アーティストのTIDE(タイド)は、ギャラリー「The Mass」で、個展「BLOOM」を開催する。会期は11月27日〜12月26日。本展は、2020年に開催した「DEBUT」展に続く2度目の大規模個展となり、継続して制作している「CAT」シリーズをはじめ、「Life is Flat」と題された新しいペインティングシリーズを含む最新作19点、TIDEの芸術活動の新たな始まりを示す立体的なインスタレーションを発表する。
本展のタイトル「BLOOM」は、TIDEの作品に登場する花のイメージを意味すると同時に、アーティストとしてのTIDEのアイデンティティを表すメタファーでもある。1つの絵画上に現れる多様なスタイルは複雑さとディテールに満ちたものへと進化し、その絵画技術は短期間で大きく躍進。このタイトルは、TIDEがさらなる芸術的挑戦のために成長し、進化していくことを意味している。
2019年から制作を続ける「CAT」シリーズに登場する猫をモチーフとしたキャラクターは、おもちゃに命を吹き込んだかのような存在として描かれ、幼い頃に憧れた空想世界を実現させながら、自身のキャリアとともに洗練され、成長してきた。また、ベースとなっている背景の表現からは、幼少期の記憶を辿り再び立ち現れた寝室の光景や夜の景色を具現化したものと見て捉えることができ、過去と現在の感情や情緒を携えている。
モノクロームで描かれた世界は、一見シンプルですが、よく見ると背景と前景を区別するための技法や絵画スタイルが複雑に重ねられている。作品のキャラクターはフラットな2次元で表現され、背景はアクリルとスプレーを用いて立体的な室内を描いており、生物と無生物、現実と空想、2次元と3次元の境界を確認することができる。本展では、2次元と3次元の相互作用を追求した表現として、猫のキャラクターをかたどったシェイプドキャンバスを携えた3つの大作を新たに加え、平面上で繰り広げられる漫画のようなイメージを、絵画の文脈に添ったアプローチで彫刻的な要素も含め表現している。
新たなシリーズとなる「Life is Flat」は、「CAT」シリーズと同じ世界に存在するTIDE独自のモノクロームのスタイルとテクニックを継承した作品。「Life is Flat」は、静物画の様式を再解釈したもので、それぞれの作品には器や花瓶に入るさまざまな花束が描かれている。TIDEの絵画世界のルールに従い、生き物である花は2次元で描かれ、生き物ではない花瓶は3次元で存在し、静物画の典型的な模倣という表現方法を覆している。また、花はハルクやE.T.などの有名キャラクターの形をした花瓶に活けてあり、繊細な花のイメージと怪獣やエイリアンのモチーフが並置されている。1980年代の映画やテレビに登場するこれらのキャラクターを使用することで、子供時代やノスタルジアのテーマをさらに拡大し、ポップカルチャーの普遍的な要素を私達が持っている共通意識に芽生えさせ、結実させているものといえる。