型コロナウイルスは人々の心身の健康だけでなく、経済にも大きなダメージを与えている。ヨーロッパ連合(EU)の統計局の発表によるとユーロ圏19ヵ国のGDPは4〜6月の伸び率が 1~3月に比べて実質12.1%減と、統計を取り始めた1995年以降最悪の水準となった。経済活動の縮小要因について、外出自粛の影響で個人消費が大きく落ち込んだことや、欧米向けの自動車の輸出が大幅に減少したことなどが考えられる。フランスではマスマーケットのファッションブランド「アンドレ」「ラール」などが従業員を大幅に解雇したほか、老舗高級食材店「フォション」が破産申請を行うなど各業界に影響を与えている。そんな景気の悪いニュースが続く中、「ル・モンド」紙はオーガニックコスメブランド「アロマ・ゾーン」がロックダウン中にオンライン販売において新規顧客10万人を獲得し、売り上げを3倍に伸ばしたと報道した。

20年前に化学者のピエール・ヴォーセリンが創設したオーガニックコスメブランド「アロマ・ゾーン」は、原液や高濃度の植物性オイル、エッセンシャルオイル、植物の粉末などの商品を豊富にそろえ、それらを組み合わせ自分の肌状態に合わせて自作するDIYスキンケアコスメを提唱する。創設当初から広告は一切出さない方針をとっているが、消費者のオーガニックへの関心の高まりと、DIYのアイデア、商品が3.5ユーロ(約420円)〜と安価なことから年々成長を続け、2019年度の売上高は8000万ユーロ(約96億円)を記録した。さらに今年は売り上げが1億ユーロ(約120億円)を超え、粗利益率は約25%になる見通しだ。現在パリに2店舗、リヨンに1店舗、新たに7月末にはブーシュデュローヌに700㎡以上の店舗をオープンさせた。ロックダウン期間(4〜5月)はオンライン販売で、消毒効果の高いティーツリー、ニンニク、タイムのエッセンシャルオイルやDIYコスメキットと家庭用クリーニング製品を 中心に人気となり、化粧品で70%、エッセンシャルオイルで40%も売り上げを伸ばしたと同社は語った。ヴァーセリンは「消費者はロックダウン中に得た新たな生活習慣を長く維持するだろう」と予想し、さらなるビジネスの成長を見込んでいる。今後はトゥールーズに新店舗、海外にも店舗を構える予定だという。

「アロマ・ゾーン」が提唱するDIYスキンケアは現在、欧米の美容業界において大きな流行となりつつある。2016年に創設されたカナダ発「ジ・オーディナリー」も、臨床技術に基づいて作られた美容成分の原液や濃縮液を幅広くラインアップしている。各商品には成分が細かく表示されており、ビーガン処方、クルエルティーフリー(動物の犠牲を強いる動物実験をしていないことを示す)と肌への安全性と環境に配慮している。美容液が5ユーロ(約600円)〜と価格帯が低く、スキンケアデビューを果たす若年層からエイジングケアに力を入れたい中高年層まで顧客の年齢層も広い。商品をそのまま使用することももちろん可能だが、コンディションや肌悩みに合わせて手持ちのスキンケアや他商品と混ぜて自分好みにDIYすることを提案している。

昨年誕生した「ティポロジー」もフランスで話題のスキンケアブランドである。オーガニック、ビーガン処方、クルエルティフリー、100%フランス製をうたい透明性の高いクリーンな原料を元に、各商品の成分数を10以下に抑えてスキンケア、ボディーケア、ヘアケアを展開している。筆者が購入したヘアシャンプーは、ベースとなるシャンプー剤とヘアオイルが分かれており、ヘアオイルを頭皮マッサージ用に使ったりシャンプー剤と混ぜ合わせて使ったり、自分好みにカスタマイズできる仕様になっていた。美容液は10ユーロ(約1200円)〜と、「ジ オーディナリー」と同じく手に取りやすい価格設定だ。また、これらのブランドは、パッケージにリサイクル可能なガラスやプラスチック不使用のアルミを使用しているという共通点がある。

これらDIYスキンケアが美容トレンドに浮上している背景にはどのような消費者意識があるのか、パリでビューティ&デザインのコンサルティング会社「デシーニュ」を経営する、フランス在住20年の須山佳子に聞いた。

「ナチュラルビューティ、オーガニック、クリーンビューティの行き着く先がDIYスキンケアです。欧州ではより商品の透明性が重視される中で、内容成分がクリーンであることの究極にあると思います。リッチなクリームやセラムなどを購入して多くの成分を取り入れても実際に肌に入るものは少なく、自分に本当に必要なものも多くないということを消費者が理解し始めたのです。パーソナライズという流れもあり、必要な成分を原液で注入したほうが、より効果的で肌が良くなるということをさまざまな情報から理解し、最終的に内容成分を全部自分で確認し、必要なものを作り使いたいという思いが強いのでしょう」。

