TOKION × Wasted Youth TシャツデザインコンテストでVERDYが選んだ作品は?

7月に「TOKION」にて開催されたイベント「TOKION × Wasted Youth “I can’t waste my time anymore.”」と連動して開催された投稿型デザインコンテスト「TOKION × Wasted Youth T-SHIRT DESIGN CONTEST」。応募期間を設けて「もしあなたがTシャツを作るなら……?」というイメージから発想されるデザインをインスタグラム上で公募した。このコンテストには、世界各国からの応募があり、どれも非常に熱量の高い作品ばかりであった。その投稿作品の中から、個展の開催を控えるVERDYに気になった作品をチョイスしてもらった。

審査の日、プリントアウトした作品はテーブルいっぱいに広げられていた。何かのモチーフを形にした抽象的なグラフィックから、タイポグラフィや手描きのイラスト、CG作品など、バラエティ豊かな作品群を前に「この作品はどういう意味なんだろう。なんでこういうイラストになったんだろう。(選ぶのが)難しいな……」と呟きながら、1つ1つの作品に目を通していくVERDY。どれも良い作品なだけに、VERDYもすぐに「これ!」と作品を決めることはできず、審査には長い時間がかかった。
VERDYは「応募作品はどれも真剣に描かれたものばかりだったので見応えがありました。だから思っていた以上に選ぶのに時間がかかってしまいましたね。でも、作品を見ている時間は本当に楽しかったです。選んだ作品すべてに言えることなんですが、パッと見の印象が強く、目を惹かれたものを選びました」と審査の感想を述べた。
さて、熟考の上に選ばれたのは5作品について、どんな理由で選んだのか。さらに今回のコンテストを経て、VERDYが感じたのは、どんなことだったのかをインタビューする。

※作品に対するコメント掲載順序は作品の優劣によるものではなく、すべて同率になります。掲載は、質問の順番に記載しております。掲載している作品は、応募期間に投稿されたもののため、現在は閲覧できない作品もございます。

オリジナルのスタイルで描かれた作品に目を惹かれた

VERDY:この作品は、アメコミ調のイラストでスケートボードといった、自分の好きな要素が盛り込まれている作品だと思って選びました。今、僕が描く絵のスタイルはシンプルなタッチですけど、この作品のように細かく描きこむ時期もあったので懐かしい気持ちになりましたね。今回のテーマは前提に「Tシャツを作るなら」という条件がありますが、今作に関しては、純粋に良い絵だと感じました。

VERDY:対して、この作品はTシャツになった時のイメージが非常にしやすいですし、すでにTシャツとして販売されていても違和感がないぐらい完成されていると感じました。今回選んだ作品の中で、もっともコンテストのテーマに合っているデザインだと思います。

VERDY:この作品も自分のルーツに近い表現ですね。ハードコアを彷彿させるイラストなので、そこに目を惹かれて選びました。どこか親近感を覚えるものがあります。

VERDY:この作品は何歳の人が描いているのかわからないのですが、作品のタイトルやコメントから若い人だと思ってコメントしますね。きっとロックが好きな人だと思うんですが、もしバンドのデザインを仕事として引き受けたいと考えているのであれば、たくさん絵を描いて、自分の好きなバンドに作品を持ち込むなど、いろいろとチャレンジしていってほしいなと思います。僕自身、そのようにして絵を持っていったこともありますし、実際に使ってもらえた経験があります。音楽に関連するデザインをやっていきたいと考えている人であれば、ぜひ前向きに頑張ってほしいと思って選びました。

VERDY:この絵はとにかくインパクトがありますね。最初にたくさんの作品が並んでいる中で、すぐに目が行った作品です。それで審査中にずっと気になっちゃったんです。「なんで孔雀なんだろう!?」って。応募してくれた人は、それぞれストーリーに沿った作品を作っていると思うんですけど、今回、僕が見たかったのはオリジナリティを表現している人の作品なんですよね。そういう意味でも、この孔雀にこのフォントというのは、自分には想像できないし、新しいと感じました。画力も高いですよね。そこも斬新だなと選びました。

その人自身にしかないスタイルで描かれた作品を見たい

——応募作品の中には「Wasted Youth」や「Girls Don’t Cry」を彷彿させるタイポグラフィも多かったですが、そういった作品を選ばなかったのはなぜですか?

VERDY:メッセージで伝えるというのは自分のスタイルなんですよね。僕の場合は、イラストやデザインにオリジナリティが欠けていると考えているので、このスタイルに至ったんです。誰もがメッセージをデザイン化して発信すれば良いと考えているわけではないんですよね。

——自分のスタイルに沿った作品を募集したかったわけではないということですね。

VERDY:はい。その人自身にしかないスタイルで描かれた作品を見たいと考えていたので、中には作品としてクオリティの高いタイポグラフィやメッセージ性があるものもあったんですが、今回はあえて選びませんでした。自分に近い表現で作られたものよりも、オリジナリティがあって、新しいと感じられるもののほうに惹かれましたね。

——VERDYさんにとっては自身が審査する初めてのデザインコンテストとなったわけですが、実際にやってみて、どう感じられましたか?

VERDY:純粋におもしろかったです。けれど、もうちょっとテーマやモチーフ、作品の表現手段など、お題を明確に決めてもよかったのかもしれませんね。人によっては何を頑張って作品を描けばいいのか、わからなかった人もいるかもしれません。ただ、自由だからこそおもしろい作品はいっぱいあったし、選んでいないけど良いものがたくさんあったので、そこはとても嬉しかったです。

——今後もコンテストは開催したいと思いますか?

VERDY:もし機会があったら、やってみたいと思います。ただ、その時は実際に作品を送ってもらったほうが良いのかもしれないですね。モニターからでは伝わらない熱量があると思うし、原画だと見え方が変わってくると思うので。そしたらもっと選んでいた作品も違っていたかもしれません。そういったことも考えられたので、とても良い機会になりました。今回参加してくれたみなさんに感謝しています。

「TOKION × Wasted Youth T-SHIRT DESIGN CONTEST」でVERDYが選んだのは、今回の5作品。審査後にVERDYが語ったように、どの作品もおもしろさがあった。オリジナリティがあるものというのは、デザインを表現する上で非常に重要なこと。今回の応募者がプロとして活動している人なのか、趣味として絵を描いている人なのかはわからないが、グラフィックや絵が好きで描いている人は、今後もたくさんの作品を作りながら、自分だけのスタイルを見つけていってほしいと思う。最後になるが、今回のコンテストの応募作品すべてに大きな拍手を!

VERDY
グラフィックアーティスト、VK DESIGN WORKS所属。「Girls Don’t Cry」「Wasted Youth」の生みの親であり、国内外問わずブランド、アーティストとコラボレーションを手掛ける。現代ファッションシーンを代表する人物の1人。12月9日まで「カイカイキキギャラリー」にて、個展「RISE ABOVE」が開催中。
Instagram:@verdy

Photography Tetsuya Yamakawa
Text Ryo Tajima

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TOKION EDITORIAL TEAM

2020年7月東京都生まれ。“日本のカッティングエッジなカルチャーを世界へ発信する”をテーマに音楽やアート、写真、ファッション、ビューティ、フードなどあらゆるジャンルのカルチャーに加え、社会性を持ったスタンスで読者とのコミュニケーションを拡張する。そして、デジタルメディア「TOKION」、雑誌、E-STOREで、カルチャーの中心地である東京から世界へ向けてメッセージを発信する。

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