東京から世界へ発信するHOLE AND HOLLANDの多角的アプローチ

HOLE AND HOLLANDは、YO.ANやMamazuを中心としたDJ陣に加え、「アディダス オリジナルス」ビースティ・ボーイズなどともコラボレーションするアーティスト、NAIJEL GRAPHが所属しているレーベルだ。その積極的な活動は目まぐるしく、例えば、「エビセンスケートボード」 がスケート雑誌『Thrasher』で公開したオーストリアツアーの映像「WORKING HOLIDAY」の音楽を、YO.ANが手掛けていたりもする。

彼らは、どのようなきっかけで引き寄せられたのだろう。結成当時の話から、それぞれの活動について。そして昨年末、渋谷にオープンした同レーベルのヘッドショップ「OFFF(オフ)」に込めた思いも含めて、主要メンバーの3人に語ってもらった。

はじまりはたまり場になっていた家
音楽とスケートボードがつないだ仲間達

――まず、HOLE AND HOLLAND(以下、HOLLAND)はどのように結成されたのかお聞かせください。2人は兄弟なんですよね?

NAIJEL GRAPH(以下、NAIJEL):はい。僕が長男で、Mamazuが三男。ビートメイクしたり映像を撮ったりしている次男のSTONE’ Dもメンバーです。

Mamazu:結成のきっかけは、高校生の頃から僕らの家に集まって遊んでいた仲間が、HOLLANDなんです。

YO.AN:2人が住んでいたのが練馬で、僕は世田谷だったんですけど、スケボーや音楽など、好きなものが一緒だからよく遊んでいたんですよ。(NAIJEL GRAPHは)スーパーイケてるお兄ちゃんだったよね。絵を描いたり、DJをしたり、レコードもたくさん持っていて。おもちゃ箱みたいな家で、音楽もボンボン鳴っていました(笑)。

NAIJEL:ここはクラブか? ってくらいね(笑)。

YO.AN:むしろ、クラブだと思っていましたよ(笑)。週末の昼間だろうが本当に爆音で、「やばくないですか?」ってこっちが気を遣うくらい。だけど、そういった環境ってないし、大音量で音楽を聴くと全然聴こえ方が違うからとても楽しかったです。DJでプロデューサーのFUSHIMINGや、HOLLANDのロゴなどを書いているアーティストのEDO KANPACHIもその家の近所に住んでいてずっと遊んできた仲間です。その後、音楽をはじめ、何かを作るといった行為がみんな好きだったので、音源がまとまってきた頃、自分達でやっちゃっていいんじゃない? って話になって、レーベルとして動き出したんですよね。

――メンバーは何人いるんですか?

YO.AN:オリジナルメンバーは7人。僕ら3人に加えて、STONE’ D片方遥FUSHIMINGEDO KANPACHIが所属しています。

――HOLE AND HOLLANDという名前には、どんな意味が込められているんですか?

Mamazu:曲を作るし絵も描いているEDO KANPACHIのノートに書いてあったんですよ。HOLE AND HOLLANDって。

NAIJEL:落書きみたいな感じでしたけど、ロゴっぽくなっていてかっこよかったから、そのまま使っているんですよね。

――結成当時はどんな活動を?

Mamazu:仲間達でパーティをしたりしながら、 22歳くらいの時にコンピレーションアルバム『RIDE MUSIC』を初めてHOLLANDからリリースしました。12インチのレコードでもリリースしたんですが、それはシングルカットして、リミックスも入れています。

――このコンピレーションには、5lackさんも参加されているそうですね。

YO.AN:僕がかっちゃん(=「エビセンスケートボード」の南勝己)と一緒に、スケートブランドの代理店で働いていたことがあるんです。その時に紹介してもらいました。ちょうど僕らが初のコンピレーションを作っていたタイミングで、HOLLANDに所属していない人にも声をかけていたので、5lackにも話したら参加してくれたんですよね。

――メンバーの片方遥さんもそうですけど、スケーターとのつながりも強いですよね。

YO.AN:遥に関しては地元が一緒で、近所なんです。

NAIJEL:出会った頃からめちゃくちゃスケボーうまかったよね。

YO.AN:出会った時、まだ小学生くらいでしたけど、全身スポンサーみたいな感じでした。東京で一番かっこよかったんじゃないかと思います。HOLLANDのパーティにもずっと遊びに来ていてそのうちDJをはじめて、自然とメンバーになっていった感じです。

