気鋭の若手写真家を取り上げて、「後ろ姿」という1つのテーマをもとに自身の作品を紹介する連載企画。後ろ姿というのは一見すると哀愁や寂しさを感じられることが多いが、見る対象や状況によっては希望に満ちたポジティブな情景が感じられることもある。今回は専門学校で映像を学んだ後に写真の世界へと進み、国内外のファッション誌を中心に活躍する写真家・刈馬健太。「濃い霧の中で、何かを見つめている感覚だ」という彼が表現する「後ろ姿」とは。
刈馬健太
長野県生まれ。専門学校卒業後、単身渡米。 主に国内外のファッション誌や雑誌、ブランドヴィジュアル、アーティスト、ジャケット写真等で活躍。
Instagram @kenta_karima
ミエナイもの、
濃い霧の中で、何かを見つめている感覚だ。
後ろ姿とは、靄がかかっており「完全にこれだ」とは把握することのできない物事だと思っている。
目で見えているという感覚を視覚化し、更にはカメラというツールを通して写し出すとそれはボヤけていることになる。
それらを探ろうとしたり、理解する必要性は今の段階では感じてはいない。
その領域は人それぞれで、自然もしかり。
なので、固定観念、先入観の中で後ろ姿を、「見ている」と「見ていない」の間を追っているのかもしれない。
決してネガティヴなことを言っているのではなく、すべての物事を客観視、ヒキ絵で見ることで人生観や、生きてきた証、オーラがわかる。
それらを知り過ぎることは怖いことでもあるので、ある程度の距離感でファインダー越しにシャッターを切っている。
一見すると、シャッターを切る行為は自由と思うかもしれないがそう単純なことでもない。何か未来を見据えた時に、その時の感覚値レベルとの相性が合うことで後ろ姿を捉えられる瞬間が生まれるのかもしれない。
それは自分に対しての呪縛であり、人生観でもある。
そして宿命の楽しさでもある。
専門学校で映像を学び、卒業後に渡米した先で出会ったタイ人の映像ディレクターの言葉が写真を始めるきっかけ。
−−写真を始めたきっかけは?
刈馬健太(以下、刈馬):もともとは映像を学びに専門学校に通っていました。卒業後、単身渡米し、ロサンゼルスのとある学校でタイ人の映像ディレクターに出会い、彼からうるさく「君は写真を撮った方が良い」と言われてそのままカメラを購入しに行ったのを今でも鮮明に覚えています。今では神のお告げかも、と思っていて本当に感謝しています(笑)。
−−シャッターを切りたくなる瞬間は?
刈馬:映像を先に学んでいたのもあって、僕が視覚化するもの全てはコマ送り(映像の24、36フレーム)のような世界が目の前で映し出されていて、その1フレームの到達点が良いか良くないかが、シャッターを切るか切らないかになります。
−−オンとオフで愛用しているカメラは?
刈馬:オンは「ニコン F3」、「コンタックス G2」、「ペンタックス 67」、「マミヤ RB67」、「リコー GR1」。オフは「ヤシカ T4」、 「リコー GR1」。
−−インスピレーション源は?
刈馬:今、目で見ているすべてのコト、モノ等。
−−今ハマっているものは?
刈馬:漫画発掘、収集。ラーメン店巡り。
−−今後撮ってみたい作品は?
刈馬:作品ではないですが、写真の本質とは何かを常に考えています。今はそれを見つけている最中です。
−−目標や夢は?
刈馬:写真集作成。いずれニューヨークへ行くこと。
Photography & Text Kenta Karima
Edit Masaya Ishizuka(Mo-Green)