気鋭の若手写真家を取り上げて、「後ろ姿」という1つのテーマをもとに自身の作品を紹介する連載企画。後ろ姿というのは一見して哀愁や寂しさを感じることが多いが、対象や状況によっては希望に満ちたポジティブな情景が感じられることもある。今回は桑沢デザイン研究所在学中にキヤノン写真新世紀優秀賞を受賞し、数々のメディアで活躍する写真家・草野庸子。既存の作品と新たに撮り下ろした作品で構成された彼女が表現する「後ろ姿」とは。
心の中に嵐があって
背中に集まる光を見つめる
よく通る道にお気に入りの家がある。
数年前から気になっているその家は、くすみがかった白壁でのっぺりとしていながら不思議な存在感があって、他の立ち並ぶ家達とは違った雰囲気を醸し出している。
よく立ち止まってその家を撮る。いつもより1歩下がってみたり、ギリギリまで近づいてみたり。
そんな時誰かの背中を思い出す。先に歩いている人の数歩後ろからひっそりとシャッターを切るような。
そこに「在る」とわかっているものでも触れられないものは多い。
理解はすべての誤解、とも言えるということを考える。
たまたまそこにカメラがあって、私が居ることで、写し出される瞬間。そんな大袈裟じゃない写真が好き
−−写真を始めたきっかけは?
草野庸子(以下、草野):桑沢デザイン研究所在学中に友人達をフィルムで撮り始めたのがきっかけです。
−−シャッターを切りたくなる瞬間は?
草野:私が介在していてもいなくても同じ景色が流れている、たまたまそこにカメラがあって、私が居て、シャッターを切ったことによってその一瞬が残る、ということが好きです。
大袈裟じゃない写真が好きです。
−−オンとオフで愛用しているカメラは?
草野:オンオフの差というものを意識したことはそこまでないのですが、最近は110カメラをよく持ち歩いています。
−−インスピレーションの源は?
草野:散歩が好きで、知っている街も知らない街もよく歩きます。
−−今後撮ってみたい作品は?
草野:次の作品はタイで撮影をしたいと思っています。
−−目標や夢は?
草野:作品を作り続けること。