アーティスト・SHUN SUDOが個展「Blowin’ in the Wind」に込めた平和への想い

東京とニューヨークを行き来しながら活躍するアーティスト・SHUN SUDO。

独学でたどり着いた「クラシックな水墨画のような絵の上にポップな絵を描く」という作風が人気となり、アート業界だけでなく、多くの企業ともコラボを行っている。そのSUDOが国内では 5 回目となる個展「Blowin’ in the Wind」を東京・elephant studio(エレファントスタジオ)で開催。会期は7月9日から24日までで、新作の原画9点の他、初となる石版画作品 3点、石版画+ペインティング作品6点なども展示・販売する。

本展の開催にあたりSUDOは、「日々世界から飛び込んでくるニュースに少しずつ心が削られていた。僕はその削られた部分を埋めるように絵を描いた。絵の中で武器を葬り、銃弾を花に変え、絵を描きながら命について考え、平和を祈った。 僕にはそんなことしかできない。でも僕の絵を見た誰かが、誰もが笑顔で語りあい、笑いあえる世界を守りたいと思ってくれたら、それだけで僕は十分だ」とコメントを発表した。

一見するとポップに見える作品の中に、自身の平和への想いを反映したというSUDOに、個展会場で話を聞いた。

——個展のタイトルとなっている「Blowin’ in the Wind」について、これはボブ・ディランの曲名(邦題「風に吹かれて」)から名付けたんですか?

SHUN SUDO(以下、SUDO):そうですね。今回の展示作品はロシアのウクライナ侵攻が行われているという現状の中で、アーティストである自分がどういった絵を描けるのかを考えて、「反戦」を裏テーマとして掲げて制作しました。

この「Blowin’ in the Wind」というタイトルは、すべての絵を描き終わってから最後につけたんですけど、「Blowin’ in the Wind」の歌詞の中に「答えは風にふかれている」という一文があって、答えを明確にしない感じが、僕の絵に対する考えとリンクする部分があって共感したので、この展示タイトルにしました。

——作品の中に手榴弾やバズーカー、ヘルメットなど戦争のモチーフが描かれていますが、一見するとポップな作品なので、言われないと気付かないかもしれませんね。

SUDO:テーマを全面に出すのが好きじゃなくて、「よく観るとわかる」くらいの感じが好きなんです。僕としては、まずはポップな絵を観て楽しんでもらって、元気になったとか、刺激を受けたとか言ってもらえれば、それが一番。その上で、その絵の中のテーマをくみ取ってもらえれば、なお嬉しいという感じです。アートっていうと難しく感じる人もいるかもしれませんが、僕の作品はまずは観たままに楽しんでもらえればいいなと思っています。

——SUDOさんの作品では、花が印象的に描かれていますね。

SUDO:これは花とボタンを組み合わせた「ボタンフラワー」といって、僕の作品ではピースアイコンとして描いています。花が持っている癒やしのイメージに、世界をつなぐという意味のボタンを組み合わせたもの。

服のジャケットを世界地図に見立てた時に、ボタンは生地と生地をくっつけるものとして存在するので、この「ボタンフラワー」には、日本が世界をつなげられる存在になればという思いを込めています。

——鮮やかな赤やオレンジといった色も印象的です。

SUDO:今回は反戦を裏テーマにしているので、冷たい印象の寒色は使わないようにして、エネルギーを感じる暖色系でまとめました。特に赤は、日本の日の丸や、情熱の色でもあって、観ると元気になれるので好きな色です。

——今回のように作品を作る際には、世の中の時事に関しての想いを込めるんですか?

SUDO:毎回ではないですが、タイミングによっては、そういうこともあります。例えば、2020年にコロナ禍になった時は、1人のアーティストとして、その時に感じたことを作品と記録に残したいと思って、「2020」という個展を2020年の年末に開催しました。今回は戦争という大きな出来事があって、しっかりと作品に残しておくべきだと思って、こうしたテーマで個展をすることにしました。

「初めての石版画には手応えを感じた」

——今回の展示では石版画(平らな石の上に描画し、印刷する版画)も初めて挑戦されましたが、きっかけはなんだったんですか?

SUDO:前からお世話になっている版画摺り師の尾崎正志さんに、今回は石版でやってみたらと言われたのがきっかけです。ピカソなど昔の画家も石版画をやっていたので、自分がその古い手法でやってみたらどうなるかなと思い、今回チャレンジしました。

——実際にやってみて、手応えはありましたか?

SUDO:おもしろかったです。石の持つ力というか、石に描かされる感覚がありました。

——新しい手法を使用することで、作家としての可能性も広がりましたか?

SUDO:そうですね。僕はペイントオーバーという手法で、“クラシックな絵の上に現代の人がポップな落書きをする”っていうコンセプトでやっていて、そのベースとなる絵をより歴史のある石版画で刷ることで、コンセプト的にもより強度が増す感じはありますね。

——今後も継続的に石版画の作品は作っていくつもりですか?

SUDO:今回やってみて、白黒だけでもかなり完成度が高いと感じたので、ペイントも含めて、モノクロの作品だけの展示もやってみたいなと思いました。

——NFT作品を作る予定はありますか?

SUDO:そういうお話も結構いただいていて、興味はあるんですが、まだ自分から率先してやろうという感じではないですね。どこかでタイミングがあればという風には考えているんですけど、今は自分1人で体を使って作っているので、それはフィジカルで観てもらいたいという気持ちですね。

——以前のインタビューではニューヨークにも拠点を持って制作するということも話していましたが、すでに動いてたりするんですか?

SUDO:コロナが明けたらと思っていたんですが、まだまだどうなるかわからないので、今年1回行ってみて、来年には本格的に向こうにも拠点を持ちたいなと考えています。ニューヨークっていい意味で住みづらくて、生きている実感がして、常に刺激があるんですよね。そうした環境で作品を作ってみたいなとは思っています。

——これから挑戦したいことはありますか?

SUDO:彫刻とか立体作品に挑戦したいですね。

——今後の展示に関しては、決まっているものはありますか?

SHUN:年内に1つと来年に1つ、展示をやる予定です。もしかしたらもう1つくらい増えるかもしれませんが、そこに向けて何か新しい取り組みができればいいなと考えています。

SHUN SUDO

SHUN SUDO
1977 年、東京生まれ。世界を旅しながら得た感性をもとに独学でアートを学ぶ。水墨画的な動静を併せ持った繊細なタッチ、グラフィティを彷彿とさせるストリートテイストのポップな色彩。映画、音楽、スポーツ、自然、アニメーションからインスピレーションを得て生まれた幻想的な「生物」と「花」。1つのジャンルにおさまりきらない世界観が紡ぐアート作品が近年世界から注目を集める。2015 年、初のソロ・エキシビジョン「PAINT OVER」をニューヨークで開催。グローバル企業とのコラボレーションも多数手掛け、その創作活動は世界のアートシーンに刺激を与えている。
https://www.shunsudo.com
Instagram:@shun_sudo

■SHUN SUDO solo exhibition『Blowin’ in the Wind』produced by WATOWA GALLERY
会期:2022年7月9〜24日
会場:elephant studio 1-2F
住所:東京都渋谷区渋谷2-7-4
時間:12:00~19:00
休日:水曜日
入場料:無料
http://www.watowa.jp/news/

Photography Yohei Kichiraku

author:

高山敦

大阪府出身。同志社大学文学部社会学科卒業。映像制作会社を経て、編集者となる。2013年にINFASパブリケーションズに入社。2020年8月から「TOKION」編集部に所属。

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