12歳のイラストレーター、Miracle-kunが作品を通して伝えたいハッピーな世界

沖縄県出身のアーティスト・イラストレーター、Miracle-kunが渋谷パルコで東京初となるポップアップ&作品展「Everybody gonna be Happy!!」を開催中だ。会期は3月21日まで。

Miracle-kunは、3月に12歳になったばかりの現役の小学生。これまでに沖縄県立美術館・博物館史上最年少で作品展を開催するなど、本格的なイラスト作品を発表し話題を集めている。そのかわいらしくユーモラスな作品の話題は、プロサッカー選手の本田圭佑の耳にも入り、彼のイラストにほれた同選手のYouTubeチャンネルで対談が実現したほど。

今回の作品展では、過去に発表した動物シリーズやスポーツシリーズに加え、新作の沖縄シリーズをプリントしたアパレルや雑貨も販売されている。同展の開催に合わせて、まだまだ幼なさが残る元気いっぱいのMiracle-kunに、アーティストになったきっかけや作品に込めた思い、そしてプライベートまでを、父親でアートディレクターの城間英樹さんを交えて聞く。

好きな漫画のキャラクターを描いたことから
イラストレーターとしてのキャリアがスタート

――まずはなぜMiracle-kunというアーティスト名なんですか?

Miracle-kun:父ちゃんに名付けてもらいました!

城間英樹(以下、父ちゃん):最初はアーティストになるなんてつもりはまったくなかったんです。名前の由来は、ごんちゃん(=Miracle-kun)は、毎日一度は僕ら家族を笑わせてくれるんですよね。そんな笑顔にしてくれるミラクルを起こすので、“奇跡の子”と呼ぶことにしたんです。

――学校では友達になんて呼ばれてる?

Miracle-kun:ごんくんが多いです。他には、『ポケットモンスター』に出てくる“カビゴン”と呼ばれたこともあります。

――笑顔になるとカビゴンに似てますね(笑)。では、イラストを描くようになったきっかけは?

Miracle-kun:9歳の時に描いたベジータです。『ドラゴンボール』が大好きで、集めていたカードを見ながら描きました。その絵を父ちゃんに見せたら、めちゃくちゃおもしろい! ってなって、いろいろ描くようになりました。

父ちゃん:ベジータが詐欺師みたいに見えたんですよね(笑)。それがすごくおもしろくて、SNSにアップしたら反応がすごくて。それでイラストを描いてみようって始めたんです。
僕はちょっとしたアドバイスはしますけど、技術的なことは教えてはいません。なのでMiracle-kunは、人物が絡み合った複雑な構図や情報量が多いものは苦手です。僕が教えているのは、心を込めて描くこと。心の部分ですね。

――ベジータの似顔絵をきっかけに、それからはどんなものを描くようになったのですか?

Miracle-kun:個展に向けてスポーツ選手を描き始めたんですけど、その中で一番初めはバスケットボールの選手です。

父ちゃん:作品展をやってみようということで、9歳からシリーズものにチャレンジを始めました。ちょうどオリンピックの開催が近づいていたので、まずはスポーツシリーズにしたんですよね。というのも、せっかく描くのならば本人はもちろん、みんなが知っているものを題材にしようと決めました。

Miracle-kun:そういえばムエタイの選手を描いた時は、父ちゃんと一緒にめちゃくちゃ笑いました。描きながら笑っちゃうほどおもしろく描けました!

――シリーズものに関してですが、スニーカーシリーズと寿司シリーズについて教えてください。

父ちゃん:スニーカーシリーズは、Miracle-kunが学校で履いている上履きを描いているのを見て、上手でおもしろい作品だったので、チャレンジしてみました。寿司シリーズに関しては、いつかは海外でも個展ができたらと思っていまして。その時にせっかくなら日本らしい題材を出品したくて、Miracle-kunの好物でもある寿司を僕からリクエストしました。

――最近では、地元沖縄の酒造「忠孝酒造」と12年にわたるプロジェクトがスタートしました。

父ちゃん:これは2021年から始まったプロジェクトなのですが、年に一度、計12年にわたってその年の干支にまつわる作品を発表していきます。今年はMiracle-kunの干支でもある丑年だったので、あと11作品、24歳まで続きます。

使うのはコピー用紙とマジックペン

――絵を描くのは好き?

Miracle-kun:はい! とても楽しいです!

――どのように描いているのですか?

Miracle-kun:コピー用紙を用意して、マッキーペンを使って写真を見ながら描いています。

――下絵はしないのですか? そして、ペンの太さは使い分けていますか?