音楽とアートを武器に一丸となって
世界を股に掛けた活動を展開

――では最近の活動についても教えてください。

Mamazu:基本的にはそれぞれの活動ありきなので、自分でブッキングを取ってきます。みんな、アーティスト活動の延長にDJがあるような感覚かもしれませんね。

YO.AN:HOLLANDって、いつでもリリースできるプラットフォームみたいな存在なんですよね。クルーでの出演を頼まれることもありますし。STONE’ Dはサウンドシステムを作っているので、レセプションパーティくらいの規模だったらそれも持ち込んで、HOLLANDみんなで参加することもあります。

――DJ活動には新型コロナウイルスの影響はありましたか?

Mamazu:ありましたよ。配信ライヴが一気に増えました。

YO.AN:ロンドンをはじめ、海外からの配信にも声をかけてもらって、オンラインでも参加したりもしたよね。

Mamazu:そうですね。最初、僕らは配信にメリットを感じていなくて悩みましたけど、いい側面もあることにも気がついて。めっちゃ真面目にDJしています。

YO.AN:いつもは目の前のお客さんに合わせて選曲するんですけど、配信では不特定多数を相手にしているので、画面の向こうがどんな状態なのかわからないんですよ。なので、いろんなことを考えると、結果的に音楽のクオリティで勝負するしかないんですよね。目を閉じたらいいMIX CDを聴いているようなプレイも意識しています。

――NAIJELさんは、オンラインで開催されている合同展覧会といったものに参加されたりは?

NAIJEL:ないですね。幸いにも、企画していた展覧会も、ギリギリ開催できたりもしたので。

――NAIJELさんの展覧会のレセプションパーティでは、HOLLANDのメンバーがDJとして参加されていたりしますよね。

YO.AN:そうですね。それこそ海外にもみんなで一緒に行ってます。

――例えば、どこに行かれたんですか?

YO.AN:2020年は香港。2019年にはロンドンの「グッドフッド」っていうセレクトショップで、「ビームス T」とNAIJELがトリプルネームでコラボする企画があって。そこで僕とMamazuでDJをやらせてもらいました。

――その渡英中に、NTS Radioに出演もされていましたよね。海外での反響も大きかったのでは?

Mamazu:そうですね。イギリスだとかなり身近にあるラジオ番組として有名なので、反響はありました。その当時、海外のネットラジオに日本人が出演するってことも多くはなかったですし。

――「グッドフッド」と「ビームス T」とのトリプルネームでアパレルの販売もされていましたね。そのベースになったHOLLANDのTシャツは、本当にいいアイデアだと思いました。丸いポケットがCDサイズになっていて、そのポケットにはMIX CDが入っている。

NAIJEL:それをおもしろがってくれて、コラボレーションしたいと声をかけてくれるブランドも多いです。

音楽をモチーフにしたアパレルも
さらに広がるHOLLANDの世界観

――HOLLANDとしてアパレルグッズも積極的に展開していますよね。

NAIJEL:そうなんですけど、あくまでも音楽ありきのアパレルなんです。

YO.AN:音楽関連のネタをベースにして、ひねったアイデアで作っています。そして各アイテムには、CDやカセットテープだったりと、そのアイテムでしか聴けない内容の音楽を付けるようにしているんです。付加価値のある洋服にしたくて。

YO.AN:僕らが洋服を作っているのは、洋服が好きな人に新しい音楽や僕らの音楽を知ってもらいたいという思いもあるんです。HOLLANDのアパレルが、違うジャンルの人達とつながるきっかけになればと考えています。

Mamazu:自分達が着たい、使いたいってものを作っていきたいです。

――そして昨年12月には、HOLLANDのショップとして、「OFFF(オフ)」がオープンしました。オープン前にNAIJELさんから、「友達の家に遊びに来たようなお店にしたい」と聞いていました。それで今回、話を聞いていたら、昔NAIJELさんとMamazuさんの家にHOLLANDのメンバーがたまっていた頃の空気感を再現しているように感じました。

NAIJEL:そうですね。その感覚に近いかもしれない。友達の家に来るテンションで足を運んでもらいたいんですよね。近くには友達がやっているコーヒー屋さんの「Coffee Supreme Tokyo」もあるので、そこでコーヒーを買ってきて、飲みながらくつろいでほしいです。

Mamazu:お店の真ん中にベッドを置いているくらいですから(笑)。くつろいでもらいたいですね。だから「OFFF」って名前なんですよ。

――他にはショップのコンセプトなどはありますか?