須山は日本の美容文化やプロダクトをテーマにしたプロジェクト「ビジョ」の主宰者であり、2016年以降パリ市内でポップアップストアを開催している。特に、老舗高級百貨店ル・ボン・マルシェで開かれるポップアップストアは毎回盛況だ。ロックダウン明けの7〜8月に開催された3回目のポップアップストアでは、来店客の大幅な減少にもかかわらず前年の同時期よりも売り上げを10%伸ばした。開催直前に同百貨店のバイヤーから「外出制限で疲れ切っているフランス人に対して、日本の美容とおもてなしで癒す企画」をテーマにしてほしいとの要望を受けて、心と体の癒しに注力したという。「ウカ」の自律神経に働きかける癒し効果の高いアロマをベースにしたボディーケアシリーズは「今これが必要」と顧客が反応し、売れ筋商品となった。スカルプブラシ(頭皮用ブラシ)100個、カッサ200個、フェイスマスク600枚が完売し、高級ボディーブラシや浄化グッズの売り上げが上がったのも今回の特徴だという。「プロテクションや浄化ということに非常に興味を持ち、心の切り替えを香りを通して行うフランス人が多かったです。自分への投資、自分をいたわる時間を大切にしようという意識が芽生えているように感じます」と語る。

 さらに須山は「今回のパンデミック然り、社会状況が不安定な時代であるからこそ、きれいにしていることが心を支える大きな要因になっているのでしょう。美容を諦めてしまうと、本当の非日常がやってきます。きれいにすることは心を整え、自分を見つめる行為なのだと思います」と消費者が美容に投資する理由を分析する。第二次世界大戦の戦時下においても女性達はパーマをかけたり、メイクをするなど美容への意識を高めたという歴史もある。先行き不透明な時代をサバイバルするために、美容にお金と時間をかけることが心のよりどころとして機能しているようだ。

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ファッション心理学者ドーン・カレンが読み解く、パンデミック後の心情と服装の蜜月な関係 https://tokion.jp/2020/08/28/post-pandemic-sentiment-and-clothing/ Fri, 28 Aug 2020 03:00:58 +0000 https://tokion.jp/?p=3674 「服装と心理は密接な関係を持つ」と語るドーン・カレン。心情によって服装が変わったり、服装が着る人の心を操作することもある。

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「服装と心理は密接な関係を持つ」とファッション心理学の第一人者であるドーン・カレンは語る。心情によって選ぶ服装が変わったり、逆に服装が着る人の心情を操作することもあるという。コロンビア大学で心理学の学士号を取得し、学生時代にモデルやパーソナルスタイリストを経験したことで、ファッションと心理学の研究を進めた彼女は、論文が高く評価され史上最年少の23歳でファッション工科大学の教員に就任した。2016年にオンライン講座Fashion Phsychology Instituteを立ち上げ、今年、初となる著書『Dree Your Best Life』を出版。現在は教員の他、セラピストとして個人向けのカウンセリングやファッション企業のコンサルティングを行っている。

“コロナ鬱”といった言葉が生まれるほど、新型コロナウイルスのパンデミックは多くの人々の心に影響を与え、その大半は暗雲立ち込めるようなネガティブなものが多い。先行き不透明で不安定な社会状況が続く今、着る人の心情からファッションを考察する彼女の目には何が映し出されているのだろう。何気なく選ぶ服装がどんな心情を表しているのか、少しでも心を安定させるために何を着るべきか、心理学から読み解く今後の消費者傾向についてドーンに聞いた。

——ドーンが拠点にしているニューヨークは3月半に及ぶロックダウンが実施された。外出制限中、どのように自宅で過ごしていた?

ドーン・カレン(以下、ドーン):ロックダウンが解除されたとはいえ現在も外出は可能な限り控えており、離れて暮らす家族には会えず自宅で孤立状態にある。オンライン講座「Fashion Phsychology Institute」は継続することができ、ロックダウン中に新規学生の登録が一段と増えた。想像できる通り、不安定な状況下でセラピストの力を借りたいという人も多く、セッションをリモートに切り替えて行っていたことから、ロックダウン中も忙しい日々だった。また、著書が他言語に翻訳されて各国で出版される予定で、その準備にも多くの時間を費やしていた。

——パンデミックがあなた自身の心理に影響を与えることはなかった?

ドーン:心理学者とはいえ同じ人間であり、もちろん深く気落ちした。ずっと安定した心情でいられる人などいない。心理学者である私は心を整理して、暗いトンネルから抜け出す方法について他の人よりも少し知っているというだけだ。私にとって心の大きなダメージになったのは、パンデミック中に学生が亡くなったこと。さらに、ジョージ・フロイド事件は、同じアフリカ系アメリカ人の私にとって暗闇へと突き落とされるような深い悲しみを与えた。Black Lives Matterのムーブメントを目にすることも億劫になり、6月中旬から1ヵ月半はSNSデトックスを行い、仕事量も大幅に減らして休みを取った。心理学者としてクライアントの支えになりたいのはもちろんだが、自分の精神が不安定な状態では他人を助けることはできない。休みが明けた今、心が落ち着いた状態にある。

——気分を高めるために、部屋着として何を着用していた?

