連載「ヨーロッパのJビューティ通信」Vol.3 “心身を慈しむ”日本の美容文化に魅了されて オランダECサイト「ステレ・ローズ・ビューティ」

欧米の美容業界で注目を集める“Jビューティ”。伝統的に培われた美意識と、概念や習慣に由来する日本の美を象徴した美容法が、世界中の人々の日常の一部へと浸透し始めた。連載「ヨーロッパのJビューティ通信」は、欧米で知名度を上げるJビューティブランドを紹介し、日本古来の美容法を深く掘り下げていく。同連載の監修を行うのは、パリ在住20年以上で、日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」の須山佳子代表。ヨーロッパのJビューティトレンドの立役者である彼女がオススメするブランドの魅力と、各々が捉える日本の美意識に迫る。

第3回は、日本の美容ブランドを専門に取り扱うオランダのECサイト「ステレ・ローズ・ビューティ」。創設者兼ディレクターのステレ・ローズ・スパレボームをよく知る須山は、「オーガニックでクリーンな製品にこだわり、ECだけでなく定期的にポップアップやPRイベントも開催していて、オランダのJビューティのアンバサダー」と紹介する。ステレは、長年ナチュラルビューティを探求する末にたどり着いたのが、Jビューティだったと語る。日本での美容研究を目的 とした旅を通して、美容だけでなくウェルビーイングや哲学にも魅了されていき、世界中の女性のセルフケアのためにJビューティに特化したECサイトの立ち上げに至った。沖縄での発見や日本独自の美意識、昨今の消費者のウェルネスへの意識の変化について語ってもらった。

沖縄の女性達が行うホリスティックなアプローチは、自分自身を慈しむための一貫した儀式のよう

−−まずは、ECサイト「ステレ・ローズ・ビューティ」について教えてください。

ステレ・ローズ・スパレボーム(以下、ステレ):シンプル・純度・効能に基づいて、自然成分、感覚的なケア、マインドフルで高い効果を発揮する日本の美容ブランドを、個人的な視点からセレクトしたナチュラルスキンケア&ウェルネスブランド専門ECサイトです。現在、10のニッチなJビューティブランドを取り扱い、厳選したビューティセットを提供しています。2019年4月にローンチして以来、世界中へと配送を行っています。個々の要望に応じたパーソナルサービス、最高品質のナチュラル製品、信頼性の高い美容アドバイスを提供することが、私達の重要な優先事項の1つです。

また、エコサート認証を受けた沖縄産のエコラグジュアリースキンケア製品である「ルハク」の、オランダでの独占販売代理店とコンサルティングも行っていて、アムステルダムの多くの美容サロンで展開しています。「ルハク」はベストセラーであり、私の個人的なお気に入り製品でもあるんですよ!

−−Jビューティに特化した「ステレ・ローズ・ビューティ」を立ち上げた経緯とは?

ステレ:昔からずっとナチュラルビューティとホリスティックなスキンケアに情熱を持っていて、常に自分の肌を自然にケアする最も良い方法を探求してきました。2018年、肌に優しく効能の高いJビューティのナチュラルスキンケアについて読み、試してみたいという意欲に駆られましたが、当時オランダの市場では取り扱われていませんでした。

そこで、Jビューティに没頭するため、“日出ずる国”日本へウェルネス旅行に出ることに決めたのです。日本独自のスキンケアについて研究し、多くのJビューティブランドと会い、広範な美容研究を実施しました。中でも、健康で長寿な人々が数多く居住するブルーゾーンで知られる沖縄でのスキンケア研究は、私のJビューティへの情熱に火をつけました! 沖縄の女性達と触れ合う中で、彼女達の肌をケアする方法に夢中になりました。ホリスティックなアプローチは内面の健康状態が肌へと現れており、自分自身を慈しむための一貫した儀式のようです。

−−各国に独自の美容文化がある中で、なぜJビューティにそれほど惹きつけられたのでしょうか?

ステレ:私にとってJビューティは、スキンケアに求めるすべての条件が完璧にそろっています。それは、効能のあるナチュラル成分(ゆず、緑茶、椿、米ぬか)、テクノロジーを組み合わせた革新性、水分補給と優しいケア、シンプルなステップ、高品質のパフォーマンスなど。そして、江戸時代にまで遡る100年前の芸者の美しさの秘密と、ホリスティックな哲学に、深い関連性があることも魅了される理由の1つです。

−−オランダと日本、美容文化の共通点・相違点は何ですか?

ステレ:両国の美容文化はかなり違うと思います。似ている点の1つは、オランダの女性は日本の女性と同じように、ギミックのあまりないシンプルな製品を好むこと。効果的で信頼性の高い製品を使用したシンプルなルーティンが長く愛される傾向にあります。

一方で、主な違いの1つは、日本の美容文化はより洗練されていることです。それは美の伝統の豊かで象徴的な歴史が背景にあるからでしょう。一般的に、日本の女性はスキンケアルーティンに専念し、長年、一貫したステップを持っているのだと思います。将来的に発生しうる肌の問題に対する予防的なアプローチや肌の保護について、若い年齢から始めているというのも日本の美容の特徴的な点です。

−−昨今Jビューティがこれほど人気になっている理由は何だと思いますか?

