気鋭の若手写真家を取り上げて、「後ろ姿」という1つのテーマをもとに自身の作品を紹介する連載企画。後ろ姿というのは一見すると哀愁や寂しさを感じることが多いが、見る対象や状況によっては希望に満ちたポジティヴな情景が感じられることもある。今回は、雑誌やアーティストの撮影を中心に活躍する写真家・八木咲の作品。彼女が「後ろ姿」を通して、被写体である“あなた”が見ている世界を見た時に、感じたこととは。
八木咲
埼玉県出身。日本大学芸術学部写真学科卒業。2022年に公開されたドキュメンタリー映画『重力の光:祈りの記録篇』では撮影監督を担当した。
Instagram:@yagisaki_
http://sakiyagi.com
光の中で
あなたと一緒にいるとき、少し後ろであなたが見ている世界をあなたごと見る。
そうすると、世界が光に満ちていることに気が付き、その時間は少しだけ光に触れることができる。
あなたが光の中にいることで、わたしは闇の中にいながら世界と繋がることができる。
同じ世界を生きているから。同じ世界と繋がっているから。
わたしたちはバラバラのまま生きていて、それぞれの目をもちながら同じ世界をバラバラに記憶している。
バラバラのまま繋がりたいと思っているので、わたしの目はあなたの目にはなれない。
だけどあなたの見ている世界を信じたい。
あなたの見ているわたしを信じたい。
そうやって今日も少し離れて、あなたの後ろ姿を眺める。
あなたの見ている世界はどんなひかりだろうか?
忘れそうなことを忘れないでいたいと思う時に、シャッターを切る。
−−写真を始めたきっかけは?
八木咲(以下、八木):実家が写真館ということもあって、気が付いた時には写真を撮っていました。
−−シャッターを切りたくなる瞬間は?
八木:忘れそうなことを忘れないでいたいと思う時。
−−オンとオフで愛用しているカメラは?
八木:特に決まったカメラはないですが、なにかしらのカメラはいつも持ち歩いています。
−−インスピレーションの源は?
八木:夜明け前や森の静けさ、水の中で浮かんでいる時など静かな時間にいろいろなことを考えます。
−−今ハマっているものは?
八木:今拠点にしている場所は人や車の音が絶えないので、湯船に水をはって耳まで入り、自分の呼吸を聞きながら耳を休ませています。
−−今後撮ってみたい作品は?
八木:今は特に思いつきません。日々を過ごしていく中で見つけると思います。
−−目標や夢は?
八木:平和を探すこと、小さな平和を繋ぐこと。
Photography & Text Saki Yagi
Edit Masaya Ishizuka(Mo-Green)