連載「The View My Capture」Vol.7 写真家・遠藤文香がコロナ禍で他者との繋がりや親密さを初めて感じた瞬間

気鋭の若手写真家を取り上げて、「後ろ姿」という1つのテーマをもとに自身の作品を紹介する連載企画。後ろ姿というのは一見して哀愁や寂しさを感じられることが多いが、見る対象や状況によっては希望に満ちたポジティブな情景が感じられることもある。今回は自然における人為の介入をデジタル加工で模し、アニミズム的な自然観をテーマに写真作品を制作する写真家・遠藤文香。コロナが流行して間もない頃に作り出された彼女の写真から切り取る「後ろ姿」とは。

愛のまなざし

あなたが見逃したもの、見ることを選ばなかったけどそこにあるもの、見えないけどそこにあったもの。背中の後ろで見逃し続けることで、何かを見続けることができるのかもしれない。

これらはコロナが流行して間もない頃に作り出した写真。

ほとんど外の世界から遮断された時に感じた孤独や疎遠さは、わたしをただ1つの生命に立ち返らせるような気がした。

彼等の背中に光を当て、弱さと同時に強さや美しさを見出す時、私は愛そのものになり、他者との繋がりや親密さを初めて感じることができるのだと思う。

社会的な動物である人間という肩書すらも揺らぎ始め、やっとあらゆる生命に等価なまなざしを向けられる気がした。

日常から少し離れた場所で、どこか現実的ではない瞬間、見たことのない景色を見て自分の心が動くことを常に求めている

−−写真を始めたきっかけは?

遠藤文香(以下、遠藤):中学生の時、祖母にカメラを買ってもらい、学校生活で友人を撮り始めた。今はもうほとんど残っていない感覚だけど、毎日一瞬も忘れたくないという気持ちだけでシャッターを押していた。

−−シャッターを切りたくなる瞬間は?

遠藤:今は日常の中でスナップを撮ろうという気持ちはほとんどなくなってしまった。むしろ今は日常から少し離れた場所に移動することが、写真を撮ることに繋がっている。

どこか現実的ではない瞬間、見たことのない景色を見て自分の心が動くことを常に求めている。

−−オンとオフで愛用しているカメラは?

遠藤:オフは iPhone 13pro、オンは「ニコン」の一眼レフ。

−−インスピレーションの源は?

遠藤:自然、絵画、友人。

−−今ハマっているものは?

遠藤:夢日記。昔から海やプール、温泉、お風呂といった水の中にいる夢ばかりを見るのが興味深い。真っ青な深海で50mくらいある巨大な鯨の群れを見ている夢はとても神秘的だった。

−−今後撮ってみたい作品は?

遠藤:いつも観光客のような視点で撮影している感覚があるから、もう少し長い時間をかけて対象と向き合うような丁寧な制作はいつかしてみたい。

今一番撮影しに行きたいところはアイスランド。海が好きだから漠然といつか水中写真も撮りたいと思っている。

−−目標や夢は?

遠藤:動物や自然を撮った「Kamuy Mosir」というシリーズの続編として展示をすること。その写真集を出すこと。どうか作り続けていてほしい。

遠藤文香
東京藝術大学大学院美術学部デザイン科を修了後、東京を拠点に活動している。最近は自然における人為の介入をデジタル加工で模し、アニミズム的な自然観をテーマに写真作品を制作する傍ら、ファッションの分野でも活躍している。主な展示に個展「Kamuy Mosir」(2021、東京)主な受賞にキヤノン写真新世紀2021 佳作入賞(オノデラユキ選)等。
Instagram:@e__n__d__

Photography & Text Ayaka Endo
Edit Masaya Ishizuka(Mo-Green)

author:

mo-green

編集力・デザイン思考をベースに、さまざまなメディアのクリエイティブディレクションを通じて「世界中の伝えたいを伝える」クリエイティブカンパニー。 mo-green Instagram

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