ドーン:パンデミックが起こる以前から、私の部屋着は着物の一択。ロング&リーンで長いスリーブのシルエットはエレガントで優雅な気分を与えてくれて、女王のような力がみなぎるから。それでいて体を締め付けることなく自由な感覚をもたらし、不安を取り除き、完全にリラックスできる。数着持っていて、ロックダウン中は花柄や明るい色彩の着物を着用するようにした。外出して美しい春の花々を見ることができない分、着物に代用してもらおうと思った。このように着物が心理に作用するのはもちろん私だけではないから、多くの人にお勧めしている。

——着物の他にはどんなアドバイスをしている?

ドーン:体を締め付けないルーズなフィッティングの自由でいられる衣服に身を包むこと。オーバーサイズのスウェット、タオル地のバスローブ、裸にブランケットでもいい。ハグされているような安心感のある服装を心がけてほしい。現在の社会状況や外出時のマスク着用、ソーシャルディスタンスといった、外の世界にあらゆる制限が強いられているため、せめて自宅では自分を解放して制限を解除することが大切。

——ロックダウンが解除されてもテレワークを継続している人が多い現在、自宅にいながら気分を上げる方法は?

ドーン:節目で服装を変えて、単調さをなくすこと。例えば1日のうちにビデオ通話の会議がいくつもあるなら、会議毎に服装を変える。ワークアウトや料理をする時にはそれぞれ着替えるなど、服装によって生活に変化を与える方法を推奨する。

——パンデミック前後でクライアントに何か変化は見られた?

ドーン:明らかに気分が落ち込んでいる人々が多い。例えば、長い付き合いになる女医のクライアントはパンデミック以前から不安定な精神状態にあり、新型コロナウイルスが心情をさらに悪化させた。体重が落ちて洋服サイズが16から8USに落ちたのだから、見た目も随分変わり「何を着たらいいのかわからない」と言っていた。いつもパジャマのような服装をしていた彼女には、パジャマを着ないことと、3日以上同じ服装をしないことを処方箋として提案した。パジャマは眠る時以外、体調が悪く気分が落ち込んでいる時に着るものであって、すでに気分が落ちているのにパジャマを着ていては負の連鎖を招くばかり。出勤する時の服装は明るい色を選ぶことをルールとして、彼女の性格上、黄色を着るように助言した。色については人それぞれだから、必ずしも明るい色が良いとは言えないが、黄色、ピンク、ターコイズは心に活気を与えてくれる効果がある。クライアントの性格によっては、暗い色の黒やグレーといった、安定感があり緊張感を解く色を提案することもある。私は花柄の着物を着用していたと前途したけれど、柄物も人によっては元気を与えることもあれば不安感を引き出す可能性もあり、誰にも当てはまるわけではないことを留意しておきたい。

——クライアント個々に合わせた提案を行っていると言うが、パンデミック後の傾向としてどのようなアドバイスをすることが増えた?

ドーン:アメリカでトレンドの一つとなっている“Kawaii(カワイイ)”スタイルは、人々の心理に良い影響を与えるため、提案することが増えた。自殺という言葉を口にしていた鬱状態のクライアントには、自宅でハローキティの絵柄が描かれた衣服やキャラクター物のソックス、ピンクのチュチュなどを着るよう処方した。幻想的な淡いパステルカラーの“Kawaii”スタイルは、癒し効果をもたらすことがある。日本の方には疑問に思われるかもしれないが、異なる文化で生まれ育ったアメリカ人の私やクライアントにとって“Kawaii”スタイルは新鮮でファンタジーで、日本人の視点とは異なって映るのだ。

——パンデミックの影響により、今後消費者はどのような服装を好む傾向になると分析する?

ドーン:たとえ効果的なワクチンが一般化されたとしても、ウイルスが終息することはなく、恐怖はいつだって私達と共にある。そのため人々は保守的になり、自身を保護する心理が強く働き、それが服装にも現れるだろう。例えば、マスク以外に帽子やサングラス、スカーフ、グローブといった肌を覆うアクセサリーの着用が自然と多くなると思う。別の視点では、ロックダウン中に自分自身と向き合う時間を設けたことで、人生の価値や生活の質について考える人も多かったはず。インスタグラムで見栄えの良い姿を披露することや、ファスト・ファッションの刹那的な消費方法ではなく、本質を追求したいという心理も働くはずだ。私から読者には「その服装は自分のため? 他人のため?」という質問を投げかけたい。

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