YO.AN:気楽に遊びに来られる場所で、いつでもHOLLANDのアイテムが買えて、そして音楽もアートも買えるお店ですかね。あとは、展示会や個展なども開催できるレンタルスペースとしても機能させていきたいです。

NAIJEL:HOLLANDとしてもいろんな企画を考えていますが、NAIJEL GRAPHとしてはちゃんと「OFFF」で展覧会をする予定です。

――ショップ内には、レディースのヴィンテージショップ「グリフィス ヴィンテージ」が併設されていますよね。

YO.AN:そちらは女性2人が運営しているんですけど、その1人が僕の奥さんなんです。2人がレディースのヴィンテージショップを始めるタイミングが同じだったこともあって、お店をシェアしてオープンしたんですよね。

NAIJEL:メンズもレディースも両方あったほうが家っぽいし、カップルで来ても楽しんでもらえますからね。

――では、HOLLANDとしての今年の動きは?

YO.AN:今決まっているリリースだと、先日の「エビセンスケートボード」の映像「WORKING HOLIDAY」にも使われた曲も収録されたSUNGAの12インチと、名古屋の期待の若手TAIHEIの12インチが出ます。どちらも超現場仕様の内容です。あとはFRAN-KEYのディスコエディットがカセットテープで出ます。洋服やグッズもいろいろともちろん仕込んでいます。

――「OFFF」としての今後の動向は?

Mamazu:自分達が影響を受けてきたものをもっと販売していきたいです。

NAIJEL:他にはコラボレーションしたものを限定で発売したり、周りの友達のブランドを取り扱ったりするのもいいよね。

YO.AN:ここでYouTubeの収録もしようかとも考えています。

NAIJEL:すごくユルい感じでね。もしからしたら寝ながらやっているかも(笑)。

Mamazu:せっかくの場所があるので、そういったおもしろいことをやっていきたいですね。

YO.AN:あと、今年の夏くらいに都内でポップアップを開催する予定です。先の見えないご時勢なので、まだ予定としか言えませんが。そのためにいろんなアイテムを作っているところです。

NAIJEL:「OFFF」の匂いをそのまま持っていったようなポップアップにできたらなと思っています。かなりやばいコラボものも作っているんで、楽しみにしてもらいたいです。

NAIJEL GRAPH
雑誌の表紙や広告なども手掛けているアーティスト。2018年にはビースティ・ボーイズとのオフィシャルコラボレーションを実現し大きな話題に。他にも「アディダス オリジナルス」や「ソニー」とタッグを組んだ展覧会も開催されるなど、国内外からさらなる注目が集まっている。2017年に制作した、物とモノを足し算する新発想の絵本『なんでもたしざん』(オークラ出版)は、第52回造本装幀コンクールにて「日本書籍出版協会理事長賞(児童書・絵本部門)」を受賞。
Instagram:@naijelgraph

Mamazu
1990年代半ばからDJとしての活動を開始。これまで、Fuji Rock FestivalやBoiler Room、香港のCassioなど、名だたるイベントへの出演を果たす。日本のみならず各国のレーベルから楽曲やリミックスを発表しており、その楽曲は高い評価を得るとともに世界中でプレイされている。
Instagram:@mamazu

YO.AN
「エビセンスケートボード」や「タイトブース」などの国内スケートブランドから、「リーバイス」や「ザ・ノース・フェイス」といったグローバルカンパニーにも、楽曲を提供するDJ/プロデューサー。Boiler Roomへの出演やロンドン、上海、香港など海外でもプレイし、リリースされた作品やDJ用に作られたエディットは数々のDJによってプレイされている。
Instagram:@_yo.an_

HOLE AND HOLLAND
https://hole-and-holland.com/
Instagram:@holeandholland

Photography Shinpo Kimura

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author:

コマツショウゴ

雑誌やウェブメディアで、ファッションを中心としたカルチャー、音楽などの記事を手掛けているフリーランスのライター/エディター。カルチャーから派生した動画コンテンツのディレクションにも携わる。海・山・川の大自然に溶け込む休日を送るが、根本的に出不精で腰が重いのが悩み。 Instagram:@showgo_komatsu

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