連載「ぼくの東京」vol.6 「カメラを片手に東京を旅する日々」 海外生活も長いE-WAXがその感性で東京を眺めるストーリー

ぼく・わたしにとっての「東京」を紹介する本連載。第6回は、ロンドンやアメリカでも暮らしてきたE-WAXが東京で感じること。

東京を移動する間に生まれた写真というアート

「Major Force」の創設者であり、サウンドクリエーターのK.U.D.Oを父に持つE-WAXは、3歳から8年間をロンドンで過ごす。その後は日本に戻り、国内を転々とし、22歳で東京へ。「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)」(以下、「ソロイスト」)デザイナーの宮下貴裕との出会いがきっかけだ。

「東京へ出てくる前は母の実家である岡山で暮らしていたんですけど、そこで絵を描いていて。作品がたまってきたので誰かに見せたいと思った時、父に相談したら、宮下さんを紹介してくれました。周りで一番写真やアートに詳しい人だからと。『ソロイスト』というブランドをやっている方です。早速作品を持って南青山にある彼の事務所へ行きました。とにかくかっこいい人、そんな印象が強く残っています」。

E-WAXの作品を気に入った宮下との縁があり、22歳から4年ほど彼のショップで働くことに。土地勘もなかったため、不動産屋にすすめられるまま、なんとなく羽根木公園の近くで暮らし始める。そこから青山にあるショップへ自転車で通勤する日々。通勤の間に、自分の感性に響いたものを写真に撮る。そのルーティンがいつの間にかあたりまえになっていた。

「自分のセンサーに反応したものは撮るようにしています。人もモノも。テーマは特に決めているわけではないんです」。

ニューヨーク暮らしで感度はさらに深いものに

取材当日、夏のように暑い東京でE-WAXが最初に暮らし始めた羽根木公園から出発。自転車に乗り、以前働いていた青山のソロイストまでの通勤経路を巡った。雨の日も自転車で通っていたという道のりは4年間ほぼ変わらず。しかし、そこにある風景は日々変化する。代田橋を通って、代々木公園を抜けていく途中で彼は何度もシャッターを切った。信号待ちしていた紳士を交差点でのすれ違いざまにパシャリ。写っているのかどうかもわからないタイミングだ。すぐにカメラをチェックした彼は「よっし、写ってた!」と笑顔を見せる。そこにはとてもおしゃれなネクタイをした紳士の姿があった。

「全部出会いなんで。毎日撮れるものでもなく、ゼロの時ももちろんあるんですよ。でも、できる限り自分の見ている東京をSNSなどで発信していくうちに、周りの知り合いにおもしろいねと言われるようになって。そこからファッションの写真を撮影する仕事も振ってもらえるようになり、今がある感じですね」。

そのうちに、何かを成し遂げたいという気持ちが芽生え、27歳で単身ニューヨークへと向かったE-WAX。

「自分のスタイルを切り開きたいと思い、もっと追求し始めたのはニューヨークに行ってからです。今振り返るとライバルは多かった。結果を出して生きている人ばかりなので。住む世界が違うなと思いながらも負けたくないという気持ちもあった。以前から撮りたいものは変わってないんですが、ニューヨークから帰ってきて、明らかにそのセンサーの感度が高くなったと感じています」。

東京に、日本に恩返しがしたい

「写真を仕事にできているのはもちろん嬉しいですけど、それ以上に日本の写真の風潮に思うことも結構あって。それを変えていきたいという気持ちがあります。もっと頑張らなきゃいけない。今はその気持ちの方が大きいですね」。

現在は自身が撮影した写真をタブロイド紙にし、2号目も発表したE-WAX。依頼を受ければ、自ら自転車で新聞配達をするという独自のスタイル。

「気に入ったページだけ破いて飾れるようになっています。新聞の号外ってありますが、いつ作ってるんだっていうくらい究極のスピード。そんな感覚っておもしろいなと思うんです。入場料払って写真を見るとか、何万円も払って写真集を買うとかじゃなく、自分なりの方法で発信をしていきたいです」。

誰もが見たことがあるだろう日常を印象的に切り取る。その視点は写真を始めた頃からブレてない。だから、4年間通った通勤路で撮影した写真も、今日撮影した写真も同じ時代のように感じさせる。

「誰かを待つ立ち姿とか、足の組み方とか、時代が止まったようなファッションをしている人を思わず撮影してしまうことが多いかも」と語る通り、E-WAXの視点で見る東京はどこかノスタルジックでとてもリアルだ。

E-WAX
フォトグラファー&ペインター。サウンドクリエイターのK.U.D.Oを父に持ち、3歳から8年間ロンドンで暮らす。22歳で上京し、「ソロイスト」のショップマネージャーを勤め、その時に写真とも出会う。27歳からはニューヨークへ。本格的にアーティスト活動を始め、帰国。現在は東京を拠点に活躍中。

Photography E-WAX
Text Akemi Kan
Edit Kana Mizoguchi(Mo-Green)

author:

mo-green

編集力・デザイン思考をベースに、さまざまなメディアのクリエイティブディレクションを通じて「世界中の伝えたいを伝える」クリエイティブカンパニー。 mo-green Instagram

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