ステレ:消費者は、ウェルネスについて大局的な視点で捉え、生活のあらゆる面で個人のウェルビーイングを優先しています。全体的な調和とバランスの取れた健康的なアプローチは、Jビューティと非常に密接な関係にあると思います。

消費者は、高品質で高性能な製品に意識を転換しました――“量より質”で“少ない方が良い”というアプローチ。美容とウェルビーイング全般の製品に対して、人々が高い水準を求めているのは私にとって嬉しいことです。

自然を無条件に愛し、慈しみ、真の愛情と責任を後世に継承することは日本の伝統

−−“日本式の美容法”と呼ばれるJビューティについて、どのように定義しますか?

ステレ:Jビューティとは、日本の美容業界に関連する美容文化、哲学、習慣、技術、製品の総称です。その洗練された美容文化は、最高の美容基準で製造された最高品質のスキンケアを生み出しました。

Jビューティは水分補給、保湿、鎮静化の効果をもたらし、肌に優しいアプローチですべての肌タイプに適応します。10段階のステップではなく、有効成分を含む少数の製品を優先し、朝と夜、4つの能率化された段階で高品質の製品を使用する美容法です。

−−「ステレ・ローズ・ビューティ」の顧客から、どのようなフィードバックを受け取っていますか?

ステレ:リピートしてくださるお客様も多く、たくさんの肯定的なフィードバックを受け取るたびに、私は本当に喜びを感じています! 多くの女性が私と同じくらいJビューティにほれ込んでいるのだと気付いた時、とても嬉しく思いました。「私達がセルフケアを行うのを手伝ってくれる、あなたの情熱に感謝します」というレヴューが最もお気に入りの1つです。深く感動し、これこそが私を突き動かすモチベーションとなっています!

−−美容以外で、あなたが日本からインスピレーションを得る要素とは何ですか?

ステレ:自然との関係性がインスピレーションになってくれます。日本は、現代世界において人類と自然の間で最も結びつきが強く、最も親密で、調和の取れた関係を持っていると考えられています。自然を無条件に愛し、慈しみ、真の愛情と責任を後世に継承することは日本の伝統でもあります。

また、日本の美的原則である“禅”の哲学にも触発されます。例えば、静けさや寂しさ、活気に満ちた冷静さを意味する“静寂”。これは日本庭園にいる時の心の状態に関連しています。静寂の反対の表現は、騒音や妨害です。私達はどのようにして“アクティヴな落ち着き”や“静寂”を、日常にもたらすことができるのかを考えています……。

−−最後に、今後のヴィジョンについて教えてください。

ステレ:Jビューティブランドの取り扱いを拡大し、多くの人に楽しんでもらえるコンテンツと体験を通じて、さらに活気づけることを計画しています。過去には2019年に、製品を試用してもらい、美容トリートメントの施術や抗酸化作用のある日本製のお茶を試せるジャパニーズ・ビューティ・スタジオというイベントを開催しました。今後は、B2Bのネットワークを強化することで、個人的なサービスを継続的に改善し、お客様の生活に付加価値を与えられるようなサービスを提供していきます。

何よりも、日本の美容哲学と製品を通して、個々の美しさのバランスとウェルビーイングな感覚を得られるようお手伝いし続けたいと思っています。

ステレ・ローズ・スパレボーム

ステレ・ローズ・スパレボーム
日本製のナチュラルスキンケア&ウェルネスブランドを専門とするECサイト「ステレ・ローズ・ビューティ」創設者兼ディレクター。オーガニックスキンケア、アロマテラピー、ウェルネス、ホリスティックビューティ製品を独自の視点で厳選し、世界中にいる顧客へと届けている。

Photography Nanda Hagenaars

須山佳子

須山佳子
東京都生まれ、パリ在住20年。INSTITUT FRANCAIS DE LA MODE でブランド経営学のMBAを取得。2010年に日本からヨーロッパ市場への進出、ブランド戦略、セールス、コミュニケーション専門のコンサルティング会社「デッシーニュ」を立ち上げる。2016 年、Jビューティとライフスタイルブランドをキュレーションするコンセプトプロジェクト「Bijo;」を主催。取引先はハロッズ、ボンマルシェ、リッツ・パリ、セフォラなど大手デパートからセレクトショップまで約20ヵ国、150店舗。

Direction Keiko Suyama

author:

井上エリ

1989年大阪府出身、パリ在住ジャーナリスト。12歳の時に母親と行ったヨーロッパ旅行で海外生活に憧れを抱き、武庫川女子大学卒業後に渡米。ニューヨークでファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。ファッションに携わるほどにヨーロッパの服飾文化や歴史に強く惹かれ、2016年から拠点をパリに移す。現在は各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビューの他、ライフスタイルやカルチャー、政治に関する執筆を手掛ける。

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