Miracle-kun:下絵はしていません。1本のマッキーペンを使って一気に描きます。でも、今年からはもっと細かい部分まで描きたくて、太いマッキーペンから細いものに変えました。

――どのタイミングでどのくらい描いていますか?

Miracle-kun:普段は宿題に追われているので、休みの日に描いています。1枚描くのにだいたい3分から5分くらいです。描く時は6、7作品描いています。そして、1作品を4、5枚描くこともあります。そうしてその中から気に入ったものを選んで色を塗っていきます。

――Miracle-kunの作品は、元気がもらえるような色彩のポップさが魅力的です。配色はどうのように決めているのですか?

Miracle-kun:自分の頭の中にあるイメージで塗っています。

父ちゃん:色はその時の直感や感情で決めているようです。色塗りは、イラストレーターを使っているのですが、それはマジックで描いた作品をスキャンして、PC上で行っています。例えばマングースの配色は、写真すら見ずに本当に感情の赴くままに塗っていました。僕にはない色彩構成で本当に自由。その自由さがいいですよね。

――絵を描く際に大切にしていることは?

Miracle-kun:あります! 心を込めて描くこと集中して描くこと。そして、よく見て描くこと。この3つを大切にしています。

将来の夢は、イラストレーターでありプロゲーマー

――絵を描く以外に好きなことはありますか?

Miracle-kun:ゲームをすることです。将来の夢は、イラストレーターになることとプロゲーマーになることです!

――プロゲーマー! 好きなゲームはなんですか?

Miracle-kun:ニンテンドーのゲームやシューティングゲームが好きです。でも一番好きなのは、『フォートナイト』

父ちゃん:『フォートナイト』は特に好きみたいです。彼は自分でオリジナルのケータイケースを作ったのですが、そのケースには『フォートナイト』のキャラクターをモチーフにした家族を描いていました。

――ではライバルはいますか?

Miracle-kun:心くん(子役の寺田心)です! 同い年なので!

父ちゃん:(笑)。テレビに出てくると「ライバル! ライバル!」って言っていますね。友達でもなんでもないんですけど(笑)。同級生で自分より有名人なので、ライバル視しているんだと思います。

――本田圭佑選手のYouTubeチャンネルで対談をされていましたが、どういった経緯で?

父ちゃん:Miracle-kunがコラボレーションしているケータイケースのブランドがあるのですが、そのブランドが本田選手とも契約していたんです。その縁で、本田選手がMiracle-kunのことを知って、作品を気に入ってくれて、対談することになったんです。

――会ってみってどうでしたか? 緊張しましたか?

Miracle-kun:ペプシコーラのCMに出ていた人だって! サッカー選手というのはあとで教えてもらいました。緊張はあまりしませんでした。とても優しい人でした。

――先日12歳の誕生日を迎えたそうですが、今後チャレンジしたいことはありますか?

Miracle-kun:ゲームが好きなので、新しい作品としてゲーム機シリーズに挑戦しようと思います。あとは、中学生になるので学校に歩いて行きたいです。これまでは父ちゃんに車で送ってもらっていたので。

――では、最後にMiracle-kunが作品を見て感じてほしいことは?

Miracle-kun:少しでも多くの人にハッピーになってほしいです!

Miracle-kun
2009年生まれ、沖縄県出身のアーティスト・イラストレーター。3人姉弟の末っ子長男。幼少の頃から、姉と一緒に絵を描き始め、9歳から本格的にイラストレーターとしての活動をスタート。その作品は、展示会やSNSを通して話題を集め、テレビ、新聞、ネットニュースなど多方面で取り上げられる。これまでに、ミュージシャンのBEGINのツアーグッズをはじめ、アパレルブランドとのコラボレーションや、地元沖縄の名産、オキハムの新商品パッケージなどを手掛けるなど、幅広く活動中。
Instagram:@miracle.kun

■Miracle-kun Pop Up & Exhibition「Everybody gonna be Happy!!」
会期:開催中〜3月21日
会場:東京・渋谷PARCO 5F
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1
時間:11:00〜20:00
https://shibuya.parco.jp/event/detail/?id=2992

Photography Shinpo Kimura

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author:

相沢修一

宮城県生まれ。ストリートカルチャー誌をメインに書籍やカタログなどの編集を経て、2018年にINFAS パブリケーションズに入社。入社後は『STUDIO VOICE』編集部を経て『TOKION』編集部に所属。

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